あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔の夢-4

『アルヴィーズの食堂』は、学院の敷地内で一番背の高い本塔の中にあった。
 アルヴィーズとは夜な夜な動く小人達を意味するそうだ。
 入り口での別れ際にルイズが嫌味ったらしく色々説明してくれた。
 食事が終わるまで外で待っていろと言われた。
 もう逆らう気力もない。

 巧は広場に出た。
 モグラに蛙、梟。翼の生えた竜とかがいた。
 自分と同じで外で待つよう命令を受けた他のメイジの使い魔達。
「動物園かよ」
 まぁ、貴族の奴等からしたら自分もその内の一匹でしかないんだろうが。

 注意して辺りを見回す。『奴』の姿はない。
 ホッと息を撫で下ろす。
 上に広がるは青空。
 芝生に寝っ転がる。

「あ~」
 腹減った。

 掌を見る。何も異常はない。
 鈴木照夫に宿る王を倒そうとして、木場のカイザに止められたあの時以来、
 体の一部が灰になって崩れ落ちることはなかった。
 だが、それは表面上の事でしかない。
 今は、体の内側の何処が崩壊し続けているのだろうか。
(もっとも、このままじゃ別の理由でくたばってちまうがな)
 ルイズはカンカンだ。あの様子だと、昼飯にもありつけるかどうか。
 気をまぎらわせようと、空に目を向ける。

(冷汁定食、そうめん、冷やし中華)
 何だ。空腹のあまり、雲が形を変えて、食い物に見えてきた。
(ラーメン、お子様ランチ、ピザ、すき焼き)
 自分はこんな食い意地の張った奴だったんだろうか。
(鍋焼きうどん)
 一生好きになれない猫舌の天敵であったものまでいとおしく思えてきた。
 いっくらフーフーしても冷めやしない憎い奴。
 そう、熱くて、暑くて、暑苦しくって……
「熱ッ!」
 慌てて飛び起きる。


 すぐ傍に『奴』がいた。あのキュルケとか言うデカ乳女の使い魔。
 サラマンダーのフレイム。息を荒立てるな。余計熱く感じるだろうが。
「来んな」
 巧1歩後ずさる。フレイム1歩詰め寄る。
「来んなって」
 巧2歩後ずさる。フレイム2歩詰め寄る。
「あっち行けって」
 巧3歩後ずさる。フレイム3歩詰め寄る。

「ご覧、ケティ。あのトカゲとじゃれ合っているのが
『ゼロ』のルイズが召喚した平民だよ」
「まぁ、あんなに楽しそうに追いかけあって」
「きっと、下賎な生き物同士、惹かれあっているのだろうね」
「私達のようにですか、ギーシュ様?」
「ハッハッハ、君と僕との愛は薔薇のように高貴で優雅な芸術さ。
 あんな下劣で下品な戯れとは全くの別物だよ、行こう、僕のケティ」

 大概にしとけ、バカップルが!
 何が楽しそうなんだよ、誰が誰に惹かれてるんだよ!
 こっちの気も知らないで、てめぇ等の目は節穴かよ!
 怒鳴りたい気持ちを抑え、ただ前へ足を動かす。
 フレイムもまたノシノシ、巧の方に歩を進める。
 万全の体調ならさっさと撒いてしまえる程度の速さだが、
 空腹の極限にある今の巧とはいい勝負になってしまっている。
 このままでは先にこちらの体力が尽きてしまう。
 追いつかれるのも時間の問題だ。
 そうだ、食堂だ。
 食堂に逃げ込めば、主人の命令に忠実な使い魔の奴は入ってこられない。
 必死の勢いで入り口に飛び込んだ時、誰かとぶつかった。

