あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

風林火山-08


―――――ふと、誰かが自分を呼んでいるような気がした。

「・・・助」

誰だろうか。

「勘助」

自分を呼ぶ、この声の主は。

「勘助!」

「ハッ!ひ、姫様!」

白く染まる視界の中、そこに、姫・・・諏訪の館で死んだはずの、姫様がいた。

「勘助。何をしているのですか」

「は、某は・・・」

「こんなところで、何をしているのか、と聞いているのです。勘助。貴方には、仕えるべき姫がいるではありませんか」

何を言っているのだろうか。
自分が仕える者は、この世に姫様と御屋形様のみだ。

「使えるべき、姫、ですか・・・?」

「何を呆けた顔をしているのです。ルイズは、貴方を待っていますよ」

その言葉に、勘助の顔が驚きに染まった。

「ひ、姫様!しかし、某は姫様に・・・」

「私は、もう死にました。かの者は生きているではありませんか。私は、御屋形様と共に、勘助達を見て楽しみます」

「姫、様・・・」

「ほら、何をしているのですか。戻りなさい。貴方の姫が、待っていますよ」

姫―――由布姫は、そう言うと、スウと姿を消した。
瞬間に、勘助の視界は黒く染まった。


―――――姫様・・・

ボソリ、と勘助の唇から言葉が漏れた。
そして、同時に勘助の目がうっすらと、開いた。
ぼやけている視界の中、こくり、こくりと揺れながら、ルイズは眠っている。

(はて、何やら夢を見ていたようだが・・・)

何やら、とても重要な夢を見ていた気がした。
しかし、思いだせない。
それでも、考えてみる。
何の夢だったか。
      • 思い出せない。

(思い出せないものは、仕方あるまい)

所詮は、夢だ。
これ以上考えても、特に意味も無いだろう。
それより、何故目の前でルイズが寝ているのか。
何故、自分はここで寝ているのだろうか。

(そうだ。何故忘れていた・・・まず、考えねばならなかったこと)

ルイズは、確かにあの時潰されたはずだ。
そう、ゴーレムに潰された。
死体すら無かった事が、それを示している。

(・・・死体が、無い?)

眉に自然に皺が出来た。
そうだ、死体が無いはずがない。
いくら潰されたとはいえ、血痕、肉片の一欠けらも無かった。
それは、何よりも、ルイズは潰されてはいない、ということ示しているのではないか。
あの時潰されたのは、魔法で作られた別の何かだったのだろう。
勘助の知識で思い当たるのは・・・
ルイズそっくりな、ゴーレムだったのだろうか?

(そうか・・・間に合っていたのだな)

恐らく、コルベールを始めとする、教師達が間に合ったのだ。
彼らが、間一髪でルイズを助けてくれたのだろう。

(だが、それからの記憶が無いな)

ルイズが潰されてから、自分は何をしたのか、どうなったのか、全く分からない。
もしかしたら、すぐにフーケにやられ、それから教師達に救出されたのだろうか。
あるいは、フーケを逃がしてしまったかも知れない。
とりあえず、ルイズに話を聞くのが先だろう。

「姫様。起きて下され。聞きたいことがございます」

ルイズの肩に手を置き、起こそうとする。
ゆさゆさと、体を揺らす。

「姫様。起き―――」

そこまで言って、違和感を覚えた。
それも、とてつもなく大きな。
まるで、自分そのものが、それを拒絶するかのような、大きな・・・

「な・・・ば、馬鹿な!」

違和感の正体に気づき、そして、愕然とした。

(今、姫様と・・・姫様と!)

