あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの夢幻竜-30


何千、何万という鬨の声と共に、前線にいる兵士の銃から大量の銃弾が王宮であるニューカッスルへ向けて放たれる。
いや、それだけではない。空中に浮かぶ十数隻もの大型戦艦の大砲からは、直径30サントはあろうかという巨大な砲弾が放たれた。
ラティアスはルイズを振り落とさない様に細心の注意を払いながら、勢い良く高度を上げて弾道の上を通る。
銃弾は城壁を僅かに削り取る程度であるのに対し、大砲の砲弾は城壁や美しく整備されたニューカッスル内の庭園に巨大な穴を穿っていく。
中には城を構成している尖塔の外壁を大きく破壊する物もあった。
突然の総攻撃を予想していなかったのか、城の人間がその場所にわらわらと出てくる。
それを見計らうように、竜騎士隊の面々が竜を嗾けて炎を吐かせる。
炎は容赦なく彼らを襲い、更には砲弾による延焼を免れた園庭の一部を黒く染め上げていった。
その様子に息巻き前進し始めた歩兵達の中には、悠然と歩いて進撃する者などいない。
皆自分達が得るであろう絶対の勝利を信じ、手柄を立てるのは自分だとばかりに走り始めたのだった。
続いて襲ってきたのは、その彼らが繰り出す、虚空に燦然と輝く氷の槍『ジャベリン』と燃え盛る巨大な火球『ファイヤーボール』だった。
編隊を分け、時間差を利用して攻撃を仕掛けているのか、右に避けても左に避けても必ずその何れかとぶつかってしまう。
仕方が無いとばかりに今度はぐっと高度を落として対応してみるも、今度は突然翼の右端が剃刀にあてがわれたかのようにすっと切れ筋が入る。
次いで鋭い痛みが遅れたようにラティアスの頭を襲いだした。

「痛っ!!」
「ラティアス!どうしたの?」

ラティアスの叫びにルイズが反応する。
彼女は翼にはいった一筋の切れ込みを見て、ラティアスを襲った魔法が何なのか一応の見当がついた。

「『エア・カッター』にやられたのね……大丈夫よ。ニューカッスルに着いたら直ぐに治療するから!」

ルイズの言葉にラティアスは少し元気を取り戻すが、彼女にとっては切れ込みがはいった瞬間、何かが襲ってきた感触というのは殆ど無いに等しかった。
エア・カッターという言葉から察するに、自分を襲ったのは見えない風の刃なのだろうか?
そうであるならばそれはそれで怖いものだ。
翼のように当たり所が悪ければ、一番の強みである飛ぶ事すらも出来なくなってしまう。
気流の乱れを感じ取って避ければ良いかもしれないが、他の物まで襲いかかって来るこの時にそんな悠長な事は出来ない。
第一、城まではもう1リーグと無い。
城の安全な所に駆け込んでしまえば、多少時間稼ぎは出来るだろう。
上手くすれば、城の何処かにいるというウェールズ皇太子に会う事だって不可能ではないかもしれない。
勿論、その安全な所も一時間としない内に危険な場所に変わっているであろうが。
ラティアスは速度と高度を落とし、ルイズに訊ねる。

「御主人様!どこに行けば宜しいんでしょうか?!」
「先ずは城内へ通じる幾つかの門に向かうわ!こちらが幾ら姫様の書状を持っているとしても、いきなり玉座の間に姿を現したら失礼極まりないもの!」

流石はトリステイン貴族であるルイズである。
いきなり王族に謁見などという無粋な真似はしない。
すると、ラティアスの目に数百の兵士が出陣を待っている場所が見えた。
木で出来た門もあり側には衛兵もいる。
王女の花押がなされた書状を見せて十分に説明をすれば、話が通じない事は無いだろう。
だが、その瞬間後方から強烈な竜巻が猛烈な速度で襲いかかって来た。

