あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無を担う女、文珠を使う男-08


第8珠 ~文珠使いの1週間~

「ヨコシマ。ちょっとあんたに聞きたい事があるんだけど」

夕食を済ませた後、特にやる事もなく藁布団の上でごろごろしていた横島だったが、その声でルイズの方に注意を向けた。
何でも、文珠で病気の治療は出来るかどうか知りたいらしい。
ダメな事もないんじゃねーのか、と思っていた横島だったが、いざ具体例を思い出そうとして、その考えが全然根拠の無いものだったと気付く。
過去に数度は厄介な病気の現場に立ち会ったが、文珠で解決した覚えがさっぱりなかったのだ。
仕方がないので、当たり障りのない返答をする横島。

「病気? 試した事ないからなー 分からん。
でも何でだ? 病気なんか魔法でちょちょいのちょいじゃねーのか?」
「魔法はあんたが思ってるほど万能ってわけじゃないのよ。残念だけど。
そういう意味じゃ、その文珠の方がずっとすごいアイテムよ。
まぁ三日に一回、ほんの少しの間しか魔法が使えないって考えると、あんたはドット以下って事になるけどね」
「そりゃ確かに俺は文珠が無きゃほとんど何にも出来ないけどさ、わざわざそんな事言わなくてもいいじゃねーか」
「ち、ちょっと不思議な力持ってるからって調子に乗らないように、気をつけてあげてるのよ! 文句ある!?」

高飛車なルイズのオーラに、意思に関係なく土下座の姿勢になって「すんません」を連呼する横島の体。
それに満足したのか、ルイズは話を再開する。

「…それで話は戻すけど、病人に使ったら逆に危ないとかそういう事はないわよね?」
「効果が無い事はあっても、危ないなんて事はさすがにねーと思うぞ」
「それなら安心ね。今度の文珠、病気の治療に試してみるから」

一瞬、横島は何を言われたのかを理解できなかった。文珠は、かなり貴重な物である上に、彼自身の命を護る切り札だ。
そんな文珠を、まるでデパートの試食品をつまむかのような気軽さで取りあげるなんて、そんなまさか…
思わずもう一度聞き返したのだが、残念ながら返ってくる返事は同じだった。
見ず知らずの奴の為になんだって貴重な(特に今は手持ちが0だ)文珠を使わにゃならんのだ、と言い返す横島だったが…
「あんたは使い魔なんだから、つべこべ言わずに私の言う事を聞いてればいいの!」と、ある意味で懐かしい感じがする台詞が返ってくる。
だが、彼の上司である、色気たっぷりな美神さんに言われるのとは訳が違う。

「そ、そんな事言うと使い魔なんてやめちまうぞ! こんな事やらんでも、文珠1個売れば一生暮らしていけるくらいの金には困んねーんだからな!」
「何バカな事言ってるのよ。あんたの力は無闇やたらに公表したらまずいって言われたばっかりじゃない」

横島の作り出す文珠は、使い方によっては億単位の価値があるアイテムと同様の働きをする。そんな事をいくら言ってみてもダメだった。
悲しいので、「どうせなら、キュルケさんやロングビルさんの使い魔になれれば良かった」とぼやく横島だったが…
それは、延々とルイズの実家・ヴァリエール家と、キュルケの実家・ツェルプストー家の因縁を聞かされる羽目になっただけだった。

(ふーん。美神さんとエミさんの関係、みたいに思っておけば間違い無さそうだな。
だけどなー エミさんみたいにええチチしてるキュルケさんがライバルなら、美神
さんポジションのルイズちゃんだってもってこう、ボンキュッボンってなっててもいいと思うんだけどなー)

「というわけで、キュルケはだめ。禁止」

(で、フレイムはさしずめタイガーの役どころっと。
虎じゃなくてトカゲだけど。
そういや、あいつここ最近は「出番無くて悲しいんじゃー」 とか言ってたが…
元気にやってっかなー)

