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とある魔術の使い魔と主-58


「これ、着て」
 当麻がタバサから渡されたのは執事服であった。
 ここはペルスランの部屋。先程本人から許可を得て、お邪魔する事になったのだ。
 しかし、タバサは「遠慮」という言葉を知らないのか、づかづかと他人の部屋に入り込む。
 まるで主のような振る舞いで、そのままクローゼットを開き、入っていた予備の服を当麻に渡した。
「これを、俺にか?」
 いきなり執事服を渡されても困るし、何かの間違いだと思う。
 眉をひそめ、一度確認を取った当麻に対してタバサはコクリと頷く。
「別にいいけど……、なんか理由でもあるのか? さすがに『執事フェチだから是非とも上条さんに着せたい!』的なノリなら勘弁して欲しいんが」
「任務のため」
 ぴしゃりと一刀両断された当麻はこれ以上の発言は控え、渋々タバサから執事服を受け取った。
 執事服を着なければならない任務とは、一体どのようなものだろうか。
(誰かをボディーガードか? いやでも別に執事服をわざわざ着る必要はねえよな)
 任務、と言われるとテレビやゲームなどで行われるイメージが浮かべられる。
 しかし、今の当麻に執事服と任務を結び付ける要素が浮かんでこない。
 タバサの冗談かと思ったが、じっとこちらを表情を変えずに見続けているのだからその可能性は低い。
 本人が任務としか口を開いていないのに、それ以上の事を聞くのもどうかと思われる。当麻はこれ以上を考えるのはやめ、仕方なく今身に纏っている制服を脱ぎ始めた。
 と、気付く。
 タバサがずっとこちらを見ていることに。
「…………あの、タバサさん?」
「なに」
「いや、ずっと表情を変えずにこちらを見ていると上条さんはなんかとてつもなく着替えにくい状態になるのですが」
「……わかった」
「待て、その間は一体なんだよ!」
 当麻のツッコミを右から左へと流し、興味を無くしたかのようにすたすたと部屋から去っていった。
 ビシッ! と人差し指を突き刺してポーズを取ったのに、なんら反応を貰えなかったのがよほどショックだったのか、ズーンとテンションがものすごく落ちている。
「まあ、毎度のことなんだけどねうふふふ、うふふふふふふふ」
 にへらと口端が釣り上がり、不気味な笑みを浮かべる。
 誰もいないのだ。今ぐらいどうしたっていいじゃないか、という半ばやけな気持ちがあったからであろう。
 が、
「きゅいきゅい、トウマさんがなにやら不気味に笑っているのね!」
「んなもん当たり前でしょーが!」
「きゅい、聞こえてるのね!? おかしいね! 窓が挟んでるから大丈夫なはずなのね……?」
「……ん? 窓?」
 当麻は思う。たしかこの場には自分しかいない。ならばこの声の持ち主は窓越しにいるのだろう。
 が、このようにお喋りな女性はいないはずなのだが……。
 当麻は疑問符を頭に浮かべながらくるっと振り返る。
「……シルフィード?」
「きゅい?」
 いたのは、声をかけられ首を傾げるシルフィード。
 当麻は未だに残る疑問を振り払うように、窓へ近づいて豪快に開いた。
 ブワッ、と室内へ風が舞い込んだが、そんなのは気にしない。
 それよりも、
「シルフィード以外ここに誰かいたか?」
「きゅいきゅい」
 首を横に振る様子から、恐らく否定しているのだろう。
 事実、当麻は窓から首をだし、キョロキョロ辺りを見渡すが人影はいない。
 別に入り組んだ場所ではなく、見晴らしがいい庭のため、誰かが隠れるようなことはできないはず。
 あれ? そもそも竜って人の言葉理解できるのか。と別の方に関心した当麻は、変に気にすることなく、再び着替えるため部屋の奥へと戻っていく。
 その姿を注意して見つめたシルフィードは、ほっ、と安心したように溜めていた息を吐き出し、この場から離れるため、上空へと飛び去っていった。


