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ゼロの夢幻竜-25


第二十五話「出立」

翌朝、ルイズを始めとする一行は、一路アルビオンに向けて出立する事となった。
朝食も始まらないかなり早い時間であるために、ルイズ達の目は開ききっていないし、頭の一部もどこと無くぼうっと霞んでいるようだ。
ラティアスはと言うと、やはり眠そうにしていた。
更にルイズの許可を貰って今朝一番に学院長の下に赴き、再び『こころのしずく』について何とかならないか相談に行ったものの、やはり許可が下りなかった事で酷く落ち込んでいた。
昨日の晩に姫様からも、そして就寝前にルイズからも旅が危険なものである事が言われていたので、『こころのしずく』を持った状態でいつでも非常時に全力でいられるようにしようと思っていたのだ。
ただ、学院長室からしょんぼりして出て来るラティアスにルイズが、『『こころのしずく』が無くてもあなたは十分強いわ』と、慰める一言をかけてくれたのがせめてもの幸いだった。
その代わり、人間形態時の対策としてデルフを連れて行く事にした。
フーケと対峙した時の様に、幾ら元の姿の時に強力な技が放てたとしても、放つための力が切れてしまっては対抗するどころではなくなってしまう。
また、自分の左手に刻まれたルーン、『ガンダールヴ』があらゆる武器を使いこなす効果を齎すのなら持って行って損は無いだろうとラティアスは踏んだ。
ところで、どんな旅をするにしても足が無ければ始まらない。
ルイズは使い魔であるラティアスに乗れば問題は無い。
アルビオンへの道程が分からないと言っていたが、丁寧に教えてやれば迷うなんて事は無いだろう。
そしてギーシュとモンモランシーはそれぞれ馬に乗る事となった。
その際ギーシュは馬に鞍を付けながら、ルイズにちょっとした注文をつける。

「なあ、ルイズ。頼みがあるんだが……」
「何?用があるなら手短にお願い。急いで出発しなくちゃならないんだから。」

姿勢を低くしたラティアスの背に跨ろうとしたルイズが、眠さも手伝ってか少しぶっきらぼうに返事をする。

「馬をモンモランシーと一緒にさせてくれないか?」
「は?そんなこと出来るわけ無いでしょ。馬に二人も乗せたらそれだけ馬が疲れるのも早くなるし、何より遅くなるでしょ。」
「そ、それじゃあ、僕の使い魔を一緒に行かせてはもらえんかね?」
「使い魔?確かあんたの使い魔ってジャイアントモールだったわよね。私の前に召喚したから覚えてるけど、あの土竜今どこにいるの?」

そう言うとギーシュは地面を足で数回叩く。
すると地面があっという間に盛り上がり、茶色の大きな土竜がひょこっと顔を出した
土竜と言っても大きさは小さな熊くらいはある。

「ヴェルダンデ!ああ、僕の可愛いヴェルダンデ!朝食のどばどば蚯蚓はいっぱい食べてきたかい?」

ギーシュは土竜に向かってさっと駆け寄って、泥だらけの土竜を抱き締める。
ラティアスはルイズが土竜だなんて言うものだから、てっきりもぐら型携帯獣のディグダの様な物を想像していたのだが、似ている特徴は円らな目と大きめの鼻ぐらいで、大きさは軽く10倍位はあるその土竜に一歩引く形となった。
そして様子を見ていたルイズは、ギーシュの頼みを丁重にお断りする事にする。

「あー、ギーシュ?悪いけどそれ、連れて行けないわ。地面の中を進むんでしょう?」
「馬鹿にしてもらっては困るよ。ヴェルダンデが地面の中を掘り進む速さは馬にだって負けないよ。」
「アルビオンがどういう所だか分かってるんでしょう?地続きじゃないのよ。」

その一言は確実にギーシュの心に響いたようだ。
ギーシュはヴェルダンデに追い縋りおいおいと泣く。

「ヴェルダンデ!お別れなんて辛い、辛すぎるよ!」
「はいはい。お別れが済んだなら早く馬に乗りましょう~ね~。」
「あ痛たたた!!モンモランシー、頼むから耳を引っ張らないでくれ!!」

モンモランシーがギーシュの片耳を引っ張りながら、自分達が乗る二頭の馬の前まで引きずる。
重要な任務の旅に出るというのにいまいち緊張感に欠けるものだ。
その時ルイズはモンモランシーに話を振る。

「あんたは使い魔を連れて行かせてとか言わないのね。」
「私の使い魔はこんなに大きくないもの。」

そう言ってモンモランシーは腰の辺りに提げた袋から一匹の蛙を取り出した。
鮮やかな黄色に黒い斑点が幾つもある、見ようによっては危険そうな蛙だ。
ルイズは小さく「ひっ!」と叫んで後ずさる。
ラティアスはルイズが蛙を苦手としていたのを思い出していた。

