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ゼロの夢幻竜-24


第二十四話「指輪」

「つまり話を整理すると、変装して私の部屋に入った姫様をギーシュが見ていた。そして、中の話を立ち聞きしている所をモンモランシーに見つかった。と、こういうわけね?」

ギーシュはルイズの問いかけに対しうんうん、と頷く。
ルイズはやれやれといった感じで眼前の二人、ギーシュとモンモランシーを見つめた。
立ち聞きをするギーシュもたいがいだが、そんな彼に対し、なかなかほっとけないという様な姿勢を見せるモンモランシーも良い勝負だった。

「放っておけないんですか?」
「う、五月蝿いわねっ!私はね、こんな時間に女子生徒の部屋の前でうろうろしているのは誰かなって通りがかっただけよ!」

ラティアスの何気ない質問に対して、モンモランシーは真っ赤になって反論する。
ああ、この人もご主人様と似たり寄ったりな人なんだなと、ラティアスは頭の中で勝手に結論づける。

「でも君は!それが僕だと分かると直ぐに来てくれたじゃないか!」
「はぁ?何勘違いしてるのよ!あなただから余計に危なっかしいんじゃない!この節操無し!」

ギーシュは縒りを戻しでもしたいのか、構ってくれと言わんばかりのオーラを放つ。
が、そんな物が今のモンモランシーに効く筈も無くあっという間に一蹴された。
彼女だって、彼がこんなに浮気性でなければ色々と考えてやれんでもないと考えていた。
が、その酷さは数日前に起きた香水の一件で、すっかり白日の下に晒されている。
その為にモンモランシーは、ラティアスに口では乱暴な事を言いつつも、内心では感謝していた。
そしてラティアスは、目の前で起きている痴話喧嘩に溜め息を吐きつつ思う。
この分ではどうやら、二人が結ばれる道程はここから月への道程ほどになりそうだ。

「二人とも!姫様の御前よ!私語は慎みなさい!」

弛みきったその場の空気を引き締める為に、ルイズはぴしゃりと言った。
ルイズが二人ともと言ったという事は、自分は入っていない。
と言う事は少なくとも、自分は置いてけぼりにされていないという事にラティアスは気を良くした。
ラティアスは困った様な声でアンリエッタに話しかける。

「どうしますか、王女様。この二人、さっきの話を立ち聞きしたそうですけど、どうします?」
「そうね……今の話を聞かれたのは不味いわね……」
「因みにあんた達は一体どの辺りから話を聞いていたの?」

ルイズの質問に答えたのはギーシュだ。

「確か……破滅の一途を辿らせる手紙だとか、アルビオンのウェールズ皇太子だとかの辺りからだが?」

その正直な答えにルイズは瞠目する。
何て事だ。それでは話の肝心な所は、ばっちり全部聞こえていたという事ではないか。
これでは何の隠し立てのしようも無い。
恐らくは隣でぶすっとした表情を浮かべているモンモランシーも同様だろう。

「今更引き取ってくれって言うのは難しいですし、かと言って、この任務に巻き込むのも……」


ラティアスはそう言って値踏みするような目で二人を見た。
ギーシュに関しては、例の決闘を参考にしたので力量は大方分かっていた。
包み隠さず言えば、七体の脆い青銅ゴーレムしか操れないドットメイジの彼が戦力に加わったとて、大きな変化がある訳ではない。
平民の傭兵や野盗相手にならどうという事は無いが、道中でお相手するのは彼と同じメイジ、それも大半、いや全員が彼以上の力量を持った者達なのだ。
ハッタリをかます位の所業が精一杯だろう。
モンモランシーに関しては未知数とも言える。
ラティアスも見る事が出来る野外における授業(そもそも野外授業の数自体がかなり少ない)でも、彼女はあまり魔法を見せた事が無いし、見せる事があってもかなり小規模な物に限定されていたからだ。
使い魔召喚の儀において蛙を召喚していた事から、水系統のメイジだという事は分かっていたがそれきりである。
また、水系統は攻撃用の魔法と回復用の魔法の二つを操れる事を、ルイズから伝え聞いていた。
それらを纏めて考えるなら前衛は使い魔である自分が務めればいい。
魔法使いには呪文詠唱が必要なのでいい時間稼ぎになるからだ。
攻撃にはギーシュの武器を持った『ワルキューレ』、ルイズが持ち得る魔法を使って対応する。
後衛兼補助としてモンモランシーが回復と攻撃に務める。
戦闘態勢としては一応様にはなっているが、如何せん火力の小ささが否めない。
想定するだけ無駄だったか?
そんな時、ギーシュが立ち上がって仰々しく言った。

