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ソーサリー・ゼロ第三部-05

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九六

 コルベールと会おうと考えた君は、その辺りをうろついている生徒たちに、彼の居そうな場所を訊いてみることにする。
 ほどなく、見覚えのある顔を目にしたので話しかける。
 相手はおどおどした目つきの小太りの少年だ。
 たしかルイズの級友で、彼女を頻繁に≪ゼロのルイズ≫と呼んでからかっている者たちのひとりだ。
 ≪風っ引き≫とかいう二つ名をもつはずだが、本名を思い出せない――君の彼に対する印象は薄いが、向こうは君のことを、貴族を恐れぬ心と力をもつ油断ならぬ平民とみているらしく、
話しかけられるとぎょっとした様子を見せる。
「ミ、ミスタ・コルベールなら、用事のないときはいつも『研究室』に居るよ」
 少年は君に悪意がないと見てとると、気をとりなおして言う。
「本塔と『火の塔』に挟まれたところに掘っ立て小屋を作って、秘薬や妙ちきりんなからくりの研究をしているらしい」と。
 少年に礼を言うと、君はコルベールの『研究室』へと向かう。

 『研究室』はすぐに見つかる。
 いたる所が掃き清められ手入れの行き届いている学院の中では、ありあわせの材木で作られたとおぼしき粗末な小屋は、いやがおうにも目立つのだ。
 君が扉を叩いて名乗ると、すぐに返事が返ってくる。
「おや、ミス・ヴァリエールの……。どうぞ中へ、しかし建てつけが悪いので気をつけて!」と。
 君は脚も使いつつ扉を強く押し開けると、小屋の中へと踏み入る。

 君は室内を見回す。
 鉱石や壺、薬品の入った瓶が壁際の棚に並び、その隣には書物でいっぱいの書棚が据えられている。
 空いた壁には地図や星図が貼られており、天井からは奇妙な鳥やトカゲの入った鳥籠がぶら下がっている。
 まさに、絵に描いたような魔法使いの住処だ。
 君はかつて修行時代をすごした森の庵を思い出し、妙に気持ちがくつろぐ。
 薬品、埃、黴(かび)、錆、油……さまざまなものが混ざり合った異様な臭気が鼻をつくが、それさえも心地よく感じられるのだ。
 この小屋の主、魔法学院の教師であるコルベールは君の姿を認めると片手を挙げて挨拶をする。
 テーブルの上には、両手で持てるほどの大きさの奇妙な形をした機械が置かれており、彼は今までそれをいじっていたようだ。
 機械は真鍮と鉄でできていて、筒や歯車や車輪が複雑に組み合わさっているが、君にはそれがどういう働きをするものなのか、想像もつかない。
 コルベールは手についた油をぼろ布で拭き取ると椅子から立ち上がり、君に話しかけてくる。
「今、お戻りですか。六日もかかってしまうとは、オールド・オスマンに頼まれた使いは、思いのほか長引いたようですな」
 学院長は、君とルイズの主従が学院を留守にしていた理由をでっち上げ、教師たちに説明してくれていたようだ。
「さて、ご用のおもむきは?」
 君はコルベールになにを尋ねる?

 テーブルの上の機械はなんなのか・六二へ
 異世界からの来訪者に関する記録は見つかったのか・二八五へ
 左手に刻まれた≪ルーン≫について・一三七へ


一三七

 君は自身の左手の甲に刻まれた、未知の文字らしき奇妙な模様について知りたいのだと言う。
「ああ、それですか。それほど珍しいルーンではありませんが、人間に刻まれたのは初めてでしょうな――もっとも、≪サモン・サーヴァント≫で人間が召喚されたこと自体、前代未聞なのですが。
普通、ルーンを刻まれた主人と使い魔は、言葉に頼らずに意思を通じ合わせたり、視覚や聴覚といった感覚を共有させたりするものなのでが……あなたの場合はどうです?」
 コルベールはそう尋ねてくるが、君はそのようなことはないと答える。
「ふむ、獣などと違って、強固な意志と高い知能をもつ相手にはルーンの効果も薄いのかもしれませんな。ミス・ヴァリエールに召喚されてから、なにか心身に変化はありませんでしたか?
些細なことでも構いませんよ」
 君はにやりと笑い、ここに来てから少し太ったうえに物忘れが激しくなったと冗談を言う――平和すぎるのも考えものだと!
 それを聞いたコルベールは沈黙するが、やがて笑顔を見せる。
「いやいや、平和こそなにより貴いものですぞ。平和だからこそ、私はこうやって趣味の研究と発明に打ち込めるのですからな」
 そう言って、小屋のあちらこちらに積み上げられた書物、機械、薬品、そのほか雑多ながらくたを示す。
「それで、実際のところはどうです? なにも変わったことはありませんか」
 あらためて考えてみた君は、アルビオンでの不思議な出来事に思い当たる。
 最初は、手負いの傭兵がルイズに向かって剣を振り上げたとき。
 次に、ワルド子爵がみずからの婚約者を振り払ったとき、君は奇妙な衝動に突き動かされていたのを思い出す。
 ルイズを護らなければならぬ、ルイズに危害を加えようとした者を倒さねばならぬという思いに、心を支配されたのだ。

