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ゼロの魔獣-29


「結論から言おう シンイチ君 あのマシーンは 動かすことができる!」

いかがわしい研究道具が立ち並ぶ掘っ立て小屋の中で、コルベールは高らかと宣言した。

「いや・・・ しかし 
 あの機体は 知れば知るほど素薔薇しい
 君達のいた世界は魔法の代わりに科学の発達した世界だとは聞いていたが
 まさか これほどの物とは思わなかった。
 あれを作った人間は 間違いなく天才だよ シンイチ君!
 例えば この機械を動かしている原動力一つとってもそうだ
 君の論述と背面のブースターから この機体の原動力は油・・・君達の世界で言う化石燃料だと思っていたが
 それはまったくの見当違いだった!
 何だと思う? 何だと思うかね シンイチ君!」

「・・・・・・・」

結論から言おうと言った割りに、コルベールの話は延々と結論に到達しなかった。

慎一が不機嫌そうに禿頭を睨む。 その目は真っ赤に充血している。
その顔からはハッキリと疲労の色が見て取れる。
無理もない。 慎一はこの四日間コルベールの部屋に監禁され
広辞苑のように分厚い仕様書の翻訳をさせられていたのだ。

「聞いて驚くな! 放射線! 放射線だよ!
 この概念を理解するまで 私も相当な時間を費やした
 空の彼方から目に見えないエネルギー源が降り注ぎ、大気に満ち溢れていたとはね
 しかし 考えれば考えるほどこれは素薔薇しい発見なのだよ!
 莫大なエネルギーを無公害で取り出せる究極の炉心
 しかもエネルギー源は空の果てに無限にある!
 星の海を泳ぐ船を作り出すのに これ程最適なシステムは無いと断言できる!」

「・・・・・・・」

―この四日間、ろくに眠ってもいないのは、コルベールも同じハズである。
 無精髭が伸び、頬は大きくコケ、眼窩は窪み、体からは香ばしい匂いを発しているが
 その気力は一切萎える事無く、瞳はむしろ爛々と輝いている。

「それだけじゃあないぞシンイチくんあの機体が特別製なのはエンジンだけじゃない例えばこ
 の外装通常の金属じゃない特殊合金で放射線の当て方によってはチップが分裂したり大きく
 変形したするんだこの機体はそれによって三種の特徴を持つロボットへと変形してあらゆる
 状況に独力で対応できるように設計されているんだイヤー実に惜しい残りの二体も揃って
 いたなら変形合体のメカニズムを解析して様々な技術へと応用できるであろうにいずれにせ
 よこの機体の発見はハルケギニアの歴史を大きく変えうる物だこの技術が公に研究される
 ようになればわれわれに生活も大きくへん・・・」
「ど り ゃ あ あ あ ! !」

慎一の鋭い前蹴りが水月を直撃し、コルベールが悶絶する。

「・・・な・・・ぜ・・・ シン・・・イチ・・・く・・」
「俺は・・・ 科学者がキライなんだ!」

とばっちりである。

だが、ここで突っ込んでおかねば、コルベールは間違った方向に進んでいたかもしれない・・・。
徹夜明け、二人の男の脳味噌は完全に煮えていた。

「機体は動かせるといったな
 何故、シエスタの爺さんはあれを飛ばさなかったんだ?」

「・・・純粋なエネルギー不足だよ
 彼の世界とハルケギニアでは 降り注ぐ放射線の量が違いすぎた
 残念ながら 機体に十分なエネルギーが戻る前に 彼の寿命の方が先に来てしまったんだ・・・」

「・・・・・・・・・」

「だが さっき計器類を確認したところ 
 彼が最後に記録を取ったときよりも 遥かにエネルギーが回復していることが分かった
 これは推測だが ここ数年で降り注ぐ放射線の量が劇的に増加したのだろう・・・
 宇宙規模で 何らかの変化が起こりつつあるんだ」

「・・・・・・・・・・」

「ある程度 機体の改修は必要になるだろうが・・・ 
 それさえ終われば あれは飛ぶよ」

―話が出来過ぎていた。
 帰るべき宿命を背負った男の前に、帰るための手段が用意されている

 始祖ブリミルの導きか?  『神』の仕組んだ罠なのか?

