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虚無を担う女、文珠を使う男-02


第2珠 ~下僕、盛大に勘違いする~

魔法学院、医務室。
ルーンが刻み終わるまで離れられないというコルベールが、気絶しっぱなしの横島を運んだ場所だ。

「こらっ。いい加減に起きなさい!」
「うぎゃあー!!」

そろそろ夕食の時間だというのに、全然起きる気配が無かった為、ルイズが実力行使に出た。鞭による強烈な一撃を受け、何ともなさけない声が医務室に響く。

「い、痛えー 何でいきなり鞭で叩かれなきゃあかんのだ。俺が何か悪い事したか!」
「ご主人様に向かって口応えしない!! 大体、あんたがいつまでも目を覚まさないのがいけないんでしょ? あんたのせいで、私は午後の授業全部パーにしちゃったんだから、少しは反省しなさい!!」

(まぁ、勘違いとはいえ、騒ぎの原因の一旦は俺にもあるんだよな)

と思い、謝る横島。

「あー。その。何だ。ごめん」

その言葉に、ルイズはピクピクとこめかみをふるわせ、鞭を手で弄びながら言う。

「謝る時は、『ご主人様、申し訳ございませんでした。もう二度としませんから、どうかお許し下さい』でしょ!!」

何かのきっかけで、簡単に爆発しそうな雰囲気のルイズに、思わずベッドから飛び降りて土下座を始める横島。

「ご、ご主人様、申し訳ございませんでした! もう二度としませんから、どうかお許し下さい!!」

(つ、つい条件反射で謝ってしまった。これじゃこれからの俺の立場が決まったようなもんじゃないか…。チクショー 早く文珠たまらねぇかなぁ)

横島の言っている事と思っている事は全く違うのだが、見事な土下座姿を見て悦に入ってるルイズは気づかない。

「分かればいいのよ、分かれば。今回は特別に許してあげるけど、次無礼な態度をとったら、ご飯抜きの刑だからね。覚悟しなさい!」
「ありがたき幸せでございますー」

「何か、わざとらしいわね。あんた、本当は『けっ。いつかそのうち逃げ出してやる。今のうちにせいぜい威張っておけ』とか思ってないでしょうね?」

「そ、そんな、滅相もございません! 一生丁稚でいいっすから、飯抜きだけは勘弁して下さい!」
「そんなの当たり前よ! あんたは下僕だけど、私の使い魔でもあるのよ。あんたが死ぬまで一生こきつかってあげるから覚悟なさい!」

と、一通り騒いだ後。ルイズは本題を切り出した。横島がコルベール達に話した内容を、すでにコルベールから聞きだしたルイズだったが、さっぱり意味が分からなかったのだ。

「それはともかく。コルベール先生が、
『瞬間移動に失敗した、とか何とか言っていましたが… サモン・サーヴァントの影響や、私の勘違いで怖い思いをさせてしまいましたし、おそらく混乱していたのでしょう。
次に目を覚ましたときは落ち着いているでしょうから、その時によく話を聞いておいて下さい』
って言ってたんだけど。あんた、一体何を話したのよ」

横島は、自分でも再確認するように、丁寧にゆっくりとルイズに説明を始める。

【横島がここに現れた経緯について、横島の言い分】
①自分は、霊能力で瞬間移動が出来る能力を持っているが、制御に失敗した結果ここに飛ばされたのだと思っている。
②どこかにたどり着きそうだと思ったら、光り輝く何かに包まれたような気がした。
③気づいたら、あたりは塵・埃だらけで何も見えなかった。
④事が起きる直前に、壊れかけた装置を持っていたが、とうとうこのとき爆発してしまった。


「俺がここに来た理由は大体こんな感じかな。後はコルベールさんから『サモン・サーヴァント』や『使い魔』の事についての話があったんだけど…」
「そのあたりはいいわ。それにしても、あんたほんとにそんなホラ話が信じてもらえると思ってるの? あんたが何て言ったって、使い魔のルーンが刻まれてる事実に変わりはないの。いい加減、私の使い魔だっていうことを認めなさい。」

