あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの魔獣-20


それは、決闘後と言うよりも、何らかの事故現場のようだった。
中庭には濛々と砂煙が立ち込め、衝撃波で抉り取られた地面が一直線に伸びている。
その線上、頑丈そうな石壁に大穴が開き、間を置いて崩れ落ちた瓦礫の乾いた音がする。

「ひどすぎるわッ!? ワルド 何で! なんでこんな・・・」

「・・・君は アルビオンに行っても敵を選ぶつもりかい?
 私たちは弱いです だから 剣を収めてくださいって・・・」

そう言いながら、ワルドは計画の崩壊を自覚していた。
咄嗟の自衛の為とはいえ、全力で放たれた魔法が至近距離で直撃したのだ。
使い魔は死んだであろう。 少なくとも、今回の任務からはリタイアだ。
惨劇を目の当たりにした彼の主人は、ワルドの事を許さないであろう。

だが今は、そんな修正の利く計画よりも、傷つけられた彼の自尊心の方が問題だった。
最後の瞬間、慎一は拳を止めた。
剣術の試合で言うならば、後から動いたワルドの方が、木刀を当てる形となった。
今の決闘、見る者が見ていたならば、勝者は・・・。

「旦那の言う通りだぜ ルイズ!
 戦場じゃあ 弱いヤツは死ぬしかねえ
 虎の尾を踏んじまった間抜けもなァ!」

彼方からの声に、2人は大穴のほうを振り向く。
瓦礫を押し分け、体を大きく揺らめかせながら、慎一が這い出てきた。

口元からは血がこぼれ、両手はぶらりと垂れ下がった幽鬼のような格好だが
両目はむしろ爛々と燃え上がり、試合が死闘へと変化した事を喜んでいる。

「インターバルは終わりだ! 第2ラウンドと行こうぜ ワルド」

慎一が大股を開き、肩を入れてストレッチしながら挑発する。
だが、ワルドにとって、この試合は計画の一環に過ぎない。
計画に変更を迫られている今 ここで慎一と殺し合いをする意味など無かった。

「・・・決闘と 無秩序な殺戮は違う 決着は既についた 
 2人の姿を見れば どちらが勝者であるか 女子供にだって分かる」

「決着?」
慎一はおどけたように両目を大きく開き、次いでクックッと、心底意地の悪い忍び笑いを漏らした。

「違いねえ 確かにどちらが勝ったか一目瞭然だな
 この勝負 てめえの負けだぜ! ワルド・・・」

慎一がゆっくりと左手を上げる。
その手の平には、ワルドの杖 - 彼にとって唯一の得物が、深々と突き刺さっていた。

ワルドが瞠目する、その表情を確認した後、慎一は一息に剣を抜き取り、
無造作にワルドの足元に転がした。

ワルドがぎりり、と歯噛みする。 
慎一は穴の開いた左手を突き出し、指先でくい、くい、と挑発した。

「・・・行こう ルイズ・・・」
かろうじてワルドはそう言い、羽帽子を目深に被り直して中庭を後にする。
背後から慎一の、狂ったような高笑いが響く。
ルイズはワルドの背中と、慎一の笑顔を困ったように見回し、やがてワルドの後をついていった。


―夜

慎一は再び月を見ていた。

「シンイチよお・・・ お前さん もっとうまい事やれねえのかい?」
「言うな」
「へん! またしても俺を連れてかねえからそういうことになるんだぜ」

デルフリンガーが拗ねていた。
だが、彼のいうことにも一理あった。
慎一は、一度戦場に立てば無敵の狂戦士であったが、その力は、誰かを救うためのものではなかった。
昼間の決闘にしても、事前にワルドの罠を察知し、他の仲間を同行させていたなら
また違った決着があったかもしれなかった。


「・・・あっきれた 怪我人なんだから寝てなさいよ」
言いながら、ルイズが入ってくる。

「へっ こんな程度の傷はな ツバ付けときゃ直る」
「・・・打ち身に唾液が効くの?」

-実際のところは、キュルケが持ってきた薬の効果が、元々頑健な慎一の治癒力を高めているようだった。
(「勝ったのは俺なんだよ!!」と傷だらけで喚く慎一の姿は、彼女にはとても『可愛らしく』見えたであろう)

