あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

きょむコン!

   『きょむコン! ~Intercept the Albion forces!~』


 朝靄に包まれた小高い丘に、二人の少女が佇んでいた。

 一人は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 桃色がかったブロンドの髪が腰まで伸び、鳶色の瞳を持っている。
 体形はスレンダーであり、本人の名誉の為に言うなら均整のとれた身体つきである。
 その身に黒いマントをまとい、その下には白のブラウスとグレーのプリーツスカートが見てとれる。

 いつも強気な表情を浮かべている彼女であったが、今は不安を露わにした表情であった。

 もう一人は、パチュリー・ノーレッジ。
 藤色の髪が腰まで伸び、アメジストの様な色の瞳を持っている。
 頭の上には布製のブカブカな帽子の様な物を被り、三日月を模したアクセサリーが付属している。
 体形はルイズよりもスレンダーであり、ある種の儚さを感じさせる。
 その身に前の開いたローブをまとい、その下にはゆったりとしたワンピースが見て取れた。

 いつも眠そうな顔をしているが、早朝の為か更に眠そうな顔であった。

 そして、二人に共通するのは、脇に古めかしい本を抱えている事であった。



 二人の立つ小高い丘は、アルビオンの主要都市の一つであるシティオブサウスゴータ南西百五十リーグに位置する場所である。

 現在はトリステイン・ゲルマニア連合軍と、アルビオンとの戦争中であった。
 連戦連勝を重ねていた連合軍であったが、今はアルビオンの姦計により内部より反乱を起され敗走中であった。
 連合軍側は軍港のあるロサイスにて全軍撤退中であり、アルビオン側は追撃するべく、七万の軍勢で迫っていた。

 そしてそのアルビオンの七万の軍勢の先陣が、朝靄の中より二人の視線の先に見え始めた。
 それに対峙する連合軍側は、ルイズとパチュリーの二人以外は誰もいない。



「パ、パチュリー、き…、来たわ」

 まだ数リーグ離れているとはいえ、七万の軍勢を前にして、ルイズは恐怖と緊張感を露わにしていた。

「あら、ルイズ。貴方はこれを何とかすべく殿(しんがり)を引き受けたのでしょ?
 何を今さら怖気づいているのよ」

 対するパチュリーは無感動とも思える口調であった。

「まさかルイズ、貴方は勢いで引き受けたんじゃないでしょうね?
 それに巻き込まれた『使い魔』の身にもなってほしいわ」

 パチュリーは眉をひそめてルイズを非難する。



 パチュリーは、ルイズが春の使い魔召喚で呼びだした『使い魔』である。
 彼女は『幻想郷』と呼ばれる、ハルケギニアとは違う異世界に住まう『魔法使い』であった。
 そして人間ではなく、『魔法使い』という種族であり、十代半ばの外見ではあるが、百年以上の歳を重ねている。

 召喚された当初は『使い魔』として呼び出された事に憤慨していたが、図書館を自由に使用出来るなどの便宜を条件に、何とかルイズは契約を果たした。

「まあ、所詮人間は数十年の寿命だし、異世界の知識に触れられるしいいか。
 やろうと思えば、帰る方法なんていつでも見つかるだろうし。
 むきゅ~」

 と、パチュリー本人の弁。



「い、勢いで引き受けてないわよ。だだだだ、だってそう命令されただけだし…」
「断ろうとすれば出来たはずよ」
「…あ、いや、それは」
「…やっぱり勢いで引き受けたわね」

 パチュリーは溜め息をつく。

「で? ルイズはどうやってあの軍勢を止めるつもりなのかしら?」
「それは…、ありったけの精神力でエクスプロージョンを…」
「それは無理。今のルイズじゃ数十人を吹っ飛ばして打ち止めよ。
 その程度じゃ僅かな時間しか稼げないわ。連合軍は全滅ね」

パチュリーはルイズの意見をすぐさま却下する。

「じゃ、じゃあ、パチュリーの魔法で…」

 ルイズはかつてパチュリーが、アンリエッタとウェールズの放ったヘクサゴン・スペルとすら拮抗する魔法を使えたのを思い出し言う。

「それも無理。さすがに私でもあの数を正面から迎え撃っても、大した時間は稼げないわ」

 パチュリーは次の意見も却下する。

「じゃあ、どうしろって言うのよッ!!」

 ルイズは立て続けに意見を却下されて苛立つ。
 自分で勝手に引き受けておいての逆ギレだが。

 その様子を見て、パチュリーは嘆息する。

 まったく、素質は十分にあるのに感情の起伏が激しいのが欠点よね。
 魔法を扱う者にとっては、心の有り様こそが大事なのに。

「ふう、心の動くままに行動する欠点はいつか直しなさいよ…」

 パチュリーは眠たげな目でルイズを見つめる。

「ねえルイズ。戦争する上で重要な事って何だと思う?」
「え? あ、う…、強さとか?」
「そうとも言えるけど、抽象的過ぎるわ。
 戦争に勝つには、数こそが重要なのよ。数こそが強さであり、戦争に勝利する為の要素の一つ。
 戦争とは数、と何処かの次男も言っていたわ」

