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ゼロのミーディアム 第一章 -06


曲がり角からの突然の怒声にびっくりし、尻餅をついてしまったメイド
「あいたたた…」
そう言いながら彼女はお尻をさすっている
「ふん…少々気が立ってて気づかなかったわ。悪かったわね…」
水銀燈はぶっきらぼうにメイドに言い放ちそっぽを向く
本当に反省してるのかと言いたくなる、限り無く不躾な謝罪の言葉と態度これでも彼女は己の非を認めているのだが…
しかしメイドは「ひっ…」と怯えるような声を出し大慌てでその場に立ち上がり
「も、申し訳ありません!貴族の方の前でとんだお見苦しい失態を!」
と深々と頭を何度も下げながら謝罪し始めた
彼女は別段謝るようなことをしていないのにだ。むしろ被害者とさえ言える
「はぁ?貴族ぅ?何を言ってるのよ貴女?」
「え?だってそんなに綺麗なお召し物を…
…そう言えば人にしては小さいような…」
恐る恐る頭を上げ水銀燈を見て言うメイド。日本人を思わせる黒髪をカチューシャでまとめたどこか素朴だが健気な感じするの少女だ
「悪かったわね…そりゃ小さいわよ。人形だもの…」
水銀燈は向き直り不機嫌に呟く
「人形…?あ、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になられたと噂の…」
「なんで知ってるのよ」
「いえ…先程お食事中だった貴族の方々のお話しが耳に入りまして…あの、本当にお人形さん…なんですか?」
物珍しそうに水銀燈を眺めながらメイドは言う
「何よぉ!そんなに動く人形が珍しいのかしらぁ!」
先程のイラつきがまだおさまっていないらしい。水銀燈は特に気に障る事でもないのに声を荒げる
あと、貴女はとても珍しい人形ですと何度言えば…
「ご、ごめんなさい!
…でも何故そんなにお怒りになられてるんですか?」
例え相手が失礼な態度をとろうとも不平も言わず身を案じる。この少女、メイドの鏡だ
「…貴女には関係無い」
またそっぽを向き遠くを見つめ水銀燈は言った
(そうよ…こんな娘に構ってる暇は無いわ…早くなにか食べ物探さなきゃ)
全国の水銀党員を幻滅させそうな情けない思考。だか彼女を責めないでほしい。彼女だって生きるのに必死なのだ
え、何?それがいいって?
ともかく、このメイドに事情でも話せば助けてくれるかもしれない。だが薔薇乙女たる者、見ず知らずの少女に物乞いをする等というはしたない真似をする訳にもいかない
ここでお腹の一つでも鳴れば空気を読んだメイドが食事でも手配してくれるのだろうが
人形たる彼女は様々な事情でお腹が鳴ることは決して無いのだ


「でも何かお困りのようですし…」
それでもメイドは食い下がる。この少女、困った人はほっとけないといった性分なのかもしれない
だがそんな気遣いもイライラ頂点の水銀燈には逆効果だったらしい
「うるさいわねぇっ!こっちはお昼ご飯ぬかされてこの永遠の空きっ腹をどうやって満たそうかと必死なのよぉ!
あんまり邪魔するとジャンクにするわよ!ジャンクにぃ!!」
あ、キレた。おまけに言ってることは最悪にカッコ悪い上に八つ当たり。この人形、乳酸菌足りてない
だがメイドの方は特に気にすることもなく
「ああ、お腹がすいてるんですね。それではこちらへ…」
と言うと食堂裏のほうに歩き出した
少々癪だが後をついて行く水銀燈
「私、シエスタといいます」
「…水銀燈よぉ」
「変わったお名前ですね」
何か言いたげな水銀燈であったが、このメイド…シエスタが今の自分の助けになるであろう事を察し、黙ってついて行くことにした


