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虚無の鍛聖-01


1つ、武器は鋼の堅さに非ず。1つ、武器は友の助けに非ず。1つ、武器は剣の腕に非ず。
この3つこそ吾等鍛冶士の誇る三宝なり。決して忘れるべからず。

【1つ。鍛冶屋の腕は人間のみの物ではない。守護獣と鍛冶屋との絆と腕こそが鍛冶屋の柱である】
【1つ。決して屈せず、諦めてはならない。相手が王であれ、正しいと信ずる心を枉げる事は誇りを枉げる事である】
【1つ。己の為に鎚を振るう事はしてはならない。殺しの為の刃を打ってはならない。命を活かす為に鎚を打て】

1つ………そんなに思いつくものじゃない。無理無理そんなの。

「ダメだ…『決して口伝してはならず渡してはならない教えなくてはならない事のすすめ』って何が何なんだか分かんないよ」
ノートとペンをそこに置いて  ぼすん  と暗い草むらに身体を投げてみる。
5年間で伸びた身長と、それ以上にこの2年で伸びた髪が風にさらされる。故郷のように潮の香はしてこなくて、緑の風が過ぎていく。
あ、故郷じゃこんな事できないか…草花といえば自分の事を兄と慕ってくれる元気な少女が育ててる物くらいだったから。
「焦らないで下さいクリュウ様。リンドウ様から言われた事はワイスタァンに帰るまでに果たせばいい事じゃないですか」

自分と同じ髪の色の少女がいつもの様に(ボクといる時はいつもだけど)笑顔で覗き込んで、軽くウインクしてみせた。
ボクが鍛聖になったからか、彼女の姿は以前よりもやや大人っぽく、髪も長くなってきている。
本人曰く『頑張ってきた』かららしいけど、いつも隣に居た記憶しかない。何時に何を頑張っていたんだろう?

「そうは言っても2年だよ?鍛冶屋になる前から親方の下で働いて鍛冶屋になって、みんなと会って、パリスタパリスさんに帰ってもらえて、鍛聖になって
それからこうしてシュガレットと旅を始めてから。父さんみたいになりたい夢が消えたわけじゃない。でもさ」
「『何かが足りないんだ』ですか?本当に、どこまでもクリュウ様はシンテツ様の血がお強いんですね。ふふふ…♪」
「笑わないでよ。何かが足りないんだ。鍛冶屋としての腕前もそうだし武器の扱いにしても商売のやり方も…ボクには色々足りないよ
でも、そうじゃない。そうじゃない何かが足りないんだ。もう持ってる気はしてる。笑わないでよシュガレットぉ…」
「ふふ…だって…ふふふふふっ♪クリュウ様も大人になってきたという事です。心配要りませんよ」
「ずるい!シュガレットだけ知ってるなんて!!」
「ダメです。教えませんよ~♪」
笑い声を上げながらながら、くるくると焚き火の周りを回る。いつもの様に金色に輝く月と宝石の様に輝く星々。
あんな輝きを自分の作ったものに込めたい。
目には見えなくても、大切なこと。目に見えないからこそ、大切で尊いもの。それが、自分の目指し続ける事なんだと思うから。

「つかまえたっ!!」
「きゃんっ♪……クリュウ様、本当に、大きくなりましたね」
「まだ、もうちょっと背は伸びて欲しいし、声も変わってないよ。…でも、ちょっとは成長できたのかな?」

子供では無いけど、まだ大人でもない。一人前ではあっても、まだ一流じゃないんだ。(当人に意識が無いだけで、既に超のつく一流になってます)

――――――――――――――ん?
腰の剛斬刀の柄を掴んで振り返る。何かの気配がした……と思う、多分。何かに…何かがあるような気がする。ワケ分かんないけど、そんな。

「シュガレット」
「良く分かりませんが、多分召喚術に近い力だと思います」
「サモナイト石や大規模な施設や儀式も無しに?」
「膨大な力を持つ存在か、或いはそんな力を持った何かを持った者なら…でも、そんな力を持った者の話なんてサプレスでも殆ど聞きません」