 このことをコルベールに伝えるべきだろうか?
 自分の『ご主人様』を名乗る少女を守るために、無我夢中で飛び出してしまったなどと言うのは気恥ずかしく、あまり気の進む内容ではない。
 そもそも、あの出来事は≪ルーン≫とは無関係なことかもしれぬのだ。
 正直に語ってみるか(二五九へ)、それとも秘密にしておくか(六一へ)。


二五九

「ほほう、それは興味深い。≪コントラクト・サーヴァント≫によってルーンを刻まれた使い魔は普通、生来の野生を抑えこまれて主人に忠実な存在に変わるといいますが、あなたの場合はそのようなことはなく、
ルーンによって付与される能力も顕れなかった。しかし、主人であるミス・ヴァリエールの危機を前にして初めて、ルーンが本来の効力を発揮したのかも……」
 コルベールは顎に手を当て考えこむ。

 彼の言葉を聞いて、君は寒気を覚える。
 『野生を抑えこまれ』『忠実な存在に変わる』とコルベールは言った。
 とくに不都合もないので気にもかけずにいたこの模様に、そのような力があるとは知らなかったのだ。
 飼い慣らす手間が省けるうえに、特殊な力を与えることができるのだから、≪コントラクト・サーヴァント≫とはずいぶんと便利な術だ。
 相手が知性をもたぬ鳥や獣ならば、何者にも非難されるいわれはなかろう。
 しかし君は、意思も人格もある人間だ。
 ルイズはその人間に対して、獣を相手にするのと同じような気持ちで≪ルーン≫を刻んだというのだろうか――自分に対する絶対の忠誠と、無私の奉仕を期待して。
 つまり、彼女にとって『平民』とはその程度の存在に過ぎなかったというのだろうか?
 今のルイズは君を召喚してしまったことを詫び、カーカバードに戻れるよう協力してくれてはいるが、それは、≪ルーン≫が意思を奪わなかったためであり、
もしも≪ルーン≫の魔力が君の心を完全に支配していたならどうなっていたことかと考えて、大きく身震いする。

 コルベールは高い知性をもつ生き物――韻竜や亜人――に≪ルーン≫が刻まれた場合、どのような影響があったのかを、文献をあたって調べてみると言う。
「もっとも、オールド・オスマンから別の調べ物を頼まれていますので、結果をお伝えするのはしばらく先になりそうですが」
 そう言って薄くなった頭を掻くコルベールに別れを告げ、君は研究室をあとにする。三七へ。


三七

 寄宿舎へと戻る途中で、食堂に向かうギーシュを見かける。
 城下町に居たときと変わらずぼうっとしており、並んで歩む少女の言葉にも生返事を返すばかりだ。
 少女は、どうやって整えたのかと疑問に思うほど仰々しい金色の巻き毛を、赤く大きなリボンで飾っており、泉のように深く青い瞳の持ち主だ。
 背が高いわりには肉付きが悪く、痩せぎすと言ってもよい。
 彼女も先刻出会った小太りの少年と同じく、ルイズの級友のひとりであることを思い出す――ルイズを≪ゼロ≫と呼んでからかっているのも同じだ。
 君は片手を挙げてギーシュに挨拶するが、彼の眼には映らなかったらしく、そのまま通り過ぎてしまう。
 金髪の少女のほうは君に気づいた素振りを見せるが、冷ややかな視線で一瞥するとすぐに顔をそむける。
 君はギーシュと少女の後姿を見送りつつ、首を傾げる。
 今までに彼女の気に障るようなことをしでかした覚えはない。
 かつて決闘でギーシュを打ち破ったことを、いまだに恨んででもいるのだろうか?

