あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

其の一:カトレアと孫悟飯


いきなりで済まないが、本当のことだ。
体を覆いつくすだけじゃ飽き足りないほどの閃光が、
オレがこの世で最後に見た光景だった。

わかっていた。
前に人造人間との戦いで、隻腕になってしまったオレ。
一人でもオレでは及ばないヤツらは、その実二人もいる。
二対一だ。
オレの周りには、もう誰もいない。
ナメック星でフリーザと相対したときは、クリリンさん、べジータさん、後から助けに来てくれたピッコロさん。
そして……危ない時に必ず駆けつけてくれる、父さんがいた。
しかし、今、オレの周りには誰もいない。頼れる人は皆死んでしまった。
目の前の殺戮兵器に、殺されてしまった。
オレがここで死ぬことも、たぶん頭では理解していた。
だが、それでも、滅んでいく地球に目を背ける事を、心が許さなかった。

トランクスは残した。希望はまだ、地球に存在する。
蝋燭の炎より、わずかで頼りない希望かも知れないが……あいつはオレを超えるはずだ。
オレはそう願っている。いや、確信している。
なんせ、あいつは誇り高きサイヤ人の王子、べジータさんの息子だから。

意識の中に光が広がった。白くて色のない爆発は、昔勉強した宇宙誕生に似ていると思った。
自分の意志で目を開くことも出来ない。光が体を貫いた感覚さえ、オレはとっくに失っている。

(お……お父……さん)

最後に思い浮かんだのは、どんな時にも楽しそうに笑い、
そしてあっけなく逝ってしまった、お父さんの笑顔だった。



体にのしかかってくる重圧に息苦しくなって、オレは目を覚ました。
視界のハッキリしない目にまず飛び込んだのは、真っ白な天井。
死後の世界というのはあるとお父さんから聞いたことはあるけど、ここがそうなのか?
まだアタマがハッキリしない。霧がかかったようにもやもやしてなんか気分が悪い。
体を起こす、体に掛けてあった毛布が腰の辺りまで落ちる。

そしてオレは異常に気づいた。

オレのいた部屋は広い個室みたいだった。
真っ白な絵の具に申し訳程度に桃色の混ざったような色の壁に、ブルマさん家でも見たことない、綺麗な花瓶や窓がついてる。
そして部屋中に散開する様々な動物達。小鳥から犬から猫、果ては小熊やヘビやモモンガまで実に多種多様だ。
腹の上で重いものがもぞもぞと動いたので、重さを感じたところに目を向けると、大きな亀と目が合った。
とりあえず重いからどかそうと持ち上げると、視界に入った腕が見えて、驚愕した。

「包帯……どういうことだ、オレは生きて……?」

亀に伸ばした手を自分に向け、握る。次いで体を触ると、がしっとした確かな肉の感触と、
丁寧に巻かれた包帯のさらっとした感触が手を伝った。

「オレは……生きているのか?」

震える声が口から漏れたとき、気にも留めなかった部屋のドアが開いた。
そこから現われたのは、一人の女性。
少しだけ金髪が混じった背中に届くほど長い桃色の髪、
緩やかな山形に曲線を描く優しそうな鳶色の瞳。
何よりも、やわらかくて暖かい微笑が、オレの目に吸い込まれた。

「あら、目を覚ましたのね? よかったわ」

呆けたオレの視線に気づくと、彼女は上品にコロコロと笑った。


「わたしはカトレア。あなたは?」
「え、あ……オレは孫、孫悟飯です」

彼女――カトレアさんはベッドに腰掛けて聞いてきた。
き、緊張する。初対面だから仕方ないと言えばそうだけど、それだけじゃない。
このカトレアさんは、物凄く美人だった。
ブルマさんも綺麗だったけど、気が強くて少し棘のある感じだし。
この人はそういう感じがまったく感じられない。
彼女の体から出てる気を探る。それは今まで感じたことがないほど暖かく、そして、例えようのないほどどこか不安定な気だった。

こんなひとに興味ありげにしげしげ見つめられちゃ、なんだか……ちょっと恥ずかしい。

「あの、あなたがこれを?」

体に巻かれた包帯に目を向けて言うと、カトレアさんはうんっと頷いた。

「びっくりしたわ、散歩の途中でいきなり見つけたのよ。いままで傷付いた動物たちならたくさん見てきたけど、人を見つけたのは、おまけに、あそこまで傷だらけで倒れているなんて初めてだったわ」

またコロコロと笑顔を転ばす。本当に楽しそうで、それでいて包み込むような優しい表情。
発見しただけでなく、オレを治療してくれたのは、どうやらカトレアさんで間違いない。

