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悪魔も泣き出す使い魔-mission15


~2つの依頼~
秘書の願いに応えよ


降臨祭の日。
オスマン学院長の秘書である、ミス・ロングビルは、アンリエッタ王女を迎えるパレードで賑わう外には、顔も出すこともなく、
学院長室で、いつもの様に書類をまとめる作業に勤しんでいた。

そんな中、窓の外から流れてきた一筋の風が、書類の一枚をめくった。
開けた憶えも無いと言うのに、どうしたのだろうか?
不思議に思いながら窓を閉めようとするロングビルに、男の声が背後から話しかけてきた。

「元気そうだね。マチルダ」
「!?」

声のする方を振り返ると、そこには白い仮面をつけ、黒いマントをまとった、長身の男がそこに立っていた。

「失敗した上に、報告にも帰ってこない君に、司教はお怒りだよ?」

ロングビルは震える肩を必死に抑えながら、弱気な態度を見せないように、なんとか反論してみせる。

「わたしは、あんた達に金で雇われてただけだよ。別に忠誠を誓ったわけでもないだろう」
「そうだね、その通りだ。そこでだ、君はもう要らない事になった。ああ、大丈夫だ。
換えの補充もできているし。君に憑けていたアレも、無事に監獄から回収させてもらった」
「…それで、用済みになった盗っ人は、さっさと消えて欲しいって訳かい?」

ロングビルは、今、自分の命がここで絶たれる事を覚悟する。
しかし、次に仮面の男の口から出たのは、意外な言葉であった。

「いや、命の保障はするよ。ここで学院長の秘書、ミス・ロングビルとして一生を過ごすがいい」

拍子抜けしてしまったロングビル。
しかし、まだ油断するには早い。そう思うと、握りしめた拳の力を抜くことができなかった。
そして、白仮面の口元から空気が漏れる音がし始めた。

「それからもう一つ、司教の計らいでね。君はもう、マチルダでもフーケでも無くなったろう?
だから、我々が保護している君の家族、アレも消してあげようと。そう言う事だ」
「ちょっと…待ってよ!?」

それを聞いた、ロングビルの顔が、一気に引き攣った。

「その役目は、私が仰せつかった。明日にでもアルビオン行きの任務があるからね。
その帰りにでも済ませておこう」
「…ちょっと……っ!」
「さて、長話もここまでだ。それでは、ごきげんよう。ミス」
「待ちなって言ってるだろう!!」

必死に引き止めるも虚しく、仮面の男は風の様に消え去り、残されたロングビルはただ一人、風に煽られて舞い散る書類に囲まれながら、呆然と立ち尽くしていた。

「…待ってよ…」


その夜。
アンリエッタ王女は、学院の生徒である旧友の部屋の前に訪れていた。
扉の前で一呼吸置いてから、規則正しくノックする。
初めに長く二回、それから短く3回・・・。
扉が開かれると、アンリエッタは深く被った頭巾の奥から、ギョッとした顔を除かせた。
目の前に現れたのは、見た目の可愛らしい旧知の友ではなく、立派な体躯の上半身を露わにしている大柄な男だった。
多分、風呂上りの様子だった。

「あっ…あのっ…」
「トイレなら、真っ直ぐ行って突き当りだ」

恐る恐る尋ねようとするアンリエッタに、男は濡れた銀髪をカシャカシャと掻きながら、面倒臭そうにそう答えると、バタンと扉を閉めた。

あ、あれ?部屋を間違えたのかしら??
でも、ここは、女…子、寮…?

予想外の事態に困惑するアンリエッタは、どうにか気を落ち着かせる。
それからもう一度、ゆっくりと深呼吸してから、恐る恐る扉をノックした。

「!?」

今度こそルイズが出てきた。もう自分の正体に、気づいている様子だった。
アンリエッタは、今にもルイズを抱擁したい気持ちを抑え、しっ、と唇に人差指を当ててみせる。
それから杖を取り出し、先ずはルイズの部屋に探知の魔法を掛けて回った。
…それにしても部屋の中がうるさい。
部屋の隅に置かれた箱から、大音量で何やら歌の様なものが聞こえていた。
ルイズは、困惑しているアンリエッタの様子に気がついたのか、先程の大男に命令している。