思い当たるのは大体ハヤトさん達とやっちゃったはずなのに…ホント大変だなぁ…。これも『統治者としてのルール』なのかなぁ?
まさかね。災いはやってくるものだからどうしようもない。でも幸せは作る物だからいくらでも作れる。作ればいいんだ。

「クリュウ様?」
「ごめん、ちょっと考えてただけだよ。武器は…全部揃ってるね。材料も問題無い。行こう」
「はい。気をつけてくださいねクリュウ様。クリュウ様1人の身体ではないんですから」
「言うべき性別と言うべき状況が違わないかなシュガレットさん」




――――――来ない。
完全に出来た。詠唱も魔法構成もバッチリだったはず(普段もそう。なのにいつも爆発しちゃうのは何でなのよ)なのに。

「やっぱりゼロだ!!召喚しても出てきやしないなー」
「褒めてやれよ。あの『ゼロ』が爆発させてないんだぜ?これだけの奇跡を見せて貰ってるんだ」
「はははははは!!そりゃ確かに有り難いな」
「……ぅ…」(ギリッ……
「ミス・ヴァリエール、落ち着きなさい。ゲートは形成されているのですから術そのものは成功しています」

彼の頭が眩しく輝いて一瞬世界が真っ白になった。術が失敗したからなんかじゃない。そうじゃないったらそうじゃないのよ!!

「ですがミスタ・コルベール、私の使い魔は出てこない理由が分かりません!」
「基本的に、サモン・サーヴァントはゲートを開くだけの魔法ですからな。相手がそれを恐れたり嫌がったりすればそういう事も有り得るのですよ」
「嫌がるっですって?馬鹿な事言わないでください!!」
「ははははは!!『ゼロのルイズ』に仕えるなんて不名誉な事だもんなー?使い魔が可哀想だ」
「仕える使い魔が出てきてくれても愛想尽かされて逃げられるのがオチよねー」

好き勝手言ってくれるじゃない。でも、成功したんだから私の使い魔は世界のどこかに必ずいる。それだけは嘘じゃないんだから!!
嫌ですって?そんな事許せない。許せない!!ここで呼べなかったらこのまま私は『ゼロ』のままじゃないのよ!!
「出てきなさいよバカーーーー!!!!私が呼んでやってるのに来ないってどういう事なのよバ――――――

―――――― ずんっ         どすみしめきゃっ☆ごきぼきっばきべきぼきごしゃっ…こきっ。

い、息、で、できな………重くて、痛………かふっ……………

「…ったあ…シュガレット、大丈夫?」
「………」
「シュガレット?良かった、無事だったんだ。………おじさん誰ですか?貴方がボク達を呼んだんですか?」

髪の毛がちょっと可哀想と言うかスッキリしていると言うか…でも親方よりは若そうな眼鏡のおじさん。

「いや、私ではなくてだね…その、君の下で潰れている彼女、ミス・ルイズだと思うのだが…何故『呼ばれた』と?」
「ボク達の世界にも召喚術があるからです。…こんなに執念深くて無理矢理なものじゃありませんけど」
「世界?それはつまりこの世界とは違う世界という事ですか?実に興味深い。是非とも教えて頂きたいものですな」
「ボク達の世界ではでs」

「あのー…クリュウ様、そろそろ降りてあげないと下の方が死にそうなんですが。せめて荷物を除けてさし上げるべきではないかと」

「……えっと、死んでないよね?」
「おそらくは…」

槍筒(武器を入れる入れ物にこの呼び方で良いのか未だに疑問だ)を横に立てて下敷きにしてた女の子を見る。
ピクリとも動かない。死んでないといいけど、ピンクだなんて変わった髪の色だなぁ…赤や黄色や青は普通にあるけど。
と、そうじゃなかった。

「しっかりして。ほら、えーと、みするいず?」
「わたしの名前にミスって繋げて言うなぁーーーーーー!!!!」
「おっと」

ぐぁばっ!!!!と戦闘中に吹っ飛ばしたスライムが起き上がる様に背中の力だけで立ち上がるピンク色の髪の赤い顔のナニカ。
慌てて飛び退くことが出来たのは結構ラッキーだったかも。モンスターって言われても信じるくらいの妙な動きだったけど何者なんだろう?

