あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

とある魔術の使い魔と主-21


ワルド達は、再び走り出す。
ルイズは腕の事を心配したが、しきりに大丈夫です~、と若干冗談を交えて当麻は安心させようとした。
剥き出しというのもどうかと、傷を布で覆い隠す。少しでもルイズを不安がらせないようにする当麻なりの配慮である。
(それにしても……)
走りながら、当麻は先程の戦いを思い出す。
あれは完全に当麻が油断してしまった結果である。近接戦闘を行いがら呪文を紡ぎ、魔法を放つ。おそらく天草式の人達と同じタイプなのであろう。
(やっぱりこっちでも魔術に関してはあまり変わらないんだな)
元の世界で幾多の魔術師と戦って来た経験が、役に立つ。根本的な部分はそこまで変わらない。
次は先程のようにはいかない。向こうの誤算はここで当麻を仕留めそこなった事。そういう事にしてやる、と当麻は心に決めた。


階段を上った先には一艘の船が停泊していた。帆船のように当麻は見えた。唯一違う点を挙げるとしたら、羽が突き出ている点だろうか?
枝に何本ものロープが絡まっていて、船は枝に吊るさられていた。
そして、当麻達が乗っている枝が迎えるように甲板へと伸びていた。
彼等が船上に現れると、甲板で寝込んでいた船員がこちらに気付き、起き上がった。
「なんでぇいおめぇら!」
かなり酔っている。普通の吐く息でさえもかなり臭い。
「船長はいるか?」
「もうお休みさ、用があるなら、明日の朝、改めてくらーことだな!」
男は景気よく、手に持っていたラム酒をラッパ飲みしながら、答えた。いやもう、一発ぶん殴ろうか? と当麻は思った。
ワルドは黙ったまま、杖を引き抜いて男の方へと向ける。すると、男の目が見開いた。
「貴族に二度同じことを言わせるとはな。船長を呼んでくれないか?」
「き、き貴族!」
男はがばっ、と立ち上がると、船長室へと走り去っていった。
当麻はその様子を見て、思わずルイズに話し掛ける。
「貴族って何でもオーケーなんだな」
「当たり前じゃない。貴族と平民は雲泥の差よ」

そうは言ってもな……と当麻は髪をかく。
確かに上の立場、下の立場はあるしそれは認める。
しかし、それを当然だと思うのはどうかと思う。生まれた時からその人生が決まるというが、これはさらに制限されている。
(だから革命が起きたんだろうな)
名前は覚えてないが確かあった……というかなかったら困る。
当麻の世界では貴族はほとんどいない。いたとしてもこのような人格はしていない。
いつかこの世界にも革命が起きるんだろうな、と言葉に出来ない事を思っていると、船長が現れた。

やや寝ぼけており、髪はぼさぼさになりながらもこちらに向かってくる。
少し歳をとって、帽子を被っている。船長のイメージにはピッタシだ。
「何か御用ですかな?」
船長は早く話を終わらしたいように思えた。
「女王陛下の魔法衛士隊隊長のワルド子爵だ」
今度は船長の目が見開かれる。今ので目が覚めたのだろう。こちらの身分が相当高い事がわかった為、言葉遣いがさらに丁寧になる。
「これはこれは……。して、なぜこのような当船に赴いたのでしょうか?」
「アルビオンへと今すぐ出港して欲しい」
「それは無茶です!」
船長の声が途端に大きくなる。本来の予定ならば明日に向かうのだ。だけどなぜ無茶なのだろうか? 予定をちょっと早くなるだけではないか。
「勅命だ。まさか王室に逆らうつもりか?」
「いえ! そのような事は断じてございませんが、朝にならないと出港が出来ないのです!」
「なぜだ?」
「アルビオンが最もここ、ラ・ロシェールに近づくのは朝であります! その前に出発したんでは風石が足りませんや!」
「……風石って何?」
当麻が耳打ちでルイズに聞く。
そんな事も教えなきゃいけないの? といっためんどくさげな目を見られて、当麻はハハハ、と苦笑いを取るしかなかった。
「『風』の魔法力を蓄えた石。それがあるから船は宙に浮かぶの」
ふむ、と当麻は頷く。ならばそれさえ触れなければ沈没、という事はなさそうだ。
「子爵様、当船が積んだ『風石』はアルビオンへの最短距離分しかありません。それ以上積んだら足が出ちまいます。よって今は出港できません。途中で地面に落っこちてしまいまさあ」「なら大丈夫、『風石』が足りない分は、僕が補う。僕は『風』のスクウェアだ」