 そう語るパチュリーを見て、ルイズはある疑問を持つ。

「数って言っても、味方は全軍撤退中よ?
 味方は誰もいなくて、ここには二人しかいないじゃないッ!」

 戦争は数と言うなら、七万を相手に二人では敗北の二文字しか無い。

「簡単よ。味方がいなければ、作ればいいじゃない」



「は?」

 パチュリーの言葉を聞き、ルイズは絶句する。

 ミカタヲツクル?
 ナニヲイッテイルノデショウカ? コノムラサキモヤシハ?

「何を絶句しているのかしら?」
「ななななな、何言ってるのよッ! みみみ、味方を作るって、どどどど、どうやってよッ!!」

 ルイズは感情を昂ぶらせてパチュリーに詰め寄る。

「はいはい、落ち着きない。どうどう。
 今からやってみせてあげるから…」

 パチュリーはそう言ってから七万の軍勢に向き直り、左手を斜め前に突き出す。
 左手の甲には使い魔の印たるルーンが刻まれており、それは伝説の使い魔のルーン『ガンダールヴ』であった。

「来なさい、デルフリンガー…。アポート(物質転送)」

 そう呟くと手の先の空間が歪み始め、その一瞬の後に虚空から軽い反りを持った長剣が現れ、地面へと突き刺さった。

「うおッ! なんでい、『使い手』のはずなのに、剣なんて振り回しているのが全然似合わないどころか、想像も出来ないような相棒じゃねぇか」

 自称・伝説の魔剣デルフリンガーは、出てくるなりボヤキ始めた。

「俺なんてよぉ、学院に置き去りにされて、もしかして錆び剣に出戻りかなぁって思って…」
「黙りなさい」

 パチュリーが静かな声で言うと、デルフリンガーはピタリを喋るのと止める。

「力を貸しなさい」
「力を貸せって…。うおッ! おでれーた、何だいあれは…。六、七万はいるんじゃねぇか?
 無理無理ムリムリ絶対に無理。俺に出来るのは身体操作と、魔法を吸うぐらいだ。
 例え『ガンダールヴ』が屈強な奴でもあんなのは無理ッ!」

 デルフリンガーは鍔をカタカタと鳴らして拒否を表明する。

「あれを相手に切った張っただなんて、馬鹿な真似はしないわ。
 貴方の中に日頃から貯め込み続けた魔力を解放しろって言っているのよ」
「貯め込み? おい、ちょっと待て。日頃から俺にバカスカ魔法を撃ち込みまくっているのは、虐待の一種だと思っていたぞ?」
「馬鹿な事言わないで欲しいわ。貴方の特性を知った上でやっていたのよ。
 こういう時の為の外付け魔力貯蔵庫とする為にね」

 パチュリーは唇を軽く釣り上げて嗤う。

「う、嘘だッ! その顔は嘘をついてる顔だ。それに、第一俺にはそんな事を出来る能力なんて無いぞ。
 せいぜい貯め込んだ魔法の力で『使い手』の体を動かすぐらいだッ!」
「んー、まあ、ストレス発散の部分が有ったのは否定しないわ。
 貯蔵庫云々に関しては、ルーンを“いじった”から出来るようになっているわ」

 パチュリーはデルフリンガーの柄に手を添えた。

「うにゃ? う、お、あ…、な、なんでいこれは? ち、力が抜けていくぅぅぅ…」

 デルフリンガーが情けない声を上げる。

「さて、魔力は充分ね」

 パチュリーは魔力が自分に還元されていくのを感じとる。

「何? 一発ドカンとぶっ放すの?」
「違うわ。味方を作るって言ったでしょ?」

 パチュリーはルイズの言を否定すると、手に持った魔導書を体の前に掲げ、手放して中に浮かせる。
 そして、軽く手を振ると魔導書は独りでにページを開く。
 とあるページで止まった時、パチュリーの左右に二つずつ約五メイル間隔で地面に発光する円が描かれる。
 光がおさまると、円の中に六芒星の収まった魔法陣が合計四個出来ていた。

