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虚無を担う女、文珠を使う男-07


第7珠 ~使い魔、その能力を現す・後編~

夕食から戻ってきた二人は、横島の寝床についてひと悶着起こした。
「本当なら使い魔専用の厩舎で寝泊りするところを、特別にここで寝かせてあげるのよ。文句を言われる筋合いなんてない」と両手を腰に当てて主張するルイズ。
対して、滝のような涙を流しながら「たった毛布一枚で満足に寝られるかー」と喚く横島。
結局、横島が諦める前にルイズが根負けした。部屋に、使い魔用の藁布団を入れる許可をする。

その後、「もう寝る」と着替え始めたルイズを見て、「出来れば後5年遅く呼ばれたかったなぁ」と呟く横島。
それを聞いたルイズが、その意味を問いただして横島を折檻する事になったりもしたが…
それ以外には特に大きな問題も無く、概ね平和に一日が終わりをつげた。


そして翌日。
昨晩の件もあり、今まで通りルイズが自分で着替えている。
その為、横島は部屋から出て待っていたのだが… ルイズの着替えが終わるよりも早く、隣の部屋のドアが開いた。
出てきたのは、その扇情的な姿で幾人もの生徒を虜にしているキュルケ。

「誰かと思ったらキュルケさんじゃないすか!? いやぁ、隣同士の部屋だったなんて、これはもう運命っすね!?」
「フレイム!!」

昨日の件も懲りずにいきなり飛び掛って来る横島に、慌てず騒がずフレイムに火を吐かせるキュルケ。

「…こうなるのが分かっててやるんだから、ほんと変な奴よね」
「ぎゃー 痛い、痛い、俺なんか食っても美味くなんかねーぞ!!」

フレイムの炎で焼かれた割には元気な声を出している横島。
その彼の黒焦げになった足を、腹が減っているのか、フレイムがかじってる。

「フレイム、そろそろ朝食の時間なんだから、我慢しなさい。
それに、そんなの食べるとお腹壊すわよ」

何か悪い物のように扱われる横島と、名残惜しそうにかじるのをやめようとするフレイム。
そして、開け放たれるルイズの部屋

「もう、うるさいわねー 一体どうしたって…」

そう言ってドアを開けたルイズに見えたのは、ところどころ焼け焦げている上に、フレイムに足を食べられかけている横島。

「ツ、ツェルプストー!? 人の使い魔をエサにするなんて、どういうつもり!!」
「ちょっとしつこいから、フレイムに焼いてもらっただけよ。
別にエサにするつもりなんか無かったわ」
「でも結局あんたの使い魔が食べようとしてたじゃない、これじゃエサにしようとしたのと大して変わらないわよ!!」
「何よ、悪いのはあんたの方の使い魔じゃない。私は悪くないわよ。ほら、行くわよフレイム。朝食に遅れちゃうわ」

まだキーキー言ってるルイズを置いて、キュルケとフレイムは去っていく。
仕方ないので、ルイズも横島に一声かけてから食堂へ向かうのだった。


その後、横島をつれて授業に参加したルイズ。
「また暴走されては敵わない」と思ったのか、予想されたような罵声が浴びせられる事もなく。
また授業でルイズが指名される際も、運良く筆記系統の内容だったため、爆発が起きる事もなかった。
(二日連続で教室を破壊されてはたまらない、と教師陣も思ったのかもしれないが、真実を知る術はルイズにも横島にもない。
なにより、自分の使い魔の前で失敗を起こさなかったという結果の方がずっと大事だ)

そういうわけで、昨日の騒動とは打って変わって平和に放課後を迎える。



「昨日、あれからまぁそれなりに考えてたんすけど…」

ルイズと横島は学院長室にいた。顔ぶれは昨日と一緒である。オスマン・コルベール・ロングビル。
扉を閉め、サイレントをかけ、それを確認したオスマンが横島を促して話が始まった。

「ここって、俺が元いた所と違って、魔法を使える人がかなり多いみたいっすから、かなり悩んだんすよねー
文珠はそんな頻繁に使える物でもないんで、魔法で出来る事は魔法でやった方がいいかなぁ、と思うわけで」

よく文珠のストック切れでひどい目に合っていた経験を思い出しながら、そう提案する横島。
彼を良く知っている者なら、「そう思うんなら覗きみたいなくだらない事に使うのもやめろよ」とツッコミを入れる所だが、あいにくまだこの世界にそうできる者はいない。
そうして話し合った結果、彼は自身でも反則技だと思っている【模】を使う事に決めた。

「それじゃあ、とりあえず文珠を出してっと」

そう言って、皆の前に手のひらを上に向けて右手を差し出す。
軽く握ったと思うと、淡い緑色の光が手の中から漏れ出し…
次に手を開いた時には、昨日説明のあった通りの小さな珠が現れていた。
ほぅ、と誰かの関心したようなため息が聞こえる。

