あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

零の謳姫 第一話

―Rrha ki ra tie yor ini en nha― 【ここにおいで(貴方を拘束しここにイニシャライズして入れます)】

トリステイン魔法学院の恒例行事、春の使い魔召喚の儀式は万事滞り無く進み、最後の一人を残す
のみとなっている。
その最後の一人である、桃色がかったブロンドの少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
は、必死に涙を堪えていた。

入学以来、いや、幼い頃から魔法が成功した例(ためし)は一度も無く、結果は常に爆発。
その所為で、クラスメイトからは「『ゼロ』のルイズ」と不名誉な二つ名で呼ばれる始末。
そんな彼女にとってこの使い魔召喚の儀式は、自分が『ゼロ』では無いことを示せるかもしれない最後の
機会だった。
しかし。
目の前には失敗魔法の爆発によって出来た穴、穴、穴……
その数は既に数十個。
その様を眺めているクラスメイトの、嘲笑の視線が背中に突き刺さる。

それでも尚、杖を振ろうとするルイズを見かね、禿頭の教師が彼女の肩を抑えた。
「ミス・ヴァリエール、もう良いでしょう。今日はここ迄になさい」
その声音はあくまでも優しく、しかしそれ故にルイズを意固地にさせる。
「……嫌です……」
コルベールとて、ルイズがどんな思いでこの使い魔召喚の儀式に臨んでいるかは十分理解しているつもりだ。
「しかし……」
だからと言って、彼女の気が済むまでやらせてやるわけにもいかない。
「お願いします、ミスタ・コルベール!後一回、後一回だけやらせてください!!これで駄目だったら、
退学でも構いません!!だから…………」
「仕方ありませんな、ミス・ヴァリエール。ただし、本当にこれが最後ですぞ」
故に、それが彼に出来る最大限の譲歩だった。
「……はい!」

眦に溜まった涙をブラウスの袖で拭い、ルイズは瞼を閉じ、静かに杖を構える。
周囲の雑音も、今は耳に入らない。
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!
私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!!!」
呪文を唱え、杖を大きく振りかぶり――――


―Wee ki ra parge yor ar ciel― 【全てを脱して(一つの世界から貴方を切り離す)】

「イイコトなんて、何一つ無かったけど」

私の帰郷に同行すると言った彼を、冗談半分で
「帰ってこれる保証は無いわよ?」
と脅かしてみたら、
「いいさ、君が側にいてくれさえすれば」
なんて、寒気がするほどクサイ台詞に続けて、
「俺も、君が生まれた場所を見てみたい」
などと返すものだから、ワザと自嘲気味に口の端を歪めて答えてやる。

実際、私にとって“そこ”は、ニンゲンと世界に対する憎悪と、私が犯した“罪”への悔恨しか存在しない
場所……の筈だった。
かつては、そう思っていた。思い込もうとしていた。
だけど……

「それでも、帰りたいんだろ?」
私の心を見透かすように呟く彼の言葉に、
「……そうね」
思わず本音が漏れてしまう。
あぁ、そうだ。それでもあそこは、私の……愛する“故郷(ふるさと)”なのだ、と。

そんな私を優しく見つめ、
「それなら、行こう」 
微笑んで、彼が差し出した手を、
「そんなことしなくても迷子になったりしないわ。何処かの塔管理者(かみさま)じゃあるまいし」
あえて無視し、彼を背にして歩き出す。
背後から感じる、諦め半分、落胆半分のため息に、素直に手を繋いでやるべきだったかと、幾許かの
後悔が胸を過った。

それにしても……
この私が、こともあろうに「男連れ」での帰郷だなんて、アイツらが見たらどんな顔をすることやら。
あの“自称16歳”が、ニヤニヤしながら生温かい目で見つめてくるのは確実だ。
まぁ、あの子は素直に、アイツは何も考えずに、各々祝福してくれそうではあるけれど、それはそれで、
なにか気恥ずかしい物が無いでもない。
だが、その気恥ずかしさは決して不快ではなく、むしろ心地好い幸福感を与えてくれる。

…………
つい物思いに没頭して、我知らず歩みを早めてしまったらしい。
気が付くと遥か後ろ、雑踏の向こうから彼が私を呼んでいる。

まったく、私らしくもない……と呆れつつ、
彼の元に駆け寄ろうと、
踵を返した―――

―Was yea ra chs mea yor en fwal― 【私はあなたの全部を受け入れるから(貴方は私になる翼をもって)】

ルイズは、

杖を

振り下ろした――――

―Ma ki ga ks maya yor syec― 【怖がらないでその身を委ねて(貴方の深いところに魔法を掛けます)】

私の

目の前に、

“鏡”が――――



    零の謳姫
          第一話



今迄で一際大きな爆発が起こり、砂煙が濛々と立ち込める。
服や髪についた砂埃を払うのも忘れ、ルイズは爆発の中心を見つめ、祈る。
(始祖ブリミルよお願いします。ドラゴンやグリフォンだなんて贅沢は言いません、犬や猫だって構いません。
どうか私に使い魔をお与え下さい……でも、カエルだけはお許しください)
やがて砂煙が薄れ、中から現れたのは……

