あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのMASTER-11


真っ暗闇の部屋に蝋燭が灯された。幾分明るくなったとは言え、それでもまだ暗い。
大男はそれも構わず、テーブルの上に置かれた袋に手を伸ばすと中身の金貨を数え始める。

「おぉ、おぉ。相も変わらず、旦那は金払いがいいねえ。
最近は旦那ほど太っ腹な人間がいないからな。あんたもそう思うだろ?姉ちゃん」

男が下卑た笑みを浮かべながら、フーケの方を見る。初対面であるにも関わらず、この馴れ馴れしさ。この下品さ。嫌悪感に満ちた表情をしながらフーケは答えた。

「あんたのやり口は聞いてるわよ。火薬使いですって?
要人を何十人も吹き飛ばしたって、悪名高いドレさんじゃない」

嫌味たっぷりに言うフーケ。だが、ドレと呼ばれた男は相も変わらず薄笑いを浮かべている。

「連中を腐るほど殺した所で、拍手されこそすれ、非難はされねえよ。
"そういったこと"を望んでいる奴らなんざ、掃いて捨てるほどいるからな。
あの旦那もそうなんじゃねえのかい。え、『土くれ』のフーケさんよ」
「気安く呼ばないで。あんただって…」
「俺が?なんだい?予め言っとくが、"ドレ"は…そうだな。
あだ名みてえなもんだ。出来る奴ってのは、隠し事が多いからな。
だから、あんたも旦那も俺と同じってえことさ」

ドレはそう言うと、さも満足したようにワインを飲む。言っていることは、あながち間違いとも言えない。
実際、表ざたにはなることは少ないが、貴族と平民の対立は根深いものがある。
フーケもそこの所は理解してはいるものの、ドレの言い方にイラついていた。
一々、癇に障る物言いをする奴だ。
それでも「あの男」が依頼するからには仕方が無い。自分には、そうするしかないのだから。

「…で、俺が狙う奴って、どんな野郎だい。貴族か?貴族なら、ドカーンと派手にやるがね」
「トリステイン魔法学院って知ってる?」
「知ってるも何も、貴族の坊ちゃん嬢ちゃんが学んでる所じゃねえか」
「そこにヴァリエール家の娘がいる。その娘の"使い魔"をヤれってことよ」
「使い魔だぁ?」

ドレは怪訝な顔をした。貴族でもなければ、平民でもない。
使い魔だと?魔物の類でも殺せと言うことか。

「俺はハンターじゃねえが」
「聞きなさい。その使い魔は人間よ。私達にとって邪魔な人間。それで充分じゃない」
ほ、とドレが笑う。
「使い魔が人間たあ珍妙だね。その嬢ちゃんはよほどの天才か、それとも馬鹿かのどっちかだな」

そう言いながらも、内心、ドレは気になっていた。
普通に考えて、メイジが人間を召喚するなどまずありえないはず。
ヴァリエール家については仕事柄、よく耳にしたが。そんなドレを見ながらフーケが口を開く。

「甘く見ないことね。あんたの標的は"ガンダールヴ"よ」
「なに?」

その言葉を聴いたとき、ドレは思わず吹き出してしまった。ガンダールヴだと。
よりにもよって、えらいモノを出してくるものだ。

「ガンダールヴか!こいつはいい!はっは!いやいや、旦那も人が悪いな、まったく!」
「信じないなら、信じないでそれも結構。ただし、油断はしないことね」
「しねぇよ。それよりも、あんた。なんでそいつがガンダールヴだと知ってるんだ?
そいつがあんたを追い詰めたのは、俺も承知してはいるが、別に特別な力を使った訳じゃねえんだろう」

フーケもそのことについては気にはしていた。あの男……キートンは荒っぽい真似が得意そうには見えない。
ガンダールヴの逸話は、それこそ「化け物」と呼ぶにふさわしいものであったが。
もう一つ、依頼についてドレに話さなければならないことを思い出し、フーケは話しかける。

