あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Louise and Little Familiar’s Order-01



夜、部屋の明かりに照らされるルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの表情はこの上無く不機嫌な物だった。
今までにも魔法が出来ない事を同級生からからかわれて不機嫌になる事はあったし、それ以外の事で不機嫌になる事もあった。
だが、今日一日で経験した物のレベルはそんな物ではなかった。

トリステインにある魔法学院。
今日はそこから少し離れた草原の一角で、使い魔を召喚するサモン・サーヴァントの儀式があった。
進級試験の一つでもあるこの儀式は失敗する事は出来ない。
が、最後になったルイズは何回やっても爆発を繰り返し、何も喚び出せないていた。
他の者達はあっさりと成功し契約を済ませていくのに、彼女だけは違っていたのだ。
周りからもう止めろといわれても、その儀式を担当していたコルベール先生が日を改めてはといっても聞かなかった。
そして10回目にさしかかろうかという時になって漸く、何かが爆発の中心地にいる事に気付いた。
だが、やっと成功した事に喜んだのも束の間、濃い煙が晴れると、そこにいたのは小さな女の子だった。
身長から察するに年は明らかに自分より下だ。
ただ小綺麗に着飾ってはいたが、全体として漂う雰囲気はどこと無く平民臭さが出ていたものだった。
少女は気絶でもしているのか目を覚ます気配は無い。
儀式を進めようとしても爆発しか起きなかったので、『何でも良いから何か来い!』と強く思ってはいたが、
動物、それもマンティコアやヒッポグリフを想像していた彼女にとって、目の前の結果は自身を絶句させるに十分な物だった。
周りにいる生徒達がどっと大爆笑し一斉に囃し立てる。
貴族のように着飾った平民なんか出してそれは手品なのか、だとか、そんな小さくて非力そうな女の子はルイズにお似合いだ、と。
冗談じゃない。使い魔はメイジと一生を共にするのだ。
と言うより、そもそも人間を使い魔にした例なんて聞いた事が無い。
勿論、ルイズはコルベール先生に儀式のやり直しを申請する。
だが彼は、あれやこれやと理由をつけ、挙句神聖且つ伝統的な儀式ゆえにやり直しなど認められないと言い切った。
その時のルイズの落胆っぷりといったらない。
だが、契約をしなければ留年、悪くすれば退学も免れないかもしれない。
また、これ以上周りの者達を待たせるわけにもいかないので、彼女は目の前の少女へ呪文を唱えて契約の口付けをする。
少女と少女の口付けという一幕に色めきたつ者もいたが、そんな雰囲気は直ぐに薄れてしまった。
相手の少女が年端も行かない事もあるが、ルイズが殆どやっつけとばかりに直ぐキスを済ませたからだ。
彼女自身、女の子同士なんだからこれはノーカウントよ、と頭の中に響かせていなければ平民と口付けしたという事実で気が変になりそうだった。
その段になって少女は目を覚ます。
始め、何がなんだか分からないと言った風にきょとんとしていた彼女は、周りを見回して一言だけ発した。

「ここ、どこなの?」

Louise and Little Familiar’s Order 「Sitter of Cry baby」

その数十分後、ルイズは学院にある保健室にいた。
側にあるベッドでは先程召喚した少女が首元まで毛布をすっぽりと被っている。
契約の口付けが終わって程無く目を覚ました少女ではあったが、直ぐにまた気絶したのだ。
その理由は彼女の手の甲にあるルーンである。
それが記される際に、強力な熱と痛みが一過性にせよ使い魔の体を襲うのだ。
少女はまだ幼かったためかそれに耐え切れず、痛い、熱いと喚きに喚いて挙句気を失ったのだ。
その際、コルベール先生はルーンを興味深げに見つめていたが、それ以前に少女をまともに寝かせられる場所に運ぶ必要があったので構っている間は無かった。
おまけに簡単な呪文である『フライ』や『レビテーション』も使えないルイズは、少女を負ぶって学院に戻らなければならなかった。
儀式の最中こそ顔を真っ赤にしながらも嘲笑に耐えていたルイズだったが、学院の門が見えてくるにつれてぼろぼろと泣き出す。
学科試験は良いものの、肝心の実技でいつも失敗の証である爆発を起こす為、付いた渾名が『魔法の成功確率‘ゼロのルイズ’』。
その事で毎日友達から馬鹿にされてはいたが、遂に今日決定的となってしまった。


