あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの魔獣-31


トリステイン出発から二時間-。
大地に爆音を轟かせ、青空に一直線の雲を描きながら、不滅のマシーンが突き進む。

慎一には次第にコツが掴めてきていた。 見た目とは裏腹に機体の操作自体は簡単な物であった。
この機体を動かすのに必要なのは、技量でもなければ知識でもない。
高速の世界に対応できる動体視力と、衝撃と疲労に耐えうる体力だけである・・・。

傍らにいるルイズの顔色を確認し、慎一は速度を落とそうとする。
その右腕を、少女の小さな手が押し包む。

「・・・まったくコイツは バケモノみたいなマシーンね」

流れる脂汗を拭いながら、ルイズが軽口を叩く。

「あたしの事は気にしないで 速度を上げて」
「いや・・・ その必要はねえ」

二人の視界に、赤く輝くタルブの地が広がってきた・・・。


-そこに、かつての美しい草原は無かった。
 立ち上る炎と黒煙が空を包む。
 大地にはむき出しの茶、墨の黒、そして・・・おびただしい赤。

そのはるか前方には、翼を持たぬ巨大戦艦と、巣に群がる蜂のごとき竜騎士の大軍。

「さて おっぱじめるとするか お姫様?」
「ええ・・・派手にやってちょうだい!」

震える右手を押さえながら、ルイズが不敵に笑う。 マシーンが手近の竜に突撃する。

制空権を掌握したアルビオン軍にとって、そこは絶好の狩場であった。
逃げまどう敵相手にどれだけスコアを稼ぐか・・・竜騎士達は、戦場でゲームに興じていた。
故に彼方から飛んでくる物体の異常さに気付くことも無く、彼らは緩やかに杖を構えた。

「魔法が来るわ!」
慎一は答える代わりに、無表情でレバーを思い切り倒した。

「な!」 
敵味方から同時に悲鳴が上がり、急加速した真紅のボディが火竜を直撃、その身をグシャリと分断する。
大きく前方に投げされた騎士は、そのままの勢いでフロントガラスを直撃し、二人の視界を真っ赤に染める。
哀れな騎士は瞬く間に後方、豆粒となって消えていった・・・。

「 バ! バババ バカじゃないの! 何で加速するのよ!?」
「弾が惜しい」
「ケチ臭いこと言ってんじゃあないわよ!」

「漫才やってる場合じゃあねえぞ!! おふたりさん!」
デルフが叫ぶ。

流星のごとく現れた乱入者を討ち取らんと、竜騎士達が包囲の輪を作ろうとする
尤もそれは、一匹の狼を羊の群れが包囲するに等しい行為だった。

「貴様らとはパワーが違うッ!!」

前方の一体を体当たりで跳ね飛ばしながら包囲を抜け、あっという間に魔法の射程外に飛び去る。
そのまま大きく旋回し、包囲を外側から攻撃し、一撃離脱で突き抜ける。
威嚇射撃と体当たりを繰り返しながら、牧羊犬の如く羊の群れを切り分け、二門のバルカンで一掃する。
無秩序な狩りの場は、直ちに効率的な屠殺場へと一変した。

「皆 今こそ突撃を!」

突如乱入してきたモンスター・マシーンが戦場の色を塗り替えるのを
トリステイン軍は塹壕から見ていた。
上空から一方的に焼き払われ、地べたを這い蹲り、泥にまみれながら尚も踏みとどまっていた彼らにとって
それは、初めて訪れた反撃の好機であった。

「あれこそは トリステインの危機に現れる伝説の不死鳥!!
 始祖ブリミルの加護は我等にこそあります」

若き王女の檄に全軍が奮い立ち、戦場の流れを押し戻さんと逆襲に転じる。

正直なところ、圧倒的な戦闘力を有する真紅の怪物に、薄ら寒いものを感じるアンリエッタだったが、口には出さない。
今 この戦いを生き残らねば、不吉もクソもないのだ。

死に体だったトリステイン軍の鴇の声にレコン・キスタ全軍が色めき立った瞬間を、慎一は見逃さなかった。
ただちに加速をかけて竜騎士の層を抜け、巨大艦の前方へと躍り出る。

「どうするの!? シンイチ!」
「知れた事よ! このままあのデカブツを・・・」

言いかけたところで慎一が気付く、艦前方に備えられた大型のハッチ、その悉くが開き始めている。
「ヤベーッ!?」

咄嗟に機体に急ブレーキを掛けつつ、操縦桿を後ろへと倒す。
機体先端が浮き、そのまま垂直に立ち上がる。
前方から大型のミサイルが次々と打ち出される。 同時に再加速したイーグル号が上空に駆け上る。
ミサイルが中空で散弾の如く拡散し、竜騎士、トリステイン軍を問わず、悉くを焼き払っていく。
閃光と爆音が慎一達を後方から襲う。

