あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-08


「くっ・・・・・・一体なにしてるのよ」
舞台袖の待機場所、ルイズの順番が着実に近づくものの一向に姿を現さないアーカードに歯噛みした。
迂闊だった、首に縄つけてでも引っ張ってくるんだったと。

 一緒に暮らしてみてわかってきたことがある。基本的にアーカードは昼間あまり出歩かない。
日光が大嫌いゆえに燦燦と照りつける真昼は寝る時間帯で、一般人とは逆の生活スタイルなのだ。
主な活動時間帯は黄昏時から黎明時。つまり夕暮れから夜明けとついでに朝方のほんの少しといったところだ。

 今の時間帯は真昼日中。
アーカードにとっては寝ていたい時間帯。このまま待っていても来るとは思えない。
この前街に出かけた時は、あんだけ啖呵切るように主に従うとか言ってたくせに。
己にとって些事だと判断すると、ナチュラルに無視するようである。
それとも単に意志力が弱くなり、昼に行動するより睡眠欲を優先するのか。

 ウダウダと考えていても仕方が無い。そんなことしている間にも順番は刻一刻と近づいてくる。
ルイズは決心し、アーカードを探す為に走り出した。




 遡ること一日。ルイズは焦っていた。
「アーカード、アンタなんかできないの!?」

 棺を椅子代わりにして腰掛け、アーカードは足を組んで本を読んでいた。
どこから調達してきたのか、下フレームの丸っこい銀縁メガネをかけている。
「ちょっと、聞いてるの!?」

 パタンッと読んでいた本を閉じ、やれやれと嘆息をつきながらアーカードはルイズを見つめ口を開いた。

「聞いているとも。要するに、使い魔品評会とやらがあるのをすっかり忘れていた我が主。
 件の会を明日に控え、準備をしていなかったことを嘆くこと後の祭り。
 しかも姫殿下が観に来るというので、生半可なモノを見せるわけにもいかず右往左往。
 慌てた主は自分のミスを棚上げし、とりあえず使い魔の得意なことをやらせて凌ごうと考えたと」

「説明的な台詞をありがとうアーカード、理解のある使い魔で助かるわ」
頬を引き攣らせながらもルイズは言葉を崩さなかった。
正直なところ皮肉られても仕方ない。
アーカードは主人の焦燥などどこ吹く風といったように、またすぐに本を読み始める。

「さっきからなんの本読んでるの?」
アーカードは読みながら本を持った手を上げてタイトルを見せた。

<良い子の為の三日で覚える言語教室>

「・・・・・・」
「文字を読めないのはなにかと不便でな、タバサに良さそうなものを見繕ってもらった」
「まぁ他人様に迷惑をかけるようなことじゃないなら、なにをやろうとも文句は言わないけど・・・・・・」
本の内容もわかったところで、本題へと戻してもう一度言う為にルイズはさらに語気を強める。

「とにかく今は品評会の憂いをなくす事が最重要事項なのよ、何か得意なことはないの!?」


 アーカードは少しの間考えた後、座ったまま本を読みつつも、器用に棺の蓋を開けて中から"何か"を取り出す。
"放り投げられたそれ"はボフッっとルイズの顔に命中し、反射的にルイズはそれを手に取る。
"マフラー"のようだった。赤一色でシンプルだが、これ以上ないくらい綺麗に整っている。
どこかで売られていてもおかしくない完成度だった。

「これ・・・・・・アーカードが編んだの?」
「んむ、シエスタからちょっと材料を貰ってな。まっ大抵の物は編めるぞ」
ルイズは軽い嫉妬心を抱く、自分が編んだ物とはえらい違いであった。
だけど・・・・・・少しばかり癪だけど、コツとかを教えてもらうのも悪くないなと思う。

「でも品評会でやるには地味ね、他にはなにかないの?」
「後は・・・・・・料理とか」
「りょうりぃ~?」
ルイズは怪訝な声を上げた、吸血鬼の癖に料理を作るのかと。
まさか生きた人間を調理するのかなどと考え、身震いをする。

「時折厨房に行くんだが、いつもいつも食わせてもらうばかりじゃあれでな。
 ありあわせのもので作ってみたら、これが意外と評判が良かった。
 作ったのは久方振りだったのだがな。尤も、マルトーコック長ほどの腕ではないがの」