「呼び出しても出て来ないわ出て来た途端に御主人様を足蹴にするなんて何考えてるのよアンタは!?」
「「はい?」」
「召喚しただけで契約するだなんて何をワケの分からない事仰ってるんですか?大体、人間を召喚するだなんて聞いた事無いですよ?」
「いや、ハヤトさん達の例もあるよ?」
「人間や私達程度の存在がエルゴと同じ事を出来るはずないですよ、クリュウ様」

まあ、それはそうだけどね。誓約者は無色のサモナイト石で召喚される物と同じ世界の住人らしいけど…だったら此処はどこなんだろう?
何かの形でリインバゥムに関係してるのかな?…ダメだ、ぜんぜん分からないから考えるのをやめよう。
……ああ、赤いのは頭から流れてる血なんだ。あの子気付いてないのかな?…致命傷じゃなさそうだからいっか。

「で、私に呼ばれたのはどっち?わたしはこっちの浮いてる彼女が良いんだけど。浮いてるし、妖精か精霊の類よね。名前を言いなさい」
「確かに私は精霊です。でも私のご主人様はクリュウ様で私はその護衛獣です。そうでなくても貴方の言う事には答えたくなんてないです。
呼び出しておいてそんな不躾に名前を言えだのどちらが良いかなんて言うような人間に力を貸すなんてサプレスの住民全てを代理してお断りします!!」
「ちょっと、シュガr」
「じゃあこの私の上に落ちてきた平民がこの私の使い魔だって言うの!?冗談じゃないわよそんなの!!」
「平民だから何なんですか?クリュウ様はこう見えても剣の都ワイスタァンを治める最高評議会の鍛聖でいらっしゃるんですよ?貴方こそ名前を名乗ったらどうなんですか」

こう見えても、ってその言われ方はどうなんだろう。確かにそんな身分の人間がほいほい旅に出ちゃうのも問題なのかも。

「はぁ!?どこから見てもただの旅の剣士じゃない。もっとマシな嘘をつきなさいよ。魔法も使えない人間が統治者になれるはず無いじゃない。
まあいいわ。私の名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。彼との契約を取りy「不可能です。無理言わないで下さい」め…なんで!?私が呼び――――」
「呼び出されて『はいそうですか』なんて獣でも従いませんよそんなやり方。それなりの身分のある人の交渉法とは思えません」
「呼び出された使い魔が召喚したメイジに服従するのは当たり前でしょ!!いいから従いなさい!!」
「何度も繰り返しますけど嫌です。絶対にお断りします。私は断固としてクリュウ様以外の方に仕える気はありません」

うわー、大変だなー。……置いてきぼりにされてるボクにどうしろって言うんだろう。
常識から何から違う場所みたいだけど、それより先にこのピンクの子が言う『使い魔』の問題を片付けなくちゃいけないのかな?
あー…女の子って強いよね…こっちの世界って月が2つあるんだなー… 月が2つ!?