召喚した使い魔は人間で、平民で、子供で、女の子で、しかも召喚早々気絶した。
噂が広まるのは早いもので、午後の授業が終わる頃にはルイズが通る所どこでもひそひそ話が囁かれるようになった
夕食も終わった頃、保健室から使いの者がそろそろ使い魔を部屋の方で引き取ってくれないかと伝えに来た。
ベッドでぐっすりと眠る少女はいかにも安らかそうに見えたが、目の淵にはうっすらとではあったが涙が流れた跡があった。
悪いとは思ったものの、少女を自分の部屋に運ぶまでの間、ルイズは生きた心地がしなかったせいでそんな意識は吹き飛んだ。
召喚された平民がどんな奴なのか見てやろうと、近くに寄る生徒達の視線に耐える必要があったからだ。
それでも彼女は今自分の背中で眠っている少女に一縷の望みをかける。
見かけは悪くてもその中身がまだ分からないからだ。
開けてびっくりの力を持っているという可能性だって十分ある。
そして部屋に戻った時になって、少女は目を覚ます。

「お姉ちゃん、誰なの?」

ブルーの大きな瞳が爛々と輝き、いかにも少女然とした感じを出していた。

「私はルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。」
「ル、ル……」
「長くて言えないならルイズでいいわよ。でもあなたは私の使い魔なんだから『ルイズ様』とか『御主人様』って呼ぶのよ。それで、あなたの名前は?」
「あたしは……ミー。」
「……なんかペットに付ける名前みたいねえ。それよりも、起きたのならいい加減背中から降りなさいよ。」

小柄なゆえにそれ程重い訳ではなかったが、それでも平民が自分の背中に乗っているという状況はルイズにとって不愉快なものだった。
言われて少女はルイズの背中から降りる。
しかし少女の質問は続く。

「ここ、どこなの?」
「ハルケギニアにあるトリステイン王国の魔法学校よ。まあ、その年の平民じゃ知らないのも無理はないかもね。」

やっぱり何の変哲も無い平民の子供か。あたしが同じくらいの年の時にはもうここの名前ぐらい知ってたもの……
ルイズが一つ溜め息を吐くと、少女が震える声で言った。

「ねえ。あたし、お家に帰りたい。パパとママが心配するもん……」
「無理よ。あなたは私に喚ばれてここに来たんですもの。それにこことあなたの元いた所ともう一度繋げる方法なんて無いのよ。」
「やだ。お家に帰して。」
「だから方法が無いって言ってるでしょ。あんたは私の使い魔として……」
「お家に帰りたい!お家に帰してぇっ!!」
「こらぁっ!離れなさい!ひっつかないでよ!」

少女はルイズの足元に縋り、泣いて駄々をこね出した。
正直、パパとママという単語が出た時、この子を本当にいきなり親元から無理矢理引き離したという感覚が襲ってきたので、ルイズの心はちくりと痛んだ。
だが、喚ばれてしかも契約まで行ったのならきちんと躾けなければならない。
取り敢えず話をしようとしたルイズだが、少女は泣くばかりで一向に話の通じる気配が無い。
次第にルイズの方が泣けてくる。
私は一体何をやっているんだろう?話の通じない平民の子供相手に言う事をきかせようなんて。
使い魔になったとはいえ碌に言う事も聞かないのではとんだお笑い物ではないか。
メイジの実力を量るにはその使い魔を見ればいいとまで言われているというのに、こんなのが使い魔なら木偶の坊の方がまだマシな気さえしてきた。
そうなるともう少女に構う気さえ起きなくなってくる。
しかし、一応使い魔が何をするのか等を言っておかなくては、出来る物も出来はしないだろう。
それが出来るようにするにはどうすれば良いか?
まるで、世話のかかる子供に面した母親のような気持ちになったルイズは、尚も泣き続ける少女に向かって厳しく言った。

「いい?!泣きたいなら気の済むまで泣いてなさい。その代わり泣いてる間はご飯もあげないし、この部屋で寝かしもさせないわ。いいこと?本気で言ってるのよ!」

それはかつて自分が母親から受けた躾とかなり似ているものだった。
変に宥めたり賺したりするのではなくて、泣き疲れて自発的に泣くのを止めるようになるまで待つと言う方法。
ルイズの物はそれに、もっと泣く原因をあげましょうか?と手を加えた物になった。
これなら自分の言う事を嫌が応にもきくようにはなるだろう。
ルイズは少女から目を逸らし、部屋の明かりの方を見て呟く。