船長と船員は、顔を見合わせた。おそらく初めての出来事で戸惑っているようだ。少しだんまりした後、再びワルドの方へ向く。
「ならば問題ないかと。料金ははずましてもらいますよ」
「積荷はなんだ?」
「硫黄で。アルビオンでは今や黄金並の値段がつきますんで。新しい秩序を建設ならっている貴族のかたがたは高値をつけてくださいます。秩序の建設には火薬と火の秘薬は必須ですからね」
「その運賃と同額を出そう」
船長は笑みを浮かべた。なんともまぁいやらしい笑みではあったが、こちらの条件に対して頷いた。
無事商談は成立、船長は船にいる船員に命令を与えた。
「出発だ! もやいを放て! 帆を打て!」
こんな夜中にかよ……とぶつぶつ文句を言っているが、船員達は淡々と船長の命令に従い、出発の準備をし始める。
帆を張り、枝に吊した綱を解き放つ。ガクッ、と重力に従って沈んだが、直ぐさま発動した『風石』の力で宙に浮かぶ。
帆と羽が風を受け、ゆっくりと動き出す。
ここまで時間にて僅か数分、ヒュウと思わず口笛を吹いてしまう。
「アルビオンにはいつ頃着く?」
「明日の昼過ぎには、スカボローの港に到着しまさあ」
ワルドが尋ね、船長が答える。
まだまだ時間がかかるんだな、と当麻は舷側に乗り出して、景色を見る。

下の方で、ラ・ヴァリエールの明かりが離れていく。かなりのスピードが出ているようだ。
と、誰かに手を置かれた。見るとそれはルイズであった。
「傷は大丈夫?」
心配そうにルイズは左腕を見る。
「あぁ、こんなもん上条当麻さんにはへのへのへ~ですったい。それともあれですか? もしかして心配しちゃってるんですか?」
当麻の冗談を含めた言い方に、ルイズはキッ、と睨んだ。
「当たり前でしょ! 使い魔を心配するのは当然よ!」
ちょっと涙を浮かべながら怒鳴るルイズに、当麻は手を左右に振りながらも慌てた。
「いや、大丈夫だってホント。マジ俺の復活速度は半端ないし。つーか右手でほとんど打ち消したし問題ないって」
ほらほら、と作り笑いをしながら右手を見せびらかす。
ルイズにも当麻の右手、幻想殺しの効果がどれだけ凄いか知っている。
「なら……いいけど」
まだ何か言いたげな様子であったが、とりあえずルイズは納得した様子。
そんな二人の元に、ワルドが寄って来た。
「船長の話では、ニューカッスル付近に陣を配置した王軍は、包囲されて苦戦中のようだ」
その時、ルイズはある事に気付きワルドへと詰め寄る。
「ウェールズ皇太子は?」
返事の代わりに首を横に振った。
「生死もわからない、か。とりあえずこれからどうするんだ?」
「王党派と連絡を取りたい所ね」
「陣中突破しかあるまいな。スカボローからニューカッスルまでは馬で一日だ」
ゲ……と当麻は口から漏らす。彼にとって馬は、もう半ばトラウマとなっている。
「反乱軍の間を擦り抜けて?」
「そうだ。それしか方法はないだろう。まぁ向こうもこちらに公然と手出しは出来んだろう。暗闇に気をつけながらも隙を見て、ニューカッスルの陣へと向かう」
「んじゃあさ」
ワルドとルイズは当麻に目をやる。
「とりあえず決まった事だし、休まない?」