「『エア・ストーム』!ラティアス、避けて……っ!!」

ルイズはラティアスに警告しようと大声で叫ぶ。
しかし、それはやや遅かったようだ。
ラティアスが旋回行動等に移る前に、強烈な風の流れは彼女を捕らえてあっという間に翻弄してしまう。
何とか姿勢を制御しようとするも上手くいかない。
彼女を巻き込んだ竜巻は城の正面にぶつかり、外壁をまるで焼菓子を砕くかの如くあっさりと破壊していく。
その際ラティアスは、バルコニーの手擦りに嫌というほど体を打ちつける。
次いで、竜巻の衝突によって生じた細かな礫と共に、窓を突き破り、大理石の床を砕きながら滑る様にして城の中に入った。
状況を把握する為にラティアスは目を開ける。
しかし一面に立ち込める煙のために、ここが城のどの部分なのかさっぱり見当がつかない。
体を打ちつけた為か節々がいやに痛む。
側を見るとルイズが倒れていた。
鼻の辺りにある粉塵が舞っているあたり息はあるようだ。
だが、衝突の衝撃で上手く体を動かせないのか、微かに呻いて手などを動かすだけに留まっている。
頬や唇には切れ筋がはいっており、服は塵のせいで酷く汚れていた。

「御主人様、しっかりして下さい、御主人様……」

ラティアスはそう言ってルイズの体を弱く揺する。
だが次の声は、周りから発せられた猛々しい声によって遮られた。

「そこの者、動くな!ここがニューカッスル、アルビオン王ジェームズ1世の御前と知っての狼藉か?!」

外で総攻撃が始まっているにも拘らず、その声は少しも震える事が無い。
ラティアスが恐る恐る声のした方向を見ると、銃を構えた数人の衛兵が至近距離からこちらに狙いをつけていた。
そして視点の角度を変えると、一人の着飾った老人がそれなりに立派な椅子に腰掛けていた。
恐らくその人物こそが、このアルビオンを治める王ジェームズ1世なのだろう。
ラティアスは取り敢えず、声の聞こえる範囲をルイズだけにしてから静かに訊ねる。

「御主人様、どうしましょう?」
「不味いわね……色々と。でも待って。私が説明してくるから。」

言いながらルイズは立ち上がり、臆す事も無く王の鎮座する玉座に向かって歩き始める。

「と、止まれ!止まらぬと撃つぞ!」

未だに状況がよく掴めていない衛兵が銃を構え直す。
それをジェームズ1世は左手を上げる事で「待て」と制止した。
王の前に現れたルイズは右手を前に出し、恭しくその場に跪いた。

「戦闘中にも拘らず突然の御無礼と粗相をお許しください!私はトリステインより参りましたラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールで御座います。
怪しい者では御座いません!トリステイン王女アンリエッタ姫殿下の密命により、ここアルビオンに参りました。」

その言葉を聞いてジェームズ1世は懐かしむように目を細めて話し出す。

「おお、まだうら若き、我が姪からの使いとな!彼の国は、先王亡き後長い事行っておらぬ故に如何ばかりしているかと思っておったが、健やかそうで何よりじゃ。多分に足労じゃったじゃろう。
貴族派の包囲を抜けてよくぞ此処まで参ってくれたの。して、密命と申したが?」
「はい。その事に関しては、是非ともウェールズ・テューダー皇太子とお取次ぎを願いたいのですが……」
「ウェールズにか?うむ。我が息子ウェールズは今、出撃する兵達の詰め所におるはずじゃ。息子の激励に忠勇なる兵士達はこの戦、いや、虐殺においても毅然とした態度で向かうじゃろう。
さて……今は御覧の様に、あの恥知らずな連中の宣告無き攻撃によって貴殿をもてなす事もままならぬが、我が国、我が王家が迎える最後の客人として手厚く歓待する事を約束しよう。」
「有り難き幸せで御座います。へい……」

その後のルイズの言葉は続かない。
元いた場所から更に接近してきた戦艦から放たれた何十発という砲弾が、城の彼方此方に襲い掛かったからである。
その衝撃に玉座のホールにいた者全てがよろめき、華麗さを誇る内壁はガラガラと音を立てて崩れていく。
最早一刻の猶予も許されはしない。
だが、この状況を覆す事等万に一つも無い筈……
いや、たった一つだけ、ある手がラティアスの脳裏に浮かんだ。
自殺行為とも言える手の一つでもあるが、この状況を一時的にせよ乗り切るためにはそれしかない。