「貴方が気を付けなければならないことが一つ。ヴァリエールの娘には被害を出さないこと」
「なんだって?」

ドレは怪訝な顔でフーケを睨む。
自分の仕事柄、多人数を巻き込むのは充分理解しているはずだろう。
にも拘らず、ヴァリエールの娘だけ標的から外せと言うのは難しいものだ。

「てっきり、嬢ちゃんも巻き込むものだと思っていたがね」
「とにかく、あんたの依頼主からの命令よ。これだけは厳守しなさい」
「わかったよ。それよりも、あんた。嬢ちゃんは外すとして、他のガキ共は大勢巻き込むと思うがね。
偽装とは言え、あの学院で働いていたんだろ。心は痛まねぇのかい?」
「今更…」
「まあ、俺は仕事をするだけだがね。このワインは美味かったよ。じゃあな」

そう言うと、ドレは素早く部屋から出て、夜道を走っていく。
後に残されたフーケは、静かに、ぽつりと呟いた。

「そうよ、今更…。私、は…」


ラーグの曜日。
いつも通りの晴天となった今日、トリステイン魔法学院の生徒達はエマール遺跡の見学授業を行っていた。
主である教員も参加し、かなりの大規模な授業である。
遺跡自体は大きくないものの、太古の建造物や壁画などがあり、生徒達の興味も尽きない。
生徒はグループに分けられることになり、それぞれ教員が引率するというものである。

「それでは皆さん、キートンさんを困らせないように勉強しましょうねー」

ミセス・シュヴルーズが大きな声で言う。一方、隣のキートンの顔はげんなりとしていた。
キートンが引率するのは、ルイズ、キュルケ、タバサ、ギーシュ、マリコルヌの五名。

「押し付けられたかな…これは」

そう呟くキートンを余所に、さっそく三人が一人をからかい、もう一人は静かに本を読み始める。
引率に先立って、キートンは他の教員と共に、遺跡について調査をした。だが、特に目を引くものは見当たらなかった。
この遺跡自体、発見されてからは長く、検証自体も度々行われてきたため、別段珍しいものでもなかったのである。
元の世界に戻るための手がかりが見つけられなかったことは残念だが、引率の仕事はきちんと行わなければならない。

「だから、召喚出来なかったから、そこら辺の傭兵かなんか連れて来たんだろ!」
「キートンは傭兵なんかじゃないわよ!」
「マリコルヌ、君は少し静かにしていたまえ。話がややこしくなって仕方が無い。いいかい、彼は…」
「あーらら、揉めに揉めちゃって。この隙に…」
「キュルケ!!」

ルイズが怒鳴ると、キュルケはぱっとキートンの腕から離れる。
その間にキートンは草を摘み、何かをしていた。草を自分の口にあて、息を吹く。
すると、音色が出てきた。

「草笛だよ。子供の頃に、よく吹いたけど・・・」

マリコルヌが自分にも作ってくれとせがむ。
ギーシュはと言えば、馬鹿馬鹿しいと言いつつも、興味深そうに見ている。
キートンは、草で出来た玩具を次々と作り上げていき、5人に渡すと、いつの間にか、言い争いをしていたのが大人しくなっていった。
草笛で遊んでいると、ルイズが森の方を見ている。かなり深い森の様だが…。

「あの森は?」
「エバンの森よ。危険な動物はいないって話だけど」
そう話していると、マリコルヌが騒ぎ始めた。
「なあ、キートン。森の方にも言ってみようぜ!もっと面白いもの作ってくれよ」

そう言いながら、森の方を指差している。だが、さすがに森まで行くのは不味いだろう。
引率している立場からすると、止めなければならないのが、今のキートンだ。

「森に行くのは止めた方がいいな。迷ってもいけないし、何より行動範囲から出てしまう」
「大丈夫だって!いざって時は、タバサのシルフィードがいるじゃん。なァ、行こうぜ。なぁったら」
「僕も行きたくはないな。虫に刺されるのは御免だ」
「なんだよ、ギーシュ。気取っちゃって!俺は行くからな!」

そう言うが早いか、マリコルヌは森の方へと走り始めた。
遺跡の見学よりも、遊ぶ方に興味を抱くのは歳相応ゆえに仕方の無いことなのだろうが。
ルイズらが止めるのも聞かずに、マリコルヌはさっさと森の中に入っていってしまった。

