あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

コンプレックスとアレルギー

中世の城のような建物。
その城壁にもたれかかるように、一人の少女がひざを抱えて腰を降ろしている。
少しづつ風が冷たくなってきた。
少女はすでに薄暗くなってきている空を見上げ、何度目かのため息をつく。

…正直言って、途方に暮れていた。どこにも行く当てがない。 でも、戻る気にはなれない。絶対に。

いきなり遠い所にとばされた。見たことのない、でも映画か何かで観た、ファンタジーの世界のような場所。
ふと、もしかしたらおばあちゃんは、昔こんな場所にいたのかもしれないと思う、そんな場所だった。
そして自分を召喚した、魔法使いだという少女に連れられて行き、彼女の部屋で告げられた。

  使い魔になれ、と

……許せないと思った。
事情も知らない他人をいきなり呼びつけ、あまつさえ従僕になれ、などと。
そんな魔法は聞いた事も無かったが、絶対に許容してはならないと思った。  …だから拒絶した。 強く。 強く。 強く。

 あの日のように。 あの時のように。 あの子の時のように。

それでも目の前の彼女はゆずらなかった。
もう契約は済んでいる、だの、使い魔が貴族に逆らうのか、だのとわめきたてた。  だから言ってやった。
「魔法使いがそんなに偉いのか」と。
「魔法が使えない人達の気持ちが解るのか」と
「人を不幸にするような魔法を使って、なにが魔法使いだ」と
思いつく限りのことを言ってやった。
彼女は絶句し、俯き、静かになった。 ……もしかしたら泣いていたのかもしれない。

少し心が痛んだが、その隙に自分の持ち物をもって飛び出してきた。

……わけだが。

まずは現在位置を知ることだ。星の仰角などから大体の緯度、経度は測ることができる。
それができる程度の知識は充分すぎるほど持っている。
そう思って外に出て見上げた先には……  月が二つ、昇り始めていた。

……地球ですらないようだ。ここは。

ちょっと頭を冷やして考えてみれば、変なことはたくさんあったのだが。
ともかく全くのお手上げ。いいかげん寒くなってきたし、お腹もすいてきた。
それでも今更戻る気にはなれなかった。  ……許せなかったから。

持物と言えば、一緒に召喚されたノートパソコンのみ。現状では限りなく、無意味。
打開策は見つからない。
何回見上げても、二つの月がコンニチハしている。
もう一度ため息をついたとき、不意に声をかけられた。

「やあ、こんな所にいたのかい。 …サクラ君、だったかな?」

あわててそっちを見ると男の人が立っていた。
涼しげな頭に見覚えがあった。 最初に召喚された時にいた人物だ。
身構えるが、自分の脚じゃ逃げ切れないだろうし、抵抗も無理だろう。

男はちょっと失礼するよ、と言うと、少し距離を置いて隣に腰をおろした。

「そうそう、私はジャン・コルベール。 この学院で教師をしている。」
「うにゃ… ボクは芳乃さくら。 えっと、ルイズちゃんから聞いたの?」
「ああ。ミス・ヴァリエールに君を見なかったかと聞かれてね。
散歩に行ったきり帰ってこない、迷子になっているんじゃないか、と。」

なるほど。そういうことになっているのか。 少し警戒をとく。 

…しばらく沈黙の後コルベールは様々なことを話し出した。
突然の召喚で驚いているだろうが、すまなかったと思っている事
ミス・ヴァリエールは優しい子だから自分の事を悪くは扱わないであろう事。
だから悪いけど彼女の事をよろしく頼むという事。

…どうやらこの男性、コルベール氏はそこまで悪い人物では無さそうだ。教師ということは知識もあるだろう。
イチかバチか思い切って自分の境遇を話してみる。
月が一つしかない、魔法なんて言うものが無い世界から来たということを。
しかし案の定、信じてはいないようだ。 少し考え、持っていたパソコンを起動してDVDを再生する。

「これは… 絵が動いている?」

ディスプレイの中では白い服をきた女の子が、空を飛びながら大きな杖を振り回し、
桜色の光線を放つ映像が流れている。

「……すごいな」
「animationって言うんだ。原理自体は簡単だけど… 魔法は使ってない。こんな装置や絵、この世界にある?」
「いや、長く教師をしているがこんなものは初めて見る。」
コルベールは食い入るように画面を見つめている。

どうやら一応は信じてもらえたらしい。あらためて元の世界に帰りたいという旨を話す。
しかし、コルベールは心底すまなそうな顔で言った。方法がない、わからない、と。

どうやら本当に帰れそうにない。
思わずつぶやく。

「魔法なんて無ければいいのに……」

おそらく本心ではなかっただろう。魔法すべてを否定する気はないのだ。
何しろ自身も魔法使いであり、その魔法は、大事な人から受け継いだものだ。
ただ、色々嫌になってつい愚痴が出た。

そのつぶやきを聞いたコルベールはますます気の毒そうな表情になった。

「いきなりこんなことになってしまったのだし、そう思うのも無理はないかな。
…でも魔法もそうそう悪いものではないのだよ。」

コルベールはそう言うと一人で様々なことを語りだした。
この世界の魔法がケガなどの治療に使われている事。
家屋の建築や橋の建造などにも関わっている事。この学院の建物の補強にも魔法が使われている事。

どうやらこの世界の魔法は随分と生活に密着しているようだ。科学の代わりとでも考えればいいだろうか?
当たり前の様にあるなら、その是非について疑問を持たないのも無理はないかもしれない。
しかし、それでもまだ素直にハイ、そうですかと戻る気にはなれない。
ついでではあるが、口は初めてだった、その遺恨もある。まあ女同士ならNo countかもしれないが。

