あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無義士伝

「あなたもしつこいわねえ…
あんなに何回も断ったのに飽きもせずに押しかけてくるなんて。

……いいわ、話してあげる。
こんな雨の日にお客をただ追い返すなんてヴァリエールの名が廃るもの。
でも面白い話なんて期待しないでね。

お茶はストレートでいいわね? お菓子は勿論、クックベリーパイよ。
今メイドに持ってこさせるわ。

それにしても今日はよく降るわね……」



「…驚いたわ。 
そりゃそうでしょ、召喚したのが人間で、
それも血まみれでボロボロになって倒れていたんですもの。
最初は私の魔法の爆発で殺しちゃったんじゃないかって…

駆け寄ったコルベール先生が、まだ息がある!って言ってね、
急いで医務室に運んで…

結局爆発の傷ではなかったけど、手は尽くしたわ。
だって召喚したばかりの使い魔に死なれちゃ、目覚めが悪いじゃない?」


「でも大変だったのはあいつが起きてからだったわ。起きた途端

『はあ、ここは極楽でがすか? んだなごとねえべな… んだば、地獄でがすか…』

なんてとぼけた事言ってね。ひどい訛りだったわ。その上私をみて

『はあ、地獄の鬼こさ、もっとおっかねえもんと思ちょったが、めんこい娘っこだなや…。』

なんてふざけた事言ったのよ。 ……あろうことか御主人様を鬼呼ばわりよ!?
だから間抜け面、二、三発ひっぱたいて、あなたは生きてるわって教えてあげたの。
そしたらえらく狼狽してね、どうしたと思う?

…枕元に置いてあった自分の剣を引っ掴んでいきなり自分のお腹を刺そうとしたの。
あわてて皆で取り押さえたけど、何考えてたのかしら?
『止めねで下んせ、わしは死なねばみなみな様に顔向けできねえのす。』
って繰り返しながら、怪我してるのにすごい力で暴れて…
あの時は本当に困ったわ。」


「剣を取り上たら今度は押し殺した様な声で泣き出してね、

『お申さげなござんす お許しえって下んせ』

って何度も何度も誰かに謝ってたわ。
事情は分らなかったけど、なんて声をかけたらいいかわからなかった。

……しばらく落ち着くのを待ったわ。
それからちょっと気は引けたけど事情を説明して使い魔になるように言った。
そしたら意外なほどあっさりと承諾したわね。

『お見苦し所さ見せて、おもさげなござんす。お見逃しえって下んせ。
もは、わしに生きる目的さ、ねのす。 
はあ、話しさ聞けば、るいずさあはわしの命さ助けて呉た恩人。
…わしは卑すい小身者でがす。
したけんど、恩人の頼みさ、断る様な不義理さしだくねのす。』

憑きものが落ちたように放心してそう言った…」


「使い魔としてどうだったか? ねえ…
まずまず優秀だったわね。
私を鬼呼ばわりした罰に貧相な食事を出してみたけど、有難そうに食べてたわ。
洗濯なんかも慣れた手つきでやってたし、朝も早いし…

まあ、その辺は使い魔と言うより使用人よね。
彼が戦っている姿を初めて見たのはギーシュとの決闘の時だったわ。
決闘の理由? 詳しい事は知らないわ。
なんでもギーシュの馬鹿が二股ばれた腹いせにあいつに八つ当たりしたみたいよ?
それでもあいつは謝ってたみたいだけど…

…そう、いつもみたいに『お申さげなござんす』って。
ただそれを見たあの馬鹿が調子に乗ったみたいなの。
『ゼロのルイズの使い魔だけに度胸もない、腰の細っこい剣も単なる飾りなのだろう』
とか言ったらしくて…
それで決闘なんてのに乗っちゃったらしいわ。
主人と、それから腰の剣、父親の形見だったそうだけど、
それを馬鹿にされて黙ってちゃ『ナンブブシの名が廃りあんす』とかどうとか。
普段はどんなことでも逆らったりしなかったのに、あの時ばかりはいくら止めても強情だったわね。」


「それにしても、普段の控え目な印象からは思いもつかない強さだったわ。

…ガンダールヴ?
まあそれもあったんでしょうが、一振り一振りすごい気魄でね、
細身の剣でバッタバッタと青銅製のワルキューレを斬り倒していくのよ?

