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悪魔も泣き出す使い魔-mission16


Mission16 ~真夜中の制裁~
ロングビルをラ・ロシェールへ届けろ


深夜の女子寮

「はあ・・・」

ルイズは自室で一人、溜息をつきながら考え込んでいた。
先程見送ったアンリエッタ王女からの依頼。
二つ返事で了承したのは良いもの、自分なんかが、
こんな大層な任務を無事に果たせるのかどうか。
そんな事を考えている内、外からコンコンと窓を叩く音が聞こえた。
タバサだった。

「何?明日は早いからもう寝るわよ?」
「杖」
「…ああ、アレね」

ルイズは壁に掛けられたネヴァンを取り、外で待っているタバサに渡してやった。
ネヴァンを手に取ったタバサは、
いつもの無表情には変わりは無いが、僅かにほころんだ顔をしていた。

「今度は自分で弾いてみたいわけ?誰に習うの?」
「オールド・オスマンの腰痛が完治したら」
「あんたも物好きね…」
「明日返す」
「いいわよ。邪魔だし、暫く持っておいて」

それからタバサは、ルイズに軽くお辞儀をして、風竜の使い魔と共に去って行った。

タバサの向かう先には、いつもと違う、軽装の格好をした学院長の秘書と、
何やら車輪が二つ付いた奇妙な物に跨っている、ルイズの使い魔が待っていた。

「助かったぜ、おチビ」

タバサが訂正するように、短く訴える。

「タバサ」
「悪い悪い、おチビのタバサ」
「…」
「ハッハー、悪かったよ。怒るなって」

微妙にムッとした顔で、ネヴァンを抱きしめるタバサの頭を、
クシャクシャと撫でながらあやすダンテ。
それからタバサは観念した様に、ダンテにネヴァンを渡した。
この男に何を言おうと無意味だ。と、そう思いながら。

「やれやれ…。そんなモン、何に使おうってんだい?」

ロングビルは、ついこの間、自分の体を乗っ取り、
魔力を根こそぎ奪い取ったネヴァンを見て、思わず身震いした。

「殴れる物は2つくらい持ってないと、落ち着かなくてね」
「殴れる…」

それを聞いたタバサは、脳裏に焼きついた光景を思い浮かべた。
この間の、フリッグの舞踏会で見たオスマンの勇姿を。
その間にダンテ達は、これから向かう目的地のルートを、
バイクの点検をしながら確認していた。

「それで、これから俺達は何処へ向かえばいいんだ?」
「アルビオンに行くには船を経由しないとね。まずは、ここから離れた港町を目指すよ」

ダンテ達の会話が耳に入ったタバサは、ハッと我に返り、
地名を言うことでダンテ達の目的を問い詰めた。

「アルビオン?」
「ああ、これからちょっとした郵便配達だ。急ぎの荷物でね」
「荷物扱いするんじゃないよ!」
「…そう」
「それでな、タバサに頼みがあるんだが…」
「?」
「俺が明日までに帰れなかったら、ウチの御主人様の面倒を見ておいてくれないかね?」

神妙な顔で何を頼むのかと思えば、この男にしては珍しい。
そう思ったタバサは、頬を少し緩ませて、快く返事をした。

「わかった」
「ハハッ、良い返事だ。帰ってきたらイカしたヤツを一曲、教えてやるよ」
「待ってる」

タバサからの了承を得たダンテは、バイクのエンジンを起動させる。
ガソリンは、コルベールが事前に研究してくれていたお陰で、
早い段階で手に入れる事ができていた。
オリジナルのキーは見つからなかったが、
シュヴルーズが、破壊の杖の一件のお礼だと、
粘土を用いた錬金の魔法で作ってくれた、手製の物だ。

唸りを上げるバイクを、怪訝な顔で見ているロングビルに、
ダンテが声を掛ける。

「ホラ、後ろに乗れよ」
「…本当に間に合うんだろうね?出港は明日の明朝だよ?」
「ああ、勿論だ。飛ばして行くぜ?しっかり掴まってろよ!」

バイクの後部に渋々跨るロングビル。
それを確認したダンテが、暖気させたエンジンにギアを入れる。

「ええ?ちょっと!?何?……きゃああああぁぁぁ!!!!」

轟音を響かせながら、瞬く間に学院から姿を消した二人。
それを間近で見ていたタバサがポツリと呟いた。

「良い…」
(お姉さま?)