そういうルイズは、全然信じる気配が無い。

「それで、私の使い魔である以上、あんたが何を出来るのか、主人の私は知っておく必要があるわ。瞬間移動とかバカな事言ってないで、本当の事言いなさいよ? まずは、分かりやすそうな所から… とりあえず、あの光る剣を出してみて。」

(こいつが何をどう考えてようが、関係ないか。せいぜい文珠がたまるまでの辛抱だ)
と思った横島は、言われたとおりに霊波刀を作り出す。

「えーと、これの事だよな?」

一瞬、横島の手が光ったと思うとその直後、光輝く長剣が現れる。
一度遠目で見たときは、「何かのマジックアイテム」の線で考えていたため、さすがにこれには驚いた。

「そ、それの事だけど… それ、マジックアイテムの類じゃないわよね?」
「さっきもチラッと言ったけど、これは俺の持ってる霊能の1つ。道具とかは何もいらないな」

(霊能、ねぇ。もしかして先住魔法の事かしら? 平民だと思ってたけど、亜人の一種? 使い魔になってるはずだから、人間じゃないにしても、危なくはないでしょうけど…)

「一応聞いておくけど、あんた、生まれはどこ?」
「日本の東京っていうんだけど… そう言ったって分かんねーよな。何て言ったら分かっかなぁ…」
「ニホン? トーキョー? 聞いた事ないわね」
「そうだよなー ピートの親父の持ってた世界地図なんて『ヨーロッパ』『アフリカ』『アジア』の3つだもんなぁ…」
「は? あんた何言ってるの?」
「いや、だから『ヨーロッパ』『アフリカ』『アジア』しか無いなんだろ、ここの世界って」
「あんたの地方ではこっちの事をそう呼んでるの? ここは『トリステイン』で、他には『ガリア』『ゲルマニア』とかあるけど、『ヨーロッパ』とかそういうのはないわよ?」

ルイズの話を聞いて、どことなく余裕の表情だった横島の顔に焦りの表情が浮かぶ。

「え? あ、あれ? ヨーロッパって昔そんな名前だったっけ? で、でもカオスのじいさんは確か『ヨーロッパの魔王』って呼ばれてたんだよな。ど、どうなってんだ?」
「さっきから何を言ってるのか分からないけど、とりあえず、あんたがここじゃないどこか遠くから呼ばれたっぽい事は分かったわ。その不思議な力があれば、もしかしたら護衛くらい務まるかもね。それっていつでも使える?」

混乱しはじめる横島をよそに、剣の事についての興味がつきなさそうなルイズ。だが、横島はそれどころではなくなってしまった。ルイズの肩を掴んで乱暴に揺らしながら問い詰める。

「お、おい! ここは一体どこなんだ! トリステイン魔法学院って言ってたけど、それってヨーロッパにあるんじゃないのか!?」
「ちょ、ちょっと、何よいきなり!? やめなさい、痛いでしょ!!」
「そんなん知ったことかー 『ここはどこかの異世界です』とかだったら、ボス倒さなくっちゃ元に戻れないんだぞー」

過去に何度も苦労した光景がよみがえる。ゲームしかり、映画しかり。どこかに吸い込まれる度に、そこにいるボスを何とかしなくちゃ帰れなかったのだ。
あの時は、ほとんど美神が何とかしたが、今は横島ただ一人。以前に一人で愛子に吸い込まれた時でさえ、後から美神が助けに来てくれたから帰れたのだ。

「い、い、度胸ね… ファイヤー・ボール!!」

そんな横島の状況など、ルイズにとっては全く関係ない。いつまでも言う事を聞かない事に業を煮やして、ファイヤー・ボールの詠唱を行う。
横島は横島で、「文珠を使って美神を模して、時間移動で帰還する」という計画が崩れさってしまったショックで、口から魂を吐きそうな雰囲気だ。
結局、ルイズの呪文は「横島を黙らせる」という意味において成功した。

