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ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第九話(後編)


 ルイズ達が退室し、足音が十分に遠ざかるのを確認すると、オスマンは静留のほうに向き直った。

 「さて、それで何を聞きたいのじゃな、ミス・フジノ? 遠慮せずに何でも聞くがいい、儂が答えられる範囲で答えよう」
 「そうどすな。まず、あの『破壊の杖』やけど……あれはうちが元いた世界の軍隊で使われとる武器や」

 その言葉を聞いたオスマンの目が鋭く光る。

 「コルベール君から君は他の世界からミス・ヴァリエールに召喚されたと聞いていたがなるほどのう……で、『破壊の杖』が君の世界のものだというのは確かかね?」
 「えらい旧式やけど、間違いありまへん。学院長はん、あれはどこで手に入れはったんどすか?」

 オスマンはため息をつくと、どこか遠くを見るような目をして話し始めた。

 「今から三十年前ぐらいのことじゃ。儂は森を散策中、ワイバーンに襲われてな。そこを救ってくれた男の持ち物じゃった」
 「そのお人は?」
 「死んでしもうた。背中に大怪我を負っていてのう。すぐに学院に連れ帰り、手厚く看護したのじゃが、その甲斐なく……今際の際に『元の世界郷に帰りたい』と言ってなくなった。儂は彼が残した物を『破壊の杖』と名づけ、恩人の形見として宝物庫にしまい込んだのじゃよ。おそらく彼は君の世界の人間だったのだろう」

 話し終えると、オスマンは苦渋に満ちた表情を浮かべた。

 「誰がそのお人をこの世界に喚び出したんやろか?」
 「それは分からん。色々と調べてみたが彼がどうやってこの世界にきたのか、最後まで分からんかった……すまんのう、元の世界に戻る役には立ちそうもない話で」

 オスマンはすまなそうに答えるが、静留は気にせず話を続ける。

「いえいえ、どうせうちは元の世界に戻る気はあらしまへんから。それより聞きたいんはこの左手の使い魔のルーンのことや。『破壊の杖』を手にした瞬間に光って、使い方とかの情報が頭に流れ込んで来たんやけど……」

 静留の問いにオスマンはどうしたものかと逡巡した後、口を開いた。

 「これなら知っておる。これは伝説の使い魔の印ガンダールヴの印じゃよ。始祖ブリミルに仕えし伝説の使い魔でな、ありとあらゆる『武器』を使いこなしたといわれとる」
 「へえ、 そうなんどすか。うちやルイズ様に害があったら困ると思うたけど、余計な心配だったみたいやね。ほな、うちは帰ります。長居してすいませんどしたな」

 静留はそう言うと、学院長室から出て行った。

 「しかし、元の世界に帰る気はないか……よっぽど嫌なことでもあったんかのう」

 オスマンは静留が出て行ったドアを見つめながら、深いため息をついた。


 数時間後、アルヴィーズの食堂の上にある大きなホールで『フリッグの舞踏会』が盛大に執り行われた。
 『破壊の杖』を土くれのフーケから奪還してきたということもあり、皆の注目はキュルケ、タバサ、ルイズの三人に集まっていた。とりわけルイズは、その使い魔の活躍が杖の奪還に大きく貢献したという話が参加者の間に広まり、その話題の中心となっていた。

 だが、当の本人であるルイズは、キュルケが沢山の男子生徒やお姉さまと呼び慕う下級生の女生徒に囲まれて談笑し、タバサが近寄ってくる連中を無視してテーブルにある豪華な料理を凄い勢いで平らげて舞踏会をそれなりに楽しんでいるのとは対照的に、すこぶる機嫌が悪かった。
 どれくらい悪いかというとダンスを誘いにきた男子生徒が顔を引きつらせて逃げ帰るほどだ。実際、一人壁際に立って『私は不機嫌です』というオーラを発しているのだから無理もない。

