あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

風林火山-06


―――――それからしばらくしたある日。
ルイズの部屋にて、小さな騒動が巻き起こっていた。
勘助を間に挟み、ルイズとキュルケがにらみ合っている。

「どういう意味?ミス・ツェルプストー」

ルイズは腰に手を当て、小さな胸を張り、キッとキュルケをにらんでいる。

「だから、勘助が欲しがっていた剣を手に入れたから、そっちを使いなさい、っていってるの。ねぇ、勘助」

正直、勘助は剣自体はどちらでも構わなかった。
だが、キュルケがくれるという剣の価値は惜しい。
ルイズの元から離れ、諸国を見て回り、やがてどこかの国に仕官する。
そんなことすら、この剣を売ればできるだろう。
使い魔として召喚され、旅することすらできない状況であったが、これがあればそれができる。
そのことに、勘助の心は揺らいでいた。

「返しなさい!あんたには、あの喋る剣があるでしょう!」

言うや、ルイズは勘助の剣を蹴とばした。

(だが・・・だが、ルイズには一応なりとも、恩は、ある)

偶然とはいえ、命の恩人でもあるし、それなりに良い待遇を貰ってもいた。

「嫉妬はみっともないわよ?ヴァリエール」

やがて、言う争いが過熱して行った。
二人の手が杖に伸びた瞬間、ゴオっと風が巻き起こり、二人の手から杖を吹き飛ばした。

「室内」

短く、部屋の片隅で本を読んでいたタバサが言った。
そして、二人は落ち着き、冷静に決闘を行うことに合意した。

(貴族というのは、こうも簡単に決闘をするのか)



―――――それからは、あれよという間の出来事だった。
3人の女たちに囲まれ、ロープで縛られ、屋上から吊られてしまったのだ。

(何故、こんなことに付き合わねばならん・・・)

呆れ果ててしまった。
思考が停止してしまったのがいけなかったのだろう。
抵抗する暇もなく、気付いたら屋上から吊られていたのだ。
こんなことに付き合う義理もないのだが、全身から力が抜けるような気がして、何もする気も起きなかったのだ。
はるか下では、二人が立っている。
やがて、ルイズが杖を振り上げ、呪文を唱え始めた。

「まさか、このロープを狙う気なのか・・・?」

顔の色がみるみる青くなっていく。
本当に、女が考えることはわからなかった。
―――ドオンッ
勘助の後ろの壁が、突然爆発した。
爆風によって、勘助の体が揺れる。
さすがに、これはもう堪らない。
が、ロープに縛られているため、当然体は動かない。
今度は、キュルケが呪文を唱え始めた。
そして、杖から炎が放たれ、ロープが落とされた。

「ぅわぁっ!」

あられもない声を上げ、勘助が落下した。
タバサがレビテーションを唱えて、ようやく、無事に地面へと着地したのであった。

「残念ね!ルイズ!」

勝ち誇ったように、キュルケが大声で笑いだした。
ルイズは、悔しいのか肩を落とし、地面に膝をついてうなだれていた。
それを、複雑な気分で眺めた勘助だが、やがて、

「ルイズ。ロープを解いてくれぬか」

低い声で言った。
その時である。

「な、何これ!?」

キュルケが突然、大きな声を上げ、ついで悲鳴を上げ、逃げだしたのだ。
つられて見れば、そこには巨大なゴーレムが存在した。

「な、なんだ・・・これは・・・」

茫然として見つめたが、やがてそれの足が持ち上がり、勘助を踏みつぶさんと迫ってきた。
必死に逃げようともがくが、縄で縛られているために身動きがとれない。
我に返ったルイズが、勘助に詰め寄る。

「な、なんで縛られてんのよ!あんたは!」

「・・・ぬしらが縛ったんだろう」

そんな二人の頭上で、ゴーレムの足が迫る。

「さがれ!!ルイズ!」

勘助が怒鳴る。
しかし、ルイズは一向に動かない。

「く、このロープ・・・!」

必死に、勘助の縄をほどいている。

ゴーレムの足が下ろされた。
ここまでか、と勘助は思った。
だが、間一髪。
タバサのシルフィードが二人を足でつかみ、ゴーレムと地面の間をすり抜けた。
2人がいたところに、ずしん、と足がめり込む。