「今度無礼な態度を取ったらご飯抜きって言ったわよね!? 私は夕食に行ってくるから、少しそこで反省してなさい!!」

そう言いながら、部屋を出て行くルイズ。残された横島は、食事にありつけなくなってしまった事実に、ただただ、泣くしかないように見えた。

そして、それから1分後。
静かに立ち上がった横島は、こそこそとドアの前まで行き聞き耳を立てる。ほんの少しだけドアを開けて、外の様子をうかがう。誰もいない事を確認して。

「だーはっはっはっは。ちょっとさっきは混乱したが、ゲームか映画かの世界に吸い込まれたって事なら、放っておいてもそのうちボスとご対面~ だろ。
このGS横島忠夫の手にかかれば、こんな事せにゃならん雑魚妖怪なんか目じゃないわー。
そうと決まればまずは腹ごしらえだな。どうせ貴族なんてのんびり食後のお茶の時間とかもあるんだろ。それまでに戻ってくればいいんだ、ちょろいちょろい」

横島には、反省のかけらも見当たらなかった。



そして夕食の時間もとっくに終わり、ルイズ自室にて。


横島は、ロープでぐるぐる巻きにされて床に転がされていた。
食堂で残飯をもらおうとうろちょろしていたところを、あっさりルイズに見つかったのだ。

「かんにんや~ 腹が減って死にそうだったんや~」
「言い訳しない! ご主人様がダメって言ったら、あんたがどう思おうとダメなの。下僕扱いしたのがそもそも間違いだったわ。言ってもわかんないんじゃ、下僕以下よ。あんたは犬扱いでちょうど良いくらいだわ。」
「ほんとすんませんでした!! もう十分反省したから、鞭はやめてー」
「だめね。ここで甘やかすとろくな事にならないわ。覚悟はいい?」
「全然良くないー ヘルプー」
「問答無用!!」

「1つ!!」「はぎゃー」
「2つ!!」「みぎゃー」
「3つ!!」「むぎゃー」
「4つ!!」「あぎゃー」

10分ほど、鞭で叩かれる音と、横島の叫び声がひびく。

「はぁ、はぁ、はぁ。と、とりあえず、これくらいで勘弁してあげるわ。今日のところはもう寝るから、明日の朝、皆が起きる頃に起こして頂戴。あ、そうそう。分かってると思うけど、あんたの寝床なんてないから。屋根があるだけマシと思いなさい」
「うぅ。あんなに叩くなんて、くせになったらどうするつもりや」

何か不穏当な事を言われたような気もするが、意図的に無視して着替えを始めるルイズ。ブラウスやらスカートやらを横島へ投げて、

「それと、これの洗濯もしておくこと。授業が始まるまでにやっておけばいいけど、朝食の時までに終わってなかったらご飯抜きだから。じゃあお休み。」

ベッドに横になったルイズが合図をするとランプが消える。

(はぁ。これが美神さんのだったら、洗濯でも何でも喜んでやるのになー。美神さん、おキヌちゃん、シロにタマモ… 必ず俺は、元の世界に帰るからなー)

そう思いながら、横島も眠りについたのだった。


翌日。

魔法学院での朝食の時間もそろそろ、という頃。
昨日の騒動の為、いつもより疲れていたルイズは、未だに眠っていた。
起こすように、と命令されている横島も、未だ夢の中。

「ルイズ、起きてるー? そろそろいかないと、朝食に遅れるわよ?」

そんな二人の目覚まし時計になったのは、ドアの外から聞こえるキュルケの声だった。

「う~ん。今おきる~」

寝ぼけ声で答えるルイズ、そして怒声。

「って、えー 何、もうこんな時間なの!! この寝ボスケ、どうして起こして… って、ご主人様が起きたんだから、あんたもさっさと起きなさい!! 一体何様のつもり!!」
「あ、あんなに疲れてたのに、目覚ましもないんじゃ起きれるわけがあるかー!!」
「それに、朝食までに洗濯すませて無かったらご飯抜きって言ったわよね! どうやら本当にご飯抜きにされたいみたいね!!」
「どうせ起きてたって、こんなぐるぐる巻きの状態で洗濯なんか出来るかー!!」
「うるさい、うるさい、うるさいー 起こさなかったのは事実なんだから、あんた朝食抜き! 授業までに戻ってこなかったら、昼食も抜きにするからね!!」