「とりあえず、これが空っぽの文珠っす。そして…」

【模】の字が文珠に表示される。

「これが使える状態っと。
で、さっきも言ったように、これを使うと『誰か』をコピーしてその力を使う事が出来るようになるんすけど…
誰になるか、まだ決めて無かったっすよね」

そう言って、一息ついた横島は…
いつにもなく真剣な表情で切り出した。

「やっぱりどうせなるなら、ロングビルさんがいいと愚考するわけですが!!」
「おお、お主もそう思うか! ワシもちょうどそう思っておったところじゃよ!」

真顔でいきない何を言い出すんだ? と二人を見つめるコルベールとルイズ。
ロングビルは、ほんの少しだが顔を強張らせた。誰もそんな事には気付かなかったが。

「何をバカな事を言ってるんですか。やはりここは一番実力の高いオールド・オスマンにするべきかと…」
「そ、そうですわよ。私なんかただのラインメイジですよ! こんな私になるよりも、学院長になった方がよっぽど凄いじゃないですか!」
「あんた何考えてんのよ? 今はあんたがどれだけ使えるかの確認なんだから、素直に学院長になっておきなさい!!」

そんな猛抗議がなされるが、横島とオスマンはてんで聞いてない。
「それじゃあ1番、横島忠夫、ロングビルさんの物真似、いっきますー」

ごっくん。3人が止めようとするも叶わず、横島は【模】の文珠を飲み込んだ。
直後、彼の全身からまばゆい光が発せられ…
それがおさまった時にはロングビルに服装・スタイルともにそっくりな、でも顔は横島の面影が残っている女性の姿があった。
見る人が見れば、以前横島がエクトプラズム・スーツを使って自分の理想の女性の姿を取った時の顔を思い出すだろう。

「ほー これはこれは。正直、顔だけ元のまんまとかじゃったらどうしようかと思っていたわい」

そう言いながら、さっそく手を伸ばすオスマンだったが…

「やめんかーっ! 何が悲しゅうてじじいに触られなきゃならんのじゃ!!」
「何を言う、お主は今ミス・ロングビルじゃ。つまりワシの秘書。
そこに秘書がいるなら、触るのが礼儀というものじゃろう」
「「そんな理屈通るわけあるかー!」」

ボケた事を言うオスマンに、二人のロングビルが揃ってツッコむ。
ピクリとも動かなくなったオスマン。
それを見て深くため息をつくコルベール。
自分の使い魔がとんでも無い事をしたとおびえるルイズ。
ワナワナと怒りに震えているロングビル。
自分の姿を鏡に映して(遠見の鏡に使ったあれだ)、うっとりしている横島。

最初に我に返ったのは、やはりコルベールだった。生え際が後退しつつあるのは、伊達ではない。
未だに気が付かないオスマンを気持ちの端に追いやって、鏡にキスしようとしている横島に声をかける。

「あー そのヨコシマ君? やってしまったものは仕方ない、さっそく魔法を使ってもらえないかな?」

その言葉で、横島もようやく我に返り…

「あ、すんません。すっかり忘れてました。えーと、それじゃあ…
ちょっと待ってて下さい、魔法使うなんて初めてなんで、使い方を覚えないと…」

と言って、ロングビルをコピー中の横島は、彼女の持つ魔法の記憶を探る。

(あれ? ロングビルさん、さっきラインメイジって言ってたよな。実はトライアングルメイジじゃねーか。
…わざわざ隠したって事は、やっぱり俺も使わないでいた方がいいんかな)

かつて横島は、世界を破滅させようとする魔神を相手にした時にもこの【模】を使った事がある。
横島の思惑とは違い、文珠【模】の効果は「持続時間中、対象の状態を肉体的特徴・技術はもとより、その思考まで含めてシミュレートし続ける」であったわけだが、それを相手に見破られあえなく撤退するしか無かったのは苦い記憶だ。
(シミュレートし続ける、ということは、相手に与えられたダメージまでシミュレートしてしまう、つまり最上の結果の場合でも相討ちにしかならない)

つまりどういう事かと言うと。疑問に思った横島は、ロングビルの思考を読む事も出来る、ということだ。

(なになに…

「もし本当にあたしの力をコピーしたっていうなら、土のトライアングルスペルを使えるってバレちまうわけか。
トライアングルスペルを使わないように丸め込むしかないね…
ダメだったら、『文珠』使うと効果が高まるのでは? とでもごまかすしかないか。
それから最低でも3日は文珠を作れないっていうことだから、その間に…」

あ、あれ? なに、もしかしてロングビルさんって…)


彼が読み取った思考は、ロングビルの物だったがロングビルとしての物ではなかった。
そう、そこにいたのは、ここ最近トリステインを騒がしている怪盗フーケ!!
まぁ彼自身はそんな事知りもしないわけだが。

