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使い魔は漆黒の瞳-01



トリステインの誉れ高き魔法学園。
その春の使い魔召喚の儀で、ある一つの珍事が起こっていた。
ある生徒がサモンサーバントで奇妙なものを呼び出したのだ。

「馬だ…」
「いや、馬車だろ?」

そう、馬車だ。幌に覆われ、長旅にも耐えうるような確りとした作りの物だ。
大きさもかなりのもので、大の大人が10人以上乗り込めるように見える。
その馬車を引くのは見事な白馬。逞しい体つきとつややかな毛並みは、馬車としてより遠乗りに騎乗しても問題の無いものだ。

「ゼ、ゼロのルイズが魔法を成功させるなんて!」
「う、嘘だ! 僕は信じないぞ! そうだ、これは夢だ! 夢に違いない!」
「…ゼロのルイズが馬車付とはいえ馬を召喚したってのに…なんで僕の使い魔はスベスベマンジュウガニなんだ!?」

悲鳴にも似た叫びを後ろに聞きながら、その馬車を呼び出した当の人物…
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、歓喜に踊りくるいそうになるのを堪えるのに必死だった。。
なにしろ生まれて初めて魔法を成功させたのだ。
影で才能の無いとの意を持つ『ゼロ』と呼ばれた彼女にとって、これほど嬉しいことは無い。
それも、呼び出したのは見事な毛並みの馬だ。
馬車ごと、というのはいささか気になったが問題は無い。もし持ち主が居るなら代価を払って譲ってもらえば良い事。
そもそもヴァリエール家の一族に使い魔をもたらしたとなれば其れだけで十分すぎる栄誉なのだ。
感謝するのが当然と言った所だろう。

「さ、ミス・ヴァリエール。続いてコンクトラクト・サーヴァントを…いえ、少し待っていなさい。先に私が危険が無いか見てきます」
「分かりました。ミスタ・コルベール」

後ろで召喚を見守っていた教師のミスタ・コルベールは、万が一の危険の有無を調べるため馬車に近づいていった。

近くで見るとその馬車は決して古くは無いものの、かなり使い込まれた様子だった。
あちこちに何かで焼かれたり引き裂かれたような痕がある。

(これは戦いの傷? 一体この馬車は…? それに『彼』は…?)

驚いたのは、馬車の御者台に人影があった事だ。外傷も無く息も安定していることから、単に気を失っているだけと分かる。
だが、その人物は見かけぬ風貌だった。紫に染められた遥か東方風の装束。その下から見えるのは、金属の甲冑だろうか?
腰に剣を下げて居る所を見ると平民のようではあるが、それにしては漂わせている雰囲気が普通ではない。
そして…

「こ、これは…ミス・ヴァリエール! こちらへ来なさい!」

幌の中を見るや大声を上げていた。
馬車の中では、見たことの無いような猫科の生き物や毛むくじゃらの魔物が折り重なるように気絶していたのである。



夢を見ていた。

何度と無く見た夢だ。数え切れないほど、見た夢だ。

始まりは何時も霧の中、見失った仲間を探し彷徨っている。
まるでミルクを中を泳いでいるかのような深い霧。合間から、途切れ途切れに切り立った断崖が見える。
踏みしめる足元は水辺に近いのか泥が所々溜まり込んでいる。
時折聞こえる不快な音は、異形の者どもの嘲りか…確かめるすべも無く、さ迷い歩く。
どれほどの時間そうしていただろう?ふいに目の前に大きな変化が訪れる。
まばらに星を浮かべた乳色の空…それは霧の中でさえ清廉な白を主張する花だ。りんごの花だ。
同時に漂う甘い香り。さらに進めば、霧の向こうに何か建物らしき影が見えるのだ。
助かったと息をつき、膝をつく。そして…美しい少女と出会う。

次の瞬間夢は幻想的な装いを一変させる。
激しい戦いの場に移り変わるのだ。
それは魔物と人との合戦のようであった。
人馬一体となった騎兵が空から飛び掛った翼待つ怪物に頸部を引き裂かれ、血煙をあげながらあらぬ方向へと崩れ落ちる。
奢り高ぶり、更なる獲物をもとめたその異形を、友の放った魔法が爆散させる。
それは夢で片付けることが出来ないほどにはっきりとしたビジョン。
自分が自分以外の誰かの過去をなぞっていると何故か彼は確信している。

