あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのMASTER-12


虫の音が聴こえる静かな夜、学院の部屋でルイズとキートンは話し合っていた。
今日見たことは、ルイズはじめ、他の4人も忘れることは出来ないだろう。自分達が今までに体験してきたものとは全く違う、「経験」をしたのだから。
そして、それはキートンも同じであった。現代に戻るための「手がかり」――
それを見つける代わりに、思わぬ遭遇をしたのだから。

「キートン…。あの人達、戦いに行ったのよね」
「ああ…」
「やっぱり、帰りたかった…よね。元の世界に。貴方と同じ世界に」
ルイズが静かに言う。戦車長の手帳には帰還出来ない無念が綴られていた。
そして、今現在、その立場に置かれているのは、他でもないキートンだ。今まで自分はキートンに助けられてばかりだった。
だが、そんな自分は目前の男の幸せを奪ってしまったのではないか?
ルイズは複雑な感情に苛まされていたのである。

「ルイズ…。僕のことなら、気にしなくてもいい。元の世界に戻るのは諦めていないから。それに…」
「それに?」
「君は危なっかしいから、見ておかないと」
そう言うと、キートンは笑う。ルイズの方は顔を真っ赤にして、枕を投げつけた。それを受け止めた後、深刻な顔をするキートンに気付く。
「どうしたの?」
「いや…。どうも、気になることがあってね」
「気になること?」
キートンは頷く。
「彼らの装備品が見当たらなかったんだ。戦車の中を調べてみたが、あったものといえば、あの手帳ぐらいのものだった。携行銃器類は兎も角、衣類までなかったからね」
「誰かが持っていったとか…?」
「まさかとは思うが…。仮に持って行ったとしたら、大変なことになる。個人ならまだいいが、軍事機関か何かが研究でもしたら…」
話を聞くルイズであったが、心配はあまりしてはいなかった。銃と言っても、せいぜい弾が出てくるぐらいにしか考えていないため、所詮はメイジの敵ではない。
キートンも、補給の問題を考えてはいるが、もしも分解でもして内部構造を知ったら一大事である。それこそ、軍事革命でも起こりかねない。
「でも、あの…センシャって兵器。年月が経ってて錆びていたじゃない。杞憂じゃないの?」
「…それなんだよなあ」
件のT-72 戦車は錆びているし、相当の時間が経過しているのは確実だ。にもかかわらず、この世界の武器は剣や槍などの白兵戦用武器が主力だ。
持ち去ったのは良いが、解明出来なかったのかも知れない。先ほども考えたように、補給の問題もある。ルイズの言うとおり、杞憂なのだろうか?
それとも、何処かの国家が厳重に保管でもしているのだろうか?
一番気になるのは、T-72以外にも召喚された兵器があるのではないか、ということだが。

「それにしても、またT-72を見るなんて、思わなかったなあ」
「何かやったんでしょ、その…てぃーななにってのに」
「…以前、追い掛け回されたことがあるからね。あの時は、本当に危なかったから」

そう言うと、キートンは溜め息をつく。

「ルイズ。彼らを召喚した人間もいるのかな?」
ルイズは首を振りながら、
「知らないわよ。私だって、人間を召喚したのは初めてだもん。普通は、メイジが人間を召喚するなんてありえないはずなんだから」
「そのありえないことが、今起きているんだよな…」
ぼそっと呟くキートンに向かって、何か言ったとルイズが睨む。夜も更け、そろそろ就寝の時間だ。
二人はそれぞれのベッドに潜り込み、明日に備えることにした。

「ねえ、キートン」
「ん?」
ルイズのベッドから声のみが静かな部屋に響く。

「キートンも、戦争に行ったこと。あるの?人を…その、殺した…ことは」
しばらく静かな時が部屋に流れる。ルイズは、この質問をしたいと思っていたが、なかなか決心は付かなかった。
一度、キュルケのことでキートンに言い聞かせたとき、一族の先祖代々争い、殺し合いをしてきたのだと言ったことがある。
だが、自分が召喚したキートンは、退役したとはいえ、軍人だ。軍人であった以上は、そういった経験があるかもしれないのだから。
…自分は何気なく酷い事を言ったのではないか?質問をした後で気付き、後悔する。
ルイズ自身は殺し合いなんて見たことないし、そもそもそんなものを見るなど真っ平御免だ。
しかし、自分はそういった質問をキートンにしてしまったのだから。

「――予備役でだけど、戦争に行ったな。待機命令を受けていたから、殺し合いはしなかったけど…」
「けど?」
「その戦争で、たくさんの人が傷ついた。敵も、味方も、たくさんの人が死んでいったよ」

「ごめんなさい、キートン。おやすみなさい」
「おやすみ、ルイズ」

ルイズは、誰にも知られないように、少しだけ涙を流した。
キートンからの返答は顔こそ見えないものの、声には…声には、寂しさが感じられた。怒りなどではない、ただ寂しさが。
それを感じたルイズは、余計に悲しくなったのだった。