「女の……子?」
背格好はルイズとほぼ同じ。
太腿までを覆うブーツも、肩当てと一体化した長手袋も黒。
起伏に乏しい―よく言えばスレンダーな―肢体を包む、微妙に扇情的なエナメル地のビスチェと、
サイドが完全に紐状になった、ビスチェと同じ材質のショーツも黒。
眉の上で前髪を適当に切り落とした、長く艶やかな髪も黒。
そんな黒一色の中で、肌の透ける様な白、勝気そうな瞳の藤色、髪に巻きつけたリボンと肩当てから
突き出た突起の先端部、ビスチェに走るラインの赤が、鮮やかなコントラストを見せている
自分の身に起きた事態を把握しきれずにいるのか、呆気にとられた表情をしているが、すっきりと整った
顔立ちは、百人中百人が、彼女を美少女と評するに違いない。
とは言え、これはどう見ても……
ルイズが受け入れがたい現実に苦悩していると。

「平民だ、『ゼロ』のルイズが平民を召喚したぞ!」
「流石はルイズ、俺達には出来ないことをやってのける!」
彼女らを遠巻きに見ているクラスメイトからドッと失笑が湧いた。
「それにしても、なんて格好だよアレ」
「どこの酒場から踊り子を攫ってきたんだよ、『ゼロ』のルイズ!」
確かに少女の格好は、チクトンネ街界隈の場末の酒場か旅芸人一座で、扇情的な音楽に合わせて
肌も露わな衣装で艶かしく身をくねらす踊り子に見えなくもない。
「って言うかアレってさあ……ウッ」
更にいかがわしい稼業を想像したのか、男子の中には、鼻血をこらえている者、果てには
「そ、そのヒールで踏みつけながら、ぼ、僕を『この汚らわしい豚がッ!』って罵ってくれぇ!」
と息を荒げて、絶叫する者――仮にその名を、マリコルヌ・ド・グランドプレとでもしておこう――までいる始末だ。
――この際、彼らが何故そんなものを知っているかとの理由は不問にするとしよう。――

「ミスタ・コルベール!召喚のやり直しを!」
「ミス・ヴァリエール。残念ながら、例外は認められない。春の使い魔召喚の儀式は全てにおいて優先する
神聖なものなのですぞ。」
当然のことながら、ルイズの訴えは却下された。
「でもっ」
それでも喰い下がろうとするルイズに、コルベールは「よいですか」と言い聞かせる。
「失敗を繰り返して漸く召喚できたのに、契約を行わないのであるなら、良くて留年、事によっては本当に
退学と言う事にもなりかねませんぞ?」
「う……」
先程はああ啖呵を切っては見せたが、ルイズとて退学は本意ではない。
覚悟を決め、頭を軽く振って、こちらに訝しげな目を向けている少女に近づき、
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、五つの力を司るペンタゴン。
この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」
ルイズは口付けた。

(女同士なんだから、ノーカンよ、ノーカン!)
心の中で呟きながら。

「…………!?」
いきなり見知らぬ相手に唇を奪われた怒りか羞恥か、その両方共か、漸く我に返った少女の頬が
朱に染まる。
少女は、ルイズを突き飛ばしながら身を離すと、両手を頭上に掲げ、
「…………ッ!!」
いきなりくず折れ、左手を押え、蹲った。
「……すぐ終わるから安心なさい。『使い魔のルーン』が刻まれてるだけだから」
突き飛ばされた勢いで尻餅を搗いていたルイズは、起き上がってスカートの裾を叩くと、少女を見下ろし、
――突き飛ばされた恨みもあってか――いささか冷淡に宣告する。
「…………」
その言葉が理解できているのかどうか、少女はルイズを睨みつけると、そのまま意識を失った。