トリステインからラ・ロシェールの港町までは、早馬でも二日はかかる。
しかし、ダンテの運転するバイクは、最高時速を常に維持し続け、
ものの数時間で、道のりの半分を通り過ぎようとしていた。ただ…

「怖い!怖いっ!もっと、ゆっくりでいいから!!」
「チンタラ走ってたら!船に間に合わないぜ!?」
「ひぃいいいぃぃぃ!!」

それはロングビルにとって、地獄の数時間だった。

港町まであと僅か、といった所で、ロングビルが後ろから追跡してくる、
「何か」の気配を感じ取った。
大地を蹴るヒヅメの音が聞こえる。
こんな時間に馬を走らせるような貴族は、先ずいない。
ロングビルが恐る恐る振り返ると、そこには、人間の身の丈の倍を、悠に越す様な
大きな馬が、青白い炎を揺らめかせながら、自分達に迫ってこようとして来た。
それを見たロングビルが、慌ててダンテの耳元で叫んだ。

「ちょっと!何か来てる!こっち何か来てる!」

幾多の英雄を乗せて、戦場を駆け巡ったといわれる戦馬ゲリュオン。
それが魔界の瘴気を吸って魔獣へと変貌してから、ダンテに三度目の挑戦を挑んできた。
とうとう、ダンテが運転するバイクの右に付いたゲリュオン。
その姿が目に入ったダンテが、興奮気味に叫んだ。

「ハン!お前もリベンジってところか?面白え!」

ゲリュオンは、ダンテのバイクと並走している状態から、急に反時計回りのスピンターンを始める。
その反動で、ゲリュオンの引いていた荷馬車が、車輪に付いている突起物を
突き出しながら、ダンテ達に襲い掛かってきた。
荷馬車の車輪に付いたスピアが迫る瞬間、
ダンテは持ち前の怪力で、バイクごとジャンプし、その場で宙返りをして見せた。

「イィヤッ!ホーォウ!!」
「嫌ああぁぁ!!!」

着地と同時に、二人の全身に衝撃が走る。
膝をガクガク震わせながら、ダンテにしがみ付くロングビル。

「ハッハー!相変らずやる気満々じゃねえか!」

それとは正反対に、ダンテは闘争心に火を燈し、
死と隣り合わせのスリルを楽しんでいた。

ゲリュオンが高々と前足を上げ、それを振り下ろす事によって地響きが鳴る。
それを繰り返す度に、鬼火の様な青白い炎が、
地上を這いながらダンテ達に襲い掛かって来た。
その度に、歓喜と恐怖の悲鳴を上げながら、バイクが宙を舞った。

前回り一回転

「YeaaaHa ! ! ! !」
「きゃあああああぁぁぁぁぁ!!!!」


横ひねり一回転半

「Foooow ! !」
「降ろして!今すぐ降ろしてえぇ!!」


宙返り二回転

「Wow.Ho.Hoooo ! ! ! ! !」
「やぁぁぁめぇぇぇてぇぇぇぇ!!!」

次にゲリュオンは、荷馬車から投てき用の槍を飛ばしてきた。
それに反応したダンテは、懐からエボニーを左手で取り出し、
バックミラーで狙いを調節しながら、振り返ることなく、それらを撃ち返す。
ダンテがエボニーを収めると、今度は何を考え付いたのか、
自分の両脇からロングビルの両手をハンドルに伸ばした。

「おい、代わりに持っといてくれ」
「もう、やだ!何っ!?何なのよぅ!」

ダン!と、衝撃が走り、ロングビルが気が付いたときは、
目の前で運転していた筈のダンテが、姿を消していた。
ロングビルは一心不乱ながらも、手渡されたハンドルの制御を
真っ直ぐに保ちながら、少女の様に泣き叫ぶ。

