あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

空と戦士と……-02


「むっ?」

ピッツァがその不信人物を見つけたのは一重にゾンダリアンとしての超感覚の賜物だ。
何時も通りに見上げていた星空から視線を外し、眼下にてコソコソと自分が天辺に立つ搭、つまり学園の寮に入っていくローブの人影。
学園の生徒だろうか?とも考えるが、あんなにコソコソする必要は無い。となれば……侵入者、排除すべき存在だ。


「マスター」
「なっ何よ! ピッツァ?」

声が掛かる場所が予測していた方向と反対だと人は必要以上の衝撃を覚えるものだ。
ルイズもドアに向いていた感覚が窓の外から届く声にビックリ仰天。バッと振り向けばそこには見慣れた使い魔と幼馴染が浮いていた。
ただ問題があるとすれば……幼馴染の顔が真っ青で口をパクパクさせながら、今にも死にそうな点だろう。

「搭に進入しようとしていた不審者を捕縛した。衛兵にでも突き出すか? それともこのまま息の根を止めるか……選択を」

幼馴染が使い魔に首を締め上げられている。片腕で軽々と人間一人の首を絞めながら持ち上げるのは大したものだ。
だがそんな事を考える余裕などあるはずもなく、ルイズは叫んだ。

「このバカ! 今すぐ手を離しなさい!!」
「離したら落ちるが……墜落死をお望みか?」
「ちっ違うわよ! 早く中に入ってから離しなさい!!」

ルイズの部屋の中で開放されたその人物は、咳き込むほどに酸素を貪ってから、サッとピッツァから距離を取る。
そして未だに青い顔を可能な限りの微笑を浮かべ、ジョークかどうかも解らない小言を一つ。

「お強くて遠慮を知らない恋人ですわね? ルイズ・フランソワーズ」
「ひっ姫殿下! このたびは使い魔がトンでもないご無礼を~」

月明かりの下で見たときは人違いかも?と念じていたルイズだが、部屋の中でしかと確認したその顔に間違いではないことに気がつく。
トリステインの王女、アンリエッタその人が僅かに青い顔で微笑んでいた。

「良いのです、ルイズ。私がこっそりとここを訪れようとしたことは事実ですもの」
「しかし姫殿下の身に何かあったら……」
「そんな他人行儀はやめてルイズ。私の大切なお友達、いったい何時振りかしら、こうやってお話するのは」

そこからの流れは『キャッキャ、ウッフッフ』である。
既に興味を失ったピッツァが窓から逃げ出そうと試みるも、アンリエッタがソレを止めた。
花の笑みは真剣な顔に、国を代表する王の顔に。

「大事な友達にこんな事をお願いするのは酷いことかもしれません。でも……」

託されるのは天空の国への手紙の回収という極秘任務。




「おぉ!?」

ルイズはそんな感嘆の声を上げるピッツァを横目で見た。
ワルドと言う許婚の登場にも、以前捕まえたフーケが傭兵を率いて襲撃にも、コッソリついてきたキュルケ達にも動じなかった使い魔。
それが純粋に驚いて興奮している様は言いようの無い満足感と達成感を彼女に与えていた。

「これが桟橋……そしてあれが空を飛ぶと言う船か」

眼前に聳え立つ巨大な樹、そこに実のように繋がれた無数の船にピッツァは呟く。
無数の星を侵略する過程で様々な風景を見てきたが、その様子は未だに彼の心に響く壮大さを持っていた。

テキトウな船との交渉はすぐさま終了し、一向はアルビオンへと向かう。


「空は良い」

轟々と空気を切り裂いて空を進む船の穂先、風に飛ばされることも無く器用に立ち、ピッツァは何時ものように言った。
自分で飛ぶのとは違う風の感じ方、空の楽しみ方ができる未開の星の移動手段を彼も気に入ったようだ。
つい先程視界に入るようになった巨大な浮遊大陸アルビオンと、そこから滴る水が作り出す雲海。
ロケーションは最高だと言って良い。だがそこにピッツァの気分を悪くさせ、同時に闘争の喜びを与えるものが来た。

