あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

風林火山-09


―――――ガラッ、と教室のドアが開かれた。

「では、授業を始める。」

長い黒髪に、漆黒のマントをまとった、若い男性教師が入ってきた。
以前、ミス・ロングビルを捕らえた教師だ。

「知っての通り、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ」

教室中が静まっている。
その様子を、満足げに眺めて、言った。

「最強の系統を知っているかね?ミス・ツェルプストー」

「『火』に決まっていますわ。ミスタ・ギトー」

キュルケは、問いに不敵に答えた。
だが、ギトーはそれを一笑する。

「残念だがそうではない。試しに、この私に、君の得意な、火の魔法をぶつけてきたまえ」

キュルケの顔から、いつもの笑みが消えた。
目がスッと、細まり、そして、呪文が唱えられる。
杖の先には、巨大な火の玉が現れた。
そして、それはどんどんと大きさを増し、やがて、放たれた。

―――轟

と、巨大な音がした。
見れば、キュルケは後ろ、教室の壁にぶつかり、気絶していた。
悠然として、ギトーは言い放った。

「諸君。風が最強たる由縁をおしえよう。風は、すべてをなぎ払うのだ。火・水・土、そして、恐らくは虚無さえも、風の前では立つことさえできない」

満足げに、ギトーは頷いている。
勘助は、それをどこか冷めた目で見つめていた。

(なるほど、確かに個人の戦いでは風は最強やもしれん)
だが、それが何だというのだろうか。
いくら、一人で一騎当千の力を持っていようとも、本物の戦では大して役に立たない。

(土だ。戦において、土こそ最強の魔法となろう。風のスクウェア・クラスのメイジを1人雇うより、土のトライアングル・クラスのメイジを2人雇う方が、より大きな働きをしてくれるはずだ)

ゴーレムほど、便利なものは無い。
対攻城戦において、まったく手勢を傷つけずに城門を破壊することができる。
巨大なゴーレムは、矢や弾から見方を守る盾にもなる。
その巨体は、ただあるだけで敵の士気を下げることもできる。
いざ倒されようと、メイジは傷一つつかない。
他にも、特に、錬金が素晴らしい。
応用の幅がとても広いのだ。
スクウェア・クラスであれば、大抵の『固定化』を無視して錬金することができる。
ゴーレムを用いずとも、いとも容易く城が落ちる。
水も、なくてはならないものであろう。
怪我人の治療に、素晴らしい。
何と言っても、胴からから切り離されたものでさえ、修復することができるというのだから。
風は、確かに素晴らしい。
数多の矢をはじき、砂埃でも舞い上げれば、敵の視界を遮れる。
だが、戦で役立させるためには、少なくとも、トライアングル以上の力は必要だろう。
ドット・ラインでは、飛んでくる矢を少し逸らす程度が限界だ。
いや、その実力では、矢の速度に追いつくことができるかも疑問である。
戦とは、数が最も大きな要因となる。
貴族とは、平民の傭兵と比べると、雇うのに何倍、何十倍もの金がかかる。
スクウェアともなれば、前線に赴くことは、まず無いと言っても過言では無い。
それならば、せめてライン程度の者達で、十分な効果を得られなければ、意味がないのだ。
それだけでなく、風のスクウェア、土のスクウェア。
どちらをとると聞かれれば、まず間違いなく、土のスクウェアクラスが重宝されるだろう。

と、突然ガラリ、とドアが開かれた。

「えー、皆さんにお知らせします」

コルベールだ。
珍妙なかつらを被り、慌てたように、言った。

「我がトリステインに、アンリエッタ姫殿下が、本日、ゲルマニアの訪問からのお帰りに、行幸されるのです」

ざわ・・・と教室がざわめいた。

「したがって、粗相があってはなりません。急ですが、今から全力を挙げて、おもてなしの準備を致します。その為、本日の授業は停止。正装をし、門に整列するのです!」

生徒達は、一斉に緊張した面持ちとなった。
それに頷き、コルベールは大きな声で言った。

「みなさん!本日は、今まで努力し、そして、立派な貴族になったということをお見せする、絶好の機会ですぞ!杖を磨き、御覚えがよろしくなるよう、しっかりとしておきなさい!」