「…ちょっと!どうすんのよコレ!どうすればいいのよ!!」

バイクの止め方を知らないロングビルは、恐怖と緊張で両腕を強張らせ、
硬直した右手で握られたアクセルは、フルスロットルを維持し続けていた。

バイクをロングビルに預けて、空中に飛び上がったダンテは、
両手に構えたエボニー&アイボリーを交互に乱射させ、
ゲリュオンの放つ槍を迎撃していた。
投てき槍の最後の一投は、
右手の得物をアイボリーからデルフリンガーに持ち替え、
真っ二つに叩き斬って見せた。
その間に、エボニーの銃身にダンテの魔力が込められ、
真っ赤な魔力を帯びた弾丸が一発、ゲリュオンのたてがみに向けて発射される。

弱点であるたてがみを攻撃され、堪らず悲鳴を上げながらその場に倒れ伏せるゲリュオン。
それとは余所に、バイクのハンドルを必死に握りながら、
始祖ブリミルに向けて、心から祈りを捧げていたロングビルの後ろに、
ドスン!と、音を立ててダンテが降ってきた。

「ご機嫌麗しいな御婦人?」

ダンテの両手が、ロングビルの手を覆うように、ハンドルを包み込む。
それからダンテは、アクセルを緩め、クラッチを入れてから、急ブレーキをかけ、
ドリフトターンしながら、バイクを停車させた。

「はぁ、はぁ…生きてる…?」

土埃が舞う中、ロングビルは命の確認が取れると同時に、一呼吸置いて、
「…だっはーぁ!」と、大きく溜息をつきながら、二の腕を枕にして、バイクの燃料タンクに突っ伏した。
しかし安堵の溜息も束の間、自分が跨っているものが、再び唸り声を上げた。
後部席に座っているダンテが、アクセルを回し始めたのである。
そして目の前には、大地を前足のヒズメで引っ掻く、巨大な馬が佇んでいた。

「ハッハハッ。あんだけガッツあるんじゃあ、馬にしておくには勿体無いぜ!」
「ねえ…、馬鹿な事考えてるんじゃないでしょうね?絶対考えてないでしょうね!?」

ロングビルの嫌な予感は、的中しているも同然だった。
その内心を読み取ったかのように、ダンテの背中からデルフリンガーが、
刀身をスッと覗かせてこう言った。

「あー、姐さん。…もう諦めて、ハラ括っといた方がいいと思うぜ?俺は…」

デルフリンガーが鞘に引っ込むと同時に、バイクのエンジンにギアが入った。
そして、ロングビルの意思とは関係なく、バイクの後輪が悲鳴を上げ、
前から突進してくるゲリュオンに対して、ウィリーの状態で突っ込んでいった。

「もういやぁあああ!!!!」

激突するのも間近、といった所で、半ば諦めたような笑顔をさらけ出したロングビルは、
帰りを待つ妹の笑顔を思い浮かべながら、心の中で謝罪した。

ああ、ティファニア…。行ってあげられなくて…、ごめんね…

その瞬間、ゲリュオンが青白い炎に包まれながら、
フッと霧のように消えてしまった。
相手が消えてしまい、咄嗟に急ブレーキをかけてバイクを停車させる。
ダンテが気が付いた時には、ゲリュオンの気配は完全に無くなっていた。

「フン、消えちまったか…」

ダンテが辺りを見回すと、遠くの方で明かりがポツポツと輝いていた。
それを見つけると、前の席で倒れ込んでいるロングビルに声をかける。

「おい、港町ってのは、あそこでいいのか?」

反応が無い。頬をペチペチと叩いてやっても、起きる気配がしなかった。
仕方ないので、ダンテはそのままの状態で、バイクを方向転換させ、
明かりの見える方角を目指す。

その遠くで、仮面を被った男がマントをなびかせながら、
ダンテ達の後姿を見送っていた。


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