「やめたまえミス・ヴァリエール。貴族の者がその様に取り乱すとは情けないですぞ。クリュウとシュガレット、だったと思ったが身体に異変は無いかね?」
「はい。私には異常は無いです…貴方がこの女性に関しての責任者だと私は思うのですが、名前はやはり名乗って頂けないのですね」
「ボクにも特に変な所は無いです。そこまでこだわらなくて良いよシュガレット、そういう人達なんだから」
「待ってくれたまえ。その点について正式に謝罪させて欲しい。私はこの学院で教師をしているコルベールだ。無礼を詫びよう」
「ミスタ・コルベール!!こいつらは貴族である私に怪我をさせたんですよ!?たかが平民の分際で!!」
「ミス・ヴァリエール。貴女が貴族がしてはならない事をした事にも気付かないのですか?名乗りもせず交渉もしない。彼らが問題ではない
貴女は何者ですか、ミス。貴族たらんとする者が礼儀も弁えずにその様な態度をする事は家の名に泥を塗る行為ではありませんかね?
誇りを持つ事はただ平民の上に立つという事ではありません。それくらいは貴女達にも私達は教えたはずだと思いましたが」
「…っ、だからって!!」
「ともかく、召喚には成功したのです。彼らの件と貴女についての件は後ほど話し合えばいいでしょう。貴女で最後でしたね、全員自分達の寮に帰りなさい。以上、解散とします」

…先生だったんだ。えと…つまり此処は貴族の子供の為の学校で、この国は魔法を使える人間が支配者だって事か。
どうでもいいけど、いつまでボクはこうしていればいいのかな?

「クリュウ様、とりあえずあの方は悪い人ではなさそうですね……あのコルベールという方『は』」

頭は寂しいけど、って言うのは流石に失礼だね。シュガレットもやっと機嫌を直してくれたみたいで良かった。

「さて…弱りましたな」

広場にいた生徒達がいなくなって、残ったのはボク達とコルベールさん、ピンクの髪の…名前何だったっけ?の女の子
生徒達が居た時には気付かなかった赤い髪で肌の焼けてる女の子と、短い青い髪の大きなロッドを持った女の子。

「生徒は2年生に上がる時に必ず使い魔を召喚して契約し、それが昇級の証とされます。使い魔と契約できない以上は……」
「2年生になれないというわけですね、コルベールさん」
「その通りです。これは我が校の格式ある伝統ですので特例を作るわけにはいきませんな」

勉強なんてした事が無いから良く分からないけど、学業も結構厳しいんだ、大変だなぁ。さっきからずっとシュガレットばっかり話してない?

「何時までイライラしてるのかしらルイズ?無理なら無理で新しく使い魔を作ればいいじゃない…って無理だったわね」
「……軽率」
「…。タバサとしてはどうなの?あの2人。精霊の彼女もいいけど、剣士風の彼、結構強そうね。話がホントなら身分も大臣クラス以上よ」
「…………」

ボクを見る彼女の目が、一瞬鋭くなった。実戦を潜り抜けてこないとああいう目は出来ないはずだけど、何で貴族のあんな小さな女の子が?

「……帰る」
「あ、ちょっと!!もう…私も行くから待ってよ。…クリュウだったわね。私はキュルケ。あっちの青い髪の子がタバサよ。また会いましょう♪」

あっという間に空に浮かんで向こうに飛んでいく。こっちでは飛行魔法が普通に使えるみたい。メイジ=魔法使い=貴族なのかな?
ともかく、残るは4人。

「…………~~~~……!!」

すっごい睨んでる。やっぱりあの重さで上に乗ったから相当痛かったんだよね。

「ごめんね。上に落ちて、痛かっただろうに、あの時ちゃんと謝れなくて、ホントにごめん」
「そんな事を言って欲しいんじゃないわよ!!どうして私に従わないのよ!?使い魔で平民で従わないなんて異常よ!!」
「どうしてって言われても、何で従わなくちゃいけないの?身分で言うならボクも貴族だし…何年かしたら故郷に戻らなきゃいけないから無理だよ」
「うるさいうるさい!!呼ばれた以上は従いなさいよ!!魔法も使えない人間が貴族に逆らうなんて不可能よ!!勝てるわけ無いじゃ――――――――」

そんな事でこの国って決まってるんだ。今まで見てきた軍事国家や独裁政権だって社会的にはともかく制度的にはこの国よりマトモだったのかな?
それでも大丈夫って事はこの国の人達は大半が良い人なんだろうか?それとも、彼女だけが取り立てて性格とかが、その、ダメなんだろうか?
それはそれこれはこれ、って納得できない人間に何言っても仕方ないんだろうけど、その質問に対してのボクの答えは決まりきってる。