「姫殿下!その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せ付け下さい!」

その様子を見てモンモランシーは眉を顰めた。

「あんたって人は……今度は姫殿下にまで色目を使うつもり?!」
「ば、馬鹿な事を言わないでおくれよ、モンモランシー!僕は純粋に姫殿下のお役に立ちたいと思ってるんだ!それに今のままでは僕自身の誇りに傷が付いたままじゃないか!その回復の為にも、僕はこの任務に同行しようと思っているんだよ!」
「どうだか……」

ギーシュの熱弁にも関わらず、モンモランシーはすっかり冷えた視線をあさっての方向に向けている。
と、ギーシュの口上を聞いていたアンリエッタが彼に質問を投げかけた。

「グラモン?あのグラモン元帥の?」
「息子で御座います。姫殿下。」

ギーシュは恭しく一礼して胸を張る。
アンリエッタはそんな彼を見て期待を込めて尋ねる。

「あなたも私の力になってくれるというのですか?」
「この部屋の戸口において、事の次第を聞きし時からそう思っておりました。この上任務の一員に加えていただけるなら、それはもう望外の幸せでございます。」
「まあ……有り難う。お父様も立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようですね。ではお願いしますわ。この不幸な姫をお助け下さい、ギーシュさん。」
「勿論ですとも。ああ、姫殿下が僕の名前を呼んで下さった!姫殿下が!トリステインの可憐な花、薔薇の微笑みが……」

ギーシュは最後まで言う事が出来なかった。
横のモンモランシーが聞いていられないとばかりに、ギーシュの後頭部を叩いたからである。
叩かれた所を摩りながらギーシュは涙ながらに言った。

「痛いじゃないか、モンモランシー!」
「ふん。やっぱり色目使ってるんじゃない。」

モンモランシーは呆れて物も言えないという様に溜め息を吐く。
と、そこに王女の声がかかる。

「あなたは?」
「はい。私はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシと申します。」
「モンモランシ家……するとあなたのご実家は、トリステイン王家と旧い盟約を結んだ水の精霊との交渉役を行っているというあの……」
「申し訳御座いません、姫殿下。現在それは別の貴族が務めております。」
「それでも古来より王家に使えてきた由緒正しい名家の一つに違いはありませんわ。あなたは力を貸して下さいますの?」


そう言われてモンモランシーは自国の王女の前にいるにも拘らず、「あー」とか「うー」とか言いつつ返事を若干延ばす。
彼女は面倒な事には首を突っ込みたくない質だったし、正直とばっちりを受けた感もあった。
だが隣で、紅潮しつつも澄ました顔をして立っているギーシュを見て意を決した様に答えた。

「微力では御座いますがお役に立てる事が出来るなら……先程の任務、ご同行いたします。」
「有り難う。あなたの力もきっと道中で仲間を救うでしょう。お願いします……」

アンリエッタはモンモランシーに向かって儚げに微笑む。
そこへギーシュが歓喜の言葉を突っ込んできた。

「来てくれるのかい、モンモランシー!ああ、君の永久の奉仕者としてこれほど嬉しい事は無いよ!」
「勘違いしないでよ、ギーシュ。私はあくまでもついて行くだけですからね。お目付け役みたいな私がいないと、あんた何をしでかすか分かったものじゃないし。」