 夕食を終えた(体力点二を得る)君はルイズの部屋に戻るが、≪ルーン≫のことを知ったいま、どことなく彼女に話しかけることがはばかられてしまう。
 あいも変わらず≪始祖の祈祷書≫を見つめているルイズをちらちらと横目で見ながら、君は考える。
 彼女は、人間である君に≪コントラクト・サーヴァント≫を施すにあたって、良心の呵責にさいなまれたりはしなかったのだろうか?
 目の前の平民にも故郷や家族、そして果たすべきことがあるだろうとは考えなかったのだろうか?
 このハルケギニアに召喚された最初の日のことを思い起こすに、とてもルイズがそれらのことを真剣に考えていたようには思えない。
 頭の中でルイズとのやりとりを再現していた君は、突然、あることに思い当たって愕然とする。
 ルイズから≪使い魔≫の契約についての説明を受けたとき、なぜ君は、それをすんなり受け入れたのだろう?
 祖国を救うための重大な任務の途中で、人さらいも同然のやり口で連れてこられ、下僕になれと言われたのだ。
 ふざけるなと一喝するのが当然であり、一刻も早く元の場所に戻せとルイズを脅し、できぬと言う彼女が嘘をついておらぬかと魔法を使ってでも調べるのが、
あのときの君のとるべき行動だったはずだ。
 しかし、君は彼女の言葉をあっさりと信じ、当面は≪使い魔≫として働くことを受け容れたのだ。
 ≪ルーン≫は刻まれたその瞬間から、君の心に影響を及ぼしているのではなかろうか?
 『ご主人様』に暴力を振るってはならぬ、と。

「相棒、どうしたね? なにか悩み事でも……ああ、国に帰れる目途が立たねえことだな?」
 傍らに置いていたデルフリンガーが君に声をかける。
「アルビオンじゃ残念だったみてえだが、ここは気長に……」
 それ以上は言わせず、君はデルフリンガーを手にすると素早く鞘に押し込む――魔剣の声を耳にしたルイズが≪始祖の祈祷書≫から顔を上げ、君のほうをじっと見つめているからだ。
 君はなんでもないと手を振ると、明日からまた学業を修める日々が始まるのだ、≪始祖の祈祷書≫とにらめっこしていないでもう寝るぞ、と告げる。

 ルイズが寝台に潜りこんだのを確認すると、君は暗澹たる気持ちで毛布にくるまり眠りにつく。一五一へ。


一五一

 君たちが学院に戻って三日が経つ。

「今朝早くに、王宮よりの勅使があった」
 朝食のために『アルヴィーズの食堂』に集ったすべての教師と生徒に向けて、オスマン学院長が重々しく告げる。
 ガリア王国を中心としたアルビオン解放のための連合軍が結成され、トリステイン王国もこれに加わることになった、と。
 オスマンによれば、諸国の軍がアルビオンへ向けて出征するのは、一月ほど先のことになるという。
 戦の報せを受け、食堂は沸き立つような歓声に包まれ、そこかしこから「トリステイン万歳!」という叫びが上がる。
 彼ら若き貴族たちのほとんどは、前々からアルビオン王家打倒を企む反乱軍の行いを噂に聞いており、憤りを覚えていたのだ。
 もっとも、ここに居る者たちのなかで実際にその非道を眼にしたのは、君とルイズ、ギーシュだけだろう。
 タバサならば戦乱のアルビオンを訪れたことがあるかもしれぬが、約束の≪虚無の曜日≫の前日になっても、彼女は姿を現さぬのだ。
「一度戻ってきたのに、またすぐ出て行くなんて初めてよ。まあ、あの子のことだからいつの間にか帰ってきてるんでしょうけどね」
 キュルケはなにくわぬ風を装ってはいるが、無口な友人のことが心配らしく、昨日も一昨日も、授業中はずっと窓のほうを向き、空をぼんやりと眺めていたのだ。