「何だったんだ・・・あれは」

上空から、ゴーレムを眺めながら言った。

「わからない・・・多分、トライアングルクラスのメイジでしょうね・・・あんなゴーレムを操れるなんて」

勘助は、顔を歪ませた。
ルイズが、逃げずに勘助のロープを解こうとしたことを思い出した。

「・・・何故、逃げなかった」

小さく、問うた。

「使い魔を見捨てるメイジはメイジじゃないわ」

ルイズは、きっぱりと言った。
何故だか、勘助にはルイズが眩しく、この上なく美しいものに見えた。


―――――しばらくすると、ゴーレムは森へと立ち去った。
その姿を見ながら、シルフィードが旋回する。
その背に跨ったタバサがレビテーションを唱える。
二人は、シルフィードの足から背へと移動した。
タバサが短く呪文を唱えると、勘助を縛っていたロープが切れた。

「助かった」

礼を言うと、無表情に頷いた。
巨大なゴーレムを眺めながら、タバサに問いかける。

「壁を壊したみたいだが、何を、していたのだろうか」

「宝物庫」

タバサが答える。

「あのメイジ、ゴーレムの肩に乗っているとき、何か棒のようなものを持っていたわ」

「盗賊か・・・それにしても、随分とまぁ、派手に盗んだものだ」

やがて、ゴーレムは草原の真ん中で、ぐしゃっと崩れた。
そこへ3人が行けば、ただただ、崩れた大量の土の山があるだけだった。
黒いローブのメイジは、どこにもいない。


―――――翌朝のトリステイン魔法学院は、混乱に包まれていた。
昨夜の盗賊、「土くれのフーケ」によって、秘宝・「破壊の杖」が盗まれたのである。
それも、巨大なゴーレムが、秘宝庫の壁を破壊するといった方法で。
宝物庫には、多くの教師が集まっていた。
誰もが、フーケの犯行声明と破壊の後を見ると、口をあんぐりと開け、茫然とした。
しかし、気を取り直すや、殆どの教師達は、好き好きに口を開き始める。

「フーケ!貴族の財宝を荒らしまわっている盗賊が、魔法学院にまで手を出すとは!随分と舐められたものだ!」

「衛兵たちは一体何をしていたんだ!?」

「衛兵などあてにならん!所詮は平民では無いか・・・それより、当直の貴族は誰だったんだ?」

その言葉に、一人の教師が震えあがった。

「ミセス・シュヴルーズ!当直は貴方なのではありませんか!」

「も、申し訳ありません・・・」

ボロボロと、涙を流しながら謝罪をするシュヴルーズ。

「泣いたってお宝は帰ってこないのですぞ!あなたに『破壊の杖』の弁償ができるのですかな!」

さらに激しくなる、責任の追及。
学院長が来るまでに、責任の所在をはっきりとしておきたいのだろう。

「これこれ、女性を虐めるものでは無い」

と、学院長であるオールド・オスマンが現れた。

「しかしですな!オールド・オスマン!彼女は当直であるにも関わらず、自室でぐうぐうと呑気に寝ていたのですぞ!責任は明らかに、彼女にこそあります!」

オスマンは、その教師を見つめながら、鬚をなでる。
やがて、すべての教師を見渡し、言った。

「この中で、まともに当直をしたことのある者が、何人おるかな?」

教師達はお互いに顔を見合わせると、恥ずかしそうに顔を伏せた。

「さて、これが現実じゃ。責任があるとするならば、それは我々全員。まさか、この魔法学院に賊が入るなど、誰もが想像すらしなかったじゃろう。何せ、ここにいる殆どの人間がメイジなのじゃからな。しかし、それは間違いだった」