どれくらい寝ただろうか?
当麻は眩しい陽の光と話し声で、意識を取り戻した。
ゆっくりと目を開けると、一面青空が広がっている。再び舷側から身を乗り出すと、白い雲が広がっている。どうやら船は雲の上を進んでいるようだ。
あれ? でも息苦しくないよな、と早速この世界の常識に不思議がっていると、鐘楼の上に立っている船員が大声で叫ぶ。
「アルビオンが見えたぞ!」
という事は今は昼過ぎか、随分寝たなー、と閉じそうな瞼をごしごしとこする。
立ち上がり、気付く。隣で小さな寝息を立ててルイズが寝ていた。
どうやらここでも使い魔の仕事をしなければならないようだ。当麻は優しくルイズの肩を揺らす。
「ふぇ……」
「着いたらしいぜ」
一声かけて、体を大きく逸らす。当麻にとって目を覚ますのにはこれが一番だ。
するとルイズが起き上がり、ある方向を向いたまま目線を変えなかった。なんかあるのか? と思い、そちらへと視線を向け……
当麻は息を飲んだ。
「おいおい、この世界はホントなんでもありだな」
「驚いた?」
そこには、巨大な大陸が文字通り浮いていた。地表には山がそびえ、川も流れている。
当麻の許す視界には収まりきれない程の大きさだ。
「浮遊大陸アルビオン。ああやって空中に浮遊して、主に大洋の上をさ迷っているわ。でも、月に何度か、ハルケギニアの上にやってくる。大きさはトリステインの国土ほどもあるわ。通称『白の国』」
「白の国?」
当麻の質問を待っていたのか、ルイズは大陸の方を指差した。
大河から溢れた水が空に落ち込んでいる。その際、白い霧へと変わり、大陸の下半分を包んでいた。
百聞は一見にしかず、なるほど、と当麻は納得した。
あの霧が雲となって大雨を降らしているのだと、ルイズは補足してくれた。
その時、再び鐘楼の上に立っている船員が、大声で叫ぶ。

「右舷上方の雲中より、船が接近しています!」
当麻は視線を大陸からずらす。そこには肉眼でもはっきしと船が近づいて来ているのがわかる。自分らの船より一回り大きく、舷側に開いた穴からは大砲が突き出ている。
「……いや、そんな事はないですよね? あったら困るよな?」
当麻は最悪の展開を頭に浮かべる。こういった時、よくある事といえば――
「いやだわ。反乱勢……、貴族派の軍艦かしら」
当麻の代わりにルイズが答えた。

「何ですか一体、どうしてこうも困難フラグが立つんですか!?」
「知らないわよそんなの!」
うがー、と当麻は両手で頭を抱えて悩む。
簡潔に言うと、空賊に船を乗っとられてしまったのだ。
当麻やルイズの予想通りだったのかはわからないが、それは一番質の悪い空賊であった。
あちらは無数の大砲にメイジもいる。こちらは三つだけの大砲に、魔力がないメイジと魔法が放てないメイジ。
戦力の差は決定的、ここは素直に捕まるのを選んだ。
三人は船倉に閉じ込められた。一緒に航空した船員達は、自分達のものだった船の曳航を手伝わされているらしい。
周りには、酒樽やら穀物のつまった袋やら、しまいには火薬樽までもが散らばっている。
ワルドはやることがないのか、興味深そうに見て回っている。
一瞬、当麻の顔が苦痛の表情へと変わる。ズキッと左腕が再び痛みだしたらしい。その一瞬を、ルイズは見逃さない。
「トウマ、怪我痛むの?」
「あー大丈夫だって。いやちょっとは痛むけど」
「痛むならちょっと見せてよ。ほら」
ルイズは当麻の答えを聞く前に腕を掴むと、布を取り払った。
「きゃ!」
ルイズは思わず尻餅をついた。それぐらい当麻の腕は酷かった。
左腕の手首ちょい手前から肩までひどい水ぶくれとなって、見られたせいなのか痙攣も起こし始めた。
「ひどい火傷じゃないの! どうしてほっとくのよ!」
ルイズは立ち上がると、扉を叩いた。

「誰か! そこにいるでしょっ!」
当麻は再び布で左腕を覆い被せる。その間にも看守の男がこちらの様子に気付いた。
「なんだ?」
「怪我人がいるの! 水と……後『水』系統のメイジはいないの!? 治してほしいの!」 「いねぇよ」
「嘘! いるんでしょう!」
「あーもう落ち着けって」
取り乱しているルイズに思わず当麻は手をかける。ルイズはそんな当麻をキッと睨む。
「なんでよ! あんた怪我してるじゃないの!」
「あーすみませんこの子ちょっとオーバーリアクションで……な、ちょっと向こうへいこうか?」
「あ、ちょっと! 何してんのよ!」
ルイズの手を引っ張り扉から離れる。看守の男は首を傾げながらも再び座り込んだ。
「とりあえず落ち着いてくれ。向こうをあまり刺激しちゃマズイ」
「なにムゴゴ」
よ、と言い切る前に当麻が口を塞いだ。しばらくして放すと、ルイズは顔を伏せ、黙った。
「確かに何も言わなかった俺が悪い。けど俺達は姫様から授かった重要な任務のまっさだなかだ。あそこで俺の治療の為に時間を使うわけにはいかなかったんだ」
そう、ラ・ロシェールでもそうだったが、『目的地に辿り着くのが任務』なのだ。だからタバサ達を犠牲にしてここまできた。
その事実があったからこそ、当麻は弱音を吐かなかった。しかし、ルイズにとってそんなのはどうでもよかった。
「あんたはわたしの使い魔なんだから……心配かけさせないでよ」
肩が震えている。顔を隠しているがヒック、と言葉を吐き出す。
「えとー……ルイズさん。もしかして泣いていらっしゃるのでしょうか?」
「泣いてないもん……、絶対に泣かないもん……」
当麻は困った。正直自分が悪い。全責任が当麻にある。慰めようにも多分言う事を聞いてくれないだろう。
仕方なく当麻はワルドの元へ向かう。
「慰めてやってください」
状況を理解していたワルドは黙って頷くと、当麻の代わりにルイズの元へと向かった。見たら殺されそうな気がしたので、視線を違う方へと逸らした。
と、扉ががたんと開いた。空賊の一人が入って来ると、三人に話しかけた。
「頭がお呼びだ」