「勝てるよ。さっきここにいた人達全員が相手でもボクは勝てる」
「……あんた気でも狂ってるの!?魔法を使う相手に平民如きが何を出来るって言うのよ!?」
「ボクも魔法使えないわけじゃないけど、魔法を使わなくたって素人には勝てるよ。…戦いたくはないけど」
「~~~~~っ!!もぅいいわよ!!その精霊私に寄越しなさい!!私がその子と契約する、それでアンタが帰れば赦してあげるからとっとと寄越しなさい!!」」
「無理だよ。ボクが生きててシュガレットとの契約を望んでる限り契約は変えられないし取り消せない。ボクが死んだら元の世界に彼女は帰る、それが契約だから」
「それでは確かに無理ですな。他者の使い魔を奪い自分の者にできる術があったとしても、その様な事は…」

貴族ってこういうタイプばっかりだよね。王様にヘコヘコしてる様に見えて実際は王様に忠誠なんてなくて自分が一番偉いと思ってる。
シュガレットにこだわってるのも自分の為だけ。とにかく自分を良く見せたいだけ。そんな人間の中身はたかが知れたものにしかならないのに。
でもコルベールさんも多分、貴族だよね?…変なの。国が違うとか、そういう事かな?

「お分かり頂けたのなら、私達を開放してもらえませんか?ここにいても私達はお邪魔みたいですから」
「待って、シュガレット。コルベールさん、ボク達がもしこのまま立ち去ったら」
「ミス・ヴァリエールは留年、という事になります。本来ならば召喚された対象の身体のどこかにルーンが刻まれるはずが見当たらない。
召喚された対象があなた方ではなかったという事です。それは彼女には明日もう一度サモン・サーヴァントの儀式をしてもらえば証明されるでしょう
……ですが、それでは納得できない者達がいるのです。彼女と生徒達、教師達がね。理由はおいおい分かると思うが…私としては彼女を留年させたくは無い。
クリュウくん、どうか彼女の使い魔になってくれないかね。形だけでいい。頼む!!」
「…………」

深々と下げた頭が傾きかけた太陽を反射して鏡みたいに…これ以上は流石にしつr…これ、2度目?
前言を撤回したい気分になってきた…この人もやっぱり貴族的な感じだ。良い人ではあるみたいだけど。
それに対して彼女はコルベールさんとボクを酷い目で睨みつけて、目線を合わすとそっぽを向いた。……何て酷い子なんだろう。
自分達の先生に対してそんな目つきをするなんて。自分の事を思って言ってくれてるのに、それは酷いよ。
仕方なく、こう言っておいた。

「ボク達に考える時間をください、コルベールさん」

(2時間後 学院長室)

「…という次第でして…身勝手ではありますが」
「待ちたまえミスタ。確かにゲートは開いて、そこから件の2人が出てきたという事に間違いはないかの」
「はい、それは私達も見ていましたので」
「それを成し遂げたのがあのヴァリエール家の3女とは、不思議な事もあるものじゃな。これまではあんなに…」
「それを言ってしまっては終わりでしょう、オールド・オスマン」

苦笑交じりに紫煙をふぅ、と長く吐いた後老人が口を開く。

「ミス・ヴァリエールをを2年に上げる事に異論は無いのじゃが…ミスタ、呼び出された2人と一緒に今夜ワシの所へ来る様に伝えてくれんかね」
「はぁ。…オールド・オスマン、私の感じた事なのですが彼は恐らくこの国で一番強い兵よりも…いえ、メイジよりも強い様に思えます」
「…それはミスタの『炎蛇』としての眼がそう見たのかね?」
「………」
「すまん。じゃが、どうもこの目で見ぬ事にはのう…歳をとると偏屈になってしまっていかん。ところで、件の2人は今どこにおるのかのう?」
「学院で働く平民達の所へ行ってもらいました。ミス・ヴァリエールは相当不機嫌の様ですが」
「………子供達とのんびり出来ると思ったからこそ選んだというのに、まったく的外れじゃった。賑やかでたまらんなぁ」
「…その通りですな」