「姫殿下の御膳よ!さっさとこの、やかましい雑音を消しなさい!」
「雑音ね。ハッハッ!お前、今までノリノリで聞いてたじゃないか」
「な…!なっ、何そんなデタラメ…!?」
「ホラ、姫殿下に見せてやろうか?ニヤけたツラして、ニワトリみたいに首を上下に・・・」
「やめてええぇ!!」

ルイズの真似事をしてみせる男と、顔を真っ赤にさせてそれを否定するルイズの様子は、仲の良い兄妹の様にも見えた。
その光景を見ていたアンリエッタは、思わず吹き出してしまった。「羨ましい」と、そう思いながら。

それから、男が流れる歌を止めようと、箱を弄り始めたが、いつまで経っても鳴り止まない様子だったので、男はその箱を豪快に蹴り飛ばす。
騒音が響き、アンリエッタがビクッ!と肩を震わせる中、今度こそ静かになった。


フリッグの舞踏会が終わった後、ダンテは宝物庫に置かれていた私物を、ルイズの部屋に次々と運んでいった。
ルイズ自身は、物珍しさもあってか、あまりそれを嫌がる素振りは見せなかった。
机こそ無いもの、今ではルイズの部屋の半分は、すっかり"ダンテの事務所"と化している。

ジュークボックスの電源は、バイクの整備がてらに、作ったバッテリーによって供給されていた。
バッテリーと言っても、コンセントの付いた箱に、電気を帯びたネヴァンの蝙蝠を二、三匹、適当に突っ込んでいるだけの御粗末な代物だが。
大音量で流れるハードロックを、最初は嫌々聞いていたルイズだが、今ではお気に入りの様子である。
夜通し流れる騒音に耐え切れずに出て行った、隣部屋の住人もいたが、たまに、夜中にも関わらず、タバサが本を何冊か持って、ルイズの部屋に来る事もあった。

目の前で人目もはばからず、ぎゃあぎゃあ騒ぐルイズに、アンリエッタが控えめに声を掛けた。

「お久しぶりね、ルイズ。変わり無いみたいで、嬉しい」

それを聞いたルイズは、両手で引っ張っているダンテの髪と頬を振り払い、アンリエッタの両手を握った。

「ひっ、姫殿下!いけません!こんな下賤な場所へ、お越しになられるなんて…」

感極まったアンリエッタは、動揺するルイズに抱きつき、それから一歩下がって、急な夜の来訪に頭を下げた。

「お取り込み中に粗相をいたしたようで、ごめんなさいね。本当にごめんなさい。わたしのおともだち」
「何をおっしゃいます!姫殿下が詫びる様な事は、何一つございませんわ」

それから再び抱き合う2人を横目に、ダンテは部屋から抜け出そうとしていた。
それに気が付いたルイズが声をかけた。

「ちょっと、姫殿下がわざわざお越しくださったというのに、どこ行こうってのよ!」
「感動の対面なんだろ?終わるまで先生の所で飲んでくるよ」

それを聞いたルイズは、怒涛の勢いで引き止める。

「駄目よ!ミスタ・コルベールの部屋は、今じゃツェルプストーの巣窟じゃない。絶対行っちゃ駄目だからね!」
「クラスメイトを害虫みたいに言ってやるんじゃねえよ。誰のせいで隣の部屋から出てったと思ってんだ?」
「うぐ…!もっ、もとはと言えば、アンタが私の部屋に、こ、こんなモン持って来たのが、いけないんじゃないの!」
「あーあー、そういう事にしといてやるよ」

それからダンテがドアノブに手を掛けようとしたとき、足元に何やら気配を感じた。
そっと開けてみると、そこにはロングビルがダンテの足元で、部屋の様子を探らんとばかりに、しゃがみ込んでいた。

「いい?今夜ミスタ・コルベールの所に行ったら絶対許さないんだから!」

ダンテは、「あっ」と目を合わせた瞬間、「はわわわ」などと声を漏らして取り乱すロングビルの姿が、ルイズ達に見えないように、ゆっくり扉を閉めながら、返事をしてみせた。