そして、教室の生徒達は、一斉に部屋へと戻った。


身支度を整え、ルイズ達は門の前へと集まった。

「いい、勘助。わかっていると思うけど、これから姫様がここを通るのよ。貴方も、私の使い魔として、きちんと礼を尽くしなさい」

いつになく、きりっとした顔で、ルイズは勘助に告げた。
勘助は、その姿も、また、美しいと思った。

「承知しております。しかし、姫様。一つお聞きしたいことがございます。」

「何?」

「マザリーニ枢機卿も、ご一緒に?」

ルイズは、その言葉に少し眉をよせて、言う。

「ええ、そうみたいね。あの鳥の骨、姫様を道具みたいに扱って、内政を思うがままにしているって噂よ・・・姫様がお可哀そうだわ」

「なるほど」

(聞く限り、その枢機卿が内政を意のままにしているというのは事実であろう。でなければ、この国は今ほど安定した状況を保てまい。アルビオンと同じように、革命が起きていてもおかしくはないな)

文字を覚え、学院長という強力なコネを得た勘助は、すでに、ルイズよりも多彩な情報を得るようになっていた。
学院を訪ねてくる、他国の者からも話を得ることもできる。
シュバリエの位を与えられるよりも、より多くの報酬を、勘助は受け取っている。

「あ、姫様の馬車が見えたわ!」

オスマンが代表として、アンリエッタを迎えた。

(あれが・・・マザリーニ枢機卿か。しかと、覚えた)

脳裏に、しっかりと実力者の顔を刻み込む。
それだけでなく、姫、側近の者達の顔をも、確認しておく。
と、ルイズがはっとした顔をした。
ついで、うっとりと頬を赤らめる。
視線の先を確かめれば、そこには、羽帽子を被った、凛々しい貴族があった。
グリフォンに跨っていた。

(ふむ)

そして、姫は学院の中へと入って行った。


―――――その日の、夜。
コンコンコン、と長く二回。
コン、と短く三回。
規則正しく、ドアがノックされた。
その音を聞いて、ルイズはハッと立ち上がった。

「姫様?」

怪訝に思った勘助だが、ルイズは気にせず、あわてて身なりを整え、そしてドアを開いた。
そこには、真っ黒な頭巾をかぶり、顔を隠した少女らしき影であった。

「あなたは?」

ルイズが、問うた。
少女は、し、と指を一本、口に当て、ついでドアを閉める。
短くルーンを唱え、杖を振るった。
杖から、小さな光の粉が現れ、宙を舞った。

「ディティクト・マジック?」

ルイズが尋ねる。
少女は頷いた。

「どこに、人の耳があるやも、わかりませんからね」

そこに現れたのは、アンリエッタ王女であった。
慌てて、勘助が膝をつく。

「姫殿下!」

ルイズも、膝をついた。
アンリエッタは、感慨極まった表情で、ルイズを抱きしめた。

「ああ、ルイズ、ルイズ!懐かしいルイズ!」

「姫殿下!いけません!こんな下賤な場所へ!」

「ああ、貴方までそんなことを言わないで頂戴!あなたと私はお友達!お友達じゃないの!」

勘助は、ポカン、とした表情で二人のやり取りを見た。

「ここには、枢機卿も、母上も、宮廷貴族もいないのよ!貴方までがそんなよそよそしい態度を見せたら、死んでしまうわ!」

「姫殿下・・・」

ルイズは、顔を持ち上げた。

「幼いころ!一緒に、宮廷で蝶を追って駆け回ったじゃないの!泥だらけになって・・・」

二人は、昔話を、一々大仰に話した。
そして、窓の外をみて、ふと、言った。

「結婚するのよ。わたくし」

「・・・おめでとう、ございます」

その言葉に、ルイズは、物悲しい表情で答えた。

(なるほど。政略結婚か。さしずめ、相手はゲルマニアか)

勘助は、二人の会話についていけずに、自分の考えにふけっている。

(ということは、アルビオン王家は既に打倒されたか・・・それに近い状態にあるのだろう。前皇の妾の子を出さないのは、より強固な同盟を結ぶため・・・なるほど、それほどまでにアルビオンの軍事力は強大か)