 裁縫はまだ人間であったヴラドの時代、料理の腕を特に磨いたのはドラキュラ伯爵の時代。
いずれも手慰みとして得ただけの、自分でもあまり似合わないと思っている非常に家庭的な特技。

「でも・・・・・・品評会で料理なんて作れないわよ」
そもそも裁縫も料理も平民臭くてたまらないというのが、ルイズの本音であった。

「ふむぅ・・・・・・」
アーカードはとりあえず本を閉じて熟考を始める。
裁縫及び調理。NON,先に言ったように品評会向きではない。
武闘でも見せる。NON,手加減は得意ではないし、化け物にせよガンダールヴにせよバレたり勘繰られる可能性があるのは面倒だ。
ルイズと夫婦漫才。NON,ネタを考えあわせる時間もないし、ルイズが人前でそんなことをするとは思えない。

 結論は、時間も手間も掛からず過剰な力を見せることなく切り抜けられる、そんな方法(ルール)だ。
剣技。何か物をただ真っ二つに両断する程度なら、大した手加減をする必要もないだろう。
だが、面白味がない。ギーシュのワルキューレを破壊する時にも見せている。
となれば・・・・・・射撃。
トミーガンはおよそ精密射撃には向かない、であればカスール改造銃が良いところか。
さらにそこに面白味を見出す為には――――――。


「・・・・・・そうさの、とりあえずやることは決まった」
「ホント!?」
「んむ、ちなみ主にも協力してもらうぞ」
ルイズは訝しむ、なにかロクなことにならないような気がした。
「・・・・・・何をする気?」
「秘密だ」

「秘密って・・・・・・ぶっつけ本番なんてダメに決ま――――――」
その時だった、コンコンッとノックの音が聞こえる。
時は既に夜を回っているというのに、一体どこの礼儀知らずが訪ねてきたのだろうか。
そんなことを思いながらも、追い返すのも難なので扉を開く。
間髪入れずに何者かが入ってきて、思わずルイズは一歩飛び退いた。
フードを目深に被っていて顔が見えない、なにか焦っているような不自然な行動と共にルイズは猜疑心を抱く。

「お久し振りね、ルイズ・フランソワーズ」
突然の訪問者はフードから顔を出し、ルイズへと抱きつく。
「え・・・・・・?」
ルイズは突然に抱きつかれて少し呆けているようで、アーカードは視線だけを向けていた。
あどけなさと妖艶さ、そして高貴さまでもが同居する非常に端正な顔立ちが見える。


「姫・・・・・・殿下?」
「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ」
その訪問者が誰かと気付いたルイズは、すぐに体を離すと膝をついた。
「姫殿下、いけません。このような下賎な場所にお一人でおいでになられるなんて」

 その言葉に姫殿下と呼ばれた者は、やや悲しそうな面持ちを見せる。
「堅苦しい行儀はやめてちょうだいルイズ、私達はお友達じゃないの」
「お友達・・・・・・?」
アーカードは思わず口を開き、ルイズは答えた。
「姫様がご幼少のみぎり、お遊び相手を勤めさせていただいたのよ」
「なるほど、幼馴染か」

(明日の品評会に、無理をしてでもやって来ようとした噂の姫殿下か・・・・・・)
王位に最も近い人物。故に心労もあろう。
アーカードは自分も同じような立場だった大昔を思い出す。
そしてスクと立ち上がり、姫殿下の前に進み出てルイズのすぐ横で跪いた。
「初めまして、姫殿下。我が主ルイズの使い魔であるアーカードと申します。以後お見知りおきを」
「わたくしはアンリエッタです。楽にしてください使い魔さん」

了解しました、殿下(Yes, Your Highness.)
アンリエッタはニコリと、一瞬笑うもののすぐに不思議な顔を浮かべた。

「えーと、使い魔・・・・・・さん?人にしか見えないのですが・・・・・・」
「・・・・・・人、です。姫様、この者が私の使い魔のアーカードです」
ばつが悪そうな顔をし、ルイズは答える。
恐らくは大切な友達に嘘をついているという後ろめたさからだろう。

「そうだったの。ルイズ、あなたは昔から変わってたものね。明日の品評会はあなたを含めて楽しみにしてるわ」
「姫様・・・・・・ありがとうございます」
「アーカードさんも、頑張ってくださいね」
「んむ」
ルイズとアンリエッタはそのまま様々な共通の昔話に花を咲かせた。