「御主人様……ちょっといいでしょうか?私に良い考えがあるんですが……」
「何、ラティアス?」

ラティアスは周りに聞こえないようルイズに話しかける。
話の内容を聞いたルイズの目はみるみる内に見開かれ、表情も青褪めていった。
そして周囲の事も気にせずに、大声で叫んでしまう。

「そんな事許せる訳無いでしょ!!私に『死になさい』って命令させる気なの?!そりゃ……名誉の為に戦うのなら文句無いわよ。でも、『主人を見捨てて犬死しろ』なんて命令が出せる訳無いでしょう!!」
「でも!ウェールズさんにお会いして手紙を引き取る為の時間を稼ぐにはこれしか方法が無いじゃないですか!!それに私の力は御主人様が一番よくご存知の筈です。
私だって犬死する気なんてありません!そうでなければ、御主人様には何か他に良い考えがあるんですか?!!」

ルイズは押し黙ってしまう。
その間にも貴族派の兵士達は、破壊された城壁を乗り越え、城の敷地へ次々に雪崩れ込んでくる。
そして再び大きな衝撃が城全体を襲い出す。
ルイズは崩れた姿勢を正し、無礼を承知で王に畳みかける様に言い放った。

「陛下!貴族派の軍は城壁の直ぐ外まで迫ってきています!そこでお頼みがあるのですが……私の使い魔を出撃させて頂けませんでしょうか?」

ラティアスが出した‘良い考え’とは自身の参戦であった。
ルイズの言葉にホールからどよめきが起こった。
話題に上がった使い魔というのは、恐らく少女の後方で控えている赤と白の色をした小型の竜の事だろう。
だが、その竜一匹を出撃させたとて一体何がどうなるというのだろうか。
もっと大型の火竜か風竜の方がよほど頼もしげに見える。
しかし、ジェームズ1世はラティアスを見定めるようにじっくりと見つめながら威厳ある声で言った。

「うむ……遠路遥々やって来てこのような事態に巻き込んでしまうのはわし等としては些か不本意じゃ。何よりも貴殿は他国の人間じゃしの。」
「お願いです。きっと役に立つと御約束致します。」
「役に立つ、か。我等は既に滅びいくものでしかないと思っていたが……我等王軍に従い、微力ながらも叛徒共に対して戦うのに尽力を尽くしてくれるのであれば、我等はそれを喜んで受け入れよう。」

意外と言えば意外な言葉だった。
王族や貴族の誇りがある故に断られるものだと思っていたルイズは、つい拍子抜けした顔をしてしまう。
対してラティアスは満足そうに微笑んだ。
それからルイズは一歩下がって一礼し、ラティアスの方を向いて一言一言をはっきりと言い聞かせる。

「いい、ラティアス。敵を今いる所からある程度撤退させたら良いんだからね。これはあくまで時間稼ぎなのよ。私はその間ウェールズ様に会って手紙を引き取っておくわ。」
「分かりました。」
「それと……もう一つだけ言っておく。」
「何ですか?」
「……どんなに怪我をしてもいいから生きて帰って来て。いいわね?」
「勿論ですとも。」

そう言ってラティアスは破壊された窓から、弾かれる様に外へ向けて飛んでいく。
未だ振動の収まらぬホール。
ルイズはゆっくりと立ち上がり、目の前にいるジェームズ1世に問いかける。

「あの、陛下。何故です?何故ラティアスの出撃を許したのですか?」
「ほう。あの竜はラティアスと言うのか。これはこれは……驚いたわい。伝承の通りじゃわい。」
「伝承?……それは何なんですか?」

突然振られた話にルイズは不思議そうな顔をして答える。
だが、そんな表情をする彼女を気にする事も無く、ジェームズ1世はにこやかに続けた。

「そうか。貴殿はトリステインからの客人故知らぬのであろうな。宜しい。ではわしの口から直に語るとしよう。このアルビオン、それもサウスゴーダに伝わりし古き伝承を……」


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