当麻達三人が連れていかれた部屋はかなり立派であった。豪華なデイナーテーブルが中央に置かれている。その一番上座に腰掛けているのが、この空賊船の船長であった。
大きな水晶のついた杖をいじっているのに夢中で、その周りの部下達がルイズ達をニヤニヤと笑いながら見つめている。
ここまでルイズを連れて来た男が、後ろからルイズをつついた。
「おい、頭の前だ。挨拶しろ」しかし、このルイズははいそうですかと頷かない。挨拶の代わりに頭をただ睨み続けた。
すると、頭はこちらを見てニヤリと笑う。
「気の強い女は好きだぜ。さて、名乗りな」
「大使としての扱いを要求するわ」
頭の体がピクッと動いた。
「どうしてだ?」
「わたしは王党派への使いよ。まだ貴族が勝ったわけじゃないから、アルビオンは王国だし、正統なる政府は王室ね。
 わたしはトリステインを代表してそこに向かう貴族だから大使ね。だから、大使としての扱いを要求してるの」
「王党派と言ったな」
「えぇ、言ったわ」
「今ここで言うが、俺達は好き放題暴れる代わりに、王党派に味方するような連中を捕まえるという条件があってな――」
「だから何よ?」
頭の会話に乱入する。が、気にせず話を続けた。
「貴族派につく気はないかね? それなら港まで無料で運ぶし、向こうも礼金をたんまりくれるだろう」
「それだったら死んだ方がマシね」
ルイズははっきしと言った。当麻は頭を抱えたくなった。なんというか、貴族というのはきっと交渉が下手なんだなと思った。
(でもまぁ、その姿勢は誇れるぜ)
ルイズの体は僅かながらも震えていた。好きで言っているわけではない。怖いのだ。しかし、たとえ怖くても、真っ直ぐルイズは男を見つめている。
そんなルイズに、当麻は彼女の『力』を感じた。
「もう一度言う。貴族派につく気はないかね?」
頭の口調が重くなった。ぴりぴりと緊張が走る。
それでも、ルイズは負けない。負けないつもりだったが当麻が先に口を開いた。

「無理だ。無理です。無理無理無理無理無理無理無理無理ー!」
だー、と両手を大の字に広げる。全員が当麻に視線を向けた。
「あーもう、何度も繰り返すとかどこのアナウンスさんですか。俺達は王党派なんだ。その事実は何があっても覆んねえよ」
「貴様はなんだ?」
今度は当麻を睨み付ける。しかし、当麻にとってこんなのは怖くもなんともない。
「ただの使い魔」
「使い魔?」
「ただのを入れ忘れてるぜ?」
途端頭は笑った。部屋中を支配するぐらい大声で笑った。
「トリステインの貴族は、気ばかり強くてどうしようもないな。まぁ、どこぞの国の恥知らずどもより何百倍もマシだがね」
頭はそう言うと、再び笑い出して立ち上がる。当麻達はあまりの豹変ぶりに戸惑い、顔を見合わせた。
「失礼した。貴族に名乗らせるなら、まずはこちらからだな」
周りに控えた空賊達が、一斉に直立した。なんだなんだ!? と当麻は身構えた。
すると頭は髪の毛をびりっとはがした。それはカツラであった。眼帯を取り外し、つけひげもびりっとはがす。
現れたのは、凛々しい金髪の若者であった。
「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……いやこの肩書きよりこちらの方が通りがいいだろう」
若者は再び威風堂々、名乗った。
「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」
ルイズと当麻、二人が口を大きく開けた。


新着情報

取得中です。