「失礼……」
コルベールは少女に近寄ると、彼女の左手の手袋を外し、
「『コントラクト・サーバント』の方は一回で成功したようですね、ミス・ヴァリエール。しかし、このルーンは……」
手の甲にルーンが刻まれているのを確認すると、それをメモ帳にスケッチした。
そして生徒達に向き直り、宣言する。
「これで、春の使い魔召喚は終了しました。皆さん教室に戻りなさい」
コルベールの宣言とともに、生徒達が次々と飛び立っていく。
「ルイズ、お前は歩いて来いよ!」
「あいつ『フライ』はおろか『レビテーション』さえ出来ないんだぜ!」
野次を飛ばす生徒にルイズが投げつけた小石は、虚しく空を切った。
………………
…………
……
先程までの喧騒は嘘のように消え、草原にはルイズとコルベール、そして気絶した少女だけが残される。

ルイズは、暫らくはクラスメイトが飛んでいった方向に向けて小石を投げたり怒鳴ったりしていたが、やがて
それにも疲れたのか、ゼエゼエと肩で息をしていた。
「落ち着きましたか?ミス・ヴァリエール」
「あ……はい、」
そこに、第三者の声が割って入る。
「まったく、ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー、五月蝿いったらありゃしない。お里が知れるわよ?お嬢ちゃん」
決して大きくはないが、その澄んだ声は、草原全体に響くかのようだった。
「なんですって!……って、えっ!?」
怒鳴り返そうとして、今の声の主が誰であるかに気付いたルイズが視線を向けると、目を覚ました少女が
少しふらつきながらも立ち上がり、こちらを睨んでいた。
「……まぁそんな事はどうでもいいんだけど。そこの貴方達。ここはどこで、これは一体どういう事なのか、
説明してもらえるかしら?」
あからさまな詰問口調で、少女はルイズ達に詰め寄り、ルーンが刻まれた左手を突きつける。
「あなたねえ……「お止しなさい、ミス・ヴァリエール」
“ご主人様”に対し不遜な態度の少女を咎めようとするルイズを制し、
「宜しいでしょう。しかし、ここでは落ち着いて話も出来ますまい……ミス・ヴァリエール、本日は特別に
この後の授業を免除します。彼女を学院に案内し、この学院や、使い魔のことについて教えてさしあげ
なさい」
コルベールは二人に促した。

不承不承、ルイズはコルベールに従う。
「わかりました、ミスタ・コルベール……っと、その前に……」
あらためて少女を一瞥し、ルイズはマントを脱いで彼女に押し付けた。
「なにかしら?」
「あなたねぇ、そんな格好で学院内を歩き回るつもり?取り敢えずは、これで隠しときなさいよ」
自分の体を見下ろした少女は、
「必要ないわ。見られて恥ずかしい体してないもの」
にべも無くルイズの提案を拒否したが、
「あなたが恥ずかしくなくても、こっちが気にするのよ!」
ルイズの剣幕にあきれたのか、渋々とマントを受け取り、
「面倒ね……まあ、これはこれで、チラリズムがマニアックかも」
ニヤリと笑みを浮かべた。
「あのねぇ……あっ」
少女との会話に脱力しかけていたルイズは、肝心な事を訊ね忘れていたのに気付く。
「そう言えばまだ、名前を聞いていなかったわよね。私はルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・
ド・ラ・ヴァリエール。あなたは?」
マントを羽織りながら、少女は暫し思案し、答えた。

「…………蛇刳(ジャクリ)」


零の謳姫 第一話 了


――幕間――

ルイズと少女―ジャクリ―の遣り取りが一段落したのを確認し、コルベールは、先程ルーンをスケッチした
メモに目を落とす。

彼女に刻まれたルーンは“二つ”。
片方のルーンは、実物は初めてだが、ルーン自体は図書館の蔵書で見たような覚えがある。
そしてもう片方のルーン。
円弧と放射状の線、それに水平線と鉛直線を組み合わせた、波紋を図案化したような文様の連なり。
こんなルーンは20年の教師生活で、文献ですら見たことが無かった。
いや、そもそも“一体”の使い魔に複数のルーンが刻まれる事自体ありえない筈だ。

(……ミス・ヴァリエールが召喚した彼女は、本当に“ただの平民”なのでしょうか……)

ルーンをスケッチすると同時に、念の為にかけた『ディテクト・マジック』は、――彼女の下腹部に、ルーン
とは別に紋章の様な形の痣が存在するのを感知はしたが、――明らかにジャクリが“平民”であると示して
いたと言うのに。

コルベールは、そんな不安をどうしても拭い去ることが出来なかった。

――もしコルベールがスケッチをジャクリに見せていたなら、彼女はそこに、ある言葉を見出していたに
違いない――もっとも、ルーンを自らの目で見て尚、その事実を口にしなかった彼女が、コルベールに
それを伝えることはしなかっただろうが。

その言葉は、彼女を彼女たらしめるもの。
その言葉は、彼女の本質。
その言葉は――

MULE_TEIWAZ_ARTONELICO

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