「仕方が無いな…。皆、彼を探しに行こう。怪我でもしたらいけない」
「僕は遠慮しておくよ」
「あーら、ギーシュ。恐いの?」

そう言われると、ギーシュは顔を真っ赤にして否定する。
とは言え、自分だけ取り残されるのはやはり辛いのか、渋々了承した。
キートンらは森の中へと足を踏み入れる。思った以上に深い森だ。
ルイズが言ったように、危険な動物はいないというのが幸いか。

「マリコルヌー!どこー!?」
「本当にどこ行ったのかしら。まさか、沼にでも落っこちたんじゃないでしょうね…。
あら、キートン。何してるの?」

キュルケがキートンの方を見る。当のキートンは、地面に一々印を付けていた。
見ると、来た方角に向けて、逐一印を付けている。
どうやら、帰るための目印らしい。ルイズも見慣れたものなのか、特に何も言わないが。

「用心深いのね」

キュルケが苦笑しながらそう言うと、キートンは癖の様なものだからと答える。
(どんな癖なのかしら?)
そう思っていると、ギーシュが叫んだ。

「おい!あれ、向こうから走ってくるのってマリコルヌじゃないか?」
「何か、叫んでる」

タバサが呟く。確かに、向こうから走ってくるのはマリコルヌだが、相当に慌てている。
何か凄いものを見た、そんな顔だ。

「み、水…。とりあえず、水をくれよ!」
「あ、こら!それは僕の水筒…。ああぁ、全部飲んだのか、まったく!」

ギーシュの抗議の声を無視して、マリコルヌはキートンの袖を引っ張った。

「キートン!凄いの見つけたんだって!来てくれよ、ほら、早く!!」
「わ、わかったよ。わかったから、そんなに引っ張らないでくれ。破れたら困るから」

ぐいぐいとキートンを引っ張るマリコルヌ。あっという間に茂みの中へと連れて行ってしまった。

「何を見たのかしら?あいつったら、あんなに慌てちゃって」
「さあ?」

そう言いつつ、ルイズ達も追いかける。
この森は、調査があまり進んでいないものの、危険はほとんど無いと言われていたはずなのだが。
とは言え、マリコルヌの慌てぶりが気になって仕方が無い。
もともとそそっかしい奴ではあるが、今回は特に慌てているのだから。

「ほら、あれだよ!」
興奮した様子で指差すマリコルヌ。そして、次に驚くのはキートンの番だった。

「これは……!」

茂みに隠されていた一つの物体。それは戦車であった。
だが、錆びに錆びている上に、戦車自体の損傷も大きい。
さすがにこれでは動かすのも、戦うのも不可能だろう。
攻撃を受けたものなのか、砲塔まわりの損傷部分が特に大きい。
驚いている内に、残りの4人も到着した。彼らも初めて見るものに驚愕しているようだ。

「キートン…。これ、なに?」
「戦車だよ。僕の世界の兵器だ」
「せんしゃ?」

キートンは戦車の上に乗り、車長用キューポラを開く。
「う…!」

中は悲惨の極みだった。白骨化した遺体が車内に転がっている。
ルイズ達に中を見ないように言おうとしたのだが、既にルイズがキートンと同じようにキューポラ付近までよじ登って来ていた。

「ルイズ!見ては駄目だ!!」
「ひっ…!!」

キューポラを覗き込んだルイズが悲鳴を上げる。
しゃれこうべを間近で見てしまったのだから無理も無い。
慌てて、ルイズを戦車から降ろすと、キートンは彼女を落ち着かせる。

「あの中…。何だったの?」
「乗員の遺体があった…。彼女に見せられたものじゃなかったのに、迂闊だったよ」

そう言うとキートンは首を振る。ルイズも俯いてはいるが、ようやく落ち着いたようだ。
遺体と戦車の状態から、相当の年月が経過しているのだろう。
彼らも、自分と同じように、この世界へと呼ばれてきたのだろうか?
だが、それならば『召喚したもの』が存在するはずだ。自分を呼び込んだ、ルイズのように。