まぁ、こんな感じで全然真面目に聞いちゃいなかったわけだが。

「分かった? そう言うわけで、あんたが文珠作ったら…
それを病気の治療に使えるようにして頂戴。
私の使い魔が生み出す、珍しい水の秘薬って事にして送るから」

話はいつの間にか再び元に戻っていて、横島もいい加減面倒になったので了承した。


そして翌日。
いつものように横島が目を覚まし、ルイズを起こそうとするが…

「今日は虚無の曜日だからお休みなの~ あんたもまだ寝てていいわよ~」

それならそうと昨日のうちに言っておけ、と思った横島だったが、これはこれで好都合。
ちょっと朝の散歩に、なんて似合わない事を言っても、寝ぼけているルイズは特に気にせず許可を出す。

「ふっふっふ。好機、今こそ来たりっ! 待ってて下さい、ロングビルさーん!!」

心の底から叫びながら横島はルイズの部屋を飛び出した。
そんな叫びを聞くは、休日でも規則正しい生活を心がけている数名の女生徒達。
ルイズが呼び出したのは、平民は平民でも変態の平民である事が、こうやって徐々に広まっていくのであった。



横島は、どこから準備したのかほっかむりをして顔を隠しつつ、一心不乱にロングビルの部屋を目指していた。
そのカサカサという擬音が聞こえそうな姿は、どこからどう見ても立派な変態だ。
ところが… そんな変態へ声をかける猛者がいた。

「むむ! そこにいるは、ヨコシマ君じゃな!?」

何を隠そう、学院一のエロじじい、オールド・オスマンだ。
彼はロングビルのいる部屋へ向って飛んでいる最中に、頭に頭巾のようなものを被っている横島を見つけたのだった。

「お主、こんな所で何をやっておるんじゃ?」

オスマンが疑問に思ったのも仕方が無い。彼がいるのは、ロングビルの部屋を窓から覗ける位置。つまり建物の外側というわけだ。
そんな彼に見つかった横島も、当然建物の外側にいる。しかもロングビルの部屋は1階にあるわけではない。
どういう事かというと…

彼は、垂直な壁をまるでごきぶりのように4本の手足を使ってよじのぼっていたのだ!!

万が一手をすべらしたら良くて大怪我、運悪く頭でも打てばそれどころでは済まない…のだが。

「またまたー オスマンの爺さんだって俺と同じっしょ? 今日は休日なんすよね?
もしかしたら、まだベッドの中でお休み中のロングビルさんに会えるかも知れないじゃないっすか」

なんとこの男、ロングビルの寝姿(+α)を見たいが為だけに、命を懸けている!
オスマンだって、毎度毎度ロングビルから折檻される事を覚悟して尻をなでまわしているわけだが…
それとこれとは全く意味合いが違う。
オスマンの場合、カーテンが閉まってたり、ロングビルがすでに起床していたとしても、ただそのまま残念に思うだけだ。
しかし横島の場合、そのようになーんの成果も得る事が出来なかったとしても、落っこちる危険性が無くなるわけではない。
いや、そもそも目的地へたどり着くより前に落ちる事だってありうる。
そんな状況なのに、「ちょっと散歩に来ました」のような軽いノリで自らの目的を述べる横島に… オスマンは、正直感服した。
長いこと生きてきたが、ここまで自分の欲望に忠実な奴はいただろうか、いやいない。

「ヨコシマ君よ。ワシは今、猛烈に感動しておる!
長年君のような人材を探しておったのじゃ。
どうじゃね、ワシと一緒にミス・ロングビル同好会を…」

夢にまでみた同好の士に、思わず熱が入るオスマン。
コルベールも同好と言えなくはないのだが、いかんせん彼はくそ真面目すぎる。
それに比べて、横島は放って置くと目的と手段が入れ替わってしまうような、そんなバカらしさにあふれている。実にいい。

だが、オスマンは重要な事を忘れていた。
考えるまでもないことだが、ここはすでにロングビルの部屋を窓から見れる位置。
そんなところで、特に注意もせずにしゃべっていたりでもすれば…