「ホント、何時になったら泣き止むのかしら……?」

そして話は冒頭の位置へと戻るのである。
さて、そんな空気がかれこれ10分近く続いてはいるが、少女はしゃくりあげながらもなかなか泣き止む気配を見せない。
ルイズはしぶとく待つために椅子に座って待っていたいい加減眠くなってきた。
と、我慢が要の一つともいえるその雰囲気に、隣の部屋から闖入者がやって来た。
ドアの鍵はしていたがあっさりとアン・ロックをされたのでそれも不愉快だったが。

「ちょっとルイズ!そろそろ消灯なのよ。静かにしてよ!」
「私が泣いてるんじゃないわ!使い魔の方よ!」

募っていた苛々をつい隣室からの闖入者ことキュルケにぶつけてしまう。
キュルケの視線は直ぐ、戸口に近い所で泣いている少女の方に移った。

「一体どうしたのよ?何かしたの?」
「どうしたもこうしたもないわ!!最低よ!あんたもみたでしょ?!召喚の儀式で『それ』を喚んで……」

その時キュルケの頬が少しさっと紅潮する。
幾ら相手が平民の、それも子供であっても、少女はルイズが召喚した使い魔なのだ。
『それ』呼ばわりはないだろうと感じたからだ。
だがルイズの不満は更に吐露される。

「平民の子供のくせに言う事は聞かない、話は聞かない、お家に帰してえ、帰してえって喚いて泣きだして……おまけにあんたまで出て来る事になったじゃない!もう沢山よ!泣きたいのはこっちよ!」

後半は最早喚きにも近い雰囲気だった。
キュルケがそんな彼女を見ていると、何か締まりの無い音が聞こえてきた。
その発信源はどうも少女のお腹らしい。
今が何時なのかを考えたキュルケは、ルイズに冷ややかな声で質問する。

「ねえ、この子に何かご飯あげた?」
「は?その子、さっき目を覚ましたのよ!それにまともにこっちの言う事に従おうとしないのにあげられるワケないでしょ?図に乗ったらどうするのよ!いいから出てってよ!あんたには関係無いでしょ!」

答えるのも鬱陶しいという口調だった。

「そう?じゃ、失礼するわ。」

キュルケはそう言って部屋を出ようとする。
ただ一つ部屋に入ってきた時と違うのは、彼女が少女の手を引いていた事だった。
その光景にルイズははっとして反射的にキュルケに対して怒鳴った。

「ちょっと!あんた人の使い魔をどうする気なのよ?!」
「どうするって?少し考えたら分からない?私の部屋でこの子にご飯をあげるのよ。今からじゃ厨房に行ったってありあわせの物しか用意できなさそうだけど。」
「ふざけないで!まだ躾は終わってないのよ!使い魔が何たる存在かも話してないのよ!それに私の使い魔なのに、あんたに『餌付け』なんかされて懐かれたら洒落にならないわ!今すぐその手を離しなさい!」

キュルケはそれに構わず少女を連れ立って部屋のドアを開ける。
止めようとルイズが近付くが、次の瞬間キュルケに一睨みされた。

「離してもいいけど、それじゃ私がもっと眠れなくなりそうだからやめるわ。この分じゃ一晩かかったってこの子は泣き止みそうにないもの。確かにこの子は平民よ。あなたや周りのクラスメイトが言うようにね。
でもこのくらいの子はまだ親に甘えたい盛りのはずよ。使い魔として喚ばれた以上、主人は主人らしくしていないといけないと思うけど、それも含めてあなたが元の親の代わりもやらないといけないと思うわ。
なのにそれを全部ほっ放り出すどころか、使い魔の躾がどうのなんてのを口実にこの子を大切に出来ない内は、あなたがこの子の面倒を見るなんて事は出来ないわね。それ以前にメイジとして失格よ。」

ルイズは何か言おうとしたが、正論のオンパレードだったので切り返す事も出来ない。

「この子は私が何とかするわ。幸い母親役なら私の方がいろいろと似合いそうだしね。話がしたいのならそれなりに舞台を整えなきゃ出来る話も出来ないわよ。ま、とにかくあなたがそんなに冷たい人だとは思ってもいなかったわ。それじゃね。」

キュルケは少女を連れて自分の部屋へと戻っていった。
引き止めようと思えば引き止められたのに体が言う事を聞かなかった。
メイジとして失格……キュルケに言われた事が何時までも頭の中に響く。
部屋の戸を閉めた後、彼女はベッドに倒れこんで泣き出した。
ただただ悔しくて悲しかった。
キュルケに面と向かってそう言われたのが原因ではない。
自分の使い魔なのに、どこかから無茶して引っ張ってきたかもしれないあの少女の心の拠り所になれていない事が一番辛い事だった。



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