「ヨコシマ君、どうしましたか?」

コルベールが心配そうな顔で声をかけてくる。
その声に、自分が時間をかけすぎた事と思った横島は、本来の目的である魔法の使い方を探し出した。

「ロングビルさん、ちょっと杖貸していただけます? 本当は杖もコピー出来れば良かったんすけど、さすがにそこまでは無理だったみたいで」
「…あ、杖でしたね。少しお待ち下さい」

多少反応が鈍かったのは、やはり対処方法を考えていたからだろう。
ちょっとでも注意しておけば気付くような不自然さだったが、あいにく横島を除いてはそれに気付く者はいなかった。

オスマンは未だに「う~ん。う~ん。ミス・ロングビルや…」と唸っているし…
ルイズは一応こっちを見ているものの、その両手は、年の割には微妙な自らの胸に当てられ、その口からは「あ、あれを使えば私だって…」などという呟きがもれていて、他人を気にするどころでは無いようで…
そしてコルベールはコルベールで、一人考え事をしていた。

「うーむ。着ている物には効果が発揮されても、杖にはそれが及ばないのですな。やはり杖に宿っている魔力が邪魔をしているのでしょうか…
いや、魔力が邪魔をするなら、魔法が使えるという能力がコピーされるのもおかしい気がしますぞ…
これは、やはりもっと多くの実験を行わなければダメかもしれませんな」

コルベールが悩んでいる間に、ロングビルは自分の杖を取り出して横島に渡そうと近づき…
周囲をざっと見回した後、横島の耳元へ顔を近づけてこっそり耳打ちをする。

「私がわざわざラインメイジだって言った事、覚えてるかい?」
「ああ、やっぱりあれは言い間違いとかじゃなかったんすね。実はトライアングルだっただなんて…」
「それ以上言うんじゃないよ? あたしがラインって偽ってるのは、ちゃんとした理由があるんだ。だから…」

そう言うと、ロングビルは横島の手を取り自分の胸に持っていく。
弾力のある、何とも言えない感触が横島を襲い…

「あんたも、あたしがトライアングルだって事は黙っておいてくれたら嬉しいんだけどね。
もし嘘をついてたってバレたら、あたしはここから出て行かなくちゃならなくなる。
そうなると、あんただって悲しいだろ?」

大人の女性からこれほど迫られた事など、数えるほどしかない横島だ。
(その数少ない記憶だって、「実は地雷女だった」竜宮城の乙姫に「ふしゅるる」と唸る逞しき天神族の織姫など、彼だとて遠慮願いたいものが大半である)
そんな彼にとって、この誘惑を退ける事は出来なかった。
ついでに言えば、上司が美人だというだけで「脱税上等、違法行為もなんのその、お金の為なら神でも悪魔でも相手する」職場で働いていた横島だ。
先ほど、ほんのわずかに垣間見た記憶程度の事では、彼女とわざわざ離れる選択肢を取るには足らない。
彼は、一もニもなく首を縦に振った。




それから少したち、気付いたオスマンも含めて皆が注目している中、横島が幾度も魔法を使う。
かなりの回数を使用した後、文珠を使った時と同様に彼の身体が発光し、元の横島の姿が現れる。

「大体こんなもんみたいっすね」

ロングビルに杖を返す横島。
少しして、何かをまとめていたコルベールが横島に質問をする。

「まずはご苦労様でした、ヨコシマ君。ところで、ニ・三質問したいのだが構わないかね?」
「まぁ俺にわかる事なら」
「ありがとう、助かるよ。
さて… 君が行った魔法に関しては出来るだけ記録させてもらったのだが、一般的ラインメイジが使ったとは思えないほどの結果が出ている。
大体、この半分ほども魔法を使ったらそれで精神力が尽きると思うんだが、どういう事だと思うね?」

それに少し考えてみる横島。

「うーん。精神力が尽きる、と同じかどうかは分からないっすけど、少なくとも俺達の言う『霊力』が尽きた状態、にはならなかったすよ。
ただ、文珠の効果時間っていうのは発揮する効果が大きければ大きいほど短くなるんで…
文珠にこめられた霊力が無くなったって事なんすかね?」

もともと横島自身あまり良く分かっていない文珠の事だ。
彼にとってはまるっきり専門外である魔法との組み合わせの事、分かったとしたらその方が不思議だ。
(仮に… 彼の世界での魔法のエキスパートである魔鈴がいたとしても、分からないという事は変わらないだろうが)

文珠を毎回実験に使うわけにもいかないし、今回の件だけでも、文珠が既存のマジックアイテムとはかなり逸脱した効果を発揮するものだと分かった。
残念な気持ちで一杯だったコルベールだったが、これで実験はおしまいとなり解散となるのだった。


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