「さて、行くかね」
大男が革の袋に何かを詰め、狭苦しい部屋から出て行く。
夜の闇に紛れ、走り去っていった。


「今日、私は行かなきゃいけない所があるから、ちゃんと留守番しててよね」
「出かけるのかい?」
実家よ、とルイズが言う。いつぞやの誘拐事件の詳細を親に話さなくてはならないらしい。
曲がりなりにも、誘拐事件である以上、両親も心配しているだろうし、至極当然であろう。
授業は特別に休むことになり、2日間程度向こうに泊り込むとか。自分も行かなくて良いのかとルイズに尋ねたところ、
「…あんた、私の家の物をいじったら、お父様に殺されるわよ。」
慌てて、ルイズを見送るキートンであった。


「ふう…。」
シエスタは料理の材料が詰まった袋を抱えながら、学院への帰路を急いでいる。
本来、こういった力仕事は他の者がするのであろうが、今日は特に忙しかったため、コック長マルトーは代役として彼女に頼んだのである。
幸い、軽いものばかりであった為、力が強いほうではないシエスタでもこうやって持ち運ぶことが出来た。
(はやく帰らなくっちゃ。親方達を待たせたらいけないわ)
そう思いながら走っていると…
「きゃ!」
前から来た人物にぶつかってしまった。荷物で姿がよく見えなかったのである。幸い、材料がこぼれることは避けられた。
「す、すみません!前、よく見てなくて…」
「気になさらず」
シエスタとぶつかったのは女性だった。顔がフードで隠されているため、よく見えないものの、声からしてかなりの美人なのだろう。
「貴女は学院の人ですよね」
「え?そ、そうですけど…」
シエスタは戸惑う。ぶつかって怒られるのかと思いきや、意外な質問が続いたからである。
「キートンという男性を知っていますか?」
キートン…そう聞かれたシエスタの脳裏に、あの男性が思い浮かぶ。優しそうな雰囲気を持つ、大人の男性。
ヒラガ・キートンという方ですかと答えるシエスタに、女性は深く頷く。
「ならば、その人にこの手紙を渡してください」
そう言うと、女性はすっと一枚の手紙をシエスタに渡した。
「え、あの…!え、え…?」

シエスタは手紙を受け取った後に顔を上げる。
――女性の姿は、既に目前から消えうせていた。

学院の図書室…キートンは本の整理を任されていた。
簡単な作業ではあるが、こういったものに従事していたロングビル(フーケ)が抜けてしまった為、急遽、暫定的にキートンが選ばれたのである。
他の教師もその功績を認めていたので目立った反対意見は無かった。
ただ、メイジにとっては簡単な作業でも、キートンにとっては意外に苦労しっぱなしであった。
特に、魔法を使わなければ高い所にある本の整理は出来ない。
なので、オスマンは特別に専用の大きな脚立を用意したのだった。

「…けっこう、疲れるな」
一通りの作業を終え、昼食へと向かう。
廊下を曲がると、キュルケ、タバサ、モンモランシーの三人と目が合ってしまい、慌てて逃げようとしたのだが、あっさりとキュルケに捕まってしまった。
毎度の如く、ルイズよりも自分の方が~などの自慢話が始まる。特に、今日はルイズが留守なのを良いことにいつも以上に迫っているようだ。
結局、三人と昼食を共にすることになり、食堂へ向おうとした所…
「キートンさーん!!」
シエスタが走ってきた。

「どうかしたかい?」
「これ、手紙なんですけど…。キートンさんにって、知らない人が」
「貴女、相手の名前を聞かなかったの?」
モンモランシーが言う。だが、手紙を渡した肝心の本人は、シエスタが名前を聞く前に姿を消してしまったのだから、仕方が無い。
それよりも、キートンは疑問に思っていた。自分に手紙を出すような外部の人間は、いないはずだが。
――見たところ、手紙に異常は見当たらない。
「ひょっとして、ラブレターかなんかじゃないの?ね、見せてよ!」
キュルケが叫び、キートンの手から手紙を取る。あ、と言うのも無視し、手紙を開けて、文章を読み始めた。

――――庭園32番テーブル後方のベンチ下に爆発物あり。急がれたし。

「何よ、それ」
モンモランシーが呟く。悪戯ではないのか?それにしては、あまりにも悪質すぎる。
なにせ、庭園の32番テーブルと言えば、昼の休憩時にルイズとキートンの二人がいつも休む場所だ。
「あ、あの…。私」
シエスタなどは明らかに動揺している。キュルケとタバサは念の為に調べるべきと決心し、キートンの方へと振り向いたが、
「キートン…?」
廊下を走り去っていく影が見えた。