「わぁーかったよ!厨房で寂しく飲んでりゃいいんだろう?」
「飲みすぎるんじゃないわよ。それから、寝る前には絶対帰ってきなさい!いいわね?」
「子供扱いは勘弁してくれよ…」

ダンテは、主人に不満を漏らしながら、壁に掛けられたコートとデルフリンガーを手に持ち、勢い良くドアを開ける。
今度はロングビルに換わってギーシュが、外でしゃがみ込んでいた。
ダンテはそれを軽く蹴り飛ばして、ルイズの部屋を出て行った。

「姫殿下。御見苦しいところを見られた様で、…御無礼をお許しくださいませ」

ダンテを見送った後も、ギーシュに気づかなかったルイズは、振り返って慌しく謝罪するが、当のアンリエッタは、あまり気にした様子も無く、ルイズの部屋の周りをまじまじと見回していた。
ルイズの部屋の壁には、先程ダンテが持っていったデルフリンガーをはじめ、ケルベロス、ネヴァン、ショットガン等々が所狭しと掛けられていた。
アグニ&ルドラは、タバサの部屋で管理されていた。


「それにしても、ルイズは、その、何と言うか…
やはり、武家としての、ヴァリエールの血が濃く流れているのね」
「ちっ、違います。そこにある物は、全部アイツの持ち物ですから」
「あら、そうでしたの。…今の彼、私から見ても素敵な殿方ね。
年上の婚約者がいたとは聞いてたけど、ルイズにピッタリだわ!ウフフ」

再び顔を真っ赤にさせて、アンリエッタに反論するルイズ。
こればっかりは何としても誤解を解きたかった。

「ち ち ち 違いますってば!あんなの婚約者でも何でも…。
アレは私の単なる使い魔ですから!本当に、何でも無いですから!」
「は?」
「つ・か・い・い・ま、ですから!」
「は、はあ…」


場所は変わって、アルヴィーズの食堂。
生徒達の声で賑わう、昼間の様子とは打って変わって、夜は小さな魔法人形達の舞踏会が繰り広げられていた。
食堂の席には一組の男女が、その観客として席についている。

「夜のお誘いは大歓迎だね。アンタも眠れないクチかい?」

ダンテの問いかけに、ロングビルは答える様子も無く、ただ黙って俯いていた。

「どうした?俺に何か用があって来たんじゃないのか?」
「あんたに頼めるような義理じゃないんだけど…」

どこから話せば、何をどう頼めばいいのか、考える事も覚束ない
ロングビルに代わって、ダンテから話を切り出してきた。

「制裁ってヤツか?」

ロングビルが、ハッとして顔を上げる。
それからダンテが、人差指で顎先をトントンと叩きながら、わざとらしく考え込み、じっとロングビルの瞳を見詰めた。

「大抵、頭がキレてタマの小さい野郎ほど、やらしいお仕置きを考え付くのが相場ときたモンだが…」

ロングビルは、ダンテのその瞳の奥に引き込まれそうになるのが怖くなり、慌てて目を逸らそうとしようとしたところ、じっと黙って見詰めていたダンテが口開いた。

「家族ってところか?」

最初から何でも知っていた様な素振りのダンテに、ロングビルが声を震わせながら聞こうとする。

「何で…」 知っているのか?

それ以上は声が出せなかった。
それからダンテは、肩をすくめながら言ってみせた。

「これでもな。"ソッチ"の職歴は、アンタとタメ張れそうだぜ?…今はベビーシッター1年生だがね」

なんだ、こいつもこちら側の人間だったんじゃないか。
それが判ると、ロングビルは思わず苦笑を漏らした。
それからのロングビルは落ち着きを取り戻したのか、身内の命が狙われんとしている状況を説明した。

「血も繋がって無い、他人同士なんだけどね。妹みたいなモンさ」

ロングビルはそう言いながら、テーブルの向こうで、クルクルと金髪を舞わせる、少女の小人形を、いとおしそうに見つめていた。
それからダンテが、改めて問い質した、ロングビルが正直に答えた。

「これからどうしたいんだ?」
「今すぐ傍に行ってやりたい。本当に、今すぐにでも…」

それを聞いたダンテは、タン!とテーブルを叩きながら、
颯爽とロングビルに向かって身を乗り出し、手を差し伸べた。

「オーケー。決まりだな」


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