「さて、後は…」

 パチュリーは懐に手をやり、コルク栓で封をされたガラスの試験管の様な物を取り出す。
 その中には、少し癖の付いた金髪が一束入っていた。

「それで、何をするのよ?」
「まあ、見てなさい…。我、土くれに命を……」

 パチュリーは小声でかつ早口でスペルを唱える。そして、唱えていくに従い、試験管の中の金髪が減っていく。

 ルイズは視界の端に、何やら動くものを見つける。視線を向けると魔法陣の中で土が盛り上がり、人型を形成していくのが見て取れた。

「味方を作るって、ゴーレムなの……、って、えええええぇぇぇぇッッ!!!!!」

 その土くれはただ人型になるに止まらず、外見が人そのものを模していく。
 そして、ルイズが驚愕したのは、そこにいたのはギーシュ。
 『青銅』の二つ名を持つ、ギーシュ・ド・グラモンであったからだ。

「ななななななな、何でギーシュが…、ひッ! ギーシュが…、た、たくさん…、いる」

 ルイズは意識を手放しそうになった。そこにはギーシュモドキのゴーレムが次々を現われてきたからであった。
 そして、そこには百体のギーシュ・ゴーレムが現れていた。

「ね、ねぇ…、なんなのよ、これ…」
「こっちの世界で何度かゴーレムを見ているとき、自分でも操りたくなって、ゴーレム製造の魔法を独自のアレンジをしてみたのよ。
 髪の毛を埋め込むとその持ち主の姿と能力をコピーした自立型ゴーレムに成るようにね」

 パチュリーは何かを操作するように指先を動かしながら答える。

「そ、そうなの…。あ、でも、なんでギーシュなの?
 ヘタレなギーシュなんかより、もっと強い人の方がよかったんじゃない?」

 ルイズはドット・クラスのメイジのギーシュがでは、百人いても役に立たないだろうと思案する。

「理由は二つ有るわ。
 一つは、ギーシュの基本性能が低いから、ゴーレムの製造の為のコストが少なく済む事。つまり数を揃えるのに丁度よかったという事。
 もう一つは、ギーシュの持つ能力が、今の状況に求められている事に合致するという事よ…。
 さあ、ギーシュ。敵が来たわッ! 迎え撃ちなさいッ!!」

 パチュリーは軽く説明したのち、滅多に出す事の無い大声で号令を放つ。

「ギーシュ・ド・グラモン 、参るッ!」×百人

 百人のギーシュ・ゴーレムが一斉に唱和し、薔薇の造花の杖を振るう。
 そしてそれぞれが、青銅の人の等身大ゴーレムのワルキューレを、七体ずつ出現させる。
 ルイズとパチュリーの前に合計七百体のワルキューレが現れた。

「言ったでしょ? 戦争とは数だと…。
 進路、敵陣中央。楔形陣形で突撃」

 そう命令が下されると、ギーシュ・ゴーレム達はワルキューレの背に乗り、七万の軍勢へと駆けだした。



「アンリエッタ女王陛下が為にぃぃぃぃッ!!」

 そう叫びながら突っ込んで来る集団に最初に接触したのは、前衛の捜索騎兵隊であった。
 すぐさま迎撃態勢を取るが、七百の青銅のワルキューレに一瞬にして飲み込まれ、すり潰されていく。
 その光景をフクロウの使い魔の視界にて見ていた銃兵隊を指揮する士官は、すぐさま部下に命じて弾を込めさせる。

「第一列構えッ!! まだ撃つなよ。もう少し引きつけてからだ……。
 よし、てぇッ!!(撃て)」

 横列に並んだ銃兵隊の一列目が、一斉射撃にてワルキューレ群に弾を放つ。
 統制された射撃は、敵前面に居たワルキューレ数十体を破壊し、それを操っていたらしいメイジも何名かを射殺する。

「第二列前へ…。ん? な、なにぃッ!!」

 銃兵隊の士官は驚愕した。敵集団は進撃速度を、いささかも落とす事無く突っ込んで来る。
 それは味方の死も、自らの死も厭わない保身無き突撃であった。

「恐れるなッ! 第二れ…」

 士官は貴族の矜持ににて恐怖を押し殺し、指揮を続けようとする。しかし、部下たちは迫る“それ”に恐慌を起こし始めていた。

 そして、その銃兵隊をもすり潰し、ギーシュ・ゴーレムと青銅のワルキューレは、ただひたすらに進撃していく。



 パチュリーの両脇にある魔法陣は、倒された分だけギーシュ・ゴーレムを再生産していき、現れたギーシュ・ゴーレムは再び突撃して行く。
 アルビオン軍は倒しても倒しても、次から次へと現れる青銅のワルキューレと、全てが同じ顔をしたメイジたちで混乱状態となっており、進軍は停滞していた。