 慎一は何か、大いなる意志が働いていることを感じずにはいられなかった・・・。

「それにしても  やはり興味深いのは放射線だ
 これは彼らの仮説に過ぎないという事だが
 あの放射線はただのエネルギー源じゃない 生物の進化を促す効果があるのだという
 彼の上司の研究によれば君達の世界にかつて君臨していた恐竜と呼ばれる大型の竜が
 滅んだのも未熟な猿が人間となり地上に君臨するだけの知恵を手に入れるに至ったのも
 その放射線の作用によるのだというもちろんにわかには信じがたい話だがもしこれが事実
 であったなら始祖ブリミルによって人類の繁栄がもたらされて来たこのハルケギニアにも
 少なからぬ影響を与えつづ・・・」
「お り ゃ あ あ あ ! !」

慎一が背後を取ってチョークスリーパーを繰り出す。
しばらくもがいていたコルベールだったが、やがて白目を剥いて昏倒した。
慎一はコルベールを寝かせ、毛布を掛けた。

「寝るぞ 修理は明日からだ・・・」
言いながら、部屋を後にしようとした慎一だったが、彼の意識もそこで途絶えた・・・。


翌日から、広場の片隅で機体の改修が始まった。

コルベールの指示の元、どこぞから集めてきた金属を
キュルケが溶かし、慎一が打ち、タバサが刻み、ギーシュが部品へと仕上げていく。
始めはイヤイヤ働かされていた三人だったが、秘密基地でも作るような童心が次第に空気を支配し
皆、なかなかどうして共同作業に没頭していた。

(尚、この頃トリステイン城下では、ジャイアントモールが金属類を盗み出す事件が多発していたが
 特に今回の話とは関係ない)

五人の共同作業を、『ゼロ』のルイズは友達の輪に加われない子供の心境で見ていた。

普段なら、「何で使い魔のために肉体労働しなきゃならないのよ!」 
と突っぱねるであろう彼女だが、こうなってみると寂しいものである。
かといって、気位の高さと劣等感が邪魔をして、うまく近づくことも出来ない。
慎一が、中古のバイクをいじる少年のようないい表情をしている事も、無性に腹が立った。

(何よ! 私だって 私だってね!!)
ルイズが縫い針を動かす。
行き所の無い怒りで悶々としながら、彼女の指先は得体の知れない物を縫い上げていた・・・。


― 2週間後

機体の修理は終わり、試運転の日は明日へと迫っていた。
キュルケの手で外装を真紅に塗り替えられ、ギーシュから『イーグル号』の名を貰った機体の上に
慎一は仰向けに寝転がっていた。

頭上には満天の星空、ヒンヤリとした金属の感触が背中に心地いい。

これからの事を、慎一は思索する。

機体が無事に飛んだなら、まず行かねばならないのはアルビオンだ。
別の世界から、ハルケギニアへと持ち込まれた注射針・・・。
慎一を執拗に狙い続けた悪意の正体を、彼は見極めねばならなかった。

その後は東へ。
『聖地』、そして『ロバ・アル・カリイエ』・・・
シエスタの祖父がやってきたその地には、元の世界へ戻るためのヒントがあるように思えた。

それでも帰る術が見つからぬ時は・・・

―簡単である。 イーグル号で星の海へと飛び出せばいい。
 少なくともこの世界からは離れられる。
 放射線で動くイーグル号なら、理論上は半永久的に宇宙を進めるはずである。

「きゃっ!?」

背後からの悲鳴に慎一が現実へと帰る。
そこにいたのは久しくロクな会話をしていなかった桃色髪の少女。

「どうした? 何かあったか」

「い い 今  アンタの後ろに 白衣の幽霊が・・・」

「幽霊だあ? 何を馬鹿な・・・」
言いかけて、『彼』の言葉を思い出す。
イーグル号は、散っていった仲間たちの想いを宿した機体だと・・・。

「・・・まあ そんなに悪いヤツじゃないだろうよ
 それよりどうした? こんな時間に・・・」

「な なんでもない・・・」
サッと、ルイズが盆を後ろに隠す。 慎一は足元へと目を向ける。

―いびつな形の、不揃いなサンドイッチが地面に転がっていた。

 慎一は、おもむろにその一つを拾い上げ・・・。

「あっ!? ダ ダメよッ!!」
迷わず口元へと放り込んだ。

「・・・なんだ イケるじゃないか
 また何か 新手のイジメかと思ったぜ」

「・・・ あ 当たり前じゃないの! 誰が作ってやったと思っているのよ
 か か 感謝しなさいよね! 普通なら使い魔のアンタなんかに こんな事はしないんだから・・・」


双つの月を見上げながら、二人はイーグル号へ腰を下ろす。

―しばしの沈黙。
 だが、あの時のような気まずさは無い。

「・・・ いよいよ明日ね」

「気が早すぎだろ 明日は単なる試運転だぜ」

「でも いずれは元の世界へ帰る・・・でしょ?」

「・・・・・・」

「シンイチ もう一度だけ聞くわ
 この世界に 留まるつもりは無い・・・?

