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されど罪人は零と踊る-00



俺と相棒はロルカ屋に発注した咒弾を取りに行き、大量の咒弾の重みに耐えつつも。
我が親愛なる借金と不幸を生み出すアシュレイ・ブフ&ソレル咒式事務所に帰って来た。
事務所には、鏡があった。
それは圧倒的な違和感、宙空に浮いた豪奢な鏡。
俺はすぐに知覚眼鏡で目の前に浮いた鏡の成分を検索する。
水酸化ナトリウムと硝酸銀とアンモニア水溶液を混合させた銀鏡反応。
しかし咒力は感じない。似たような構成の化学錬成咒式第五階位<積層転咒珀鏡、サブナック>で錬成された咒鏡では、咒力が確実に検出されるが、目の前の鏡からは一切の咒力も質量も感じられない。
これはある程度の推測ではあるが、虚数空間から顕現した咒力鏡であると推察。以上、何も分からん。何これ?

とりあえず、鏡に映った冴えない顔をした眼鏡で赤毛の攻性咒式士を見ていると、何故か知らずに溜め息がでる。
鏡の中の男はまた厄介事か、と言わんばかりに景気の悪そうな顔である。実に不幸と胃酸に愛されていそうな奴だ。実際不幸だがな。
ちなみに鏡の中の男はガユス・レヴィナ・ソレル、つまりは俺。……自分の冷静な自己解釈に泣きたくなってきた。
そしてくだらない思考を振り払い、今の状況を傍らにいる人類と言って良いのか、むしろ良くない奴に聞いてみる

「しかし、何だよこれ? あとギギナの存在の方も何だか分からないから死んでくれ」

机に身を隠した俺は横に居る、全自動ギロチンとドラッケン族のハーフであるギギナに問う。
この腐れた相棒の秀麗な美貌は、俺に性格の悪さと風貌の良さの相関性の無さを教えてくれる。

「知るか、腐れ錬金術士。しかし鏡に写らないほど存在が虚数なガユスにはお似合いな鏡だ」

ギギナは美麗の唇から俺への皮肉を吐き出す。死ね、主に俺や人類の為に。

「しかし、妙だ。ここまで完全に視認可能かつ咒力波長も感じられない物質なんてあるかよ?」


「現実に固着したまま二分も持つ咒式などあり得ん。ふむ、破壊してみるか?」

言うや否や、ギギナは真業物級魔杖刀<屠竜刀ネレトー>を背中から抜く。
歪んだ正四角形の化け物の様な長大なネレトーは、金剛石をも凌駕する硬度のガナサイド重咒合金製で九三五ミリメルトル、持ち手を両手持ちの状態に変形して二四五十ミリメルトルというまさに竜を狩る為に使用する魔杖剣を構えた。

「ちょっ、待て、破壊してどうする? 遅効性発動型の咒式罠だったらどうすんだよ?」
「…………」

何その沈黙。俺はすかさずギギナを馬鹿にする。

「今更気付いたのかよ、馬鹿」
「私は、鏡を破壊するとは言っていない。ついつい、ガユスの本体、つまり眼鏡から下のパーツを分解してやろうと思ってな」

絶対に気付いていなかった事に命を賭けよう、ギギナの。

「やった、分解清掃代金もうけた! とでも言うと思うか? あんまり馬鹿な事ばかり言っていたらただでさえ馬鹿なのに馬鹿が馬鹿にしか見えないぞ、馬鹿ギギナ、やーい馬鹿」

ギギナは俺の屈めた頭上にネレトーを抜き打つ。超高速の抜刀は俺の髪を一房切り落とした。

「何だ、ガユスだったのか。新種の眼鏡かと思って、ついつい切ってしまった」
「なあギギナ。虫から昆虫に進化したいならすぐに刀を抜く癖を治した方がいいぞ」
「どちらも虫ではないか」

軽口を応酬しつつも、警戒を崩さずに事務所の中から外までの咒力を感知する。しかし反応は無い。
同時にギギナも低位生体錬成系咒式で犬の疑似聴覚反応を利用した超聴覚で音を探査している。

「何か反応はあるか?」
「いや、何もない。お前は?」
「全く、使えん眼鏡だ。ちなみに私は何も聞こえん。見張られているという気配もないしな」
「皆さん、ご覧下さい。自分を棚に上げわざわざイヤミを言う辺りが彼の精神性の低さを表している事を理解していただけただろうか?」

「くだらん。で、どうする? 動いてみるか?」

ギギナは俺に向き直り問う。俺は頷き、最大業物級魔杖剣<断罪者ヨルガ>を腰から抜いた。
白々と鋼色に輝く、刃渡り八○二ミリメルトル、柄を入れた全長一一○三ミリメルトルの咒銀合金の直剣を鏡に向け魔杖剣の弾倉を回転させ、薬室に咒弾を送り込む。
最初のギギナの発想と同じような行動が癪にさわるが、動きが無い状況では、例え罠でも先制できた方がいいと判断。
直接的に鏡に触れ組成を確認する。
ギギナには罠だった場合の襲撃に備え窓側に待機するよう視線で指示する。
あわせて平行して各種耐熱対冷帯電咒式を仮想準備。
そして俺は魔杖剣の切っ先を鏡に合わせ探知咒式を発動しようとする。だが出来なかった。
何故なら剣先が吸い込まれ抜けないからだ。そこで俺は自分の見積りの甘さと間抜けさを痛感する。ギギナにやらせればよかった。
「クソッ、ギギナ!」

俺は苦鳴をもらしギギナを呼ぶ。
そして推測。恐らくこの鏡は門だ。数法量子系咒式第七階位<軆位相換転送位、ゴアープ>を利用した相転位門。
この咒式は、自己の体を環状抑制力場で包み、量子段階まで情報化し非物質化する。
そして位相空間での素粒子力場で、自己の熱量の一部を電子や陽子などの亜原子粒子段階に導いて開放、分解して波動に変換する。
元の座標と転位先が相対的に運動しているために起こる、光や電磁波等の波動の偏移を演算し、情報と物質波動を転送。
作用量子定数に干渉して統合。そして自己を咒式で再生する瞬間転位法である。
解り易く最悪の例えで言うと一方通行のFAX。転送された情報は俺の情報ではあるが全くの別人。

そしてこの一瞬で俺の腕は肩口まで飲まれていた、情報に解体されてゆく余り味わいたくない感覚に包まれる。
そこでギキナは俺に向かい疾走。だが俺の強化脳は0,1秒足りない事を計算していた。

「掴まれガユス!」

残った左手は近くにあった咒弾が大量に入った箱を掴む。それで少しでも距離を稼げれば。
ギキナはネレトーの撃鉄を弾き、生体変化系咒式第二階位<蜘蛛絲、スピネル>を発動。蜘蛛の糸を生成して俺に伸ばす。
だが、きっかり0,1秒足りずに、俺は鏡に吸い込まれた。
最後に“俺”が考えたのは消える。……いや、それよりギギナの前で醜態を晒すのは嫌だな。と、解体されながらそう思った。

そして。



「あんた誰?」

抜けるような青空の中、俺は胃薬を錬成した。


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