「学院長、また覗きに来たんですか? あれほどやめて下さいと…
それにヨコシマさん、そんな所にいたら危ないですわよ?」

とっくに着替えていたロングビルが、窓を開け放して二人にあきれたように声をかける。
「ああ、ロングビルさん、いつ見ても綺麗っすね!! ところで、今日はお休みなんすよね!? 二人でどこかに行きませんか!?」
「ほっほっほ。ミス・ロングビルや。ワシはたった今、このヨコシマ君と二人でミス・ロングビル同好会を立ち上げたのじゃ。
その名誉会長のワシにキスをしてくれても構わんぞ。
ほれほれ、どうした、やらんのか?」
「…はいはい、いつまでもバカな事を言ってないで、朝食を食べに行きますわよ」

やれやれ、といった顔のロングビル。
その後、三人は朝食を取り(横島は学院長の計らいで、特別に一緒に食べられる事となった)、その席で大いに親交を深めたのだった。
(実際は、横島とオスマンがセクハラ魔人となる中、ロングビルが適当にあしらいつつ文珠の情報を引き出したり、横島を軽く誑かそうとしていたのだったが)



それぞれにとって楽しい、または意味のある長時間の朝食会が終わった後、虚無の曜日とは言え仕事が残っているという二人と別れた横島は、ルイズの部屋へと戻っていた。

「あんたねー 一体どこまで散歩に行ってたのよ!? もうこんな時間じゃない」
「もうこんな時間っつったって、まだ昼前じゃねーか。無断でいなくなったわけじゃねーのに、なんで怒ってんだよ」
「本当は今日、あんたを街まで連れて行ってあげようと思ってたのよ。
この時間だと、帰りが夜遅くになっちゃいそうだからダメだけど」
「街? なんだ、街には何か面白いもんでもあんのか? 言っとくけど、俺金なんか持ってねーかんな? 金のかかる遊びなんか出来ねーぞ」
「あんた、たまにはちょっと考えて物言いなさいよ。
いい、あんたが力を使うと、使った分だけ文珠を作るペースが落ちるんでしょ?」
「まあな。どっちも俺の霊力を元にしてるのは一緒だし」
「それで、私は出来るだけ早く文珠が欲しいのよ。
だからあんたが余計な力を使わなくてもいいように、剣を買ってあげようと思ったの。分かった?」
「言いたい事は分かった。非常に良く分かった。
でもなー 俺、剣なんか買ってもらっても多分うまく使えないんじゃねーかなー?
俺のハンズ・オブ・グローリーは、ある程度俺の自由な形になるっていうのがミソなんだから」
「何言ってるのよ?
正直、文珠がレアすぎて忘れがちになるけど、あんたにはもう一つ、使い魔の能力があるじゃない。
普段は普通の剣を使って、どうしてもダメだって時以外は力を使うのは止める事。
それに剣を持っていれば、あんたみたいな平民が私のような名門貴族の側にいても、護衛だって言えば面倒な説明をしなくてもすむしね」

ここまで説明されて、ようやく事の次第を理解した横島。
いざ街に行くと決まれば、次はそこがどんな街なのかが気になるのも道理で…
そのまま、ルイズ先生によるトリステイン講座が始まったのだが…

「あんたは私がわざわざ説明してあげてるのに、どうして寝てるのよー!!」
「しゃーないやんか、何か聞いてると眠くなるんやー」
「あんた、やっぱり不思議な力があるからって調子に乗ってるんじゃないの?
普通貴族相手にそんな態度とったら、下手すれば打ち首だってこの間言ったばっかりじゃない!!」
「そんな事ねーよ。霊能力つける前から俺はこんなだしなー」
「何それ、本当? あんたの国って一体どうなってるのよ。良くそれでやっていけるわね」
「俺の国? こことはもうまるっきり正反対って言ってもいいぞ。
魔法使いやら貴族やらはかなり少ない、というかむしろ魔法使いなんて国中探しても数名いるかいないかじゃねーか?
代わりに、と言えるほど多いわけじゃねーけど、俺みたいな霊能力者は数いるけどなー」
とまぁ、その内容はほとんど雑談のような物であったのだが、別に魔法を使わないとならないような場面もなく、ストライクゾーンからはハズレまくってるとは言え、美少女が相手だという事もあり、それなりに楽しい一日を過ごした両者であった。