ルイズを、姫と呼んだのだ。
それも、長年口にしてきたかのように、ごく自然に。
しかし、それは決してありえない。
あってはいけないのだ。
勘助にとって、真に仕える姫とは、由布姫のみだ。
姫様というのは、ある種神聖な響きを持った言葉として、勘助の中にある。
それを、ルイズに対して使うのか。
そんな事が、あっていいはずがない。

(ならぬ。それだけは、絶対にならぬ)

一体、何故自分は、ルイズを姫様と呼んだのだろうか。
例え無意識でも、自分が姫様と呼び間違えるはずがない。
さっきの、一瞬の間の自分は、自分では無いような気すらした。
あの時、自分は、自分では無い、何かに支配されていたのだろうか。
普段ならば、そんな考えは一笑の元、切り捨てるものだ。
だが、今の勘助には、それが本当のことのように思えた。
自分の意識を、自分の存在を侵されているのだ。

「馬鹿な。そんな筈が―――ッ!」

ズキン、と、唐突に激しい頭痛がした。
だんだんと、だんだんと激しくなってくる。
痛み以外の感覚が消えていく。
視界が真っ白に染まり、そして、暗転した。
ズキン、という頭痛のみを残して、再び勘助は目を閉じた。


―――――視界に、白い光が広がった。

「勘助?勘助、目が覚めたのね!?」

そして、その光の先には、ルイズが居た。

「姫様・・・」

「勘助・・・良かったわ、もう二日も眠っていたよの・・・もう、目が覚めないかと思ったの。それに、さっきからずっとうなされていて。でも、本当によかった・・・」

自分をずっと看病してくれていたのだろうか。
疲れているようで、目に隅ができている。

(はて、何か夢を見ていたような気がするが・・・)

とても大事で、恐ろしい事のような気がする。

「勘助、大丈夫?」

「あ、はっ、心配をおかけ致しました、姫様」

だが、所詮は夢の事。

(・・・些事に過ぎんさ)

「勘助・・・今、姫様って?」

ルイズが、少し困惑した顔で問いかけてくる。

「?何か、おかしなことでも、言いましたでしょうか?」

「えと・・・その、姫様って、もしかして、私の事?」

何を言っているのだろうか。

「それ以外にございますまい」

「そ、そうなの。なら、いいわ」

何か不味かったのだろうか。
しかし、昔からずっと姫様と呼んでいるはずだ。
おかしなことは見当たらない。
すると、

「あ、そうだ。勘助が目を覚ましたら呼んできなさいって、先生に頼まれていたんだ。ちょっと、行ってくるわね」

と言い残し、ルイズは部屋を出て行ってしまった。

(姫様の様子が変だったが・・・)

いや、自分の様子が変だったのかもしれない。
何しろ、丸二日眠っていたというのだ。
そのまま、勘助は深く考える事はしなかった。

―――――やがて、部屋にオスマンとコルベールが入ってきた。

「すまんが、席を外してくれるかの」

ルイズは、その言葉でこの場から離れることになった。
二人は、ルイズが部屋から離れたのを確認してから、言った。

「さて・・・まずは、礼から言わねばなるまい。ミスタ・カンスケ。そなたのお陰で、被害を出すことなく、フーケを捕らえる事が出来た。ありがとう」

オスマンとコルベールが、揃って頭を下げた。

「いえ。礼を言われるほどのことではありません。すべては、姫様を守るための事」

勘助が言うと、二人は驚いたように顔を見合わせた。

「ふむ・・・そうか。そういってくれると、助かるわい」

鬚をなでながら、オスマンは続ける。

「そして、次は詫びじゃ。今回の事件、最も貢献してくれたのはそなたじゃと思っとる。しかし、そちは貴族では無い。ほかの3人と同じように、シュバリエを申請しても通らなんだ。」

「姫様が栄誉を受け取れたのであれば、某は、十分です」

またもや、驚いたように顔を合わせる二人。

「のう、ミスタ・カンスケ。その、姫様というのは・・・」

「?姫様とは、ルイズ様の事ですが」

ふむ、とオスマンは頷く。

「まぁ、いいじゃろ。我々は、そなたに大した礼をすることは出来ない。じゃが、我々学院はそなたの味方であるつもりじゃ。いきなり異国の地へと召喚され、何かと不便も多いことと思う。」

すう、と息を吸う。

「何か困ったこと、わからない事があったら、我々を訪ねてほしい。出来る限り、力になろう」

ふむ、と勘助は、自分の中の疑問をいくつか頭に思い浮かべる。

「聞きたいことがございます」

オスマンとコルベールが、促す。

「まず、この身の事。使い魔になってから、剣を握ると体が軽く、強くなります。今まで、そのような事は、ありませんでした」

二人が目を見合わせ、いくつかの間をおいて、コルベールが口を開いた。

「それは、伝説の使い魔、『ガンダールヴ』のルーンです。詳しい事は、私たちにもわからりません。ですが、それはあらゆる武器を使いこなしたといいます。もし、本当に貴方が『ガンダールヴ』であるならば、それの影響なのかもしれません」

