あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

クライムプランナー-01

 想像してみてほしい。いきつけの店のカウンターで、でかい仕事の成功に一人酔っていたはずのところを、気がつけば草っぱらで餓鬼どもやディズニーアニメに出てきそうな化け物どもに囲まれているところを。

 最初に考えたのはこうだ――あの野郎、俺の酒に何か混ぜやがったのか。
 次に考えたのはこうだ――何だこの餓鬼は、なんで思いつめたような、怒ったような顔で俺に向かってくる。

 などと思っているところで、その餓鬼は俺の耳をつかんで引きおろし、痛みにかがんだ俺が文句を言う前に有無を言わさずキスをした。俺は手を振り払うととりあえず餓鬼を殴った。全力で。
 転がった餓鬼の頭を勢いよく蹴り飛ばしたところで、俺は左手に焼け付くような痛みとともに奇妙なマークが刻まれていることに気がついた。
 慌てて駆け寄ってきた禿に銃弾を数発撃ち込んだところで、俺はでかいトカゲを連れた女と空飛ぶトカゲを連れた餓鬼に押さえつけられた。

 というわけで、この俺、ジェラード・クィンは不本意ながらルイズ・なんとかかんとかの使い魔となったわけだ。
 知り合いはジェラードをつづめてジャードと呼ぶ。

   ***

 貴族は好きか、と聞かれれば嫌いと答えるのが近いだろう。より正確に言うならば興味がない、だが。
 俺が貴族と聞いて連想するのはもちろんかの英国のことで、英国と俺の関係は必ずしも友好的なものではなかった。
 俺が餓鬼のころ、北アイルランドでは逮捕状なしの連行が横行しており、俺の親父もその恩恵にあずかった。
 電気工事の仕事をしていた親父は、仕事の帰りに英軍につかまった。かばんの中にはコードだの何だの。お前はIRAか、と連中は聞いた。親父は違うと答えた。
 親父は何時間も殴られたり、砕いたガラスの上を裸足で歩かされたりした。質問はいつも同じ。お前はIRAか。IRA関係者に知り合いはいるか。親父は両方知らないといった。別の歓迎が始まった。
 楽しい時間を過ごすうちに、ついに親父の心臓は耐え切れずにその機能を停止した。

 というわけで、俺はIRAに入ってしばらく英国人を殺して回った。
 やがてそれにも飽きて、俺は引退するとアイルランドで仕事を始めた。
 若き冒険の日々は終わり、落ち着いた大人の生活を始めたわけだ。
 そんな俺がハリー・ポッターじみたファンタジー世界で貴族の使い魔。
 事情を知った俺は思わず唸った。

   ***

 もちろん、召喚のありさまがありさまだったので、周囲は友好的には程遠かった。我がご主人様は俺の鮮やかな蹴りで首の骨が折れており、治療で一命を取り留めたという話だったし、俺が撃ったミスタ・コルベールも同様だった。
 持ち込んでいた銃は没収。寝床は床にわら束。飯も床。『メイジと使い魔』という関係を重視するために俺の扱いは基本的にルイズの自由裁量に任されていたが、要所要所には学院側の監視があった。
 つまるところ、今の俺はヒステリックな餓鬼の奴隷であり、しかもその餓鬼は俺に殺されかけたことで恐怖心と屈辱を覚えている。学院側は平民の俺に職員を殺されかけたことで俺を徹底的に警戒しており、何かをやらかせば今度こそ俺が殺される可能性があった。
 そして、使い魔の契約解除について周囲に聞いて回ると、主人と使い魔のどちらかが死なない限り契約は解除できないものらしい。

 仕方がないので俺はご主人様を殺すことにした。

 といってもただ殺せば俺も殺されてめでたしめでたしだ。何か手を考える必要がある。
 ヒントは学院の最初の授業で見つかった。

 奴隷生活を余儀なくされている俺は、情報収集に精を出していた。目を開いて、耳を澄ましているだけでわかることは案外多い。
 件の授業でのルイズの失敗――錬金失敗爆発炎上、いや、炎上はしていないか――により、ゼロというあだなの由来はわかった。ルイズがそのことで抱いているコンプレックスも理解した。
 つまりこうだ。わがご主人様が能無しのヒステリー持ちだというのは誰でも知っている。俺はその点を巧くつついて、彼女の精神状態を悪いほうへと誘導する。できるだけ深い穴に放り込んで普通じゃ這い上がれないようにする。
 周りに当り散らす。突然黙り込む。その手の破滅的行動が目立つようになれば、周囲もそういう目で見るようになる。
 そしてある日、馬小屋かどこかで軒からぶら下がったルイズが見つかるというわけだ。
 かわいそうに、そんなに思いつめていたなんて。みなが同情するだろうし、俺ももちろん同情する。もちろん、俺が同情するのは他の連中とは理由が違う。皆がルイズが自殺したと思っていることに同情している。

 言ってる意味、わかるよな?

   ***

 とはいってもそれを実行に移すのにはきちんとした準備がいる。ルイズの周辺の人間について知る必要があったし、ルイズを殺したあとの俺の身柄がどうなるかも知っておく必要がある。またどこかの餓鬼の奴隷にされたんじゃたまらないからだ。
 というわけで俺は学院側の監視役に声をかけることにした。院長の秘書だとかいう眼鏡の女だ。

 さて、アイルランドにパディ・トナーという男がいた。ちょっと大きな商売をしている男で、いろいろな儲け話を持っていた。
 奴さんは儲け話をひとつ選ぶと、俺のところに会いにきた。俺と会うときは護衛はなし。俺のことを知っているのはトナーだけというわけだ。
 俺はやつから話を聞く。細部を確認して、話を巧く転がすためのプランを立てる。
 やつは俺のプランを持ち帰るとそれを実行部隊に教えてやる。実行部隊はへぇ、とかいって感心する。自分たちのボスの頭の良さを褒め称える。
 最近やった大きな仕事は、財産家の老夫婦とその娘を殺し、唯一残ったもう一人の娘を心神喪失に追い込んで遺産をトナーに売り渡すことだった。
 実行役は俺を知らない。警察も俺を知らない。あるジャーナリストは俺の事を第三の男、と呼んでいた。

「あの、ちょっとよろしいですか、ミス・ロングビル?」
 話しかけながら俺は思った。この女は、さっきの話なら誰になるだろう。トナーか、実行役か、警察かジャーナリストか。

 それとも財産家の老夫婦とか。

「ちょっとお尋ねしたいことがあるのですが」
 俺はにっこり微笑むと、ロングビルに歩み寄っていった。

 言ってる意味、わかるよな?



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