あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

プレデター・ハルケギニア-11


アルビオン王国の王城、ハヴィランド宮殿のエントランスを歩く人影があった。

先頭の人物は長身に青い軍服、金色の短髪、面長な端正な顔に青い瞳。
そしてその立ち居振る舞いや雰囲気は高貴さを感じさせる。

「しかし、驚きました。まさかあの空賊が王子たちが扮するアルビオン軍だったとは」
「はは、情け無い限りさ。ああでもしないともう何も手に入らないんだ、子爵」

ワルドの言葉に先頭の人物は振り返らず答えた。ワルドの横にはどこか不安そうな面持ちのルイズが
寄り添うように歩いている。あの時、ルイズたちの貨物船を襲った空賊たちは何と、この金髪の若者、
つまりは皇太子ウェールズが率いる王軍だったのだ。

あの後、王軍への大使であると主張したルイズ達は空賊たちに拘束された。
そして空賊の頭に呼び出され詳しい事情を話すと頭の変装を脱ぎ捨てウェールズが現れたというわけだ。

「お帰りなさいませ、殿下!」

一行の前方から白髪の逞しい体躯の男が走るようにやってきた。

「パリー!喜べ、硫黄が大量に手に入ったぞ!」
「おお、それは素晴らしい!明日の戦で貴族派のやつらに一泡吹かせられますな!」

パリーと呼ばれた男とウェールズが抱き合って喜ぶ。

「明日の……戦?」

ルイズが呟くように言った。

「ああ、明日、貴族派はこの城に総攻撃を掛けると言ってきている」

「勝ち目は?」

ワルドがウェールズに問う。

「君ならわかるだろう、子爵」

ウェールズが苦笑いを浮かべる。王軍の戦力はわずかに300程、貴族派はその百倍を超える戦力を有している。

勝ち目は――無い。

「なに、最後の最後、派手に散ってやるさ。アルビオン王家の底力をやつらに見せ付けてやる」

ウェールズがどこか、遠くを見るような視線を浮かべながら言う。



ウェールズ達の会話を聞きながら、ルイズは戦慄していた。
ワルドと自分は大使としての用件を終えれば速やかに国に帰る。
しかしウェールズやパリーという重臣、そして残りの300余りの王軍は
明日の戦で間違いなく死ぬのだ。降伏もせずに百倍以上の戦力とぶつかればどうなるかは
戦に疎いルイズでも分かる。

それなのに、何故こんなにも笑っていられるのか。ウェールズの笑顔もパリーの笑顔も
眩しいほど明るい。

―何故?何故そんなにも明るく笑い合えるの?―

ルイズの脳裏はひたすら、何故という感情に埋め尽くされた。


「後武運を」

ワルドが小さく頭を下げて言った。

「ありがとう、子爵……さて、早速だが大使としての用件を聞かせてくれないか。
聞いての通り、もう時間が無いんだ」

ウェールズが笑いながら言う。ワルドが傍らのルイズを促すように見つめた。

「あ……は、はいウェールズ殿下!」

半ば呆けたような状態になっていたルイズがハッとした様子で答えた。

「ここでは何だ。僕の部屋へ行こう」



案内された部屋を見てルイズは驚いた。
ウェールズは先ほど確かに自分の部屋、そう言った。
しかし、目の前に広がる光景は一国の皇太子の部屋とはとても思えぬ物なのだ。

牢獄のごとくむき出しの岩壁、室内に置いてある物と言えば平民が使うような質素な
机、イス、ベッドぐらいのものだ。広さで言えば学院のルイズの部屋の半分も無いだろう。

ある意味、今の王軍の状態を象徴するような部屋だった。

「そんな顔をしないでくれ」

ウェールズが白い歯を見せながら苦笑いをして見せる。

「す、すいません!殿下」
「もうこんな部屋しか僕には残されていないんだ。まぁ、住めば都だよ」

相変わらずウェールズは笑っている。ルイズはそれを直視できずに俯いた。

「これが姫様からの密書です」

ルイズが白い便箋をウェールズに手渡す。
ウェールズは短く謝礼を述べるとその封を開け手紙を読み始めた。

やがて全ての文面を読み終えるとウェールズは机の引き出しから一つの便箋を取り出した。
その便箋に小さくキスをするとそれをルイズへと手渡す。

「彼女が探している物はその手紙だよ。それさえ手元にあればゲルマニア皇帝との婚姻
も何も心配いらない」

「あのウェールズ殿下……」

沈痛な面持ちでルイズが言う。

「なんだい?ミス・ヴァリエール」

「亡命なさいませ!トリステインに亡命なさいませ!きっと姫様からの手紙にもそう!」

叫ぶようなルイズの言葉にウェールズは横に首を振る。

「そんなことは一言も書かれていないよ」

「そんな、嘘です!失礼ながら先ほどのあなたの手紙を読む眼差しとキスで私は全てを理解してしまいました!
私は幼少のころより姫様を存じております!姫様ならきっと……」