 食前の祈りが済み、生徒たちは食事をしながら歓談するが、その話題は来たる戦のこと一色に染まる。
 彼らの大半は楽観的であり、夏が来る前に戦は終わり、アルビオンの謀叛人どもは高く吊るされることになるだろうと語り合う。
 なかには、内乱で疲弊しているとはいえ、精強なアルビオン空軍を打ち破って上陸を果たすのは一苦労だろうと言う者や、
今まで頑なに中立を貫いてきたガリアが、なぜ急にアルビオンへの介入を思い立ったのかを、もっともらしく説明する者も居る。
 食堂のいたる所に将軍きどり・軍師きどりの少年が現れて戦術を語り、なかには休学して軍に志願しようと言いだす者まで出る始末だ。

 君はいつものように、ルイズの分けてくれたパンと料理を載せた皿を片手に食堂を出る。
 苦労知らずの貴族の小僧どもと肩を並べて食事など、ぞっとしない――ろくに血を見たこともないような連中が、したり顔で戦について語っているなかではなおさらだ!
 石造りのベンチのひとつに腰を下ろし、戦のことを考える。
 人間同士の戦など醜くつまらぬものだが、邪悪な七大蛇を従える≪レコン・キスタ≫の首魁が倒され、ウェールズ皇太子が救われるというのならば、それは喜ばしいことだろう。三一五へ。


三一五

 食事をとっていると(体力点一を加えよ)、ひとりの少女が食堂から現れ、つかつかと君のほうへ歩み寄ってくる。
 二日前にギーシュと並んで歩いていた、金髪の少女だ。
 少女はマントを翻すと、
「ちょっとよろしいかしら、≪ゼロのルイズ≫の使い魔さん?」と話しかけてくる。
 君は聞こえよがしにパンをクチャクチャと噛みしめながら、なんの用だと横柄に返す。
 フーケの一件以来、面と向かってルイズを≪ゼロ≫呼ばわりする者はだいぶ減ったのだが、この高慢な少女は態度を変えぬのだ。
 この少女がルイズに向かって吐く言葉からは、キュルケのようにいくらか親しみが込められた――当のルイズは気づいておらぬようだが――ものとは違い、
あからさまな悪意が感じられるのだ。
 そのような相手に礼を尽くすこともなかろうと考えた君の態度に、少女は細い眉を吊り上げる。
「あ、あなたねえ……まあいいわ。あなた、≪ゼロのルイズ≫の旅のお供をしていたわよね。ギーシュと一緒に」
 君は彼女を睨みつけながら低い声で、≪ゼロ≫ではなくルイズ、もしくはミス・ヴァリエールだろう、と言う。
 少女はぎょっとしてあとずさり、もごもごと言い始める。
「な、なによ。怒らなくてもいいでしょ……。その、まさかとは思うけど、旅先でギーシュと≪ゼ……ルイズのあいだになにかあったりしなかった?」
 君は、そのようなことはありえぬと答える。
 宿屋の同室で眠ったりはしたが、そこには自分も居たのだから間違いなど起こりえぬ、と。
「じゃあ、途中でどこぞの村娘を口説いたりはしなかった?」
 君が黙ってかぶりを振ると、彼女はふたたびもごもごと何事かをつぶやく。
 君は呆れ顔で、お前はなにを訊きたいのだと尋ねるが、少女ははっきりと答えようとはしない。

 どうやら彼女は、恋人であるギーシュが旅先で何者かと浮気をしなかったかと、心配しているようだ。
 しかしそのことを、平民であり、目のかたきにしているルイズの≪使い魔≫である君に気取られたくはないのだろう。
 もっとも、この態度で気づくなというほうが無理な話だが。
 心配せずとも、ギーシュは浮気などする暇はなかった――そう告げようとした君だが、唐突にアンリエッタ王女の存在に思い当たる。
 そういえば、ギーシュはアンリエッタ王女に一方的に恋焦がれている。
 あれはもはや、崇拝といってもよいだろう。
 このことを少女に伝えるべきだろうか?
 迂闊なことを言っては、若き恋人たちの騒動に巻き込まれてしまうかもしれない。
 ギーシュが王女に惚れていることを伝えるか(一〇二へ)、黙っておくか(二四三へ)?
 術を使ってみてもよい。

 HOW・三六六へ
 TEL・三四一へ
 SUS・四七二へ
 SUD・三九四へ
 GOD・四三二へ



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