あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの魔獣-17


「・・・で 何でお前がここに居るんだ?」

「フッ このギーシュ・ド・グラモン
 トリステイン王家の一大事と聞きつけ 及ばずながら尽力しようと駆けつけたのさ!」

「ルイズならとっくの昔に出発したぞ とっとと追いかけたらどうだ?」

主の居ない一室では、男二人の不毛な会話が続いていた・・・。
ギーシュが今朝になってルイズの部屋を訪れたいきさつはこうである。

昨夜、奇妙な来訪者の姿を目に留め、『たまたま』アンリエッタの依頼を耳にしてしまったギーシュは
すぐさま義侠心を奮い立たせ、アルビオン行きに名乗りを挙げようとした―

―が、突然室内に怒声が響き渡り、次いで物凄い剣幕のルイズが飛び出して来たため
出るに出られなくなってしまったのだ・・・と。

「まったく シンイチは貴族の意地ってもんが分かってないな・・・」
タメ息をついてギーシュが続ける。

「今から馬で追いかけて 一緒に連れて行ってくれなんて
 そんなミソッカスみたいな真似ができるかい?

 ここは密かに先回りして ルイズのピンチに颯爽と現れるのがベターってワケさ」

「・・・そのために 俺の力を借りにきたのか?」

あまりの虫の良さに腹も立たない。
あれ程最悪のファースト・コンタクトであったのも関わらず
実は慎一は、この金髪の若者が嫌いでは無かった。
お調子者であるという一点において、彼は、慎一がかつて共に旅をしていた少年と似ていた。

それに実際、この話は渡りに船だった。

真理阿やアンリエッタにも頼まれていたし、命を救われた恩もある。
慎一にはルイズを守らねばならない、それなりの責任がある・・・のだが
昨夜の大喧嘩の後、ノコノコとルイズについて回る気にはどうしてもならなかった。
ギーシュを送ったついでに、アルビオンに物見遊山と洒落込む、と言えば
かろうじて、かろうじて男としての面子も保てるのでは無いだろうか?
(キュルケに言わせれば、慎一のそういうところが『可愛い』のであろう。)

「よく分かった じゃあ早速出発するか!」
「そう タバサに頼んでシルフィードを借り・・・ええッ!!」

慎一はギーシュの首根っこを捕まえると、一息に窓から飛び立った。
力強く翼をはばたかせ、みるみる上空に舞い上がると、ピタリと急停止した。

「・・・おい ラ・ロシェールってのはどっちだ?」
ギーシュは声にならない。顔が青紫に鬱血し、口からあぶくを吹いている。
震える指先で、かろうじて目的地を指差した。

「なんだ 逆方向じゃねぇか・・・ 早く言えよ」
そう言うと、慎一は風竜もかくやというスピードで、一気に雲のかなたへと飛び去った。


「タバサ! 今すぐシルフィードを出して!!」
自室に物凄い勢いで駆け込んで来たキュルケに対し、窓の外を見ながらタバサが言った。
「・・・あのスピードは 無理」

―ラ・ロシェールに向け快調に飛ばし続けていた慎一ではあったが
 ふと、前方の異変に気づき、翼を大きく旋回させて乱暴に着地した。

ぶつけた尻をさすり、朝食を幾分戻しながらギーシュが抗議する。
「シンイチ 休憩するならもっとエレガントに・・・」
「敵がいた」

慎一の飼っている『目のいいヤツ』は、1キロ先の獲物を捉えていた。
それは、通りすがりの旅人を襲うには、あまりに物々しい一団だった。

「情報が筒抜けじゃねぇか 白土三平の漫画でもありえねえ・・・」

「だ だが チャンスじゃ無いか・・・ 奇襲を企むものは
 自分達が奇襲を受けることは想定していないものさ・・・」
「ほう」
慎一は素直に感心した。死に掛けの若者に兵法を説かれるとは思ってもいなかった。

「いい機会だ・・・ ここは ボクの親友の力を借りるとしよう・・・」
ギーシュが指を鳴らす。
たちどころに何者かがもこもこと地面を盛り上げ、高速でこちらに迫ってきた。

慎一は括目した。 その使い魔の巨体にではない。
その生物が地面を掻き分けながら、自分のスピードについてきた、という事実にである。



哀れな襲撃者たちは、文字通り足元をすくわれた。

彼らは元アルビオンの傭兵であった。といっても、今は金で雇われているワケでは無い。
ラ・ロシェールの街の酒場『金の酒樽亭』で飲んだくれていた所、
店に入ってきた目つきの悪い女に、いきなり仲間の一人が椅子で叩き伏せられたのだ。

彼らにも傭兵の意地がある。突然の乱入者相手に果敢にも立ち向かったものの
酒の回った体でどうにかなる相手ではなかった。
酒瓶でどつき回され、テーブルで押し潰され、ウォッカで火ダルマにされ
遂に彼らは暴力に屈するところとなった・・・。