顔を見合わせて苦笑する。
彼らは子供らに教える立場になりたくて教師という仕事になろうとした訳ではなかったのに現在教師をしている。
後悔は無い。ただ、ちょっとばかりトラブルが起きそうなだけだ。

―――――――後にとんでもなく後悔するのもまたこの種の良い人達のお約束なのだが、それはまた別の話。

(同時刻 学院内食堂付属厨房)
案内されたのは城内(学院だから構内?)の食堂の、そのまた奥にある厨房。
昼間を過ぎていたから食堂には生徒の姿は無くてけっこう涼し…もとい、寒い。

「鍛冶士か…そんなに若いのにもう一人前か」
「ボク達の町は誰でも一度鍛冶士にならないといけないんです。…ボクの場合は父みたいな鍛冶士になりたいと思ってたからなんですけどね」
「こっちの筒は何なんですか?すごく重そうですね…剣?…槍に斧に……こんなに!?」
「旅先で作ったんです。ある程度売れたんだけど、それでも結構残っちゃって包丁やおたまもあるから買ってくれたら嬉しいかなぁ、なんて」
「ほう……見せてもらえるか?まずは包丁を見たい。もちろん試し切りもさせて欲しいな。シエスタ、そこの野菜使うから取ってくれ」
「包丁ですね。えーと、包丁は確か此処らへんに、サイジェントで売った時のが…あった!はい、どうぞマルトーさん」

実は、ワイスタァンじゃおたま以外の家庭用のものはあんまり作った記憶が無いんだよね。
教わった秘伝がそれだけじゃないかとか言わないで……誰に言ってるんだ、ボクは。
旅に出てから包丁、鍋に水道に歯車やロレイラルの召喚獣用のパーツに船に…鍛冶屋の仕事を飛び越えてる気がしないでもないけど。
真剣な眼で見られてる。…流石は職人、普通の人みたいに甘くない。でもこれも鍛冶士の醍醐味って奴だよね。…醍醐って何なんだろう?
シュパパパ!!ってあっという間に皮をむいて野菜を刻んで……止まった。

「よし買った!!他のも見せてくれ!!」
「私、こっちのナイフ頂いてもいいですか?こっちのハサミも細工がすごい……目移りしちゃいます…」
「ラグズナイフは戦闘用のモノなんですけど…あ、待って。そっちハサミはまだ未完成の試作品なんだ。欲しかったらあげるよ」
「おーい、このフォークとナイフのセット売ってくれるか?」
「庭の作業用に草刈ガマが欲しいんだ、錆びちゃってね」
「ちょ、ちょっと待ってください!!順番に待ってください。ちゃんと売りますから」

そこで帳簿を取り出して気付いた。ボクはこっちの世界の通貨は持ってないし商売方法もルールも知らない。
つまり完全にゼロから再出発って形になったんだって事に。

「それから…申し訳ないですけど、ボクはこっちのs…国の通貨や商売方法を知らないので、適正価格も分からないんです。
品物は先に差し上げますから、支払いはそれまで待ってもらえませんか?問題があったら困るので…
あ、ちゃんと帳簿には書きますからご自分の名前と購入される品物を教えてください」
「ちゃっかりしてやがる。みんなもそれでいいな?誰か今度の買出しに連れて行ってやれ。…でクリュウ、お前さんは何処で寝るんだ?」
「もしよろしければ私達の部屋が空いていますけど……」

「ただいま戻りましたクリュウ様ー♪やはり間違いなくリィンバウムではない様です。文字らしきものも一切分かりませんでした……
――――――って何いきなり浮気してるんですかクリュウ様!!許婚である私というものがありながらまた女の子を引っ掛けるだなんて!
これで何人目ですか!?サナレさんラジィちゃんあの双子姉妹にそれから(中略)何人落とせば気がすむんですか!!」