穴を見、フーケの犯行声明を見る。

「責任があるとすれば、我々全員じゃ」

ため息交じりに、オスマンは言った。



―――――ルイズたちは、学院長室へと呼ばれた。
この4人の誰もが、昨夜のことを聞かれるであろうと、聞かれずともわかっていた。

「詳しく説明したまえ」

コルベールが、ルイズ達に説明を促した。
ルイズが、その時の状況を話す。
が、オスマンは話を聞きながらも、話し手であるルイズでは無く、勘助を見ていたことに気づいた。
怪訝に思いながらも、水を差すようなまねはしないが。

「ふむ・・・つまり、手がかりは無い、ということか」

鬚に手を当て、呟くオスマン。
だが、ふと気付いたように、尋ねた。

「そういえば、ミス・ロングビルの姿が見当たらないようじゃが」

「それがその・・・朝から姿が見えませんで」

困惑したように、コルベールが言った。

「この非常時に、一体どこへ行ったのかのう」

「もしかして、フーケに・・・」

その場の誰かが、そう発言した。
誰もが思った。
フーケに囚われたのではないか。
あるいは、フーケに・・・
場の雰囲気が、沈んだように重くなった。
と、姿が見えなかったロングビルが姿をあらわした。

「ミス・ロングビル!何をしていたのですか!大変ですぞ!」

安堵とともに、非常時にどこかへ行っていたことへの叱責が出る。
しかし、それに対して落ち着いた様子で答える。

「申し訳ありません。朝から、調査していたものですから」

「調査?」

「そうですわ。今朝方、起きたらこの通り、大騒ぎではありませんか。フーケのサインを見つけて、すぐに調査を致しました」

「で、結果は?」

「はい。フーケの居場所がわかりました」

「な、なんですと!」

コルベールが、素っ頓狂な声を上げた。

「誰に聞いたんじゃね?ミス・ロングビル」

「はい。近隣の住民に聞いたところ、近くの森の廃屋に入って行った、黒ずくめのローブの男を見たそうです。おそらく、彼はフーケで、廃屋は隠れ家に違いないかと」

「黒ずくめのローブ?それはフーケです!間違いありません!」

ルイズが叫び、オスマンは、目を鋭くして、ミス・ロングビルに尋ねた。

「そこは近いのかね?」

「はい。徒歩で半日。馬車で4時間といったところでしょうか」

その言葉を聞いて、勘助がピクリ、と体を動かした。

「すぐに王宮に報告しましょう!すぐに兵士を差し向けてもらわねば!」

コルベールが叫ぶ。
オスマンは首を振ると、目を剥いて怒鳴った。

「ばかもの!王宮に応援を依頼している間にフーケに逃げられてしまうわい!そもそも、魔法学院の宝物が盗まれたのじゃ!それを自分で解決できずして、何が貴族じゃ!当然、我らで解決する」

オスマンは、咳払いをすると続けて言った。

「では、捜索隊を結成する。我と思うのもは、杖を掲げよ」

だが、一向に誰も杖を上げるものは無かった。

(・・・これが、普段威張り散らしている教師の・・・いえ、貴族なの?)

ルイズは、ふつふつと、自分の中から何かがわき出ているような感触を覚えた。

(誰も・・・誰も、名乗り出ないじゃない)

「どうした!フーケを捕まえて名を上げようという貴族はおらんのか!」

オスマンが、声を荒らげる。

(それなら、私が行く)

そう思うと、すっと杖を掲げる
それを見て、教師達は慌てふためいた。

「ミ、ミス・ヴァリエール!あなたは生徒ではないですか!ここは私たち教師に任せて・・・」

その言葉に、反論する。

「誰も、手を上げないじゃないですか」

それは・・・と、教師達が言い淀む。
こんなの、貴族じゃない。
貴族とは、民の為に、王の為に、国の為に、なにより、自らの誇りの為に戦うものの事を言う。

(私は・・・貴族よ!)