しかしあの日…心に、魂に深い傷をもたらしたあの日以降、夢は彼以外の体験から彼自身のものへと姿を変える。
牛頭馬頭二匹の魔物にいたぶられる屈強の戦士。
巨大な鉈のような斬刀で切り付けられようとも、一筋の苦痛の声も上げず耐えるその姿を、彼は見せ付けられていた。
堂々と胸を張って、あぐらをかいて、唇を一文字に結んで、戦士はそんな時でさえ誇りある姿を崩さなかった。
何度赤いものが飛び散っただろう。何度危険な魔法が襲い掛かっただろう。
その度に膝をつかんだ手に力が入る。歯を食いしばる。
最期…渾身の力を込めた一振りが、一際激しい赤い花を咲かせた。
ゆっくりと…無情な時がその瞬間をわざわざ見せ付けでもするかのようにゆっくりと、戦士の身体が崩れ落ちる。
彼は叫びを上げる。これが夢で、何度も何百回、何千回と見た光景だろうと、叫ばずにいられない。
思うように動かぬ手足でその戦士…父にすがりつきながらも叫びはとまらない。最後の言葉を耳にしようとも。
そして何時も同じ。力の抜けた父の身体を抱き、声さえ出なくなるほどに泣き吠えて。

「うわあああぁっ!」

悲鳴を上げなら目を覚ますのだ。荒い息とつめたい汗に背をぬらして、夢である事を再確認して…父を助けられなかった自分の無力を悔やむのだ。
それが彼…リュカの朝の何時もの姿だった。
だが、今は朝ではない。何時ものように野宿をしたわけでもない。
どうも意識を失っていたようだ。
普段そうしているように馬車の御者台に乗り手綱を握っている。奇妙な事に荷台を引くパトリシアも座りこんでいる。
誘眠の攻撃を持つ魔物に不意でも討たれたかのようだ。しかしそれにしては攻撃を受けた様子も無い。
いぶかしげに周囲を見渡せば広々とした草原であり、近くには奇妙な一団がなにやらリュカとその乗る馬車を遠巻きに眺めていた。
思い起こせば、確かに記憶に残っている最後の瞬間は森の中の道を辿っていたはずだ。
ポートセルミの港町を西に、深い森の中をこの数日たどり、ようやく立て札らしきものを見つけそして…そこから先を思い出せない。

(一体ここは…? それにあれは? モンスターにしては今まで見たことも無い…殺気もない)

その一団は何やらマントを着て、無数の動物(中にはモンスターらしき影もある)を伴っているように見える。
一見するとポートセルミからよく見る魔法使いを伴った魔物の群れにも見えるが、それにしては余りに普通の『人間』にみえた。
そういえば、最近仲間になった『魔法使い』マーリンならば、あの集団の事が分かるかもしれない。
彼の姿を探し馬車の中を振り返ると桃色の髪を持つ少女と、桃色にも見えなくも無い地肌を頭頂にさらした男性とが、
やや緊張を漂わせた面持ちで後方から馬車を覗き込もうとしているのが見えた。
何やら話し込むその視線の先は、リュカの仲間達が先刻の彼のように意識を失ってそれぞれに横たわっている。

「み、ミスタ・コルベール。このような場合はどうしたら良いのでしょう?」
「前例に無いことだからね。馬車を呼び出したこともさることながら、私でさえ存在を知らないような魔獣がこのように一度にとは…」
「私も、こんな魔物は書物でも見たことありません」
「もしや遥か東方の生き物かもしれない。かの地方でトリステインでは見られないような珍しい生き物が多く生息するといいますから」
「で、では、このすべてと契約を?」
「待ちたまえ。複数の使い魔を持つなど前例に無い。ここは慎重に事を進めるべきです。前の御者台にこの主らしき人物が居ましたね? まずは彼を起こしてですね」
「あ、え、えーと、だ、だれなんだ?」

同時に、リュカと同じく目を覚ました、腐った死体のスミスとが丁度鉢合わせするのも。

「き、きゃぁぁぁぁぁぁっ!?!?」「死体が!?? こ、これは一体?!?」
「み、みみみ、ミスタ・コルベール!!!」
「おおお、落ち着きなさい! メイジたる者うろたえない!!」
「あ~~~?」

奇妙なものを見るように、慌てふためくローブ姿の二人を見るスミス。首をかしげた際に、眼球が一つポロリと落ちて。

「~~~キュウ」
「ミ、ミス・ヴァリエール!しっかりなさい!先に気絶するなどずるいですぞ!!」
「こ、怖がらせて。も、もも、申し訳ない」

哀れな少女はあっさりと気絶した。
これが、リュカとローブを着た桃色の髪を持つ少女、ルイズとの出会いだった。


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