 アンリエッタがルイズの部屋を後にする時、気付けばアーカードはいなかった。
夢中になっていた所為で気付かなかったのか、気を利かせて音すら立てずにどこかへ行ったのか。
結局アーカードは帰って来ず、何をやるのか聞けずじまいのままルイズは床についた。

 翌朝ルイズが目覚めた時、アーカードは既に棺桶で寝ていたようであった。
あまり開けたくなかったが、このまま寝ていられても困るのでしょうがなく起こす。
眠りが浅かったのか呆気なく起きたものの、「定刻までには行く」と言いまた寝始める。
一応念を押しておいたものの、そこで妥協してしまったのが間違いだったと、気付くのは数時間後であった。




 快晴、雲一つない澄み切った青空のもと、使い魔品評会は開催されていた。
周囲の反対を押し切り、アンリエッタ姫殿下がわざわざ足を運んだ今回の品評会。
曇天や雨天でなかったのは、アンリエッタにとってとても喜ばしいことであった。
しかしアーカードはうだっていた。夜族である吸血鬼にとって日光は天敵である。
尤もアーカードにとって陽の光は大嫌いなだけで、言ってみれば紫外線はお肌の大敵という程度のものに過ぎない。
だがそれでも億劫なことには相違なかった。

 結果とりあえず起きて向かおうと思ったものの、日光がウザかったので日陰で休んでいたのだった。
(とはいえ、いつまでも休んでいるわけにもいかんか・・・・・・)
依然として憂鬱だったが、アーカードは重い腰を上げた。
ルイズとアンリエッタは旧知の仲。主にも多大な尊厳心があるわけで、無闇に恥をかかせるわけにもいくまい。
いざ歩き出そうとしたところで、自分の方へ走ってくる者の姿が見える。


 桃色がかったブロンドが日の光で輝いている。見紛うはずもなし、主人ルイズであった。
ルイズはアーカードの前で立ち止まり、ゼーハーと息をしていた。
多少呼吸が整ってきたところで恨みがましく口を開いた。
「やっと見つけたわ・・・・・・全く、部屋にいないから無駄に探しちゃったじゃないの!」
「丁度今行こうと思っていたところだ」
その返答にルイズは半眼で呟く。
「遅過ぎるわよ」

 アーカードのマイペースっぷりに既に慣れつつあるルイズは、すぐにアーカードの手を引いて歩き出す。
すぐにそれは駆け足へと変わり、二人は目的地へと向かった。
まだ間に合う時間帯ではあるが打ち合わせすらしてないという憂いが残る以上、急ぐのも当然と言えた。
「ねぇアーカード、結局何をするわけ?」

 昨夜はアンリエッタが訪ねてきたおかげで言及せずじまい、朝も結局聞けずに終わってしまった。
だが直前にまで迫って聞かないわけにもいかない。
「んむ、それは――――――」
と、アーカードが口を開きかけた瞬間だった。内臓まで響くような重く鈍い音が響いた。
品評会会場とは別の方向、攻城兵器が砦を破壊するようなその音にルイズとアーカードは反射的に振り向く。

 目に映ったのはいつの間にか出現していた壁、天を突かんばかり巨大な塊。
しかし・・・・・・よくよく観察すればそれは壁ではなかった。
顔のようなもの、腕のようなもの、足のようなものがそれぞれある。
巨躯ながらも人型を保っている"ソレ"は、本塔に拳を打ち付けているようであった。

「ゴーレム!?」
ルイズは叫んだ。
それを聞き、あれもゴーレムの一種なのかなどとアーカードは静観していた。
ギーシュが作ったワルキューレとは明らかに規格が違う。比較にならないほど巨大。
数こそ一体しかないようであったが、その大きさはギーシュのゴーレムが百体と集まったところで象と鼠の闘いだろう。
アーカードは沸々と湧き上がってくる感情に身震いした。つくづくこの世は生き飽きないものだと。


「ちょっとッ!!!」
ルイズはゴーレムに向かい、ある程度近付いて呼び掛ける。
ゴーレムが存在するなら術者も必ず近くにいる筈と考えてのことだ。

 どう見ても異常な状況。見過ごし放って置くことなど出来ない。
もし何か被害があれば、それはアンリエッタ姫殿下の責任問題にもなりかねない。
トリステインの貴族として、アンリエッタを慕う者として、何よりも大切な友人として、ルイズは叫んだ。
ゴーレムの頭頂部に小さな人影が見える、フードを被っていて顔は見えないものの十中八九術者で間違いないようであった。

