あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

HELLOUISE-6

「もっとも恐るべき系統とは何か わかるかギーシュ」
「………『土』」
「そうだその通りだよ 我らが系統『土』だギーシュ
 ではなぜ土系統はそれほどまでに恐ろしい?
 土系統は弱点だらけだ
  かぜ       みず      ひ
 近接戦を嫌い 搦め手を嫌い 熱の呪文は防げない
 川・海・湖畔・流れる堀では使えず 『火』に目をそむけ 『風』に耳をそむけ
 ほとんどの土メイジは支援しか出来ず 居る場所は唯一ツ『水』と『土』だけが残る後方だけ
 それでも土メイジは無敵の戦略家(モンスター)と呼ばれる
 ギーシュ 何故だかわかるか――」

それは、父の教え。
先祖代々研鑽を重ねてきた、『土』の運用。
ギーシュは今、それを思い出していた。

「礼は言わないぞ、ギーシュ」
「当然じゃないか、今から君を叩き潰すんだから」
何度となく繰り返された、物騒な会話。
その度に「観客」は盛り上がり、セラスはハラハラしている。
それを交わしているのは、ギーシュ・ド・グラモン。そしてマリコルヌ・ド・グランドプレ。
二人とその取り巻き――「観客」だ――は今、『ヴェストリの広場』へと向かう道中である。
もうすぐ着くその場所で、この二人の決闘が始まるのだ。

「……本気なのか、ギーシュ?
 君は『土』で僕は『風』だぞ?」
ぽつり、マリコルヌが呟いた。
それは、友人たるギーシュの身を案じての言葉。そして、勝利宣言。
暗に「君は僕に勝てない」と、マリコルヌはそう言っていた。
…これはマリコルヌの過信ではなく、厳然たる事実だ。
一対一、しかも「決闘」という形式なら、風系統の手練は一つ上のランクの他系統とも渡り合える。
詠唱が早く、対人に特化した風系統は、こと決闘においてはそれほどに有利な系統なのだ。
逆に、土系統は――

だが、ギーシュは不敵に笑ってみせる。
「ああ…そうだね、確かに最弱の『風』では最強たる『土』相手にはあまりに不利だ。
 仕方ない、ハンデをつけてあげようか?」
「ッ……!?」

――はっきり言って。
断言していい、土系統は決闘に最も不利な系統だ。
それは周知の事実であり、一説には「決闘禁止令」は土メイジが画策したのだという人間さえいる。
だというのに、この友人――否、『元』友人は。

「命がいらない――そういうことかい?」

自分だけではない、「風」たることが誇りであるグランドプレ家への――
そして、全ての風メイジへの、それは侮辱だった。
故にマリコルヌは、怒った。
ギーシュの思い通りに。


やがて二人は立ち止まり、距離を置く。
「戦場」についたのだ。
マリコルヌが向き直り、息荒く杖を抜く。
しかしギーシュは、未だ朗々と詠うように。

「『命を惜しむな、名こそを惜しめ』――…確かに我が家の家訓だが。」

此処に来て猶、余裕を崩しすらせず。

「それがどうしたね、『かぜっぴき』のマリコルヌ?今は何も関係ないじゃないか」

傲岸に不遜に笑って、そして。

「――僕は全く危険に晒されてなどいないんだから。」

不敵に宣言して見せた。

わぁ、と観客が沸く。
ギーシュはそれに応えるかのように、造花の薔薇――彼の杖だ――を取り出すと、
観客に見えるように無数の花びらを撒いて見せた。魔法を使って。
そしてマリコルヌに笑ってみせる。
そう、それは。

――今使った精神力がハンデだ、マリコルヌ。

そんな笑みだった。

ここはヴェストリの広場。
観客に囲まれて、二人は向かい合った。



「ギーシュの奴、随分と吠えてくれるわね」
決闘場を形作る輪からは一歩離れた場所で、ぽつり、呟く女が一人。
キュルケだ。
共に在るのは友人のタバサと、ライバルのルイズ。そして、それぞれの使い魔達だ。
ただ一人、セラスだけはギーシュを見守りに上空へ出ている。