そして・・・と、オスマンが続ける。

「このことは、わしら以外の人間には、可能な限り内密にしてほしい。このことが王宮にでも知られれば、何をするかわからん。ヴァリエール家は王家の氏族。そこから、伝説にある『ガンダールヴ』が現れたとなっては、それを種に戦を行う事も、あり得ん話ではないのじゃ」

「わかりました。可能な限り、内密に取り計らいましょう。・・・それと、頼みたいことがございます」

「なんじゃね?」

「『破壊の杖』・・・いえ、鉄砲を、私に預けては頂けないでしょうか」

「ふむ?」

戸惑うように、二人は首をかしげた。

「あの、『破壊の杖』には、もともと、私が仕えていた国の、家紋が記されていました。」

勘助は、顔の角度を少し落として、言った。

「恐らく、我が国の者でありましょう。」

「なんと!」

二人は、目を見開いて、思わず声を上げた。

「勿論、出来ればで構いませぬ。」

「いや。構わんよ」

オスマンが、言った。

「あれは・・・私の、恩人が持っていたものなのじゃ。まともに話すことなく亡くなってしまったのじゃが・・・そう、わしの・・・わしの、命を救ってくれた、恩人のものじゃ」

遠い眼をして、語る。

「その当時、まだ銃というものは世に出回っておらんでの。わしは、あれが何らかのマジックアイテムだと思っておった。」

じゃが、と続ける。

「それから数年した頃・・・銃が、軍に出回り始めた。その時、わしは思った。おそらく、あれはゲルマニアや、もしかしたら、東方で開発された兵器なのだろう、とな。」

コルベールが、後を続ける。

「私は、せめて持ち主の家族にでも会いたいという、オールド・オスマンの言葉を受け、手がかりを探しました。その一環で、出回っている銃も調べたのです。・・・ですが、どの銃もその銃より威力が低く、使い勝手も又、悪いものだったのです。」

辛いものをこらえるように、声を出した。

「もし、この銃が出回れば、戦争は変わるでしょう。平民が、貴族並の攻撃力を持ちます。そうすれば、どこの国も、こぞって開発を進め・・・やがて、大きな戦争が起きるかもしれません。」

憂いた顔で、コルベールは語る。

「もしかしたら、もう何所かの国は、量産に踏み切っているかもしれません。ですが、それを国に報告すれば、それこそ、こぞって戦が巻き起こることでしょう。だからこそ、我々は、これをマジック・アイテムとし、秘宝として保管したのです。」

それに、じゃが・・・と、オスマンが続ける。

「じゃが・・・これは、元々わしらのものでは無い。戦が起こらぬよう、一時的な措置として保管しておいたものじゃ。ミスタ・カンスケ」

「はい」

「わしは、そちを信じておる。主を守り、フーケをとらえてくれた、そちを・・・。そちなら、これを王宮に触れずに、己を、己の主を守るために、これを使ってくれると信じておる。」

「・・・ありがとう、ございます」

「なに、元々そちの国のものじゃ。それを、わしらが持っておったら、フーケと同じ泥棒になってしまうわい」

「あとで、私が持っていきましょう」

コルベールが、言った。
勘助は、姿勢を低くし、礼を言った。

「そして、もう一つ、お願いがございます」

「なんじゃ、まだあるのかね」

オスマンが、愉快そうに笑った。

「図書館の使用許可を・・・それと、文字を教えていただきたい」

これは、兼ねてより考えていたことだ。
図書館は貴族でなければ使用できないらしく、それに、使用できても文字が読めない。
あれほどの本があるというのに、それでは勿体無いことだ。
いや、文字が読めなければ後々困るかもしれないし、この地をもっと理解するためにも、文字は必要なのだ。
二人は、顔を見合わせると、又、笑って言った。

「もちろんじゃよ。ミスタ・カンスケ」


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