「ただ……」

カトレアさんの表情が曇る。
彼女の視線の先を見て、オレはああ、と納得した。

「気にしないで下さい。元からです」

オレは明るい声で言ってやった。気に病む必要は無い、と。
彼女が気にしていたのは、オレの左腕だった。
正確には、左腕のない左腕。人造人間との戦いで昔失ったものだ。

「それより、驚きましたよ。まだこんなに平和な所があったなんて……」

世界はまだ、やつらの思い通りにはなっていない。
平和に暮らし、こんなにも心が暖かくて優しい人が生き残っている。
そう思うだけで、感慨深いものが心からこみ上げてくる。
カトレアさんの顔を見直すと、彼女はとぼけた様に首をかしげた。

「……ねぇ、あなたはどこから来たの?」
「西の都です」

途端、カトレアさんがくすっと笑った。
暖かくてやわらかいさっきのと違う、なにか確信を得たとでも言いたげな、悪戯っ子のような笑みだ。
だが、笑うのは失礼だ。西の都は……いや、世界中があいつらのせいで壊滅しかけてるんだぞ!?

「トリステインって、知ってる?」
「とりすていん?」

オレが湧いてきた怒りに怒号上げるより先に、カトレアさんが言った。
とりすていん……トリステイン……聞いたこと無い地名だ。
人造人間と戦いはじめてから勉強はしなくなったもんだから、今のオレは世界中の事情を壊滅状態としか知らない。

「ハルケギニアは? アンリエッタ王女は知ってる?」

知らない単語を次々出さないで下さいよ。
というより“アンリエッタ王女”だって? 一体いつの間に新しい国が出来たんだ?
前の犬人の国王はいの一番に人造人間に殺されたから、世界の統制が取れなくなったのは覚えてちゃいるけど。

「新しく出来た国のことですか……? だったら、オレにはわかりませんよ。信じられないでしょうけど、オレはあの人造人間とずっと戦ってばかりだったから」

オレが言い終わると、カトレアさんはまたくすくすと笑った。

「じゃあ最後。平民って、知ってる?」

やっと聞いたことがある単語が出た。それぐらいは知ってますよ。

「官位とかがない普通の人のことですよ。オレや、キミみたいな」
「……うん、正解ね」

意味深に頷くと、鼻先をちょんと突付かれた。
って……なっ!?

「傷が癒えるまでゆっくりしてってね」

カトレアさんはそれだけ言って、手を振りながら退出した。

カトレアさんが退出して、オレは自分の体を軽く動かしてみた。
……痛くない。体中を埋め尽くすかの如く酷かった怪我は、もうほとんど完治している。
この治療を一人でやってのけたというのなら、カトレアさんもオレた……オレのように、
なにか――気のような“なにか”を持っているのかもしれない。

オレはベッドから出て立ち上がると、とりあえず柔軟体操をはじめた。
ずっと寝っぱなしだったから体が鈍っているだろうし、案の定、
立ち上がると体がだるかったからだ。
体をリフレッシュするには、コレが一番いい。

ワンワンにゃーにゃーごろごろもうもふ?

いきなり起き上がって屈伸し始めたのがおかしいのか、
部屋に散開していた動物達が、なんだなんだと一斉に駆け寄ってくる。
一定の距離を置いてじっとこちらを見つめるこいつらは純粋な瞳で見つめてくる。
動物とは、かくも可愛いもんだ。ほんとに心が癒される。
だけど、

「や……やりにくい……」

さすがに、囲まれすぎて――360度包囲されて――見つめられるのはちょっと……
さながら動物園の動物になった気分だ。……いや、これ普通は逆でしょ?
とはいえ、いったんやり始めた柔軟を途中でやめるのは後腐れがあるし、
かといって何の罪もない動物達を片っ端からぶっ飛ばすのも抵抗ある、ありすぎる。
(……しかたないなぁ、もう……!)
やさしく追い返そうと手でしっしっとやった。
しかし――――、コレがいけなかった。

ワンワンにゃーにゃーごろごろもうもふ!
「うわあっ! な、なんだー?」

動物達が泣き声を上げながらどびついてきた。
モモンガや小鳥が見事な空中飛行を見せ、顔に飛びつくと、
近くにいた小熊がのしかかって、足元にいた犬が膝にぶつかってオレを転ばした。
そしたらあらゆる動物が突撃して、のしかかってきて、もう柔軟どころじゃない!

何とか取り払って起き上がると、それでもまだ小熊とカメが腰に抱きついている。
両者とも、低くて高い微妙な鳴き声を発して、体を擦り付けてくる。
ムズ痒くなったので足元は、そのほかの動物も嬉しそうに鳴きながら体を擦り付けていた。

動物っていうのは、人を癒す能力を先天的に持っているのだろうか?
これだけグダグダになって今更柔軟を続けようとも思わない。思えない。

(まぁ……そういきなり頑張ったって、しょうがない、よな)

小熊の頭を撫でてやった。
オレは久しぶりに、心から微笑んだ。



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