あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの魔獣-18


グリフォンの背に揺られながら、ルイズは物思いに耽っていた。

傍らでグリフォンを操っているのは、トリステイン魔法衛士隊隊長・ワルド
アンリエッタが遣わした、今回の任務の助っ人。
そして、ルイズの幼き日のかりそめの許婚者。『憧れの子爵様』

「随分浮かない顔だね? やはり 使い魔の事を気にしているのかい?」

「―ッ! そんな事は! ない・・・です・・・」

だが―
昨夜の事はやり過ぎだった、ともあらためて思う。


慎一が死ぬ時、彼の中の真理阿も死ぬ・・・自分自身が、かつて彼にいった言葉だ。

王女の友誼にのぼせ上がっていたあの時の自分は、そこまで考えて行動していただろうか?
さらに言えば、慎一の居ない今の自分に、どれ程の事が出来ると言うのか?

内と外に被保護者を抱えた慎一は、珍しく慎重な判断を下していたのではないか?
無論、王女に対するぶっきらぼうな物言いと、高圧的な態度は許せないが、
彼なりの忠告を見過ごし、使い魔に多大な負担を強いる主には、それを咎める資格は無いだろう。

無事にアルビオンから戻ったならば、ちゃんと謝ろう。
そんな珍しくも殊勝なルイズの思考は、5分後に吹っ飛んだ。

眼前に、返り血にまみれた彼女の使い魔が見えて来たからである。
「女王陛下の魔法衛士隊・グリフォン隊隊長 ワルド子爵だ
 今回の旅に同行する よろしく頼むよ 使い魔君」 

「ああ」

あの時の狼か・・・などと考えながら、慎一はぶっきらぼうに答えた。

「それにしても・・・」
ワルドが辺りを見回す。
遺体の埋葬こそ済ませたものの、辺りは死臭が立ち込め、大地が赤く染まっている。

「いくら賊相手とは言え、こちらは女性連れなんだ
 もっと他に・・・やりようというものは無かったのかい?」

「そんな生ぬるい相手じゃ無かったぜ」

「・・・・・・・・・」

「初日からいきなりこのザマだ
 王女の近辺にスパイでもいるんじゃ無ぇのか・・・? 衛士隊長さんよ」

「そんなワケないでしょッ!! このバカ犬ッ!!」

2人の会話に、ルイズが割って入る。

状況だけ見るなら、ここは怒る場面ではない。
彼女の使い魔は、自分勝手な主を見捨てずに付いてきてくれたばかりか、
先行して障害を取り除いてくれたのだ。
ギーシュから事の仔細も聞いている。 惨劇の責任が慎一には無いのも理解した。

それでも、全身を赤く染め上げ、許婚者に悪態を突く慎一を見ていると
彼は、ただ暴れ回りたいだけの戦闘狂ではないかと思えてくるのだ。
主を省みない傍若無人ぶりに、ルイズは反駁せずにはいられない。

「・・・大体 なんでアンタがここに居るのよ
 今回はアンタの力は借りないって言ったでしょ」

「―気が変わったのさ
 こっちはこっちで アルビオンに行かなきゃならねえ用事ができちまった」

―最悪の返答であった。
 ルイズの怒りの炎に、再び油が注がれた。

「―――ッ!! いいわよ! アンタはそうやって好き勝手に暴れてりゃいいのよッ!!
 行きましょう! ワルド!!」

ルイズがずんずんとグリフォンへと乗り込む。
慌ててルイズを追いかけるワルドだが、ちらりと慎一を見る。
人を値踏みするような、気に入らない眼だ。ブン殴ってやろうか。

「さ 私たちも行きましょ ダーリン」
理不尽な事を考えている慎一に、キュルケが促す。言われるがままにシルフィードに乗り込む。
何故かワルドの前では、魔獣の翼を見せる気にはならなかった。

「忘れ物」
言いながら、タバサが慎一にそれを手渡す。

「・・・あ」
慎一の両手の上で、デルフリンガーが泣いていた・・・。

―ラ・ロシェール

『女神の杵』亭の一室では、インテリジェンスソードの愚痴が続いていた。
永遠に続くかのようなその話を聞き流しながら、慎一は考え事をしていた。

ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド―
『閃光』の二つ名を持つルイズの許婚者を、慎一は既に『敵』と決め付けていた。
根拠は無い。全ては野生の勘であり、慎一の危機を幾度と無く救ってきた感情である。

(目だ・・・)