「チクショウ!! これが本来の姿ってわけか!」
慎一が叫ぶ。
かつて、この巨体と対峙し、その恐るべき機動性を知っていた慎一だったが
実際の戦闘能力を目の当たりにするのは初めてだった。

「正面からは無理だ! 上空から突っ込んでやるッ!!」
巨大艦の前方を飛び上がり、イーグル号の視界が一気に広がる。剥き出しの甲板が眼下に見える。

「シンイチ! 後ろっ!?」

機銃の対空射撃を避けつつ反撃の機会を狙っていた慎一に、ルイズが叫ぶ。
咄嗟に操縦桿を倒し右に免れた機体の脇で、何者かが爆裂する。
至近距離での爆発で、イーグル号の外装がひっぺがされ、剥き出しの金属色が現れる。

「行け バド・・・」
「ギャオオオオォォオオオォォオオオ」

男の指示に合わせ、バドと呼ばれた翼竜が、金属音の混じり合った咆哮を上げる。
青と銀の翼がイーグル号の脇を抜け、慎一達の眼前へと回りこむ。

「ワルド!?」

ルイズが驚きの声を上げる。 彼女の眼前にいたのは、確かにかつての許婚者・・・。
そして、彼が操っていたのは、半身半鉄の大型風竜だった・・・。


「よおッ!! ルイズ! ハルケギニアにはあんなドラゴンも住んでるのか!?」
「いるワケ無いでしょッ!? あんなの!!」
「だよなあああ!!!」

軽口を叩きながら、イーグル号が加速する。 近距離の小回りで対抗できる相手ではなかった。
確かにあんな生物は自然界に存在しないだろう。
金属の外装はともかく、翼にミサイルを背負ったドラゴンなど・・・。

後方から、件のミサイルが再び迫る。
きりもみ状態となって回避を試みたイーグル号のコックピット付近で爆発が生じ、
先ほどとは逆側の外装が持っていかれる。
スピードでは対手を遥かに上回るイーグル号だが、離れたところでそこは敵の間合いだった。

「クソッ! いいカンしてやがるじゃねえかッ! 突っ込むぞ!!」

機体を旋回させ、真正面から鋼のドラゴン目掛けて突撃を掛ける。
その行動を予測していたかのように、ワルドが杖を振るう。
前方から突風が生じ、機体の突進力が大きく削がれる。 ドラゴンが口を開く。

直後、放射線状に放たれた振動波が機体を包む。
金属音が周囲をつんざき、衝撃が機体を付きぬけ、直接慎一の脳味噌を揺さぶり全身を痙攣させる。

「グッオオオオオオ」
大きく歪む視界の中、慎一が操縦桿を倒し、突風の範囲外へと逃れる。
魔獣の細胞を持ってしても抗えないダメージである。 普通の人間では・・・。

「・・・やって・・・くれるじゃないの アイツ・・・」
どうにか体を起こし、鼻血を拭いながらルイズが虚勢を張る。
近間においても遠間においても、イーグル号に勝ち目は無かった・・・。

後方、バドは既に三発目の射撃体勢に入っていた。

「ルイズ! 運転代われ!! バケモノに目に物見せてやるッ!!」
「わかったわッ!! ・・・って ええ!?」

ルイズの驚愕も聞かず、慎一が後方に消える。
程なく、六角形のハッチを力でこじ開け、コックピット前方から現れた。

「シンイチッ!! 無理よ!? 操縦なんて・・・!?」
「うるせえ!! 気合入れて操縦桿握ってろッ!!」

防弾ガラス越しに喚くルイズを尻目に、慎一が機体上部へとよじ登る。
ミサイルは既に目と鼻の先まで迫っていた。

タイミングを計り、慎一が機体を踏みつける。
衝撃で機体は大きく沈み、慎一は上空へと飛び上がる。 開いたスペースにミサイルが飛び込む。
直後、爆発が巻き起こり、慎一は前方へと大きく投げ出される。

「もらったぜえええッ!! ワルドオオ!!」

爆風をデルフを盾にして受け止め、慎一が反動で加速する。ワルドに魔法を唱える余裕は無い。
だが、ワルドは杖を構える素振りさえ見せない。
代わりに左手の義手を口に咥えて、根元から一気に引き抜く。

ズルリ、と左の篭手が抜け落ちて、中から鈍く輝く銃口が現れる。

「何ィ!?」

慎一の叫び声と、中空に鳴り響く銃声は、ほぼ同時であった・・・。



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