あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔は漆黒の瞳-03

使い魔は漆黒の瞳 3

「うっわ~! 見なよ! 月が二つあるよ!?」
「ピヨピヨ!」
「ほ、ほんとだーにゃ! それも、両方見たこと無い色に模様だーにゃ!」
「つ、つき…? あ、あれ? 月って、ほ、ほんとは…い、幾つだっけか?」
「グルルルルルル」
「え、え、一つだってばさ~」
「おつきさま、ふたつ? どっち、みたらいい?」
「ガウガウ」
「これは面妖な。やはりここはワシらの知らぬ大地なのかのう?」
「かつてリュカ殿は妖精の住まう世界に行った事があると聞く。そこは海の色も空の色も普通とは全く違っていたとか…やはり、そうであるとしか思えないな」

トリステイン魔法学園の一角。
大型の使い魔たちのため用意された厩舎の傍で、リュカと共に呼び出されたその仲間たちは、上天に昇った月を見て、わいのわいのと騒ぎ立てていた。
リュカが禿頭の中年男性に連れられて行ってから暫らく経つ。馬車と共にこの場所でリュカの帰りを待つことにした仲間たち。
だが見知らぬこの地と人々の様子、判らぬことばかりに加え、長たるリュカの不在は一行に不安の影を落としていた。
そこへ蒼紅の双月が昇ったのだ。今まで北大陸をくまなく旅し、西大陸に渡っても変わりの無かった『空』の違いに、一行が騒ぐのも無理は無い。
その騒ぎは隣の厩舎で今日召喚されたばかりの他の使い魔達も驚くほど。

「うるさいのねー!きゅいきゅい!!」

そんな苦情の声も掻き消えてしまう騒ぎであった。もっともそこまで騒げば、注目も集める。
何事かと遠く学生の宿舎の窓から様子を伺う学生。
使い魔との感覚の同化に成功したばかりのところへ、この騒音をぶつけられ悶絶する者。
遠巻きに何事かと様子を伺う学園の使用人達。
そして、学長室を辞したリュカと、その後ろに隠れるように様子を伺うルイズ。
二人は、学長室を辞した後、此処へ足を運んでいた。お互いのことをより深く話し合うべきと判断したからだ。

「どうしたんだ? そんなに騒いで?」
「あ、リュカ! 見てよ! 月が二つなんだよ!……ん?リュカの後ろにいるのって、だれ?」
「あ、さ、さっき…あ、あった子だな…! す、すぐに、気絶したけど」
「ひっ! ミ、ミスタ・リュカ! やっぱり死んでるように見えるのですけど!!」

ルイズはどうやら、スミスの外見のインパクトに半ばトラウマに近いものを植え込まれてしまったらしい。
プライドの高さも大きな特徴なのだが、今は完全に畏怖の念で多い尽くされてしまっている。

「でも、スミスは良い奴だよ。心は誰よりも綺麗だとおもうし」
「くさってーけどにゃー」
「ドラきちも茶化すなよー」
「…まぁ、無理も無いのう…ワシもスミスの顔を心の準備無く目の前におかれたら、そのまま臨終するかもしれん」
「老師、洒落になっていませんぞ」

とはいえ、その他の仲間達はさほど恐ろしい姿をしている訳でもない為、ルイズも次第に打ち解ける。
そしてようやく、お互いの事、お互いの知る事を話し始めた。
トリステインの事、メイジの事、使い魔の事。
ラインハットの事、リュカの事、仲間の事。
お互い納得のいかぬ事象もあった。

特に、リュカが使い魔となった事を語られる段では、ピエールなどルイズに掴み掛からんほどに詰め寄ったほどだ。
曰く、偉大なマーサの息子たるリュカを、再び奴隷に貶める気か!と。
その場は他ならぬリュカの取り成しで事なきを得たが、ルイズにとってはスミスに続いて苦手な相手が出来た瞬間でもあった。
逆に、ルイズが眉根を顰めたのは、リュカが貴族ではないと言う点だった。
ルイズの知る常識では、魔法を扱える者はメイジであり、貴族である。
貴族から身を落して平民となるメイジも居るが、それは例外の範疇にあるものだ。
故にミスタ、と敬称を付けても居た。だが、この異郷のメイジは貴族ではないという。
いや、正確には『判らない』と言うべきか。
詳しい言及はリュカもその仲間も避けたためルイズには知る由も無いが、この異郷の青年の辿った数奇で過酷な運命は、
その出自を確かめるに困難な状況を作り出していた。
ただ、幼い頃に召使が居たとの話がされると、ルイズも何かに納得したようだった。
ちなみに、ルイズとリュカがほぼ同年齢という点は、スラリン等から盛大に驚きの声が上がったのは言うまでもない。