「カエル!そのカエルがあなたの使い魔?」
「ロビンは私の大事な使い魔よ。」
「分かったから早くしまいなさいよ!私蛙嫌いなんだから。」
「ちょっと!その蛙を使い魔にしている水系統メイジの私に向かってそういう事を言う?」
「事実なんだからしょうがないでしょ!」

蛙が嫌いなルイズと忠臣とも言える使い魔を前にしたモンモランシーは暫しその場で睨み合う。
と、その時ギーシュのヴェルダンデが、鼻をひくひくと動かしてルイズの方に駆け寄った。

「ちょ、ちょっと何よこの土竜!やだぁ!どこ触ってんのよ!この!無礼な土竜ね!」

ヴェルダンデは一気にルイズを押し倒し、自分の体を弄らせる。
ルイズの衣服は抵抗する為に暴れた為、すっかり乱れてしまっていた。

「いけない!ご主人様!」

ご主人様の危機と言わんばかりに、ラティアスはヴェルダンデを念力で2~3メイル宙に浮かせてルイズから離す。
ヴェルダンデは空中で下に降りようと必死にもがくが、その行為に全く意味は無い。
それを見たギーシュが慌ててラティアスの元へやって来る。

「ちょ、ちょっと!僕のヴェルダンデに何をしているんだね、君は!」
「何って……ご主人様が襲われそうになっていたから助けただけです!あなた、使い魔の躾ぐらいきちんとしたらどうなんですか?」
「襲うとはまた失礼だな。ヴェルダンデはルイズが指に嵌めている指輪に反応したのさ。貴重な鉱石や宝石を探すのはヴェルダンデの役目さ。土系統のメイジでもあるこの僕にとってはこの上ない協力者だよ。」

ギーシュはそこで褒めてくれと言わんばかりに胸を張る。
後ろで聞いていたモンモランシーはそこにすかさずつっこみを入れた。

「でも天然の物と人工の物の区別くらいはつかせないといけないんじゃ?」
「う……そ、それは……」

それを聞いたギーシュの顔は一気に苦いものになる。
と、その時未だに晴れぬ霧の中から何者かが現れた。
かなりの長身で、羽帽子をかぶっているところからすると、その人物が貴族であるというのは容易に想像がついた。
しかもそこにいる者達の内、ルイズとラティアスはその者に見覚えがあった。
ラティアスはその人物を、先日アンリエッタ王女訪問の際に、馬車の護衛をしていた人物の一人として覚えていた。
そしてルイズはそれ以上の感情を伴ってその姿を見つめていた。

「彼女の言う通りだよ。使い魔の躾はそれを召喚した時より最優先事項になる。……それはさておき、僕は怪しい者ではない。姫殿下から君達の旅に同行するよう命じられた。
お忍びの任務という事ではあるから、部隊の全員を連れて行く事が出来ないのは残念だがね。」

長身の青年貴族は帽子を取って一礼をする。

「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長のジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵だ。」

魔法衛士隊と聞いてギーシュの体は石の様に硬くなった。
家柄にしても魔法の才覚にしても、選りすぐりの貴族で構成されたそれは、国中の貴族にとって華やかさの象徴でもあり憧れの的であったからだ。
ワルドが全員の近くにやって来ると、衣服を整え終わったルイズがワルドの元へ一直線に駆け出した。

「ワルド様!お久し振りで御座います!」
「久し振りだな、ルイズ!僕のルイズ!」

僕のルイズという言葉を聞いてラティアスの集中力はぷっつりと途切れる。
その為に念力で空中に浮かんでいたヴェルダンデは、あっという間に自分の居場所である地面に戻った。
かなり痛い思いをしてだが。
そんな事はお構い無しにラティアスの頭の中では、突然現れたこの青年貴族がルイズにとっては何なのかを叩きだそうとしていた。
友人?親戚?それとも恋人?
恋人なら恋人で随分年も体躯も離れた間柄となるが、昨夜アンリエッタが話した一件もあるので強ち無いとも言えない。
そんなラティアスの思考を余所に、ルイズはワルドと名乗った貴族に軽々と抱きかかえられていた。

「はは。相変わらず君は羽の様に軽いな!可愛さも最後に会った時と全く同じで僕も嬉しい限りだ!」
「お恥ずかしいですわ、ワルド様。皆が見ております。」

そう言いつつもルイズの顔は、この状況が満更でもないと言わんばかりに嬉しそうだった。
ワルドは、ん?といった顔をして微笑みながらルイズを地面に降ろす。

「ああ、そうだったね。これは失礼したな。さて、それでは旅の仲間を紹介してくれないかな?」
「はい!ギーシュ・ド・グラモンとモンモランシー・ラ・フェール・ド・モンモランシ。そして私の使い魔、竜のラティアスです。」

ルイズが交互に指を指すので、ギーシュとモンモランシーは深々と頭を下げる。
ラティアスも頭を下げたが、直後ルイズに一つの事を質問する。

「ご主人様。この……ワルドという方には精神感応を使って宜しいんですか?」
「勿論よ。事情はいつも通り私の方から説明しておくわ。」
「はあ、有り難う御座います。」
「くれぐれも粗相が無いようにね。ワルド様は私の婚約者なんだから。」