殺らなければこちらが殺られる・・・
全身に生傷を負い、悲壮な決意を持って襲撃計画に望んでいた彼らの一人が、
突然大地に飲み込まれた。

背後からの悲鳴に全員が振り返った。それが新たな悲劇の始まりだった。
前方の大地が裂け、そこから出現した悪魔に、瞬く間に半数がぶちのめされた。
前歯を折られ、みぞおちを打たれ、睾丸を蹴り飛ばされ
後から出てきた金髪の若者が名乗りを上げる頃には、既に大勢が決していた―。


ギーシュがワルキューレを使い、事後処理にあたる。
次々に身ぐるみを剥ぎ、縛り上げていく。
慎一が魔獣を使わなかったのは、優しさからではない。
彼らの知る情報を、聞きだす必要があったからである。
―と、
傷の浅かった傭兵の一人が、後方で何かゴソゴソとやっている。

「おい テメー! 妙な動きしてんじゃねえ!!」
言いながら近づいた慎一の前で、異変は起こった。

突如、男の体がビクンと震え、その全身が痙攣する。
全身の筋肉が異常に盛り上がり、着ていた服が裂ける。男が天を見上げて咆哮する。

とっさに身構えた両腕の上から拳が跳んできた。
ダンプカーでもぶつかったかのような衝撃が走り、
慎一の体はサッカーボールのように大きく跳ね飛ばされた。

悲劇の場は惨劇の場へと姿を変えた。

男の瞳は、既に正気のそれではない。
両手を縛り上げられた傭兵達は、まともに抵抗することも出来ず。
かつての仲間に抉られ、絞られ、叩き潰されて、断末魔の悲鳴を上げる。

「クッ! ワルキューレッ!!」
ギーシュの叫びに、近くの戦乙女が槍を繰り出す。
男は避けない。青銅の槍は腹筋で止まり、飴細工のように捻じ曲げられる。

ギーシュは男を包囲すべく、ワルキューレに同時に指示を出す、
と、男が突然、猿の如く飛び跳ね始めた。
男はその巨体からは想像もつかない動きで飛び回り、紙人形でも相手にするかのように
次々とワルキューレを引き裂いていく。

「な 何なんだよコイツはァ!?」

「下がってろギーシュ! コイツは俺の獲物だ!!」
ペッと奥歯を吐き捨てながら、慎一が叫ぶ。
その瞳がただちに猛禽のそれへと変わり、飛び回る男の姿を捉える。

飛び交う男の軌道にあわせ、慎一が跳ぶ
中央で両者が交錯し、動きが止まる。
両手を絡め、互いの額を擦り合わせながら、戦いは純粋な力比べとなる・・・。

ずずっ、と慎一の体が徐々に後退していく。
勝利を確信した男が雄叫びを上げ、慎一の首筋に齧り付く。

「ウオオオオオオオオオ!!!!
 この俺をッ ただで喰えると思ってんじゃねえええええ!!」

大きくのけぞりながら慎一が吼える。
その額から、ズルリと鷹のクチバシが飛び出す。

「うおおおおおおおお!!!」
慎一がその尖った頭部でヘッドバットを繰り出す。
ビキッと鈍い音がして、男のこめかみが大きく穿たれる。

奇声を上げてよろめく男を、慎一は絡めた両手で引き起こす。
その右腕が獅子の頭部に、左手が熊と頭部へと変化し、男の両手を噛み千切る。

「噛み付きってのはこうやるんだよおおオオオ!!」
慎一が大口を開け、男の頚動脈目がけて牙を剥く。
ぞしゅっという炸裂音と共に、周辺の頚骨、鎖骨ごと一口でそぎ落とされる。
歯形上に開いた風穴から、噴水のように血がふき出し、遂に男は倒れこんだ。

「アンタら・・・いくら相手が賊だからってやりすぎよ」

木陰で頭を抱えながら、気分が悪そうにキュルケが言う。
シルフィードで追ってきた彼女達は、惨劇を遠目で目撃することとなった。

「・・・・・」
タバサも脂汗をかいている。若くして数多くの修羅場をくぐり抜けて来た彼女ではあったが
これ程までに酷い現場に立ち合ったことは無い。

「―信じてもらえないとは思うが
 コレをやったのは慎一じゃない 彼らの仲間の一人さ」
足元で怯えている使い魔、ジャイアントモールのヴェルダンデを抱きしめながらギーシュが弁護する。

慎一は気にした風も無く、黙々と遺留品を漁っている。
「バチが当たるわよ ダーリン」
「どうせ死人にゃいらん」

そんなやり取りをしながら、慎一は目当ての品物を発見した。

「お前らの国の傭兵は、こんな物を持ち歩いてるのか?」

「なんだい? それが男を怪物にしたマジックアイテムなのかい?」

「・・・いや そんな大層な物じゃねえ」

そう言いながら、慎一は、是が非でもアルビオンに行かねばならない事を悟った。
男を変貌させた道具は、おそらくは慎一の世界から持ち込まれた物

―1本の注射針。
 そのガラス管の中には、まだ半分ほど、透明な液体が残されていた・・・。


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