 あなたにとって 復讐はそんなに大事なものなの?」

「・・・おふくろを殺し 俺の体を切り刻んだ十三人を 俺はこの手で八つ裂きにしなきゃならねえ・・・

 ―だがよ それだけじゃ無いぜ」

 そう言いながら、慎一はイーグル号の外装を撫でる。

「こっちに来て 俺もいろんな物を背負っちまった」

「・・・・・・」

「それに よ・・・」

―そこから先は、聞くまでも無い。
 この世界が気に入っているからこそ、尚更慎一は離れなければならないのだ・・・。

「・・・あんたがいなくなったら あたしはまた『ゼロのルイズ』に逆戻りね」

「次の使い魔を呼べばいいだろ? ブリミルだって そこまで杓子定規じゃねえだろうさ」

「無理よ あんたを呼べたのだって 失敗を重ねた果ての偶然だったのに」

「何言ってやがる あれが偶然なワケねえだろ?
 お前は真理阿や 『神』のヤツですら使えなかった力で 俺をこの世界に呼んだんだぜ」

「でも・・・ 基本的な魔法だって使えないし 何度やっても爆発ばかりだし・・・」

「・・・真理阿はお前には言わなかった・・・
 いや 時機を見て話そうと思っていたんだろうが・・・ 
 俺はそんなまどろっこしい事はしねえ

 教えてやるよ ルイズ・・・  お前は 『恐るべきメイジ』 だ」

「・・・え?」

慎一が説明する。
ルイズの中にある、メイジとしての才能は、『失敗』と称される爆発の中にある。
四系統のいずれにも属さない、未知の現象。

時に、固定化された壁を破壊するほどの威力を持ち、
時には障害を乗り越え、ゴーレムを内側から破壊する。
しかも、研究の進んでいない現象ゆえに、一切の対策が無い・・・。

「四系統それぞれの達人は世界中にいるが
 『爆発』を使いこなしうるメイジは おそらくはお前しかいねえ

 一つだけ助言するぜ ルイズ
 メイジの道を生きたければ 既存の魔法の法則を追うのはやめろ
 どんな条件で爆発が起こるのか 威力と精度をコントロールする術を身に着けるんだ」

慎一の言葉を聞くと、ルイズは複雑な表情で俯いた。


慎一が自分の『失敗』を『個性』だと・・・ 新たな光を当ててくれた事は、涙が出るほど嬉しかった。
魔法という概念を知らない世界から来たからこそできる、一切の偏見の無い公正な評価―。

だが、慎一の言葉が事実であるなら
ルイズの能力が、最大限に発揮される場所とは・・・。

「ワルドの野郎は お前の能力に気付いていた・・・
 そしておそらくは この学院の教師の何人かも気付いている
 ―気付いた上で知らない振りをしているんだ ・・・お前のためを思ってな」

「・・・・・・」

「だが 俺はそんなに優しくねえ
 後はお前が決めろ ルイズ
 血の道を進む覚悟で自らの才能を極めるか・・・
 魔法の事は諦めて、別の人生を模索するか な」

―それは、魔獣の力を肯定し、復讐に生きる道を選んだ慎一だからこそ出来る助言。
 血河を往く魔獣ならではの、苛烈な優しさだった・・・。

「・・・良く考えてみるわ

 ありがとう シンイチ・・・」



自室へと戻るルイズを見送りながら、慎一は再び思索に耽る・・・。

先程のルイズへの助言、あれではまるで餞別・・・ 別れの言葉ではないか。

なぜ いまだ十代の少女に、あんな苛烈な選択肢を突きつけたのか・・・?

― つまるところ、答えはひとつ 『獣のカン』 でしかない。

静寂に包まれた夜、降り注ぐ月明かりの下で
慎一は激動の朝が来る予感を感じていた・・・。




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