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斬魔の使い魔09


 ギーシュとの戦いから色々と変わったことがあった。

 まず、コック長のマルトーから気に入られた。

「お前さんがメイジだろうとエルフだろうと関係ない。シエスタを助けてくれて、あの小生意気な貴族を倒してくれた。それだけで十分だ!」

 背中をバンバンと叩かれ褒められるのは悪い気がしない。
 特に九郎にとって僥倖だったのは、食事を食べ放題になったということだ。
 貴族用ではなく平民用の食事だが、九郎にとってはそれで十分。
 塩だけで一ヶ月以上過ごし、あまつさえ猫を……ゲフンゲフン。
 そんな生活をしていたこともある九郎にとって、食べ放題というものほど素晴らしい言葉はない。
 感涙し、土下座までしかかった九郎の姿にマルトーの方がうろたえてしまったほどだ。



 そして、他の生徒達から一目置かれるようになった。

 といってもその内情は様々。
 羨望の目で見る者もいれば、露骨に敵意を表す者、気にしないふりをする者と色々。

 特に九郎が困るのは決闘を申し込んでくる生徒だった。

 正直、マギウス・スタイルにどうやってなったのか未だに理解できていない九郎にとって、かなりピンチである。

 この場合、打てる手はただ一つ。

「あ! あれは何だ!?」
「何?」

 九郎が指差した先に顔を向ける生徒。
 古典的な手法だが、効果は十分。
 三十六計逃げるに如かず。
 生徒が気付いたときは、九郎の姿はこの場から消えていた。



 一連の様子を影から見つめていたオールド・オスマン。
 長大な顎鬚を指で撫でながら、その眼光は鋭く九郎を、正確にはその両手の甲を射抜いている。

「ふうむ……ミスタ・コルベールの報告の通りじゃの」

 本人は気付いていないのか気にしていないのか分からないが、召喚されたときに出ていた紋章が消えていた。
 代わりに左手の甲にあるのは、文献にもあったガンダールブのルーン。
 九郎が倒れていたときに調べたコルベールが血相を変えて報告に来たのが今日の朝早く。
 自分の目で確かめようと来て今に至る。

「ふうむ、分からん。どうなっておるのじゃ? そもそも本当にあやつがハドウの言う人間なのだとしたら、書を持っていないとおかしいしの」

 額にしわを寄せて考え込むオスマン。
 その肩では使い魔の鼠、モートソグニルがカリカリとナッツをかじっている。
 遠くから聞こえる学園の喧騒と、カリカリというかじり音が響く。

「ところで何の用かの?」

 突然、飄々とした声で呼びかけるオスマン。

 目の前には誰も居ない。そして、背後にも誰もいない――ように見える。
 しかし――


 ――それはそこにいた。

 まだ形を持たず、ただたゆたうだけの存在だが、確かにそこにいた。
 そしてそれは感じとった。
 目の前の老人から湧き出る極上の魔力を。
 それにとっては何よりのご馳走を。
 まだ形を持たないはずのそれは、”鎌首をもたげ”老人に襲い掛かった。


 それの存在を感知したオスマンは、怖がるモートソグニルをなだめるように優しく撫でると、杖を構えた。

「ひょっ」

 ひょうきんな声を上げて杖を振るう。
 不可視のそれは、杖から放たれた不可視の力に弾かれた。
 慌てて距離をとる何か。
 しかし、間髪いれず機関銃のように放たれた力に、その何かは弾かれ弾かれ、霧散した。

「……む、逃げた……か?」

 消滅したのではない。
 実体化する力を失って、再び元のたゆたうだけの存在へと戻ったのだ。

「面妖な」

 オスマンは杖を一振りすると、乱れたローブを正した。
 モートソグニルは慌ててローブの中へと避難した。
 オスマンは周囲を警戒し、もう怪しい気配が存在しないことを確認するとマントを翻した。
 学院長室へ向けて歩を進める。

 その表情は、彼の秘書が見たら医者を呼ばれること請け合いなほどに精悍なものだった。



 学院で何かが起きている。

 全てはあのヴァリエールの使い魔が現れてからだ。
 もう少し慎重に調べねばならんな。
 オスマンは決意も新たに持っている杖を強く握った。


 怪盗フーケによって宝物庫が襲撃されたと報告が来たのは、その夜だった。


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