釘を刺す様に言うモンモランシーだが、ギーシュはそんな事はお構い無しとばかりに嬉しがっている。
そんな二人を余所にルイズは真剣な声で言った。

「では、明日の朝、アルビオンに向かって出発する事に致します。」

その言葉にギーシュとモンモランシーは驚いた。

「明日の朝だって?!学校はどうするんだよ!せめて2~3日休みが出来る時でなきゃ……」
「それじゃ遅いのよ!この任務が一刻を争う事態だってのは聞いてたんでしょ?明日の朝出る。これ絶対。良いわね?……姫様もそれで宜しいですね?」
「分かりました。情報によるとウェールズ皇太子はアルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及んでいます。」
「了解しました。アルビオンへは以前姉達と旅行に行った事があるので、地理で迷うといった事は無いと思います。」
「そうですか。念の為に。旅は危険に満ちています。アルビオンの貴族達はあなた方の目的を知り次第、ありとあらゆる手を使って妨害してくるでしょう。」

それからアンリエッタはルイズの羽ペンと羊皮紙を使い、軽やかに手紙をしたためる。
直ぐに手紙は書き終わったようだが、彼女はそれをじっと見つめていた。
やがて悲しそうに首を振るのを見たラティアスは薄ぼんやりと判断する。
誰にも見られてはいけない手紙の内容。
そして先程の表情を合わせて考えると、書いてあった事というのは恐らく……

「姫様、どうかなさいましたか?」
「え?ああ、何でもありません。」


王女の様子を怪訝に思ったルイズは声をかける。
しかしアンリエッタは顔を少し赤らめただけだった。
アンリエッタは何かを吹っ切るかの如く一回頷き、末尾に何か一言書き加えた後に小さな声で呟く。

「始祖ブリミルよ。この自分勝手な姫をお許し下さい。でも国を憂いていても、私はやはりこの一文を書かざるを得ないのです。自分の気持ちに嘘を吐く事は出来ないのです。」

ホント、自分勝手よねぇ、という一文がラティアスの喉まで出かかったが、そこは流石に精神感応が出来る動物。必死になって抑えた。
そしてアンリエッタの呟きはラティアスの考えを確たる物にした。
アンリエッタが書いた手紙の内容というのは、ほぼ間違い無くウェールズ皇太子への恋慕の思いだろう。
ゲルマニアの皇帝が憤るというのは、幾ら恋愛だけで済んだとはいえ、また一国の王女とはいえ、不義の女性を娶るわけにはいかないからだ。
アンリエッタは羊皮紙を巻き、携帯していた杖を振った。
すると手紙に封蝋がなされ、次いで花押が押される。こうなれば完璧な密書の完成である。
ルイズは密書を手渡しで受け取ったが、その際アンリエッタから説明を受けた。

「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡して下さい。確認が取れ次第、件の手紙を渡してくれるでしょう。」

それからアンリエッタは右手の薬指から指輪を引き抜き、ルイズに手渡した。
暗紫色に妖しく輝くそれは見る者を引き付けて離さない魅力がある。

「母君から頂いた『水のルビー』です。せめてものお守りです。お金が心配なら売り払って旅の資金に当てて下さい。」
「そんな!そのような大事な物を易々と使うわけにはいきません!」

ルイズは案の定抗弁する。
ラティアスにしてみれば、アンリエッタは指輪を手放す気など無いのではないかとさえ思えた。
何故か。売り払って旅の資金にしていいとまで言うのなら、指輪の由来を語って情を入れさせる必要は無いからだ。持っている本人が使いにくくなってしまう。
それに、売っていいほどまだ安価なやつならまだあるだろうし。
だが、アンリエッタは首を振って続ける。

「よいのです。どうか気になさらないで。この任務にはトリステインの未来がかかっているのですから。私も母君の指輪が、アルビオンに吹く猛き風からあなた方を守るよう祈りますわ。」

トリステインの未来……と、アンリエッタは言う。
だがラティアスはこの一晩で未来の平安が、かなり危うく、そして脆い土台の上に乗っている物と痛感したのだった。


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