慎一は思う。アレは、目的のためなら平然と他人を踏み台にする人間の目だ。
ああいう目をするヤツは、一刻も早くこの世から抹殺せねばならない・・・。

それは、明らかな言いがかりであり、暴言であり、被害妄想の類であろう。
しかし、慎一を見るワルドの冷めた瞳は、彼のよく知る人物達のそれを髣髴とさせた。

「-なあ デル公 ひとつ頼まれちゃあくれねえか?」

「ああ!? ふざけるな! どの口がいうか!!
 置いてけぼりを食らわしやがったクセによー!!」

「・・・少しの間 ルイズの側にいてやってくれ」

「―ッ!! なんだよシンイチ らしくねえな!
 お前さんもライバルの登場で・・・」

ひやかしかけて気付く。この男は、こんな風に誰かを頼りにする男だったろうか?
慎一の異様な静かさが、事態の深刻さを雄弁に語っていた。

「―わかったよ・・・ 相棒が見つかるまでっていう 真理阿との約束だったしな」
「頼む」
「・・・だがよう シンイチ
 俺は足が無いんだ 置いてけぼりにされちゃアウトだぜ」

「この任務が終わったら 僕と結婚しよう ルイズ」

―隣の部屋では、件のワルドが決定的な一言を放っていた。

「ワルド・・・ でも わたし・・・」
真っ白になったルイズの頭の中で、様々な思考が浮かんでは消える。


元々ワルドは憧れの男性だ。許婚者なんて親同士の戯言と諦めてもいた。
実際、この告白は不本意なものでは無い。

―だが、あまりにも話が性急過ぎる。
ここで結婚を承諾したら、その後の生活はどうなってしまうのだろう?
魔法学院には今までどうり通えるのだろうか?

そして―。

「やはり 使い魔の彼が気になるかい?」

「―そんな事は! そんな事は無いわッ!!」

そう。確かにそんな事は無い。
慎一と自分が恋に落ちることなど、宇宙が一巡してもあり得ないだろう・・・。


だが・・・。
ルイズには直感的に分かる。

慎一とワルドは、恐らくは『合わない』
ルイズがワルドを選べば、慎一はにべも無く、ルイズの元を離れるだろう。

「ルイズ・・・君の使い魔は『異邦人』だ 
いずれは君の許を去る」

「―! それは・・・!?」

「分かるさ・・・ 彼は どう見てもこの世界の住人じゃない
 戦いに倦んでこの大陸に来て いずれは戦いを求めてこの大陸を去る ・・・違うかい?」

確かにワルドの言う通りであろう。
慎一の中に宿る激情の炎を消し去る事のできる人間など、存在するはずが無い。
遅かれ早かれ慎一はこの世界を去り、未来永劫続く戦いの世界に身を投じるであろう。

(そして・・・ 真理阿も)
誠実な使い魔であり、かけがえの無い友であり、優しい母親であった真理阿。

この世界での生活が、慎一にとって一時の休息というならば
できうる限り、その安息の日々を伸ばしてやることのみが
彼女の友誼に応える手段なのではあるまいか?

「ワルド・・・ わたし」

「・・・どうやら少し 急ぎすぎていたようだね 
今 返事をくれとは言わないよ
でも この旅が終わったら 君の気持ちは 僕に傾くハズさ・・・」

―翌朝

慎一の部屋のドアを叩く音がする。
ドアの外にいる人物が何者なのか、慎一には、既に検討がついている。

「おはよう 使い魔くん」

「おはよう 色男
 出航は明日だ 寝かせといてくれるか?」

「君にルイズを守るだけの力があるのか 使い魔としての力量が知りたい
 お疲れのところすまないが ひとつ手合わせ願えないかね」

「お疲れなのですまないね じゃれ合いはゴメンだ」

ワルドは周囲の様子を確認すると、慎一が大嫌いな目をして言った。

「・・・ハッキリ言おう 僕は君のことが気に入らない
 君は少しばかり力があるのを良い事に 使い魔の領分を超えた行動をとってルイズを苦しめている
 アルビオンに向かう前に その思い上がりだけは叩いておかねばと思ったのさ」

「へえ・・・」

慎一は、ワルドは結構いいヤツなんじゃないかと思い始めていた。
ルイズを憚って言えなかった事を、まさか彼の方から口にしてくれるとは・・・。

「今日はえらく気が合うじゃねえか
 叩くのは思い上がりだけじゃ済まさねえぜ コッチはよぉ・・・」

ハルケギニアに来て以来一番の、実に爽やかな笑顔で慎一が言った。


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