ルイズが慎一の真横に並ぶ。それっきり、2人は押し黙る。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

沈黙が続く。
慎一が傍らのデルフをちらりと見る。 
饒舌なインテリジェンスソードは背景の一部のようにピクリともしない。
役立たずめ。 慎一が心の中で悪態をつく。

「・・・何か 用事があって来たんじゃないのか?」
ようやく慎一が、重い口を開く。
やや沈黙があって、ルイズが答える。

「・・・シンイチ 私・・・ ワルドに求婚されたの・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・それで 私 その」

「ルイズ アイツはやめとけ」

馬鹿野郎!! 今度はデルフが心の中で罵倒する。
いくらなんでもストレート過ぎる。 何故こんな時に真理阿がいないのか。

「何で・・・ 何でそんな事をいうの?」

「アイツは ヤツは危険だ」

「― 昨日今日会ったばかりのアンタが ワルドの何を分かるって言うのよ」

「分かるさ ヤツは獣だ   獣のことは獣が一番良く分かる」

―慎一は、最悪の一言をいくつ知っていると言うのだろうか。
 暫く小刻みに震えていたルイズが、キッ、と両目を尖らせ、慎一に畳み掛ける。

「違うッ!! 違うッ!! 違うッ!!
 ワルドはアンタなんかとは全然違うッ!!
 ケモノは・・・ ケダモノなのはアンタ一人よッ!!
 何でもかんでも一人で決めて 周りの迷惑も考えずに好き勝手に暴れてッ!!
 あたしの! あたしの大切な人を傷つけて!!」

「傷つけられたのは俺だ」

「うるさいッ!! ケダモノの・・・
 使い魔の命令なんて聞かないわよ!!
 あたしはワルドと結婚する!!!!
 それが気に入らないなら アンタも好きなところに出て行きなさいよッ!!」

「―チッ! おい待てッ!! ルイ・・・」

慎一が追いかけようとした時、1階から喧騒が響いてくる。
悲鳴、絶叫、金属音・・・ 慎一の大好きな音ばかりだ。

「おっ始めやがったかぁ!!!」
叫びながら慎一が走る。
すれ違いざまにデルフリンガーを掴み、ルイズに放る。

「シンイチ!」
「持っとけッ!! どうせケダモノにゃあ要らん!」
そういった慎一は、既に部屋を飛び出していた。


―1階は戦場と化していた。
重装備の一団が、次々と店内に矢を射掛けてくる。
ワルドたちは石造りのテーブルを盾とし、それを防いでいた。

そこに、一匹の魔獣が割り込んでくる。
一息に階段から飛び跳ね、壁を蹴って、あらぬ方向から賊達の中央へと飛び込む。
直ちにその場のパワーバランスが入れ替わる。
慎一の手が届く範囲にいるのは全て獲物であり、賊達の周囲にいる人間の大半は味方であった。
極端すぎる戦力比が災いし、前線が恐慌を来たし、一方的な虐殺が始まる。

だが、両腕を振るいながらも慎一は、ある種の違和感を感じていた。
今回の任務は、始めから敵の知るところだったハズだ。
ヤツらが綿密に練ったであろう襲撃計画が、こんなにも手ごたえの無いものなのか?

(陽動・・・?)
慎一がその考えに至ったとき、後方からずうううぅぅぅん、と大きな音が響き、
小刻みな振動が店内に伝わる。
賊どもが蜂の巣を突いたかのように騒ぎ出し、店内から飛び出す。
まるで、慎一とは別の脅威に怯えるように・・・。

「みんな! 大丈夫!?」
ルイズが階段を駆け下りてくる。

「来るな!ルイズッ!!   お前らッ!! 伏せろォ!?」

振り向きながら慎一が叫ぶ、その言葉に呼応し、全員が店の隅に飛び退く。

―直後、凄まじい轟音とともに後方のブ厚い石壁が破裂し、巨大な瓦礫が周囲に飛び散る。
巨大な鋼鉄の塊が破滅的な破壊音を生じさせながら、猛スピードで店内を通過する。
衝撃波が小型の竜巻を作って荒れ狂い、椅子を、テーブルを、戸棚を天井へと巻き上げていく。

「うおおおおおおぉぉぉぉォォォッ!!!!!!」

慎一が吠える、彼は見た。
螺旋を描きながら突っ込んで来る、巨大な円錐状の鉄の塊

― それはドリル! ドリルと言って差し支えあるまい!!

空想科学の世界でしか存在しないハズの究極の兵器が、うなりを上げて彼の眼前に迫っていた―。


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