「すまない、大丈夫か」
 手を差し出したのは頭の禿げた中年だった。
(確か、こいつは……)
 召喚の時のルイズに立ち会っていた教師っぽい奴。
 ミスタ・コルベールとか呼ばれてた。
「いや、こっちこそ悪かった」
 手をとり立ち上がる。と同時に腹の音が鳴った。 
 貴族のガキ共の笑い声がする。さっさと立ち去ってしまいたい。
「……空腹かね?」
「ああ」
「ミス・ヴァリエールに朝食はもらえたのかね?」
「飯抜きだって言われた」 
「それはいけないな、ミス・ヴァリエールには厳重に注意しておこう」
「そうしてくれ、じゃあな」
 やったぜ、これで昼飯からは確実に食事がもらえるだろう。
 ありがとよハゲ。背を向けて歩き出す。
「待ってくれ!」
 ハゲが追いかけてきた。
「何すか」
「君と話がしたいんだ!一緒に私の研究室に来てくれないか!」
 知るか。お前はさっさとルイズを叱りにでも行ってりゃいいんだよ。
「そうだ、食事を出そう。食べながらでも答えてくれればいい、君に聞きたい事があるんだ!」


 巧が連れて来られたのは研究室とは名ばかりのボロっちい掘っ立て小屋だった。
 妙な異臭とか置物とか気になったが、空腹の前では些細な事でしかない。
「昨日の夜食の残りとあり合わせで、申し訳ないのだが」
 出されたのはカチカチのサンドイッチ、冷えたスープ、サラダ。
「さ、すぐに温めてあげよう」
 杖を振ろうとするコルベール。
「いや、いい」
 早速、サンドイッチに手をつける。
「何故かね?冷めたままでは美味しくないだろう」
「フーフーしながら食わないといけなくなるからな」

「私が聞きたいのは君の乗っていたあの車輪の乗り物のことなんだ」
「バイクの事か」  
「そう、それの事だ。
 実を言うと、私は君とミス・ヴァリエールが
 あの「ばいく」に乗って走っているのをずっと見ていた」
 気味悪ぃな。
「私は衝撃を受けた。あれだけの大きさで
 2人もの重量をのせながら、馬より速く走れるだなんて」
 そういやあん時はムシャクシャしてたから、思いっきり飛ばしてたっけか。
 後ろでルイズが速度を落とせとかキャーキャー喚いてたけど。 
「君の左手のルーンの事も気掛かりだったが、
 一目「ばいく」が走るのを見てから一晩中そのことばかり考えていた。
 一睡も出来なかった。みてくれ、この目の隈を!」 
 眼鏡を外し、目の周りの隈を指差し見せ付ける。わざわざ見せんでもいい。
「朝食もほとんど喉に通らなかった!
 もやもやの覚めないまま食堂を後にするその時、君が現れた!
 この出会いは迷える私を救う始祖ブリミルのお導きに違いない!
 さぁ教えてくれ、あのマジックアイテム「ばいく」の全てを!」

 マジックアイテム……魔法を使った道具の事だろうか。
 巧は率直に答えた。
「魔法なんて使ってない」
「え?」
「魔法なんて使ってないって言ったんだ」
「じゃ、じゃあ、あれは何で動いているのだね!?」
「ガソリンが燃料で、エンジンで動いてる」
「ガソリンとは何だね!?エンジンとは何だね!?」 
「ガソリンは油だ。エンジンは知らん」
「油!?どのような油なのかね?」
 いい加減うっとおしくなってきた。
「うっせぇなぁ!そんなに知りたきゃ自分で調べて見りゃいいじゃねえか!」


 コルベールの表情が止まった。
「いいのかね」
「ああ、変に壊さなけりゃ好きにしていい。」 
 コルベールの顔がパァッと輝く。頭上の光にも勝るとも劣らない。
「きっ、君には感謝しても仕切れないよ、ミス・ヴァリエールの使い魔君!
 良かったら君の名前を教えてほしい!」
 歓喜の涙を浮かべ、コルベールは巧に手を差し伸べる。
「俺は乾巧だ」
 呆れながら巧は手を握り返す。

 その時、このコルベールが巧との出会いをきっかけに
 トリステイン、ハルケギニアの未来を大きく変える発明家になることなど
 誰も想像していなかった。

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