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ゼロの魔獣-19


―『女神の杵』亭・中庭

かつては貴族たちが集まり、陛下の閲兵を受けたという練兵場跡に、2人の獣が佇立している。

「昔・・・ といっても君には分からんだろうが かのフィリ・・・」
「目だああアアァッ!!!!」

薀蓄を語りながら振り向きかけたワルドの眼前に、突如唸りを上げて鉄爪が迫る。
首を捻りながらかろうじて避ける。その頬に赤い筋が走る。

「落ち付け!介添え人がまだ来ていない・・・」
「安心しろォ! 介錯なら俺がしてやるぜぇ!!」
「―ッ! ケダモノめッ!!」

何言ってやがる。 慎一が心中で毒づく。
自室で挑発を受けた時点で喧嘩は始まっていた。
中庭までノコノコと着いてきたのは、宿の方に気を使ったからに過ぎない。
自分がワルドだったら、事ここに至って、杖も抜かずに講釈を始めたりはしないだろう。

慎一が矢継ぎ早に両の拳を繰り出す。直撃すればたやすく骨が折れるであろう。
反撃の機会を得られぬままにワルドが後退する。

「-!? 何やってるのッ!! アンタ達!?」
絶妙なタイミングで主賓のルイズが到着した。
慎一が気を取られた一瞬の隙を突き、ワルドが杖を抜く。そのまま慎一の喉元目がけて鋭い突きを放つ。
慎一は大きくのけぞりながら一撃をかわし、後方に転がって距離をとる。

「悪趣味だぜぇ ワルドさんよぉ お子様に見せるようなもんじゃねえ!」

「バカな事はやめて! 今はそんなことをしている時じゃないでしょう!?」

「男というものは厄介でね! 強いか弱いか 
 それが気になると もう どうにもならなくなるのさ!」

「やめなさい シンイチ!! これは命れ・・・」
「鼻ァッ!!」
叫びながら、慎一が猛スピードで踏み込み爪を振り上げる。
爪は飛びのいたワルドの鼻先を僅かに掠め、血液が粒のように舞う。

慎一が遮二無二突っ込む。ハッキリと彼は怒っていた。
単純な殴り合いにまどろっこしい手順を持ち込んだり、戦いを見世物にしたり
これが正式な決闘だというのなら、この世界の騎士というのは無粋な連中ばかりだ。

一方、ワルドは杖を抜いた事で、落ち着きを取り戻しつつあった。
慎一の単調な攻撃は、すでに見切りつつある。 介添え人も到着した。
全てが順調に動き出していた・・・。

慎一の左手が飛んでくる。 ワルドは半歩下がる。
ぶぅぅん、と大振りな攻撃が目の前を通過する。
次は右手が飛んでくるだろう。 その前に一歩踏み出して、相手の右肩を突いてやればいい
魔獣は主人の眼前で、無様に這いつくばる事になる。 楽なものだ。

ワルドが右手を動かす。
-と、不意に ぞ く り としたものがワルドの背中を走る。
とっさに攻撃を止め、大きく後方に跳びすさる。 慎一の右手が空を切る。

風を巻いて突っ込んでくる魔獣の目を見て、ワルドは悪寒の正体を理解した。
敵は、始めから腕一本捨てるつもりで踏み込んでいたのだ。
あのまま攻撃を繰り出していれば、無様に這いつくばっていたのはワルドの方だったであろう。

もはやワルドは、全ての余裕を失っていた。

杖先で相手を牽制しつつ、詠唱を始める。
その気配を読んで、慎一もまた戦法を変える。
大振りだった攻撃が、徐々に小さく、速く、鋭くなる。
膝、肘、指先、爪先と、攻撃のバリエーションが増え、打撃が上下に打ち分けられる。
無秩序だった獣の連撃は、いつしか、体系付けられた一連の動きへと変化を遂げていた。

剣と魔法の世界であるハルケギニアでは、省みられる事の無かった技術体系。
未知の戦法の前に、ワルドの体が大きく揺さぶられ、詠唱も途切れ途切れになる。

動きの止まったワルドに、慎一がローリングソバットを放つ。
とっさに受け止めたフィストガードごと大きく跳ね飛ばされ、遂にワルドが壁を背負う。

「もらったぜぇ! 色男ッ!!」
慎一が突撃する。 フィニッシュを意識したのか、その攻撃が大振りになる。
ワルドは大きく腰を落として一撃を避け、慎一の足を払う。 魔獣が大きく揺らぐ。

勝った。後は詠唱を完成させ― そう考えたワルドの眼前に、慎一の不敵な笑顔が現れる。
刹那、眼前に砂が飛んでくる。視界が完全に塞がれ、口中に砂が入る。
魔獣が吠える、その方向に、ワルドは闇雲に杖を繰り出す。 鋭い切っ先が、慎一の左手を捕らえる。

-いや、
慎一の左手が、ワルドの杖を捕らえる。
切っ先が突き抜けた掌を根元まで押し込み、ワルドの右手を完全に封じる。
慎一が右手を繰り出す。 ワルドが必死で詠唱を紡ぐ。

「やめてッ!! シンイチッ!!」
ルイズの叫びにあわせ、慎一の右拳が瞬く
見えない鎖に肘先を絡めとられ、慎一の体がビクンと痙攣し、一瞬ではあるが動きが止まる。

「―ッ!! バッキャロ・・・」
慎一が喚くと同時に、ワルドの詠唱が完成する。
見えざる空気の鉄槌が唸りを上げ、慎一の左脇腹に思い切り打ち下ろされる。
体をくの字に曲げながら、慎一が真横に一直線にブッ飛び、石壁を砕く轟音が中空に響き渡った・・・。


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