「『土』の本分は平時の活動と後方支援。それは、ギーシュも分かっているはずだけど」
先ほどの発言は、破壊と情熱がその本分たる『火』の使い手として、少々見過ごせないものだった。
が、今キュルケを支配している感情は、怒りよりもむしろ好奇心だ。
いくら吠えても不利は否めない――さて、どうするというのか、ギーシュは。
「……多分、何か策がある」
返答したのは、いつもより二割増しで無表情なタバサ。どうやら怒っているらしい。
まあそれも当然だろう。自身の系統が最弱呼ばわりされたのだから。

「策に溺れなければいいけれど……私の名誉のためにも、負けてもらっちゃ困るわ」
次いで口を開いたのはルイズだ。
「心配するな、わが主。小僧が勝っても主が名声を得るわけではない」
「負けたら私の名誉が落ちるでしょうが!!」
皮肉気に嗤って言う従者に、彼女はいつも通りにカンシャクを起こす。
「おやおや、落ちるほどの名誉があったとはいざ知らず。失礼した、我が主、“ゼロのルイズ”」
「~~~~~~ッッッ!……上等じゃない従者!!上等ォ!!」
いつも通りの喧嘩(じゃれあい)を始める二人を見て、キュルケは嘆息しつつ思考の海に戻る。
(しっかし……ウォルターもあんなにとは言わないけど、もうちょっと喋ってくれればね)
「もしかしてあたし、無口な人に好かれるのかしら」
少しだけ、隣を羨みながら。


ギーシュは『ドット』だが、かといって劣等生というわけではない。
否、むしろそれなりに優秀な方だと言えるだろう。いわゆる優等生で『ライン』クラスなのだ。
『ゼロ』と『トライアングル』に囲まれてはどうにも印象が薄いが、彼女らが規格外なだけである。
いい意味でも、悪い意味でも。

さて、『ドット』の中でギーシュが優秀と言われる理由はいくつかある。
一ツは術式構成の工夫。
「ワルキューレ」七体の錬金し、維持するというのは、まっとうにやればそれなりに精神力が要るのだ。
魔法の素質がそう高くないギーシュは、だからこそ精神力の効率的な運用という面において頭抜けていた。
そしてもう一ツは――

ギーシュは思う。
自分は今、笑えているだろうか。震えてはいないだろうか、と。
精一杯の余裕を浮かべながら、実のところギーシュは結構ギリギリだったのだ。
かろうじて平静でいられるのは、ここが学院――日常の場だからだろう。
命の取り合いにはならない。その安堵が、ギーシュにとっての蜘蛛の糸だった。
それを自覚し、苦い感情が湧き上がり、
(……ミス・セラスとは大違いだな)
ぎり、と表情には出ないように奥歯を噛み締めた。

脳裏に過ぎるのは自身の使い魔――セラス・ヴィクトリア。
いつもは右往左往している彼女だが、ふと鋭い表情を見せることがある。
まるで歴戦の兵士のような眼光。
それがもっとも顕著に表れたのが、この間、ルイズが大爆発を起こした事件である。
杖が振り下ろされ、爆発する、と思った瞬間には、自分の視界いっぱいに床が広がっていた。
彼女に伏せさせられたのだ。
そして、それと気づいた時には、既に彼女は力任せに机の天板を引きちぎって盾にし、ギーシュを庇っていた。
ここまでが一呼吸にも満たない間の出来事だった。
あの一瞬であれだけの動作をやってのけた判断力、敏捷性、膂力。
そして何よりも、目標達成以外の思考を一切排除したかのような、あの表情。
メイジの使い魔として百点――否、それ以上の能力を、彼女は必要な時に過不足なく示して見せた。
ならば、自分も応えなくてはなるまい。

あの素晴らしい使い魔に見合うだけのメイジであると証明する。
そのためにも、この戦いにおいて失敗は許されない。
それはギーシュの中に初めて生まれた、貴族としての、メイジとしての覚悟だった。
故にギーシュに油断は無く、恐怖に呑まれる事も無く。
極めて限定的な、理想的なこの状況下だからこそ如何無く発揮される――彼のもう一ツの能力。
それは。
 、 、  、 、 、 、 、 、 、 、
「駒は、僕の手の内にある」

チェス・ゲームのような戦術的思考。グラモンの血筋が脈々と築いてきた財産。
口元だけの笑みが、深くなった。




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