使い魔自慢をしようと思っていたキュルケだったが、今扉を開けてこの騒動に巻き込まれるのは馬鹿らしいわね、と思いなおしたようだ。

「ルイズ、先に行ってるわよ? 後でゆっくり私の使い魔見せてあげるから、楽しみにしててねー」

使い魔の不手際に対して怒鳴るルイズの声と、それにただひたすら謝るだけの男の声を聞きながら、キュルケは彼女の使い魔であるサラマンダー、フレイムを連れて朝食へ向ったのだった。

それから5分後。洗濯籠を持った横島が、とぼとぼと寮の外を歩いている。

「は、腹減ったなぁ… 霊力もフルに使ったのにこれじゃあ、この先持たないぞ…
お! この草、何か齧った後があるぞ。こ、これなら食っても死なん…よな?」

そう少し涎をたらしながら、庭の端っこの方に生えていた草を摘み始めたところ、

「あ、あのう。すみません、どちら様でしょうか? ここはトリステイン魔法学院と言って、関係者以外は立ち入り禁止となっているのですけれども…」

後ろから、若い女の子の声で話しかけられた。その声に、ビクッと身体を震わし、ゆっくりと振り向きながら

「あ、怪しいものじゃないっすよ! ちょっとこの草食べられな… じゃなくて」

声をかけてきた女の子が、巷では「メイド」と呼ばれる格好をした、日本人っぽい顔立ちの可愛い子である事を確認した横島は、稀に見せるシリアス顔で自己紹介を始める。

「初めまして、可愛いお嬢さん。僕は横島忠夫といいます。本当はGSなんですけど、故あって今はミス・ヴァリエールの使い魔なんてものをやっております。
ここで会ったのも何かの縁。ささ、ちょうどそこに、座って休むにぴったりの木陰もありますし、僕と愛の語らいをしませんか?」

そうは言うものの、横島の格好はルイズの躾でボロボロになったかなり変わった服である。さらに、左手には女物の衣服が入った洗濯籠、右手にはどこからどうみてのただの雑草が握られている。はっきりいって、あんまり関わり合いになりたい手合いではない。

「み、ミス・ヴァリエールの使い魔さんですか?」
(人間の使い魔さんって聞いた事ないですけど、やっぱり使い魔になるような人はちょっと変わってるんですね)

いくら変人だとは言え、貴族の使い魔だというのであれば無下に扱うわけにもいかない。洗濯籠の中身がまだ未洗濯であることを確認すると、

「え、えーと… あ、もしかして洗濯場をお探しですか? それでしたら、ご案内するくらいならば出来ますが…」

と言葉を繋ぐ。その言葉に、

(お、もしかして脈有り? やっぱゲームならこういう展開ないと嘘だよなー)

と一人勝手に納得している男。

「あ、そうそう。そうなんだよ。ちょっとこの洗濯物頼まれちゃってね。頼れる男って辛いねー」
「そ、そうなんですかー」

乾いた笑いで答えるメイド。こんな場面を他の人に見られたら… と思うと、自然と足も速くなる。そうこうしているうちに洗濯場に到着し…

「この前までいた所なんてね、もうすごかったんだから。」
「あ、ここが洗濯場になります。えーと、ここにある物は自由に使っていただいて構いません。後… い、一応何か他に分からない事とかあります?」
「あ、ここがそうなんだ。ありがとう、助かったよ。そういえば君の名前まだ聞いてなかったよね。何ていうの?」
「ど、どうやら特にないみたいですね。私はお仕事がありますのでこれで」

そういって、わき目も降らずに駆け出して言ってしまうメイドの女の子を見て

(初々しくてかわいいなー ああいう子がいるんだったら、ここの生活も少しはいいかな?)

と、腹が減っている事も忘れて、メイドが立ち去っていった方向をしばらく見続けていた横島だった。


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