「空賊船だ~!!」

この船よりも一回り大きく、黒くタールで塗られた船体。そして舷側に開いた穴から突き出る無数の大砲。
まさしく戦う為の船。そしてピッツァにしてみれば主であるルイズを守る為に戦うべき相手だ。

「待ちたまえ、使い魔君」

すぐにでも『テイクオフ!』しようとした彼を止めるのはもう一人の同行者、トリステイン魔法衛士隊 グリフォン隊隊長のワルド子爵。
足りない風石の代わりに船の主力器官を担っていた彼の疲労は計り知れない。戦力として数えられるかも解らない。
だが助力など無くてもピッツァは一人で船の一つ、制圧してみせるつもりだった。

「何故止める?」
「君の空中戦での力は信用している。だが既に船の横に付かれ、敵の大砲は臨戦態勢だ。
 君には当てられなくても、この船を沈めるのは容易いだろう。ルイズと密書を危険に晒すのは良くないだろう?」
「ちっ! ならば敵の懐に入ってから制圧する」

空での闘いの楽しみを邪魔されて、戦士は舌打ち。守る闘いは常に自分以外の心配をしなければ成らない。
故にピッツァは思うのだ。『飛ぶなら一人がいい』と……




「空は良い」
「アァ、まったくだね……空は良い」

『ピッツァが二人に増えた』ルイズはその様子をそんな風に表現した。
ここは先程まで敵だと思っていた空賊船改めアルビオン王立空軍最後の戦艦、イーグル号。
王党派最後の砦、ニューカッスル城へと向かう船の甲板で二人の人物は風を感じている。

「空は地上の煩わしさとは無縁だ」
「僕もこうしている時だけは一国の皇太子である事を忘れ、空に生きる軍人になっていたのかもしれない。
 もっとも……その王子も軍人も風前の灯であるわけだが」

片や言わずと知れたルイズの使い魔、紅い鳥を模したような仮面と緑のマントを纏ったピッツァ。
そしてもう一人は金髪の青年、先程までは空賊の頭に化けていたアルビオン王国皇太子、同王立空軍大将であるウェールズ・デューター。
まったく奇妙な組み合わせである。彼らの心を繋げているのが『空』だと言う事だけが、部外者たちからでもわかる。

その様子を見ていたルイズは囁くように零した。

「何か……イヤね」
「どうしたんだい、僕のルイズ?」
「さっき会ったばかりで身分も全然違う二人が、数年来の親友みたいだなって思ったの。
 うん、ただそれだけよ」

隣に立ったワルドの問いに、船の先端で進行方向の空を見続ける二人をルイズは評す。
自分とは一定の距離を置く使い魔がウェールズとは瞬く間に親しくなった。本人たちにそのつもりはないのかもしれない。
だが他人から見れば『話す必要すらない程の友』に見えた。故にピッツァのご主人様は疎外感に打ちひしがれる事になる。




アンリエッタから受けた手紙の回収と言う任務を終え、ルイズ達はニューカッスル城で王国最後の大使として、文字通り最後の晩餐に出席していた。
ニューカッスルまで追い詰められ僅かな自軍と莫大な敵戦力。何処から見ても負け戦、明日には予告された貴族派の攻撃が迫っている。
だと言うのに晩餐の席には貴族たちが着飾り、豪華な食事が所狭しと並んでいる。

「楽しんでくれているかい? ピッツァ」
「食事に娯楽を見出せる性質ではないのでな」

長く仕えた重臣たちへの労いを終えたウェールズが向かった先に居た人物に、彼の挙動に注目していた者達が驚きのざわめきを起こす。
見たことが無い人物だった。見慣れない服装をしており、滅亡寸前の国とは言え皇太子相手になんと言う口の聞き方!