コルベール先生が言ってたわね。あの腰の入り様は見事だって。 私にはよくわからないけど…

それにあの剣、たしかカタナって呼んでたけど、あれの事も褒めてたわ。
細くて軽くて鋭いのに、とても剛く鍛え上げられてるって。
ハルケギニア中を探してもこんな不思議な剣は見つかるかわからないって。

……あいつ、魔法も知らなかったけど、どんな場所から来たのかしら?
カタナだけじゃなくて、服装も髪形も変わってたし、
ナンブとか云う国に住んでたって言ってたけど、聞いたこともないし。
やっぱり東方かしら、ね?」


「…少し冷えるわね。 お茶もさめてしまったわ。
今代りを淹れてきてもらうわ。

そうそう、あいつの出身地の事と言えば、よく自慢話を聞かされたわね。
フーケの事とか、アルビオンに行った事とか色々あったけど、
そんな事よりもそのことをよく覚えてるわ。
なんとか山が見事とか、なんたら川がきれいとか、そんなたわいもない話ばっかだったけど。
そんな見たことも聞いたことも無い様な場所や景色の話されても、困るじゃない?

…でもその話しする時、あいつ、遠慮がちにだけど、ちょっと笑うのよ。
笑うと人懐っこい表情になるの。 なんだか見てると安心する顔。」


「よく降るわね。明日も雨かしら…

…ここに来るとき、広場の隅にちょっとした畑があるの、気づいた?

…そう、じゃあ帰りに見てくるといいわ。その畑、あいつが作ったのよ。
使い魔としての雑用をしてる合間を見つけて、いつの間にか作ってたの。
暇な時に剣の稽古をしたり、タバサに文字を教わったりしてたのは知ってたけど、そのことは知らなかったわ。

…何でそんな事をしたのか尋ねてみたの。 そしたら笑いながら
『ここの人達は、見も知らねえわしに、随分とよぐして下せえます。
んだからせめてものご恩返しに、手作りの芋でも豆でも食うていただきてえと、思うたのす。』
なんていったの。 なんだか可笑しくて私も笑ってしまったわ。」


「全く手をつけてないけど、クックベリーパイは嫌いかしら?
  …なら食べてみなさいな、美味しいのよ、それ。



……あいつと最後に別れたのは、アルビオンの大軍から逃げてた、あの時だったわ。

姫様から賜った殿の役目にあいつ一人で行くって言って。
絶対に許さない。 主人の命令に逆らうなんて…
私も付いて行くって言ったのに。
一緒に行くって言ったのに…。
『そんたなことをば言わねで下んせ。』って困ったような顔をして
それでいつもの様に

『お申さげなござんす お許しえって下んせ』

って……

なんで、あやまるのよ… 

なんで一緒につれて行ってくれなかったのよ…
絶対、絶対、許さないん、だから

あいつは生きてるわ だって 私のこと 守るって 言ったもの…

帰ってきたら 文句を言ってやるんだわ
主人の言うことを聞かないなんて 使い魔失格だって
たくさん たくさん お仕置きしてやるわ

……だから あいつは いきてる 
絶対 絶対 いきてる   そうでしょ…?」





「雨は、いや。

……これで話は終わりよ。お茶を飲み終わったら、帰ってね。
またここに来るのは構わないけど、もうこの話は、無し、よ。」


アルビオンの大軍の真っただ中に、一人の若侍が立っていた。
どれほど斬り合ったのか
自分のものとも返り血とも分からない血と泥で真黒に見えた。
満身創痍、と言っていい。
それでも侍は身じろぎもせずに立っていた。

その左手には今の主君から賜った、始祖の使い魔が使ったといわれる伝説の剣がいまだ気勢をあげていた。

その右手には父から贈られた業物が晒で固定されていた。
父の願いかなわず血に塗れた安定は、それでも妖しく光っていた。

そしてその背には、彼の唯一無二の親友から託された、
最後の南部武士たる士魂、その印しの対い鶴が、銃火に晒されつつも揺ぎ無く翻っていた。

たった一人の若侍を倒しあぐねた七万が、彼を取り囲んでいる。




母上様
嘉一郎はあの世へ 参りあんす 逆縁の不孝をば お許しえって下んせ
したけんど これでやっと父上の所へいけるのす
嘉一郎は 果報者にてござんす

心残りといえば あの娘っこの事であんすか
めんこいコケシャンのようじゃった
妹のみつのように思っておりあんした

お許しえって下んせ そんなに泣かないで呉ろ
主命ば背いた不忠者など きれいさっぱり忘れて下んせ

父上も こうすて 大事なものをば守って三途の川さ 渡ったんじゃろか
嘉一郎は 果報者にてござんす





どこにそんな力が残っていたのか
戦場の空に若侍の朗々とした声が響き渡る。

「南部藩士 吉村嘉一郎、とりすていんの殿軍ばお務め申っす。
皆々様に恨みはござらねども、拙者は義のために戦ばせねばなり申さん。お相手いたす」

新着情報

取得中です。