 一方邪魔者であると認識した術者側の対応は早かった。
まず見るからにメイジであり、自分に噛み付いてきた少女の方を攻撃目標に定める。
ゴーレムの巨体はただの一歩で間合いを詰め、それと同時に容赦のない右拳の一撃をルイズへと見舞う。

 その行動を既に可能性の一つとして予見していたアーカードは、ボケッっとしているルイズの元へと走った。
爆発的な脚力で以て瞬時にルイズの元へ、そのまま主を抱えて距離を取った。
その状況をゴーレムの頭から鳥瞰していた術者は、すぐに状況に応じた命令をゴーレムに下す。

 ゴーレムは空振った右拳をそのまま横に薙ぎ、ルイズとアーカードを掴みにかかった。
アーカードは抱えていたルイズを放り投げ、その代わりに自身が捕われる。
「・・・・・・ッッ!?アーカード!!」
主を助けた使い魔に対して、ルイズは身を案じ声を上げる。
使い魔が主を助けるのは当然。だが自分が迂闊に近付いた上に、咄嗟のことに反応できなかったのが原因だ。
助けられっ放しでいるわけにはいかないし、アーカードも迅速に助ける必要性もある。
その為にルイズは成功を願いながら呪文を唱えた。
「ファイアーボール!」
炎弾ではなく、一拍置いて爆発が起きる。案の定失敗であった。
いつもより大きい規模のそれはゴーレムに命中することはなく、本塔の外壁を破壊するだけであった。


「死ぬところだったぞ、我が主」
アーカードはルイズに聞こえる声で、のんびりと呟く。
ゴーレムに捕まっているというのに、なお超然としている。
「くっ・・・・・・、いいこと!!今のは威嚇なんだから!次は本気だからね!!」

 だがその言葉は術者の耳には入っていなかった、その視線は破壊された外壁の方へと向けられていた。
次の瞬間アーカードは浮遊感を味わっていた。ゴーレムはアーカードを中空へと投げ飛ばしたのである。
「アーカードッ!!!」
ルイズは声の限り叫んだ。どう考えてもタダで済む高さではない。
いくら吸血鬼のアーカードと言えど危ういかも知れない。だが自分にはどうすることも出来ない。

 一方でゴーレムは本塔へと近付き、破壊された外壁から術者は中へと入っていく。


 アーカードは特に焦った様子もなく、浮揚しようとしたその時だった。突如として浮遊感がなくなる。
「タバサ」
名前を呼ばれ振り向きコクと頷くタバサ。そこはタバサの使い魔である竜、シルフィードの上だった。
その様子を地上から見ていたルイズは安堵する。
ゴーレムの方へと注視すると、術者が本塔から出てくるのが見えた。なにか箱のようなものを抱えている。
そしてそのままゴーレムは、他に見向きもせぬまま学院の外へと出て行った。




 時は既に夕暮れ。突然の大騒動の所為で、品評会は途中で中止になった。
アンリエッタ姫殿下はすぐに王宮へと向かい、ルイズとアーカードは休んでいた。
賊の名は『土くれ』のフーケ、盗まれた物は"破壊の杖"ということらしい。

「そう落ち込むな、主の失敗が直接的な原因ではない」
「違うわよ、それもあるけど・・・・・・。昨夜来た時から姫様元気なかったから・・・・・・きっと宮廷内で苦労してるんだわ」
「ふむ」
ルイズは俯き自分の不甲斐なさに嘆く。
アンリエッタの心の支えにはなれても、直接手助けできない自分に。
あそこで魔法を失敗せず、ゴーレムにきちんと当ててればもしかしたら・・・・・・。
ぐるぐると自己嫌悪が頭のなかで交錯する。

「それに、今回の一件でさらに風当たりが強くなるわ・・・・・・」
「まっ、なるようにしかならんだろう」
「そりゃ・・・・・・私が心配しても詮無い事だけど」

 ルイズは大きく深呼吸をし、伸びをした。
「・・・・・・そういえば、品評会ではアンタなにするつもりだったわけ?私に協力とか言ってたけど」
アーカードは思い出したかのように喋り始める。
「んむ。主の腕、肩、頭にそれぞれ大中小の果物でも置いてだな」
ルイズは押し黙り聞いていた。

「順番に銃で撃ち抜いていく。ただ単に射的なんぞしてもつまらんからの」
「・・・・・・」
品評会が中止になったことに、少しだけ感謝するルイズであった。



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