「一途なのだね? 君の恋人は幸せだろうが、苦労も多そうだ」
「ふん、女など要らん。私には空と戦いがあれば良い」

ピッツァは何時もの亜人と評される姿ではない。真っ赤な野球帽を深く被り、TシャツとGパンを纏う。その上に袖を通さずにコートを羽織っている。
ゾンダリアンとして人間に混じっての行動を容易にする為の擬態だ。もっともソレは地球上だからこそ意味を成す。
この世界では完全に怪しい姿だが、「亜人としてこのような席に出席するよりは良いだろう」というルイズの助言を参考にした結果。

「空は良い……が、僕は君ほど一途には成れそうにない。現に今も……」
「あの女王のことで頭が一杯……か?」
「! なんだ、意外と鋭いみたいだね」

いつの間にか二人は壁際に移動し、晩餐を眺める。ピッツァの手にはウェールズに渡されたワインのグラス。
僅かに口に含み、やはり味など分からんと首を傾げた。そんな様にウェールズは苦笑を浮かべ、自分のワインを一口。
此方は味わうように舌で転がし、頷きながら飲み込む。さすが我が国民たちが作ったワインだと感心する。

「そんなに恋しいのならば亡命でもしたらどうだ? マスターも騒いでいたぞ」
「残念だがそれは出来ない。王家の人間が亡命などしたら、レコンキスタがトリステインに攻め込む口実を作るようなもの。
 それに僕は王族であると同時に……軍人であり、戦士であるつもりだ。敵に背を向け、部下を見捨てて何を成すのか?」

燃える闘志を宿す瞳と視線を合わせ、ピッツァは笑う。
どうやら『類は友を呼ぶ』と言う太陽系第三惑星の諺はゾンダリアンにも、異世界の国でも適用されるようだ。
ワインの味は分からないが、闘争の匂いに酔うことは出来る。




「もうイヤだ」
「どうした、マスター?」

案内された寝室でルイズはベッドに身を投げ出して、呻くように言った。

「この国の人はお馬鹿さんばっかり……死にたがりと恩知らずばっかり。
 姫様が亡命してって、恋人が生き伸びてくれって言ってるのに、どうしてウェールズ様は死を選ぶの!?」
「守る為だ。そして……成し遂げるため」
「なにソレ! 意味わかんない!?」

ピッツァとて人の心の中を全て理解しているとは言えない。だが少なくともルイズよりはウェールズの心境を理解しているつもりだった。

「王族であること、戦士である事を守り……その本懐を成すためだ」

「理解できない」ともう一度ベッドに顔を埋めたルイズから、ワルドとの結婚式を行う事を告げられても、ピッツァは黙していた。
別に主が伴侶を得ようと、自分が使い魔を続ける事に何ら問題は無いと思っていたから。
だが……





「三つ目は貴様の命だ! ウェールズ!!

ルイズの拒絶とワルドの急変。結婚式の最中で行われたトリステインの使者による凶行。
誰も止められるものは居ない。何せ新郎は司祭役を務めるウェールズの誰よりも近くにいる。
もちろん隣にいるルイズも理論からすれば同じ距離なのだが、彼女にはその一瞬を把握することなど出来ない。
正に閃光の速さで突き出された魔法衛士隊の剣としても使える杖が、ウェールズの心臓を貫こうと迫る。

「グハッ!? ワルド、キサマ……」

ウェールズがその一撃を僅かに逸らせたのは正しく偶然だ。僅かに体を捻った結果、抉られるのは心臓の僅かにした。
だとしても致命傷には違いなく、血を流して崩れ落ちる。意思はしっかりしていても、戦うのは無理だろう。