 「ミス・ヴァリエール、どうかしましたか?」

 その様子が気になったのか、給仕をしていたシエスタがルイズに恐る恐る声をかける。

 「ああ、別に大丈夫よ、シエスタ。それより貴女、シズルをしらない? 着替えに行ったまま帰ってこないのよ。主人の私をほったらかしてどこで油売ってんだか」

 ムッとした表情で文句を言うルイズをシエスタは物珍しそうに見た後、くすくすと笑いながらルイズの問いに答える。

 「えっと、シズルお姉……シズルさんでしたらもうすぐ来ると思いますよ」

 シエスタがそう言うと、急にホールの入り口の方がざわわざと騒がしくなる。

 「誰かゲストでも来たのかしら? 随分と騒がしいわね」

 ルイズが眉をひそめて入り口の方へと視線を向けると、入り口の人の群れを掻き分けるようにして静留が姿を現した。

 「遅れてすいまへん、ルイズ様。思うたより着替えに手間どってしもうて」

 ルイズは駆け寄ってきた静留をまじまじと見つめた後、ぽかんとした表情で確認するように呟く。

 「シズル……よね?」

 ルイズが驚くのも無理もない。静留の格好が髪を編み上げ、白いタキシード(に似た服)を着込んだ男装姿だったからだ。

 「シエスタさんが支度してくれはったんやけど……似合いまへんか?」
 「そんなことないわ、ただいつもと違うから少し驚いただけよ」

 上目づかいで尋ねる静留の言葉をルイズは否定すると、赤くなった顔を見られないようにそっぽを向く。

 (なによ、ドレス着た私より綺麗じゃない)

 そうルイズが心の中で呟くほど、静留の男装は似合っていた。
 まるであつらえたような白いタキシード姿は凛々しく、髪を編み上げてあらわになったうなじの艶やかさと相まって中性的な魅力を醸し出している。
 その静留とドレスアップしたルイズと並んだ様子はまるで姫と騎士のようで、周囲の生徒達から羨望の眼差しを集めていた。

 「なんや妙な雰囲気どすなあ……」

 静留は周囲の様子に苦笑すると、ルイズの手を取ってホールの中心へと連れていく。

 「……シズル?」
 「折角の舞踏会やのに、一曲も踊らんで壁の華ではつまらんですやろ? うちで良ければお相手しますえ」

 そう言うとルイズに向かって静留は悪戯っぽく微笑んだ。

 「ま、まあ、昼間は助けてもらったし……と、特別に踊ってあげてもいいわよ」
 「ほな、一曲踊っていただけますか、ご主人様」

 頬を染めてぶきっらぼうに答えるルイズの様子に静留は目を細めると、ホールに流れる音楽に合わせて踊り始めた。

 「ねえ、シズル」

 軽やかにステップを踏みながらルイズは静留に話しかける。

 「はい、なんどすか?」
 「……あなた、本当に元の世界に帰りたいとは思わないの?」

 それは昨日の夜、静留の話を聞いてからずっと気になっていたことだ。
 いくら愛する人の隣に自分の居場所がないからといっても、天涯孤独ということでもない限り、彼女にも彼女の心配している家族がいるはずだ。それを投げ出してまで遠い異邦の地で暮らせるものだろうか。
 少なくとも姉想いのルイズにはそんなことは出来ないし、そもそも考えることすら理解の範疇を越えている。

 「昨日も言うたとおり、帰る気はありまへん。向こうにうちの居場所はないんやから」
 「でも、シズルにだって肉親はいるんでしょ? あなたが生きて帰ってくれば喜ぶんじゃないの?」
 「ルイズ様、うちは国を裏で動かしとった一番地の首領を殺した犯人や。実家とも関係あったとこやし、死んどった方が迷惑かからんでええんよ」

 そう静かに微笑んで答える静留の顔をルイズはしばらくじっと見つめた後、諦めたように軽く嘆息して口を開いた。

 「……分かったわ、シズルがそう決めたんならもう何も言わない。その代わり、後で気が変わって帰りたいって言っても絶対帰さないんだからね」
 「心配せんでもそんなん言わしまへんって……ほな、ふつつかもんどすけど改めてよろしゅうに」
 「別に心配なんて……って、ふつつかもんですってのはどういう意味よ」
 「さあ、どういう意味ですやろか♪」

 そんなやり取りをしながら窓から二つの月が見えるホールで静留とルイズはしばし踊り続けた。


 ――同時刻。

 「おーい、置いてくなんてあんまりだぜ。姐さんよう」

 ルイズの部屋に置き忘れられたデルフリンガーが一人(?)寂しくぼやいていた。



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