夜半過ぎ。長くお互いの事を語り合った一行は、馬車の中で何時も通りに眠りにつこうとしていた。
普段ならば、誰か一人は周囲の警戒の為起きているのだが、今夜は全員眠りの床に在った。
なんと普段はあまり眠りを必要としないスミスまで転寝をしている。
学園内にモンスターは出ないのだ。そしてリュカは一応学園内で保護を受けうる対象である。
ならば警戒する必要も無い。何より今日は全員疲れていた。
だが、その中で二つだけ、寝息を立てていない者が居た。

「本当に良かったのですか? リュカ? やはり私たちの誰かが代わりに…ルイズとかいう娘の使い魔になった方が良かったのでは?」
「元の世界に戻る方法を探してもらう条件だったから仕方が無いさ。これで少なくとも、手がかりも無しに見知らぬ土地をさ迷い歩かなくてすむ」

リュカと参謀役のピエールだ。
ちなみにルイズは自身の部屋に戻っている。
リュカもルイズの部屋で眠ると言う選択肢が無いでもなかったが、うら若い娘と同じ部屋で寝泊りするのは問題があると断っていた。
そもそもリュカたちの馬車は旅の間の寝所でもある。寝るのも慣れた場所のほうが良いと言うものだ。

「ですが、このような印が刻まれるとは…まるで焼印のようではないですか」
「確かにこれが浮かぶときは呪文で焼かれるような熱さだったさ。だけど…まぁ、あの教団のころに比べたら、大した事無い。
 それに、使い魔の役目をみんな手伝ってくれるんだから」
「……確かにそうですが……」

リュカは、ルイズと契約を結ぶ前にオールド・オスマンと幾つか約定を交わしていた。
一つ目は、元の世界に帰る方法を学園が責任を持って探す事。
二つ目は、少なくともルイズが在学している間は、リュカとその仲間を学園が庇護の下に置くこと。
三つ目は、元の世界へ帰る方法が判り次第、ルイズに再度の使い魔召喚を認める事。
これらの要求が呑まれるのであれば、ルイズの使い魔となってもよい、と。
代償として、ルイズの使い魔になる事以外にリュカの扱う『魔法』の情報を求められたがこれは許容範囲だ。

もっとも使い魔になると言っても、教えられた使い魔の役目の中でリュカに出来るのは、主を守る事、くらいであろう。
同時にそれはリュカでなくとも…リュカの仲間達でも出来る事だ。
結果、その条件を聞いたピエール達は、リュカの代わりに交代でルイズの護衛につくことを申し出たのである。
そしてリュカには…この世界の知識を学んでもらうと同時、元の世界に帰る手段をさがしてほしい、と。

「…リュカには果たさなければならない使命があります。それをこのような異界で時を無為に過ごさなければならないのが、口惜しいのです」

ピエールは、リュカの仲間の中でも最も忠誠心が高い一人だ。それはリュカの母マーサをかつて深く敬愛して居た事から始まっている。
故に、闇の世界へ連れ去られたマーサを救わんとするリュカがこんな偶発的な原因で使命への遠回りを強いられる事に我慢できないのだろう。
だが…そんなピエールの様子に、リュカは首を振る。

「無為、かどうかは、わからない。ピエール、これを見てくれないか?」
「それは…その光は!?」

リュカが取り出した物を見て、ピエールの上下4つの目が丸く見開かれる。
とりだされた『それ』は、馬車の中を清涼な光で淡く照らし出している。

「この世界に来て、気がついたらこうなっていた。原因はわからないけれど、もしかすると、近くにあるのかもしれない」

そういうと、再び淡い光を放つそれをしまい込む。
再び夜の帳が落ちた馬車の中、ピエールは考え込むように言葉を漏らした。

「……もしや、我々は来るべくして来たと言う事でしょうか?」
「それを明日から調べたいと思ってる。…そろそろ寝よう。明日ルイズを起こしにいかないといけないんだ。ピエールもそろそろ寝たほうがいい」

そう言って、眠るプックルの傍で身を横たえるリュカ。ピエールも言葉に従い身を横たえる。
目を閉じるピエールの隣でコドランが、自身の零す甘い息につられるように深い眠りに落ちている。
ピエールもその香りに身を任せていった。

天空の装備の一品が放っている光の意味を思いながら。


新着情報

取得中です。