「ほぉ? よくぞ避けた。だがコレで終わりだ!!」

取り押さえようとした衛士とルイズを片手まで吹き飛ばし、ワルドは再び杖をウェールズに向ける。
今度こそ外しようがない必中の構え。しかしソレを拒むものがあった。

「オォオオ!!」
「なにっ!?」

ステンドグラスを盛大にぶち抜き、室内に飛び込んできた緑の翼。
そこから繰り出された高速の一撃はワルドの体を確かに捉え、大聖堂の長椅子の群れへと叩きつけた。

「ピッツァ……」
「何でアンタ……全然興味なさそうな顔してたくせに」
「別にマスターが誰と結婚しようが構わん。
だが戦士として、ワルド! 貴様のやり方が許容できない。
 そして……同じく空を愛する者として、ウェールズを無駄死させる気が無いだけだ」

ワルドとピッツァ、どちらとも無く構えをとる。戦士としてお互いが容易い相手ではないこと既に認識していた。




「ピッツァ……君とはもっと早く出会いたかったな……
 そう、例えば……アルビオンが平和で……自由に空が飛べた時に……」
「同感だ、ウェールズ」

僅かな差でワルドを退けたピッツァに、水のメイジに処置をされながらウェールズは言う。
外からは砲撃の音が響いており、攻城戦が始まった事を示していた。傍らではルイズが未だにハラハラと涙を零している。
未だに自分の回りで起きている事を完全に把握できてはいないだろう。

「殿下、残された水の秘薬では応急処置が限界です。傷はすぐに開きましょう」
「なに……僅かでも動けるようになれば良い。バリー、城と父上は任せる。僕はイーグル号で出るぞ」

本当ならばイーグル号で女子供を避難させる手筈だった。もし計画通りならばアルビオン王立空軍は最後の戦艦を失うことになる。
だが予定外にもう一隻 ルイズ達が乗ってきたマリー・ガラント号が手に入ったので、そちらを脱出用に採用。
故にイーグル号が戦闘に投入可能と言う嬉しい誤算が生じた。しかし……

「何を仰るのですか!? 一隻で出て行っても狙い撃ちにされるだけですぞ!?」
「それが狙いだ。脱出船から敵の注意を逸らせる。敵も王家の旗をはためかせて突っ込んでくる船のほうに注意が行くだろう。
 な~に、ただで撃墜されるつもりは無いさ」

だがソレは勝ち目が有ると言う事ではない。どんな策も力も抗えない絶対状況。
それが死を意味すると気がついて、ルイズは搾り出すように告げた。だがウェールズはようやく体を起こして、困ったように答える。

「そんな……せっかく助かった命なのに……」
「すまない」

しかし助けた本人は特に気にした風も無く、むしろ当然とこんな事を言う。





「構わん、そのために助けたのだからな。
こんな場所で暗殺など、キサマの望む所ではあるまい? ウェールズ」
「そうだな……僕は王族として、軍人として生き……僕の戦いは……」

砲撃の音は尚激しくなる一方、大聖堂内を悲しくも穏やかで、熱い空気が満たす。
そんな状況にヒョッコリと現れたモグラとその主、帯同者は状況が把握できずに右往左往。

「ウェールズ殿下! イーグル号、出港準備完了!」
「よし、逝くとするか……」

部下たちに支えられながらも立ち上がり、大聖堂を出るウェールズの背にピッツァは問う。

「どうやら脱出の手段はもう一つ確保できたようだし……手伝ってやろうか?」

タバサに告げられた内容、穴の下でシルフィードが待機している事を知り、主人の脱出と言う問題は無くなった。
船を使うよりも秘密裏かつ確実にトリステインに帰り着けるだろう。故に助力を申し出たのだが……

「止めてくれ……アルビオンの空は僕の庭。
 そしてこれは……ウェールズ・テューダーが命を賭けるべき闘いだ。
 ピッツァ、君の戦いは……まだ先に待っているだろう。君が全てを賭けるべき戦い、君だけの空が」
「そうか……そうだな。では……」



『さらばだ! 勇者よ』




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