「人?」
「あぁ。俺の聞き間違いだったのかもしれねーけど、一応タバサの耳には入れておこうかと思ってな」
 執事服に着替えた瞬間、再び無理矢理タバサが登場。腕を引っ張ってきてシルフィードに乗せられた当麻は、とある町まで飛ばされた。
 今はタバサと二人で目的地へと歩いていた。
「あれ、というか語尾に『きゅい』とかつけてたけど確かシルフィードも――」
「あなたの聞き間違い」
 短く、タバサは勝手に結論を告げ、歩く速度を早める。
「あっ、って上条さんの名推理を聞く前に行っちゃうのですか!?」
 慌てて歩幅を合わせようと、当麻も早足になる。そのため、思考する時間を奪われ、答えが出ないままになる。
 まあいっか、と当麻は頭のごみ箱へとなげすてた。
 些細なことだし、タバサの言うように本当に聞き間違いだったのかもしれない。
 物事を深く考えるなら適当に結論づける方がマシだと考える当麻であるため、話題を変えようとタバサに話しかける。

「んで、俺が執事、おまえさんが男装。これからどっかのパーティーにでも出席するのか?」
「そんなところ」
「って予想的中!? 待て待て、俺に執事なんてできるわけねーぞ!」
「街中」
 う……、と当麻は周りからの視線を感じ、冷や汗を流す。
 タバサの指摘通り、街中での大声は目に止まる。しかも普段は静かであるイメージをもたれる執事が大声をあげたのだ。
 一体何がおきたのかと、人々が怪訝な表情を浮かべて当麻を見つめる。
 そんな視線に耐え切れず、アハハハと苦笑いをするしか当麻には道がない。
「心配ない。あなたに執事の能力は求めていないから」
「……それ、なんだかすっごくショックを受ける発言なんだが」
 まあ、事実ないというのも僅か数分で判明したのだから、タバサのような発言が出て来るのも納得がいく。
 ずーん、と再び落ち込む当麻に「人それぞれ」と慰めのつもりで声をかけた。
 一方、
「きゅいきゅい。トウマさんといいムードを作ってるのね! 全然友達以上の気がするね!」
 当麻やタバサに気付かれぬようこそこそと探偵らしく物影に隠れながら見守るシルフィードの姿があった。
 もちろん竜の姿ではない。彼女は先住魔法によって人間へと化けている。
 服は事前に用意していた。白いお仕着せが似合う、とてもいいスタイルだ。
 当然、その姿は周りの人の目線を奪う。先程当麻を眺めた人々は、再びシルフィードへと目線をやっていたのだ。
「でもなんでシルフィは仲間外れなのね。……まさかどうせシルフィは役立たずとか思っているなのね!?」
 と、いつも虐められている(あくまで本人談)からこそ浮かぶ理由にたどり着く。
 実の所、タバサの隣にいる人物は誰でもよかったのだが、シルフィードと上条当麻を天秤にかけたとき、当麻の方に傾いただけである。
 そこは一人の女の子の感情であるが故。しかし、竜であるシルフィードがそんな人間の微妙な心情に気付くはずがない。
「これは文句を言わなければならないのね!」
 一匹の風韻竜は、自分の本当の姿をばらすことなく、再び二人の後を追った。

 ツンツン頭の執事と、とても女性とは見えないぐらい男装が似合っているお嬢様という至ってアンバランスな二人は、一軒の宝石店を訪ねた。
 うへぇ~、と一生涯このような場所とは無縁だと感じていた当麻は感嘆な言葉を吐き出す。
 それもそのはず。この宝石店は他の店よりも豪華な作りであり、そうとうな金持ちではないかぎり入ってはいけませんというオーラが漂っていく。
「うわっ、これゼロの数が半端ないんだが!? きっと俺の何年分の生活費がこのちっこい宝石一つに値するんだろうなぁ」
 格差社会反対だぁ……と嘆く執事に目もくれず、お嬢様はすたすたと店内の奥へと入ってく。
 その足取りからもともと品定めを済ましていたのであろう。ずらりと並んでいる宝石の数々に臆せず、また見向きもしない。
 当麻もそんなタバサに気付き、宝石のオーラに圧倒されながらもなんとかついていく。
(まさか、物のプレッシャーにたじろぐなんて……、想像もしてなかったぜ)
 すると、前を歩いていたタバサがぴたりと足を止める。
 ん? とつられて足を止めた当麻が、一体どのような物を買うのだろうと思い、タバサの頭ごしからそれを見る。
 大きな大きなブルーダイアモンド。そこから溢れ出てくるオーラは当麻のそれとは格段に違う。
「おのれ、宝石の分際でこの上条当麻さんと戦おうとはいい度胸をしているんじゃないの! オーケー、今すぐテメエの幻想をぶち壊してやるよ!」
「店の中」
 タバサの指摘に当麻ははっとなる。先ほどは道路であったが、今回は店の中。さらに注目度は上がってしまう。
 周りの視線に耐えられなくなった当麻は、目を泳がせ口笛を吹き始める。
 早く、早く自分から意識を逸らして貰おうと思っていたら、
「きゅいきゅい! とてもかわいいのね!」
 うぉぉぉぉおおおおおお、とガシッと拳を握る。この最高のタイミングで最高の叫び声。何と言うか、久々に幸福というのを感じたのかもしれない。
「って、きゅいきゅい?」
 そのような言葉を会話中に使用する存在を当麻は一人と一匹しか知らない。
 さらにいうと、一匹の方はこんな所に入っていたら大騒ぎになるはず。ならば、今大声をあげたのは高確率で、
「ッ、あの時俺を覗いていたやつか!?」
「きゅい! いきなりばれているのね!?」
 バッ、と思いきり振り返ると、そこにいるのは一人の女性。