「すまないが、彼女を見ていてくれ。僕は戦車の中をもう一度調べてくる」

キュルケ達にそう言い、再びキートンは戦車の上に登っていった。
それぞれのキューポラを開け、中をよく見る。
確認できる乗員の数は約1名。外見、内装から見るに、恐らく戦後世代の戦車だろう。
この類の戦車の操縦には3,4名必要なはずだが、残りの乗員は何処に行ったのだろうか?
見ると、底に袋が落ちている。手にとってみると、中に何やら入っているようだ。

「手帳…?」

袋の中身は手帳だった。状態は意外によく、記述内容もはっきりと見て取れる。
手帳の外装はなかなかで、高価なものなのだろう。

「キートン!何かあった?」

キュルケの声が外から聞こえる。そちらに行くと言い、戦車から出る。
この手帳が、何かの手がかりになるのは間違いないだろう。

「何か見つけたの?」
「手帳を見つけた…。待ってくれ、今、読んでみるから」

そう言い、ページをめくる。丁寧な文字が書き綴ってあった。
これを持っていたのは、戦車長なのだろうか?

「アラビア語だな…、これ」
「アラビア語?」
「僕の世界の言語の一つだよ。ええと…」


――我々の戦車師団に命令が下った。目標は敵イラン石油施設の襲撃、及び破壊だ。だが、今回の作戦は、はっきり言って乗り気じゃあない。
石油施設の破壊自体は、我が軍の戦車にかかれば容易いものだ。問題は、その前だ。
施設の前にはトーチカ郡、そのトーチカの前には湿地帯があるのだ。T-72戦車であの湿地を越えるのは、不可能だ。その重みでまるごと車体が沈んでしまう。
少将が何を考えていらっしゃるのかわからないが、我々は任務をこなすだけだ。サイードとハキムの二人は若いからか、楽天的に見ている。せめて、敵弾が我々の方に来ないことを祈りたい――

――何が起きたのかはわからない。だが、ここが戦場ではないことは確かなようだ。敵の攻撃を受けた際に、ハキムは即死。
サイードは重傷を負っていたが、先程死亡した。私も負傷しており、恐らく長くは無いだろう。
見慣れない土地で、自分達が誰にも知られないまま死んでいくことが何よりも無念だ。バクダードに戻りたい――


手帳の記述はここで途切れている。あとは、血の跡が紙にこびり付いていてよく見えない。
読み終えて、5人の表情を見てみると、一様に暗い顔をしていた。
特に、遺体を間近で見てしまったルイズは黙りこくっている。

「キートン」

そんな中、タバサが声を上げる。
見ると、一点を指差している。その先には茂みが見えるだけだが。

「来て」

そう言うと、彼女は茂みの中へと入っていく。
キートンらも同じように入って行った先には、土を盛った墓の様なものがあった。
そして、その前には恐らく乗員だろう白骨化した遺体も散乱していた。

「たぶん、この兵器に乗ってた人が…、作ってあげたお墓じゃないかな。一人を埋めてあげた後に、自分も…」

キートンが静かに呟く。この人達は、どのような思いで死んでいったのだろうか?
見慣れない土地で、誰の助けも得られずに死んでいったのだろうか?
そう思うと、子供達は悲しくなった。
そんな中、ルイズが顔を上げて答える。

「ねえ。残りの人のお墓も作ってあげましょうよ」

黙って頷く4人。キートンもまた、深く頷いた。

乗員の埋葬を終え、キートン達は森を出た。他の生徒達の見学もちょうど終わったらしく、集合し始めている。ルイズらもそれぞれ整列地点に戻っていった。
その様子を見ていると、コルベールが近付いて来る。

「どうでしたか、キートンさん。あの子達の引率は、うまくいきましたか?」
笑顔でそう言うコルベールを前に、キートンは微笑むと答える。

「ええ。私が考えていたよりもずっと、彼らは結束力がありましたよ」

帰ってから、改めて、ルイズと話しあう必要がありそうだな――
キートンは夕焼けを眺めながら、そう思った。


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