だが、政略結婚や下剋上なぞ、当り前の戦国の世から来た勘助である。
それらに対して、どうと思う事は無い。

「あら、ごめんなさい。もしかして、お邪魔だったかしら」

と、突然アンリエッタが言った。

「お邪魔?どうして?」

ルイズが、言った。

「だって、そこの彼、貴方の恋人なのでしょう?」

「そ、そんなことありません!あれは、私の使い魔です!」

ルイズは、顔を真っ赤にして、答えた。

「使い魔?」

アンリエッタは、キョトンとして、勘助を見やった。

「ルイズ、貴方、昔からどこか変わっていたけど・・・相変わらずね」

と、アンリエッタはため息をつく。

「姫様、どうなさったんですか?」

「いいえ、ごめんなさい・・・こんなこと、貴方に話せることじゃないのに・・・わたくしってば・・・」

「おっしゃってください、姫様!あんなに明るかった姫様が、そんなため息をつくなんて・・・何か、大きなお悩みがあるのでしょう?」

「・・・いえ、話せません。悩みがあると言ったのは、忘れて頂戴、ルイズ」

「そんな!わたしたち、お友達でしょう!そのお友達に、悩みを話せないのですか?」

「わたくしを、お友達と呼んでくれるのね・・・ルイズ。いいわ、お話しましょう」

そして、アンリエッタは物悲しそうに、話し始めた。
おおよそ、勘助の予想道理であった。
だが、一つだけ、思いもよらぬことがあった。

「わたしが、以前したためた、一通の手紙があります」

「手紙?」

「そうです。そして、それがゲルマニアの皇帝の手に渡ったら・・・婚姻はつぶれ、同盟は反故。トリステインは、一国であの国と戦わなければならなくなります」

「姫様!その手紙はどこにあるのですか!」

「それは・・・アルビオン王家、ウェールズ皇太子が持っているのです・・・」

「プリンス・オブ・ウェールズ?あの、凛々しき皇太子さまが?」

アンリエッタはのけぞると、大きな声で嘆いた。

「ああ!破滅です!皇太子は、遅かれ早かれ、敵勢の手にとらわれるでしょう。そして、その時にはあの手紙も明るみに出てしまいます・・・そうなったら、破滅です!破滅なのです!同盟ならずして、あの国と戦わなくてはなりません!」

「では姫様・・・わたしに頼みたいことというのは・・・」

何と言うことだろう。
この姫は、愛しき姫様に、死地に飛び込めと言っているのでは無いか!

「無理よ!無理よルイズ!そんな事、貴方に頼めるわけないわ・・・」

「いいえ、姫様!私は、姫様の為なら例え火の中、水の中、竜のアギトの中でさえも行って見せます!姫様とトリステインの危機、このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、決して見逃すわけにはまいりません!」

「ありがとう、ルイズ・・・!」

二人は、高いテンションのまま、勘助を無視して話を続けてしまっている。

(なんと言ったものか・・・)

止めなければならない。
それはわかっているのだが、どうもこの間に入れる気がしないのである。
そうこうしているうちに、話は決まってしまった。

「早速、明日にでも、ここを出発します」

と、アンリエッタは顔をこちらに向けた。

「頼もしい使い魔さん」

「はっ」

「わたくしの、大事なお友達を、これからも宜しくお願いしますね」

「承知致しました」

と、アンリエッタの手が目の前に出された。

「これは・・・?」

「忠義には、報いるところが無くてはなりません」

勘助は、困った。
何をすれば良いのかわからないのである。

「姫様、これは・・・」

「手の甲に、口付けするのよ」

つっけんどんとした様子で、ルイズが答えた。

「承知しました」

勘助は答えると、アンリエッタの手の甲に、口付けをした。
アンリエッタは、それを見て微笑んだ。
その時である。

―――バタン

突然、ドアが開いた。

「姫様。恐れながら、この、ギーシュ・ド・グラモンにも、その任を受ける栄誉を預けては頂けないでしょうか」

そこに現れたのは、勘助に腕を切られた、ギーシュであった。
そして、ギーシュの同行が決まった。
ルイズには、王家の財宝・水のルビーと、皇太子への密書が渡された。


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