「あった…!」
庭園の32番テーブル裏のベンチ下、見えにくい場所にソレはあった。
革製の中型のバッグ。発見が比較的早かったのもあり、周りに生徒達はあまりいないようだ。
キートンは、他のテーブルの上に置かれていた鋭利なナイフを掴み、バッグの横を切り開く。
切り開いた場所から中を見ると、確かに爆弾があった。懐中時計がコチコチと時を刻んでいる。
そこから線が伸び、装置や爆弾であろう固形物に繋がっていた。それ以前に気になったのは、この仕掛け…。

一度、見たことがある、な――――
キートンが内心驚いていると、キュルケ達も走ってきた。

「ホントに爆弾なの?」
「ああ。シエスタさん、すまないがハサミのようなものはあるかな?」
「裁縫用のなら、ありますけど…」
十分だとキートンが言うと、周りの生徒達を静かに非難させるようにキュルケらに指示する。
「キートンは、どうするの?」
「解除してみる」
「無茶よ!それに、爆弾なら、タバサのシルフィードで遠くに捨てれば…」
モンモランシーが叫ぶ。だが、キートンは首を振ると
「駄目だ。爆弾が生きている以上、手荒な扱いは絶対に出来ない。途中で炸裂でもしたら、その分犠牲者が出る。それに、君の使い魔も危ないからね」
タバサの表情が一瞬赤くなった。
「このぐらいなら、一人でも十分に解除出来る。僕は大丈夫だから、早く他の皆を避難させてくれ。ただし、慌てないように」
この顔…いつぞやの、誘拐犯達を相手にしたときのキートンと同じ顔だとキュルケは気付く。
確かに、自分達が出来ることといえば、他の生徒を避難させることぐらいだ。
無茶しないようにキートンに言うと、4人は素早く生徒達を誘導し始めた。

「あ」
ルイズが声を出す。その拍子に持っていたグラスを落としてしまった。
すぐに給仕が来ると、割れたグラスを片付ける。
「どうした?ルイズ。何か、問題でもあったかな」
ヴァリエール公爵が心配したように言うと、ルイズは笑顔で問題ないと答えた。
(気のせいよね、きっと…)


この時限爆弾は遠隔操作などの装置までは取り付けられていない。つまり、子供達を避難させても犯人にはどうすることも出来ない。
目前の時限爆弾の時を刻んでいる懐中時計には長針が無い。
代わりに短針が時を刻んでいる訳だが、その短針が十二時間後…つまり、0時に差し掛かった所で電流が爆弾に届き、大爆発を起こす。

恐らく、犯人は以前から自分達の様子を見て、周到にここに設置したのだろう。
しかし、この装置を作った人間は、電流というものを知っていることになる。
何よりも、ここまで精巧な時限爆弾を操れる人間が、存在していることは、この世界にとって恐るべきことだろう。
…あの時と違うのは、この爆弾は大量に殺傷するのを目的としているということだが。

幸か不幸か、見たことがある手前、落ち着いて解除作業にかかった。
それを遠くで固唾を飲みながら見守るキュルケ達。

「……ふぅ」
時計の刻む音が止まった。続けて雷管を取り出す。
コレさえ抜いてしまえば、爆弾は死んだも同然だ。
キートンはその場で大の字になる。爆弾の解体作業をこの世界でやるとは思わなかっただけに、いざ終えると、どっと疲労が出てきた。
そんな様子を見て、避難していた生徒達が走り寄ってくる。

これの処分は、どうするかな――
薄曇りだった空は、いつの間にか青空に変わっていた。


「なんで爆発しねえ…!」
離れた家屋の屋根に人影が一つ。望遠鏡で爆弾の様子を覗いていたドレが驚きの声を上げる。
爆弾が気付かれたことも驚きだが、何よりも、あんな若造が解除するとは!
動揺するドレの前に、もう一つの影が現れた。

「こ、これは旦那。みっともねえ所を…」
「任務はどうした?」
仮面を被っているだけに、表情は見えない。それだけに、余計に恐怖感がある。
「待ってくれ、旦那!アレが失敗するはずはねえんだ!"教本"で見た通り、"工芸品"を使った一品なんだぞ、高価な時計を使ってまでだ!アレが、頼む!もう一度だけ…」
弁解をし始めるが、目前の男は何も言わない。代わりに、杖を取り出すと、ドレの方へと向け、何かを呟く。
恐怖に染まった顔でドレが呻く。だが、それも一瞬のこと。次の瞬間、杖から眩い光が飛び出し、ドレの胸を貫いた。
悲鳴を上げることもなく、屋根から転落していくドレを見届けると、男はまた何かを呟き、姿を消した。

その日、学院は大騒ぎとなり、キートンはオスマンに呼ばれ聴取を受けた。
解除された爆弾は、コルベールの手によって、安全な場所で粉々に破壊された。
雷管などは厳重に保管されることとなり、オスマン秘蔵の貯蔵庫に収められた。
そして、シルフィードに乗ったタバサらの急報を受けたルイズがキートンのもとに怒鳴り込んでくるのは、その晩のことである。



新着情報

取得中です。