いつの間にかコルベールの話が止んでいる。しばしの沈黙の後、こちらを見ずに呟いた。

「散歩ではないのでしょう…?」

思わず身がこわばる。

「彼女随分と取り乱してソワソワしていましたから。まぶたも少し腫らしていましたし。
何があったのかは分かりませんが、君の話で何となく察しはついたように思います。」
「うにゃ……」
「これは私のわがままですが…」
コルベールはそこで一息つくと言った。
「実は彼女、魔法が使えないのですよ。人一倍、努力はしている。ひいき目でなく。
…しかしどういうわけか魔法が成功しないのです。」

その言葉で一人の少女の事を思い出す。コルベールは話を続けた。

「一人だけ皆ができる事ができないというのは辛いことでしょうが、それでも彼女はくじけずに頑張っている。
今度のサモンサーバントも、以前から熱心に練習していた。絶対に成功させると。 そして君が呼ばれた。
…だから、こんな事を頼めた義理ではないが、どうかヴァリエール君の事を支えてあげてほしいのです。」

魔法が使えない、その事を聞いてちくりと心が痛んだ。
そのことを考えれば、先に自分が彼女に吐いた言葉はずいぶんな暴言だ。
あの時の情景を思い返して見るに、彼女は強か動揺していたのだ。ボクを止める事もできなくなるくらい。
そして重なってしまう。彼女とあの少女の事が。

あの少女も強く願っていた。魔法が使えるようになりたいと。
そして魔法がどんなものか考えもしなかった。
いや、むしろ盲信していた。魔法があれば皆が幸せになると。
魔法が持つ危険性を考えもせずに。

だから突き放したのだ。拒絶したのだ。

……そしてあの少女、 アイシアは桜を咲かせた。
魔法の桜を。 真摯な願いのみをかなえる魔法の桜を。 ボクがこの手で枯らした桜を。

圧倒的な影響力を持つボクが願って枯らした桜を再び咲かせるのに、
どれほど強い、そしてどれほど真摯な願いが必要だったのだろうか?
アイシアは願っていた。皆を幸せにしたいと。方法の是非はともかくとして。

そんな彼女を、ボクはただ、 突き放した。その思いを知ろうともせずに。

あの日、あの時。 アイシアの話をもっと真剣に聞いていれば。もっと彼女の心を汲んでいれば。
あの事件を引き起こした原因は、ボクにあった。

そして今。再び魔法を使えるようになりたいと願う子が目の前にいる。

なにかボクにもできる事があるのではないか?
なにかボクにしかしてあげられない事があるのではないか?
なにか、今のボクにだからこそできる事があるのではないか?

今なら、今のボクなら、アイシアにはしてあげられなかった事が彼女にできるのではないか?

もちろん自分の持っている魔法とこの世界の魔法は、効果も原理もおそらく全くの別物。
彼女の望む魔法を教えるなんてことは無理だ。
しかし、不可能を可能に変える不思議な力という本質はかわらないはず。
ならばその力が持つ危うさも。そしてあたたかさも。

そう考えるとコルベールの言うように、
多分彼が思っている以上に、
彼女に自分が召喚されたことに因果を感じざるを得ない。

引き受けよう。彼女の使い魔を。義理と人情は江戸の華、だ。
お兄ちゃんに会えないのはとても辛いが、いつか元の世界に帰る方法が分かるまで、
少しだけ頑張ってみよう。

「わかった。引き受けてみるよ。ルイズちゃんの使い魔。
ボクに何ができるかはわからないけど。」

その言葉を聞いてコルベールは満足そうにうなずいた。

「おそらくミス・ヴァリエールも君の事を悪くは扱わないでしょう。
改めてこの私が保証しますぞ!」

…その笑顔を見ていると全て彼にうまく乗せられたような気がした。後悔は微塵もないが。

「ずっるいなあ、コルベールさんは。」
「…はは、そうかね?」 
…狸め。

時刻は、魔法使いどうしが逢うのにふさわしい頃合いだ。星はきれいだが、少し本気で寒い。

「じゃあ、ボク行くね。」
まずは謝らなくては。たくさんたくさん。 彼女は許してくれるだろうか?
そう考えながら立ち去ろうとすると、
「ああ、ちょっと待って下さい!さくら君!頼みがあるんだが…」
……呼び止められた。
「うにゃ? なに?」
先ほどまでと違ってやたら真剣な顔だ。
っていうか目がマジだ。ぶっちゃけ恐い。
自分の容姿についての自覚はあるが、もしかしてそっちの人か?
逃げた方がいいだろうか?

「さっき見せてもらったあれなんだが……」






「暇ねえ、ルイズ。 何か面白い事でも起きないかしら。 …どっかのアホが平民に決闘を挑む、とか。」
「馬鹿な事言ってんじゃないわよ、ツェルプストー。そんなアホな奴いるわけないじゃない。」
「……つまんないわ。ってあそこでコルベール先生と話してるの、あんたんとこの使い魔じゃないの?
……二人ともずいぶんと楽しそうだけど。 はっ もしかして先生、そういう趣味!?」
「違うわよ! 趣味は趣味でもあっちの方じゃない?
なんか機械のこととか、カガク、とかブツリ、とかってのを教えてるらしいわ。
あの子、何でも元の場所では教師の資格を持ってたとか……」
「……いや、それは嘘でしょ。どう見ても子供じゃない。」
「…まあ、私もしんじられないんだけど。」
「………」(やっぱりそっちの趣味ね!ルイズとタバサは私が守る!!)



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