不意にウェールズがルイズの肩に手を置いた。

「君は大使に向いていないな」

ウェールズが再び苦笑いを浮かべる。

「明日、僕等は確実に負けるだろう。ただこれは単なるアルビオン王国の内戦じゃない」

ルイズの肩に置かれた手に力がこもる。

「やつら貴族派は単にアルビオンの主権を手に入れたい訳じゃない。
やつらは我等を討ち果たした後は下界の国々の王権も滅ぼす気だ。
新しい世界を造ろうとしているんだよ」

ウェールズの瞳が真っ直ぐにルイズを見つめる。

「やつらに見せ付けてやるのさ。我々古くからの王族たちは安々とやられはしない、と。
アンリエッタもきっと分かってる。だから君も、分かってくれ……」

そう言い終えるとウェールズの手が肩から離れた。

「殿下……」

ルイズはどこか納得できない表情を浮かべていたがそれ以上何も言わなかった。
ウェールズが掴んだ肩が、熱い。



この時、部屋の窓のあたりから獣が喉を鳴らすような音がしたがルイズもウェールズも気づくことは無かった。



その夜、ハヴィランド宮殿の大広間では盛大な大宴会が開かれていた。
テーブルには所狭しと豪華な料理が並び、いたるところで男達がグラスをぶつけ合い意味もなく乾杯を繰り返してる。

王軍の状況を考えれば正しく、最後の晩餐であった。しかし暗い顔をしている者は誰一人としていない。
みな笑っている。眩しいほどに。

そんな状況に遂にルイズは耐え切れなくなり走るように会場を去った。
用意された部屋のベッドに飛び込むとうつ伏せになりシーツを強く掴んだ。

「おかしいわ、あの人達。明日にはみんな死んじゃうのに……
どうして?どうして笑っていられるの?」

うつ伏せになりながら呟いていると、やがて涙が流れてきた。

「ルイズ」

すすり泣いていると不意にドアのほうから声がかかった。
ドアの前に立つ人物は――ワルドだ。

「ワルド……」

涙を拭きながらルイズがワルドを見る。ワルドは静かにベッドへと歩み寄り腰掛けると
ルイズの頭を優しく抱き寄せた。

「辛かったね君には。でもねルイズ、僕には何となくわかるよ。彼等の気持ちは」

ワルドの逞しい手がルイズの頭を優しく撫でる。
ルイズはただ、ワルドの胸ですすり泣くだけだった。

「彼等は命を掛けて王族としての誇りを守ろうとしている。
命をかけて何かを守る覚悟があるなら、もう何も怖い物は無いんだ。
それが死であってもね」



「そしてそれは僕も同じさ」

ワルドの言葉にルイズが不思議そうにワルドの顔を見上げる。

「君を守りたい。命を、いや生涯を掛けてね」

ワルドが優しくルイズを見つめる。

「答えを聞かせてもらえないか。僕のかわいいルイズ……」

ワルドの優しい言葉にルイズの目から涙がさらに流れ落ちる。

「ワルド、あなたの求婚を……お受けします」


その言葉とともにワルドとルイズは強く抱き合った。


翌朝、ワルドとルイズは朝日の中、ある場所に向かって歩いていた。
城内に建てられている礼拝堂だ。二人はそこで簡単な結婚式を挙げるのだ。

不意にワルドがルイズの小さな手を握る。ルイズは一瞬ハッとした表情でワルドを見上げたが
すぐに顔を真っ赤にして俯いてしまった。そんなルイズをワルドは優しく微笑みながら見つめていた。
礼拝堂へと歩く二人の男女。その手は固く握り合っていた。


礼拝堂の中でウェールズは一人ステンドグラスを見上げていた。
始祖プリミルが描かれた物だ。もっともその姿を描くことは恐れ多いとの事で
その姿ははっきりしないシルエットのような物として描かれている。

――人生の最後に二人の男女が結ばれる場に立ち会う、か――

薄く笑いながら『悪くは無いか』、と心の中で呟いた。
彼はこれから司祭としてワルドとルイズの結婚を見届けるのだ。

『HAHAHAHAHAHAHAHA!!』

不意にどこからか野太い男の笑い声が響いた。

「誰だ!?」

ウェールズが咄嗟に身構えながら問う。

『We are death's messengers.Prepare yourself.』

今度は高めの男の声だ。王子としての十分な教育を受けてきたウェールズにして聞いたことも無い言語であった。
ウェールズが困惑した表情を浮かべていると突如、ステンドグラスが突き破られガラス片が飛び散った。



ワルドとルイズが礼拝堂の前に差し掛かった瞬間、ドアをブチ破り何かが飛び出してきた。

「きゃッ!?」

ルイズが悲鳴を上げる。そしてその前の地面に横たわるのは
司祭を務めるはずのウェールズその人であった。

「ウェールズ様!?」
「一体どうされました!?」

ワルドとルイズがウェールズに駆け寄る。

ウェールズがヨロヨロと立ち上がった。額からは血が流れ左腕がぶらんと垂れ下がっている。
どうやら完全に折れているようだ。

「貴族派め……悪魔に魂を売ったか!!!」

ウェールズがそう叫ぶと礼拝堂の入り口に青い電流が流れる。

そして現れた姿は――



召喚せし者とされし者。ルイズと亜人、何日ぶりの再会であっただろうか。


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