「どうみても天然さん系!? つか初っ端から自分だと認めてるし!」
「し、しまったなのね!」
 誘導尋問とかすればボロボロといろんなことを口にしそうだなー、というのが最初に抱いた感想である。
 シルフィードに意識が持って行かれた客が、再び当麻の方を向く。
 店の中で、大声における会話は迷惑なのだが、誰も注意しようとしない。普段では味わえない、まるで平民同士の会話に近いからか。
「やい、さっきはシルフィードと一緒になに俺のドキドキ着替えイベントを満喫してたんだ!?」
「な、ななななななんのことかわからないのね! というか、まだ自分がシルフィードだとばれていないのね……」
「最後ごにゃごにゃ言ってないではっきりしやがりなさい! つーか、いろいろと事情を聞かしてもらうぞ!」
 ずかずかと、効果音が聞こえてくるような足音でシルフィードに近づいていく。ひっ、と僅かばかり震え、足がすくんでしまって動かないようだ。
 このまま成すべくなく捕まるのであろうか。
 その時、執事と使い魔の争いにただ傍観していた主はあることに気付く。
 幻想殺し、異能の力ならたとえ神様の奇跡だろうと打ち消す力。それは、当然先住魔法にもきくはず。
 より具体的にいうならば、シルフィードが今使っている変身魔法も……。

 考えるよりも、先に手が動いた。
 バッ、と杖を振るい、ルーンの言葉を紡ぐ。
 その早さはまさに神速。当麻の右手がシルフィードに触れる前に、小さな氷を足元に配置する。
「っとと!」
 まさか店の中で氷があるとは思っていないため、当麻はタバサの目論み通り躓いた。
 しかし、
「わわっ!?」
 向かっていく先は進行方向にいるシルフィード。そのまま体ごと預けるかのようにぶつかっていった。
 そして、衝突。
 むにゅっ、という音を当麻は聞く。一体なんであろうと思うのだが、視界が真っ暗である。
「いたたたた……なのね」
(こ、これはまさか――!?)
 柔らかい質感なのだが弾力はある。こんなもの当麻の知識の中には一つしかない。
 右手は床に触れていたため、力をこめ、上半身だけ上げる。
 すると、

 シルフィードに馬乗りとなっていた。
 予想通り、先ほどはあの柔らかい二つの果実に埋もれていたらしい。

「な、ななななななななな!?」
 頬を真っ赤に染め、あわてふためく当麻。正直、周りからの視線が一段ないし二段と冷たくなった気がする。
 言い訳は出来そうにない。どう見ても勝手に当麻がこけて、勝手に当麻がシルフィードを押し倒し勝手に馬乗りに見えるのだから。
「わわわわ、ご、誤解だ! 誤解ですから!」
 慌てて離れる当麻。両手を前に出し、ぶんぶんと振るが効果は見えそうにない。
 シルフィードはポカーンとだらし無く口を開いて固まっている。どうやら自分が何をされたのか、イマイチ理解できていない様子。
 当麻としては噛みつかれたり、暴行加えられたり、電撃を浴びせられたりするよりも遥かにマシなのだが、むしろその普通の態度が新鮮に感じてしまい、対応に困ってしまう。
 あれ、俺って実は結構酷い目にあってる? 等と考えている間に、
「……あ、……あぁ!」
 どうやら事の状況を理解し始めた様子。
 見た目は二十歳前後の美しい女性なのだが、人間の年齢に換算するとまだ十歳足らずなのだ。
 そんな精神上幼い子が、自分より年上の少年に押し倒され、馬乗りにされ、胸に頭を突っ込まれたときのショックは計りしえない。
 目には若干涙を浮かべ、肩は小刻みに震えている。
 ギン! と当麻は周りから睨まれた。既に何人かは殺意すら込められているようにも感じられる。
「うぅ……、これは不可抗力ですよ!? 確かにわたくし上条当麻は彼女を押し倒しましたが、なにかに躓いただけなんですよ! それに数で無理矢理意見を通させるのもどうかと思うんですが!」
 反応はない。
「やっぱりダメですよね。そんな予感はしてましたよ! 勝手に押し倒してしまいすみませんつかごめんなさいーッ!」
 ズバッ! と当麻は神速とも呼べるスピードで地面に頭をこすりつける。
 しかし、やはり反応はない。
 ただ無言の訴えがどこからも襲いかかってくる。