「こ、これなら何とかなるかしら?」
「無理ね。今は一時的な混乱で対処出来てないだけで、統制が回復すれば、七百程度じゃどうにもならないわ」

 パチュリーはすぐさま否定する。

「じゃ、じゃあどうするのよ…」
「近接型で足止めして、遠距離攻撃を行う弾幕型を投入するのよ」

 そう言うと、パチュリーは新たな試験管を取り出す。
 それには、緑色の髪の毛が封入されていた。



「ええい、どうなっているッ!!」

 七万の軍勢を指揮する歴戦の将軍であるホーキンスは、状況を把握するべく部下を走らせていた。

 保身無き突撃。
 しかも、何故か全員同じ顔だというメイジの集団。
 前衛は混乱の極みに陥っており、進軍はほぼ完全に止まってしまった。

 敵連合軍のこの攻撃は、余りにも不可解過ぎた。
 この突撃の目的は時間稼ぎであるのは明白だ。しかし、あまりにも大雑把過ぎる。
 ゴーレムは攻城戦に使われるのが常だ。小型ゴーレムを大量にかつ集中運用するのは、確かに野戦でもある程度は有効であろう。
 しかしこの、まるでメイジを使い捨てにするがごときの挺身攻撃は何なのであろうか?
 平民の兵士なら使い捨てにするのはまだ理解出来る。だがメイジ、貴族を使い捨てにするなんて普通は出来ない。

 実はそのメイジもゴーレムであるという事を知らぬが故に、ホーキンスも少なからず混乱していた。
 そして報告を聞きながら思案し、統制を回復するべく指示を出していると、連続した轟音と怒声と悲鳴が周囲で響き始めた。

 ホーキンスが何事かと視線を巡らせると、恐ろしいものを見た。
 突撃を受けたのと同じ方向から、一メイル程の岩塊が飛来して来てきた。



 全長三十メイルのゴーレムが二十体も並ぶのは壮観であった。

「まさか、『土くれのフーケ』とはね…」

 それぞれの巨大ゴーレムの脇には、トリステイン王国をはじめ各国にて怪盗として恐れられていた、『土くれのフーケ』ことマチルダ・オブ・サウスゴータが立っていた。
 無論、パチュリーが作り出したマチルダ・ゴーレムである。

 巨大ゴーレムたちは巨腕を振るい、指先を立てて地面へと付き入れる。そして土の塊を掴み上げると、マチルダ・ゴーレムは錬金の魔法にて岩塊へと変えた。
 そして、巨大ゴーレムは次々と岩塊をアルビオン軍へと投擲していく。

 その攻撃によりアルビオン軍は前衛のみならず、後衛の部隊も混乱に陥っていた。
 時折、魔法にて岩塊を迎撃しようとする動きはあるが、一メイルの岩塊の重量はそれをものともせず着弾し、アルビオンの軍勢を消耗させていく。
 一部の部隊はギーシュ・ゴーレムたちを突破し突撃してくるが、再生産されるギーシュ・ゴーレムの波状攻撃にてすり潰されていくのであった。

「あ、待ってパチュリー、白旗が揚がったわ…。降伏するみたい」

 巨大ゴーレムの連続岩塊投擲によりルイズたちの周囲の地形が変わり始めた時であった。
 アルビオン軍後衛中央にて白い布が巻き付けられたパイク(長槍の一種)が振られているのが見て取れた。

「あら、残念…。そろそろ飛行型を投入しよかと思っていたのにね」

 パチュリーの手には、青い鱗の様な物が封入された試験管が握られていた。

「む、無理…、もう、これ…、以上は死んで、まう」

 デルフリンガーの息も絶え絶えな言葉は、見事に無視されていたのであった。




 この後、引き返してきたトリステイン・ゲルマニア連合軍は、ガリア王国の大艦隊による攻撃を受ける事になる。
 しかし、パチュリーの作り出したルイズ・ゴーレムによるエクスプロージョン乱れ撃ちにより、ガリア艦隊は全艦隊が落とされる事によって事無きを得るが、それは割愛。



「ねえ、パチュリー。どうして私のゴーレムだけ消さないの?」
「あら、いいじゃない。面白いし…。特に私が」
「そうね。ところで、一体ぐらい、ちびルイズを持っていっていいかしら? アカデミーで調べてみたいし」
「あら、なら私も一人お持ち帰り~♪ いいでしょ?」
「エレオノール姉様も、ちいねえさまもダメーーーーッ!!」

 ルイズは微妙に受難な日々であったとさ。

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