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ゼロの魔獣-25


「フン・・・ あの山師め・・・ しくじったか」

誰に言うでもなく悪態をつきながら、ワルドがゆっくりと慎一の方に向き直る。
その冷めた目で、慎一のダメージ、傷の一つ一つをじっくりと分析していく。

実際、慎一の状態は最悪であった。
おびただしい量の出血、未だ開かぬ右目、薬によって極限まで酷使された肉体、
僅かに体を動かすだけで、その全身が悲鳴を上げる。

だが、だからといって歩みを止める慎一ではない。
猫の鼻先に噛み付く鼠の如く、雀を仕留める蟷螂の如く
肉体の最低なコンディションが、慎一の中にかつてない集中力を生み出していた・・・。

「シンイチ 俺を使え!」
その声を聞き、ゆらりと踏み出そうとした慎一の足が止まる。
声の主は、数少ない惨劇の目撃者・デルフリンガー。

「・・・役者不足だ すっこんでろ」

「俺にも王子と娘っ子の分 あのクソ野郎をボコらせろ」

「・・・・・・・・」

慎一は無言でデルフリンガーを掴むと、ゆっくりと鞘から引き抜いた。
すると、そのくたびれた刀身がたちまち輝きだし、
突然重力を加えられたように、慎一の右手がガクンと下がる。

輝きが消えた時、そこには業物と呼ぶにふさわしい、大振りの剣があった。

「本来なら相棒にしか見せねえ姿だが シンイチには特別だぜ
 本来の使い手じゃないお前さんにはしんどいだろうが その馬鹿力で何とかして見せな!」

「・・・上等」
言いながら左手を沿え、大剣を肩で担いで、慎一が中央へと進んでく・・・。

「随分と厳つい王子様の登場だな
 そんな無骨な代物でいじめられちゃあ敵わんよ」

軽口を叩きつつ、ワルドが詠唱を始める―。
風のユビキタス(偏在)-たちどころに四人のワルドが出現し、慎一を取り囲む。

「5対2だ カゴの中だな
 どうする? 魔獣・・・」

慎一は応じず、本体に向け、ゆっくりと青眼に構える。
一切の気負いのない緩やかな動き。 
対手を射すくめるような隻眼の輝きが、古来の剣豪の風格を漂わせる。

この立会い、慎一にとってはヴェストリの応用問題である。
偏在の技の多様さ、キレは青銅乙女の比では無いだろうが、
気配を辿るべきは、結局のところただ一人である。
心に刃をあてがい、慎一が精神を研ぎ澄ます。

意外にも挑発に乗ってこない慎一に対し、ワルドが軽く舌打ちをする。
やがて、真横にいた偏在の一人が詠唱を始める。

選んだ魔法は『ウィンドブレイク』・・・その威力はラ・ロシェールで証明済みだ。
受けるか、避けるか・・・ いずれにしても、慎一は動かざるを得ない。
その全ての動きに対応できるよう、4本の杖が油断なく構える。

実戦経験に裏打ちされた必勝パターン。
その完璧さゆえに、慎一は敵の思考を看破するに至った。

慎一は受けもせず、かといって避けもせず、ただ覚悟して腹筋を固めた・・・。

直後、右方向から凄まじい、だが、期待通りの衝撃が慎一に叩きつけられる。
大きく吹き飛ばされながら体勢を変え、デルフを振りかぶる。
魔獣の隻眼が、その後方の四つの瞳と交錯する。

一瞬の斬劇―。

横薙ぎの一撃で二つの偏在が掻き消え、慎一は右肩に相打ちとなる一撃を受けた。

ワルドも又一流である。
作戦が裏目に出た事を知るや、直ちに残り二体の偏在と供に魔法を唱えた。
たちどころに三本の稲妻が飛び交い、閃光が慎一を包む。
掻き消える直前だった右肩の杖を通し、慎一が内と外からバーベキューになる。

「ガアアァァッ!! 
 ヌッ!ぬりィんだよォォォ!!!」

叫びながら、慎一が手近の偏在に突撃する。
構えも糞もない、愚直で大雑把な一撃、偏在は余裕を持って杖で受ける。

―直後、炸裂音を伴い新たな閃光が生じる。
 全身を灼かれながらも、慎一は全身の細胞を変化させ、電撃を体内に蓄えていた。
 受け止めた剣先から三本分の雷撃が生じ、熱風で偏在が消し飛ばされる。

焼け焦げた慎一に止めを刺すべく、ワルドが残りの一体を動かし、更なる詠唱を始める。
魔法を阻止すべく、慎一がデルフを逆手に持ち替え、振り向きざまに一投する。
レーザー光線のような一撃が、最後の偏在を串刺しにする。

同時に二人の魔法が完成し、超局所的な竜巻が慎一を包み込む。
螺旋を描く真空の刃が、グズグズにただれた慎一の肉体を容赦なく切り刻み、
血風を巻き込み真紅の大渦となる。
頭部を守ろうとした慎一の両腕が千切れ飛び、はるか上空へと巻き上げられていく・・・。




腹を潰され、肩を抉られ、全身を灼かれ、膾の如く切り刻まれて、
遂に魔獣が膝を屈する。

強敵の心が折れたのを確認し、トドメを刺すべくワルドが勇躍する。

「遊びの時間は終わりだッ!!! 魔獣!!」

「次は食事の時間かァッ!?」

叫びながら、慎一が顔を上げる。その隻眼が捉えているのはワルドではない、その更に後方・・・

「なぁッ!! ゴールドォ!!!」

閉ざされていた右目が突如として瞠き、黄金色に怪しく輝く。
直後、上空を舞っていた右手の回転がピタリと止まり、ワルド目掛けて一直線に急降下してくる。

「な・・・ッ」

かろうじて体を捻ったワルド、その左肘に、慎一の右手が喰らい付く。
万力の如き握力が肘先を締め上げ、ベキベキと骨の砕ける音が響く。

その指先が、徐々に無骨な乳白色の牙へと変化を遂げていく・・・。

「グアアアアアアアアアッ!!」

ワルドが叫び声を上げる。
千切れ飛んだハズの右手から変貌した金色の獅子が、ワルドの左腕を食い千切った・・・。


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