……タイミング最悪だよシュガレットさん。引っ掛けるとか多分って何の事やら。


赦せない。赦せない赦せない赦せない赦せない赦せない赦せない赦せない赦せないっ!!!
何が赦せないか?何もかもよっ!!あの平民もそれについてた精霊のあの娘も、ミスタ・コルベールも…
何でよ!!何で!?何で……

「何でなのよっ!!!」

噛み締めた歯が歯茎を押し付け、血が滲み出てその味が口中に広がる。悔しくて頭がどうにかなりそう。
ゼロ。少し、じゃない。少しも何も無い事を意味する言葉。誉れの名じゃない。どうしようもないからつけられた名。

「嫌よ…折角、折角成功したのに!!やっとゼロって言われずに済むって思ったのにっ!!」

壁を何度も何度も叩く。癒されなんてしないのに、ただ、胸の痛みを誤魔化したくて。

『ははははは!!『ゼロのルイズ』に仕えるなんて不名誉な事だもんなー?使い魔が可哀想だ』
『仕える使い魔が出てきてくれても愛想尽かされて逃げられるのがオチよねー』
『魔法の才能ゼロのルイズ!!』

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいっ!!!!」

指が痺れるくらい筆記を覚えた。
喉が痛くなるほどに呪文の詠唱だってやった。
試験でだって学院の上位にずっとい続けられるように努力した。
貴族らしくいられるように何時だって何処でだって………
だから、これは涙なんかじゃない。
これは涙なんかじゃない。

「…っく…う、…あ…ぅ……っ……っ!!!!」

違う。今泣いてるのはヴァリエール家の3女じゃない。
ただの、何処かの女が惨めに泣いているだけだから……これは、違うんだから!!

「恨むわよ、タバサ。あのルイズを焚きつける様な事をさせようだなんて」
「………キュルケや私では無理。……適任」
「そーね、あの状態じゃマトモに対応するどころじゃないものね」
「他人事だと思って…確かに魔法の才能はゼロだけどそれ以外は結構彼女優秀なのよ?魔法にしたって……」
「そうかしらね。ともかく頼んだわよモンモランシー。さーて、彼の様子でも見てから帰りましょうか」
「…私は帰る」
「ちょっと、タバサってば付き合ってくれたっていいじゃない…あ、それじゃよろしくねー」


「置いてきぼりとは…ハァ…。仕方無い。ルイズ、起きてるんでしょう返事しなさい。オールド・オスマンからの伝言よ」
たんたんっ…
「起きなさいって。学院長直々の言いつけなんだから起きなさい!!…ルイズ…?」
だんだんっ!!
「何時まで不貞腐れてるのよ。起きなさいルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!!」

かちゃっ。

間抜け。そんな言葉がぴったりな今の自分を自覚して全身の力が抜けていくのを感じて立ってられない。
いないなんて反則だと思う…ちょっとこれは幾ら何でも恥ずかし過ぎる。あれだけ騒いでおいて結局一人芝居だったなんて。

「何やってるのよ私の部屋の前で」
「………オールド・オスマンが呼んでるわよ。さっさと行って来たら?」

流石にここで責める気にはなれない。隠してるつもりの涙の跡と赤くなった目を見て責められる程の冷血じゃないつもり。
ほとぼりが冷めてからでも十分だろうと思う。同じ女として、これくらいの余裕はないとやってられない気分だったから。

「私のほうが、バカよね」

冷たい廊下よ、どうか私の呟きを忘れていて。…どうか彼女の悲しみを飲み込んで。
この夜が、どうか全てをとは言わなくてもせめて幾許か彼女を慰めてくれるように、私は祈った。
神なんか信じてない。ブリミルなんていたかどうか分からない人物も信じていないけれど。


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