『いますぐこの場から立ち去れ』と。

 この、ドラゴンですら逃げ去りたいプレッシャーであるがしかし、さすがは当麻、今までの経験のおかげか必死に耐えている。
 ――否、本当は今すぐにでも逃げ出したいのが、あいにく当麻はここに一人で来店したわけではない。
 むしろ、そのつれからの冷たい眼差しは感じられない。あの存在感溢れる寡黙な主なことだ(当麻にとって)。まさか自分が視線に気付いていない、そんなオチではないはずだ。
 すると、
「きゅいきゅい! もうお嫁にいけないなのねー!!」
 ダーッ! と走り去っていくシルフィード。振り向き様にうっすらと零れ落ちる透明の雫。
 その、あまりの全速力に誰一人として声をかける余裕すらなかった。
 しーん、と静寂が支配する。
 もう当麻にとって限界地点を超えてしまっている。一刻も早く立ち去りたいという心で一杯だ。
 こちらもシルフィードと同じく、涙すらうっすらと浮かび上がってきた。しかし、ここにきてようやく主から助け舟が差し出される。
「あなたは悪くない。事故であったから仕方ない」
 振り返ると、すぐそばに当麻と同じ目線にしたかったのか、しゃがんでいるタバサの姿。
 ズギューン! と当麻は何かを感じる。この状況において、慰められるのはまさに女神と言っても過言ではない。
「……タバサさん。あんただけは俺の味方だって信じていたよ」
 込み上げてくる感動に、当麻は目頭に浮かび上がっていた熱いものが零れそうになる。それを防がんと、必死に腕で拭う。
 もっとも、真犯人がタバサであるとしったら、果たして当麻はどのような反応をとるのであろうか。
 それはさておきと、慰めの一言を与えたタバサは立ち上がる。
 今は任務中なのだ。
 このような執事と主の青春物語を演じるためにわざわざ宝石店へと向かってきたわけではない。
 タバサは以前床に座っている当麻に「立って」とだけ伝えると、再びお目当ての商品へと向かう。
 途中、周りからなにか囁かれているようだが気にしない。
 とてもじゃないが、彼の右手が触れたら竜に変身してしまうのです、と言える雰囲気ではないのだから。
「これ」
 手頃な店員を探し、先程のブルーダイアモンドを指差す。
 しかし、店員は気まずそうな表情を浮かべて、
「申し訳ありませんお客さま。こちらは売り物では……」
「いいから、これ」
 再びタバサは繰り返す。
「二千万エキューはしますが……?」
 態度は変わらないが、店員が纏う雰囲気は変わっている。タバサの言葉に意味を感じ取ったのだろうか。

 しかし、一つの宝石の価格としては尋常ではない。名高い有名な大貴族の総資産に匹敵するほどだ。
 が、タバサの答えは変わらない。小さく頷くと、
「問題ない」
 すると店員は手を差し出した。
「では手付金をもらいたいのでしょうが」
 すっ、とタバサはその手に銅でできた金貨を三枚乗せた。
 本来ならば二千万エキューに程遠い金額であるが、店員はむしろ笑みを浮かべて、
「かしこまりました。ではこちらへ……」
 言い、奥へと案内する。
 瞬間、店員があることに気付き、足を止めるとタバサに尋ねる。
「お連れの方が見えませんが、どのようにいたしましょうか?」
 店員に指摘され、くるりと振り返るタバサ。
 いつの間にか当麻が消えているようだ。大方、シルフィードに謝りにいったのであろうと推測できる。
 問題は先住魔法が解かれ、街中でトラブルが起きることだ。
 しかし、いまさらタバサが追ったところで間に合うのだろうか。
 悩む。どちらを優先しべきか。
 タバサは無表情のまま棒立ちになること数秒後、
「また来たら、案内できる?」
「もちろんですとも」
 なら、先に行く。と伝え、タバサは店内の奥へと入って行った。


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