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虚無(ゼロ)からはじめる筋肉革命-03

「さて、ここはいったいどこだ?」


 目が覚めた真人はルイズに言われた通り、さっそく衣類の洗濯をしようと思って部屋から出た。
 だが問題はここから。
 真人は肝心の洗濯場を見つけられずにいた。
 いくら寮でも洗濯機なんてものは無さそうだし、おまけに水道が設備されているかも怪しかった。
 そして、どうしようかと右往左往しているうちに迷子になってしまったのだ。

「あの、どうかいたしましたか?」

 真人のあまりの落ち着かないようすに、メイドの少女が不審に思い声をかけた。

「うおっ、メイドだ。本物のメイドがいる」

 現代人の真人にとってメイドとは、特殊な喫茶店でウエイトレスをしているイメージしか認識がなかった。
 おまけに、以前恭介にメイド好きの濡れ衣を着せられたりしたため、メイドに関してあまり良い記憶はない。

「……? はい、確かに私はメイドですけど」

 だが、メイドの少女―――シエスタにしてみれば真人のその言葉も、目の前の男の不振さに拍車をかけるだけの判断材料にしかならない。
 心なしか足が後ろに一歩さがっていた。
 そんなシエスタの心情を知ってか知らずか、真人は意を決して話しかける。

「……あー、この辺にどこか服の洗濯ができるような場所はねぇか?」
「えっと、洗濯場でしたら外にありますけど?」

 はたから見れば真人の姿はあまりに怪しい。
 女子生徒のものらしき衣類を小脇に抱えたまま、貴族の生徒が寝泊りしている寮内を平民らしき大男がうろついているのだ。
 これを怪しいと言わずなんとする。

「あーなるほどな。どおりで中を探し回っても見つからねぇわけだ」

 早朝だったためにシエスタ以外の人にはまだ会っていないが、運悪く女子生徒にでも見つかっていたら、悲鳴を上げられた挙句に警備の者にしょっ引かれていたかもしれない。
 しかし、シエスタの頭に疑問が残る。
 なぜこんな怪しい男が洗濯場なんかに? そう思ったとき、シエスタはある噂を思い出した。

「……もしかして、ミス・ヴァリエールが召喚した使い魔の方ですか?」

 メイジが平民を召喚したという噂は、常日頃から暇をもてあましている貴族の生徒たちに、瞬く間に広がっていったのだ。

「ん? なんだお嬢ちゃん。俺のこと知ってるのか?」
「ええ。ミス・ヴァリエールが平民を召喚したという話で、学園中は持ちきりでしたから」

 生徒の入ってこない厨房での仕事が多いシエスタでさえその話を知っているのだ。
 この学院内で知らない者はいないと言っても、なんら過ぎた言葉ではない。

「ふっ……こっちに来て早々噂で持ちきりなんて。この俺の筋肉も中々罪深いもんだな」
「えーと、その……そうですね」

 陶酔しているところに口を出すのも悪いと思ったので、シエスタはあえて愛想笑いにつとめた。

「わりぃな、いろいろ教えてもらっちまって」
「いえ、私も洗濯物を少し手伝って貰ったので、おあいこですよ」

 シエスタと並んで歩く真人。
 あのあと真人は、シエスタのと一緒に洗濯場に行き、早めにルイズの分が終わったのでシエスタの仕事の分を手伝った。……もちろんデリケートな生地以外のものだけだったが。

「シエスタ、筋肉を貸してほしいときは、いつでも呼んでくれ。すぐに駆けつけるぜ」
「ええっと……お気持ちだけ受け取って起きますね」

 真人はメイドに対する変なわだかまりもなくなり、シエスタと普段どおりに話せるようになっていた。
 シエスタのほうも、真人のペースに少しずつ慣れ始めていた。



 真人は朝食の時間を聞いたあとシエスタと別れ、自分の仮住まいであるルイズの部屋に戻ってきた。

「んじゃ、そろそろご主人様とやらを起こしてやるか」

 真人はそういいながら、部屋の奥のルイズが寝ているベッドの横まで歩みより、その肩を軽く揺さぶる。

「ほら、ルイズ。朝だぜ」
「……ん、ん~……」

 軽く揺するだけでは起きなかった。
 おそらく昨日寝るのが遅くなってしまったためだろう。

「ったく、しょうがねぇお嬢ちゃんだな」

 真人はそう言ってやや強引に、寝ているルイズの毛布をはいだ。

「な、なによ! なにごと!?」
「おはよ、ご主人様」
「はえ? お、おはよ……って誰よあんた!」

 まだルイズの頭は半覚醒のようだ。

「おいおい。たとえ俺の顔を覚えてなくても、この筋肉を見忘れたとは言わせねぇぜ」
「……あぁ、使い魔ね。そうね、昨日、召喚したんだっけ……」

 真人の姿を見て、昨日の召喚は夢ではないことを再び実感するはめになった。
 どうせならドラゴンやグリフォン。いや、深くは望まないからこの際犬や猫でもよかった。
 しかし、今さら言っても何も変わらないと、ルイズは心の中で落胆した。

「ていうか、あんたの筋肉なんてろくに見てないんだけど」

 真人が脱いだとき、実は指のすきまからばっちり見ていたのだが、本人的にはなかったことになっているらしい。

「昨日の夜一緒にやっただろ? 『筋肉にらめっこ』」
「そんなもんやってないわよ! あんたが勝手にやってただけでしょうが!!」

 真人の中にある『筋肉にらめっこ』を中睦ましくやりあったという認識を、ルイズは力いっぱい否定した。それはもう全力で。

「まぁ、それはそうとちゃんと起こしてくれたのね」
「おう。早起きは早朝ジョギングで慣れてるからな。ついでだから洗濯にも行ってきたぜ」

 こともなげに言う真人。
 元の世界の学校では寮暮らしだったので、こういう早起きや洗濯などは苦にならなかった。
 もっとも、掃除や宿題などの細かく、頭を雑務は理樹の助力が必要不可欠だったが。

「えぇと……じゃあ服を着せてくれる?」
「え? おまえ、どっかケガしんのか?」

 真人が驚いたように聞いてきた。

「違うわよ。貴族は下僕がいるときは自分で服なんて着ないのよ」
「なんだ、そうなのか……って俺下僕扱いかよ!」

 真人は頭抱えてうおおぉぉーー!と叫びながらショック受けていた。

「そもそも昨日納得してたでしょう? 使い魔をやるって」
「使い魔って筋肉担当のことじゃないのか?」
「……は?」

 ルイズは真人の言った言葉の意味が理解できなかった。

「え、まさかルイズのほうが筋肉担当なのかっ!?」
「……違うけど」

 よく分からないが、そんなものを担当したくなかった。

「ひゅー。一瞬ルイズが筋肉担当かと思って焦っちまったぜ」

 冷や汗を手で拭いながら一安心している真人を尻目に、ルイズはもくもくと一人で着替えていた。



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