そうか、婚約者か……って、何ですって?!
ラティアスはワルドの登場と同じ様に、これまた唐突に知らされた事実に衝撃を受けた。
ワルドの元にラティアスの事を話しに行ったルイズを見ながら、当のラティアスは思う。
あの人なら例え色々と差があっても、ご主人様にとって似合いの相手かもしれない。
格好は良いし、体つきだって逞しい。
魔法に関しての実力は会ったばかりだから未知数と言えるが、女王陛下の魔法衛士隊に所属しているという節からして相当な実力者だと見当をつけた。
暫くして、ルイズとの話が終わったワルドは口笛を吹いた。
すると、遠くの空から鷲の頭と上半身、獅子の下半身、そして大きく立派な翼を持った幻獣、グリフォンが姿を現した。
初めて見るその姿にラティアスはほんの少しだけ身構えてしまう。
そしてワルドは、ひらりと身を翻してグリフォンに跨ると、ルイズに向かって手招きをした。

「おいで、ルイズ。」

その言葉にラティアスはこちんと来た。
自分は竜だ。馬よりも速く、風竜よりも速く空を駆ける事の出来る竜だ。
グリフォンにだって負ける気はしない。
確かにここは婚約者の顔を立てる所であるのだろうが、主人であるルイズが自分を選んでくれなかったらそれはそれでショックなものだ。
ラティアスは内心で祈る。ご主人様、どうか私の方へ来て……と。
そしてルイズの口が開かれる。

「ワルド様。お誘いは嬉しいのですが……すみません。私はこのラティアスに乗っていきます。久し振りに会えたので一緒にいたいのですが、使い魔の心を無碍にする訳にもいかないので……」

勝った。
ラティアスは喜び勇んでルイズの方に擦り寄り、ルイズはじゃれ付いてくるラティアスと楽しそうに戯れる。
その様子を見てワルドは、『やれやれ、参ったな』と言わんばかりに苦笑する。

「君は本当に使い魔の事を想っているんだね。益々可愛く思えてきて困るな、ルイズ。」
「いえ、そんな……」

ルイズは頬を赤くしながら答える。
それからワルドはギーシュ、モンモランシーも馬に乗った事を確認すると、手綱を握り、杖を掲げて叫ぶ。

「それでは良いかな?では諸君!出撃!」

グリフォンが駆け出すと、ラティアスも弾かれる様に飛び出した。
ギーシュ等も感動した面持ちで後に続く。
こうしてアルビオンへの長い道程は始まりを告げた。



さて、ここは学院長室。
王女アンリエッタが出発するルイズ一行を見つめていた。

「始祖ブリミルよ、彼女達にご加護をお与え下さい。」

それから目を閉じ、手を組んで祈る。
隣ではオスマン氏が鼻毛を抜いていた。

「見送らないのですか?オールド・オスマン?」
「ほほ。姫、見ての通りこの老いぼれは鼻毛を抜いておりますのでな。」

その様子を見てアンリエッタは溜め息を吐く。

「余裕をお見せなさるのですね。どうしてその様な態度が出来ますの?」
「杖が振られたのであるならば、我々に出来る事はその効果を座して待つのみ。違いますかな?」
「そうですが……」
「なあに、彼女がいてくれれば道中どんな困難があろうとも、きっと跳ね除けましょうぞ。」
「彼女とはルイズ・フランソワーズの事ですか?」
「いや、その使い魔であるあの竜じゃ。」
「まさか!確かにあの竜はただの竜ではありませんが……何故です?」

アンリエッタは誰もが思うであろう疑問を口にする。
だが、オスマン氏は表情一つ変える事無くその質問に答えた。

「残念じゃが今はその理由は言えないのでの。だが間違い無く彼女は使えますぞ。」

変に納得させる様な口調にアンリエッタは頷くしかなかった。
オスマン氏は鼻毛を抜き終わったらしく、いつもの姿勢に戻って話を再開させる。

「加えて彼女は異世界から来たそうな。」
「異世界?」
「そうですじゃ。このハルケギニアの地ではなく、どこからかやって来たのですじゃ。彼女が持っている普通の竜では考えられぬ力も、そう考えれば説明がつきますぞ。」
「その様な世界があるのですか……」
「その事に関しては彼女の主人、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールが小冊子にして纏めておりますぞ。触りの部分だけでもお見せいたしましょうかの?」
「ええ、後で……」

アンリエッタはハルケギニア以外の世界など想像した事は無い。
エルフの住む世界や東方については、足を運んだ事が無くとも文献で大体の察しをつける事が出来たからだ。
自分の想像もつかない世界と一体どんな物なのだろうか?
そんな世界に思いをはせつつ、彼女は目を瞑って呟く。 

「では、異世界から吹く風にも……始祖のご加護があらん事を。」


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