それからの1週間は、瞬く間に過ぎて行く。

まず最初に記すべきは…
ルイズの努力の甲斐むなしく、とうとうある授業の最中に、ゼロの渾名の由来が横島に知れてしまった事。
魔法の成功率ほぼゼロという不名誉な理由に、使い魔がバカにしてくるのではないかと不安になるルイズ。
そんな彼女に横島は…

「あー、この間、冥子ちゃんの事話した時に泣いてたのって、自分も上手く力が使えないからって事か」

初めてみたご主人様の失態だというのに、手馴れているように周囲の掃除をしながら、何でもないように声をかけていた。
実際のところ、ちょっと感情を高ぶらせるだけで、家一軒ダメにしてしまう暴走娘が知り合いにいるのだ。
その被害を受けたことも一度や二度ではない横島にとってみれば、部屋が半壊する程度の事はそれほど驚く事でも無かった。

「まぁ俺の知り合いには、ふとしたきっかけで今まで上手く使いこなせていなかった力をコントロールするようになった奴もいるし、そのうち何とかなるんじゃねーかな。
俺も何か出来る事があれば手伝ってやるし。
…でも冥子ちゃんは今でも結構暴走させてるんだよなー」
「なんであんたは最後に不安になるような事言うのよ、ばかー」

なんて事があり…


次に記すべき事は、ロングビルの横島へ向けたアプローチだろう。
毎日というわけではないが、ロングビルと食事をとっている横島の姿が、数度ほど目撃されている。
ルイズにしてみれば、キュルケに誑かされるよりははるかにマシ、一応自分の言う事も聞いているし、ロングビルが今は平民であるという話も横島から聞きだしたため、黙認をしているそうだ。
また、クラスを偽っている理由について聞いてみたい横島ではあったが、その度に上手くはぐらかされてしまい、未だに聞き出すには至っていない。


そして最後になったが、やはり文珠による病気の治療について述べなければなるまい。
横島には言ってないが、ルイズが治したいと思っている人物は、ヴァリエール家の次女、つまり彼女の姉であった。その名を、カトレアと言うのだが…
【治】の文珠を早馬にて送った際、カトレア宛てにだけは、本当の事を書いて手紙をしたためていた。
自分の使い魔が人間である、という事は、到底信じてもらえそうにない事であったが…
魔法が使えなくて、いつも家族から叱られていた自分の、ただ一人の味方だったカトレアにだけは、嘘をつきたくなかったのだ。

その結果は、翌日の夜に伝書フクロウにて戻ってきた。
うさんくさいと言う両親の反対を押し切って、カトレアは文珠を使い…
結果、数時間ほどの間だけであったが身体の調子が今までに無いほど回復したそうだ。
その後、残念ながら体調は元に戻ってしまい、治療という意味ではさほど前進しなかったのだが…
急な発作が起きた場合の一時しのぎに使える為、数個ほどさらに送って欲しいと言う事。
そして、その使い魔と同種の生物を探す為に… 
エレオノールを魔法学院に向わせる、という事が記されていた。

「ま、まずい事になったわ…」

エレオノール、つまりヴァリエール家長女であり、アカデミーに勤めているルイズの姉であるが…
アカデミーというのは、先日注意されたばかりの、「何をしでかすか分からない組織」の一つである。
どう考えたってまずい。
来訪の予定は未定との事だが、近日中にやってくる事は間違いないだろう。
ある意味で自業自得なのだが、ルイズはこの件でここ2・3日の間、ずっと頭を悩ませ続けていたのだった。



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