なんと言われようと。
確とした思いの元、ルイズは決して自らの発言を覆さない。
と、すらり、とキュルケの杖が掲げられた。
ルイズが驚き、見ると

「ヴァリエールには負けていられませんわ」

笑いながら、キュルケは言った。
それを見て

「心配」

と、タバサも杖を上げる。
教師は、尚も4人が行くことを認めようとはしない。
だが、オスマンは笑いながら言った。

「ミス・タバサは若くしてシュバリエの称号を持つ騎士だと聞いているが?」

誰もが驚いた。

「本当なの?タバサ」

キュルケも驚いている。
シュバリエの称号というのは、実力を持つ者にのみ与えられるものだ。

「ミス・ツェルプストーは、数多くの優秀な軍人を輩出した家柄で、彼女自身も優秀な炎の使い手だと聞いているが?」

ルイズは、次は自分の番だと胸を張った。
オスマンは、目線を逸らしながら、随分と間をためている。
だが、コホンと咳をすると、目を逸らして言った。

―――――

「では、馬車を用意しよう。それで向かうのじゃ。魔法は目的地に着くまで温存したまえ。では、ミス・ロングビル!」

「はい。オールド・オスマン」

「彼女たちを手伝ってやってくれ」

ミス・ロングビルは頭を下げた。

「もとより、そのつもりですわ」

言うと、ミス・ロングビルは馬車の用意をしに行った。

「失礼。出来れば、内密に話したいことが」

その姿を確認してから、勘助はオスマンに耳打ちした。
オスマンは、勘助の姿を見、そして少し離れた木の蔭へと視線をやる。
勘助とオスマンは、こっそりとそこへと移動した。

「ふむ。ここならば大丈夫じゃろう?」

勘助が頷く。

「さて。それでは、内密に話したいこととはなんじゃろうか」

「はい。あまり時間が無いので、単刀直入に言わせていただきます。『土くれのフーケ』は、ミス・ロングビルであるかと思われまする」

その言葉に、オスマンが目を見開く。

「な、なんじゃて!?あの、ミス・ロングビルが、じゃと!?」

「恐らくは」

「むぅ・・・彼女がそうだという、確証はあるのかね?」

オスマンが、信じられないというように問いかける。
それに、勘助は答える。

「確証と言えるものは、ござりません。しかし、彼女がフーケである可能性は、十分にあります。」

「第一に」

勘助が、オスマンを見据え、朗々と言葉を発する。

「徒歩半日、馬で4時間はかかる場所の事を、どうして知ることができましょうか」

「第二に、今までその姿を、性別や背格好ですら誰にも悟られることのなかったフーケが、その姿・隠れ家をただの農民に見つかるものなのか。
もし悟られたのならば、それに気付かずに口封じすらしないというのは、到底考えられませぬ」

「第三に、フーケの行方について、向かった方角すらわからないのに、どうしてその調査ができるのか」

「1,2時間足らずでこれらの情報を得ているということは、その者がフーケの協力者であるか。もしくは嘘を掴まされたか。あるいは、フーケ本人であるか。これらのどれかだと思われます」

オスマンは、その言葉に一々とふむ、ふむ、と頷き、考えている。

「しかし、それだけでは彼女を犯人と決める決定的証拠には・・・」

「勿論、それは承知しております。しかし、彼女が現時点において、最も不審なものであることには変わりありません。間違っていれば、それでよし。しかし、もしそうであるならば、対策を講じなければ危険である事は間違い無いのです」

「―――うぅむ。どうやら、彼女には2,3、質問し、必要とあらば拘束しなくてはならないようじゃのぉ」

鬚をなでながら、オスマンは肩を落としていった。

「・・・いえ、それでは彼女に逃げられてしまう可能性もありますし、『破壊の杖』の行方も分からないままかもしれない。上手くしらを切られれば、それまでのこと。なにより、わざわざ危険を冒してまでこの学院に戻ってきた理由もわからない」

その言葉に、オスマンも頷く。

「確かに、それもそうじゃのぅ・・・だが、このまま彼女を放置する訳にもいくまい」

「それについて、こちらから提案があるのです」

「提案・・・とな?」

オスマンの目が、鋭く光った。
そして、勘助は自らの『策』をオスマンに、告げた。


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