ここはトリステイン魔法学院の全ての「食」を生み出す食堂裏。つまりは厨房のことだ
水銀燈がシエスタに連れてこられた場所である
シエスタは水銀燈を片隅に置かれた椅子に座らせ
「ちょっと待ってて下さいね」
と言うと小走りで厨房の奥に消えていった
少しばかり時間も経ち戻ってきたシエスタの手には温かいシチューの入ったお皿
「…何よこれ」
それが何かは水銀燈も気づいてるはずだが
「貴族の方々にお出しする料理の余り物で作ったシチューです」
「これを食べさせ…これを私に食べろと?」
これを食べさせてくれるの?と言いかけたのだがこの期に及んでまだ憎まれ口を叩く
人間に舐められる訳にはいかないとでも思ってるのだろうか?
だがシエスタは尚も気にしていない
「ええ、よろしければ」
考えてみればシエスタは若くともこの学院でワガママな貴族達の世話をしているメイドだ。それらの傲慢な輩に比べれば水銀燈の憎まれ口など可愛い物なのだろう
何しろ貴族に口答えや無礼等を働けばお返しは口ではなく危険な魔法で返ってくることもありえるのだから
「…まあいいわぁ、いただいてあげる」
水銀燈は相も変わらず不機嫌を装う。内心は嬉しさでいっぱいの癖に…
そしてスプーンでシチューを一口分すくって口に運ぶ
「(美味しい…)」
思わず顔をほころばせるがシエスタが見ているのに気づき慌てて顔を不機嫌に戻す。そしてもう一口
「本当にお人形さんでもお食事なさるんですね」
感心するように呟くシエスタだが一心不乱にシチューを口に運ぶ水銀燈の耳には聞こえていなかった。そしてその皿はあっと言う間に空っぽになった
「いかがでしたか?」
とのシエスタの問いに
「…悪くはなかったわね」
むすっとした顔で答えた水銀燈だが…
本当は十分に満足していた。思わず顔をほころばせた様やすぐに空になった皿がそれを物語っている
それでも水銀燈はむっとした顔を崩さない。
だが…彼女は気づいていないがバレバレだった
何故なら彼女、不機嫌な顔をしながらもそのシンボルたる背の黒翼。それが「私、ご機嫌です!」と言わんばかりにパタパタしている
ええ、それはもう大好きな飼い主に頭を撫でられ、嬉しがって振られる子犬の尻尾のようにパタパタと
不機嫌な表情とは裏腹に嬉しそうにパタパタしている翼の対比に思わずシエスタも笑みが漏れる
「よかった!お代わりもありますよ?」
「…あ、余ってるのなら貰ってあげてもよくてよ!」
この人形本当に素直でない
心の中では(やったわぁ!)と歓喜の叫びでも上げてることだろう
そして二皿目も夢中になって食べ始める水銀燈を見てシエスタは
「(ああ…これって)」
「…今貴女、野生のカラスを手懐けるのってこんな感じなのかな?って思ったでしょ」
「(うっ!鋭い!)」
と、水銀燈に胸の内を看破され冷や汗をかいたりした


「ご馳走になったわね…」
「はい、お粗末様でした」
食事も終わり水銀燈も満足したようだ。頃合いを見計らってシエスタは水銀燈に聞いた
「ご飯いただけなかったんですか?」
「ちょっとゼロのルイズってからかったら、髪を真っ赤に染めんばかりに怒っちやったのよぉ。それで食事抜き」
「まあ!貴族にそんなこといったら大変ですわ!水銀燈さん!」
「本当にちょっとからかっただけよぉ。…まあ少しやりすぎた気もしないでもないけど…
あと、水銀燈さんだなんてかしこまらなくてもいいわぁ。別に貴族じゃないんだし」
満腹になって少しはシエスタに気を許したらしい。彼女にしては珍しい譲歩だ
「でしたら銀さんとお呼びして…」
「なんですかぁ~?だからかしこまらなくてもいいっつってんだろうがコノヤロー。私に万屋でも開けってかぁ~?」
「はい?」
「…失言だったわ、忘れなさい…
後、私のことは呼び捨てで結構よぉ」
「でも…」
「つ、つべこべ言わないの!私がいいと言ってるのだから別に良いのよぉ!」
不機嫌そう…と言うより困ったような、少し照れた表情で水銀燈は言った
「はい、わかりましたわ。水銀燈」
シエスタも水銀燈が少しだけでも自分に感謝してくれていることを感じ、嬉しそうに頷いた

「さて…お腹も満たされたし食後に軽く運動がしたくなったわねぇ
…貴女、何か私ができそうなことあるかしら?」
水銀燈はわざとらしく、言い訳がましく口を開いた
「はい?」
シエスタの方は意味が分からないように聞き返す
「つ、つまりよ…私が貴女の助けになってあげれるか、みたい、な…」
水銀燈の声はだんだん小さくなり口をもごもごさせる。顔は恥ずかしそうに俯かせながら
「えーと、つまりお手伝いをしてくれるってことでしょうか?」
「そ、そういうことよ!感謝なさい!私が人間の手伝いをするなんて…じゃなくて勘違いしないでよね!私はただ体を動かしたいだけで…」
パニックになってるのか水銀燈の言っていることはむちゃくちゃだった
素直に「昼食をご馳走してくれたお礼に何か手伝ってあげるわぁ」とでも言えばいい物を
目を回しながら必死に言い立てる水銀燈に微笑みながらシエスタは水銀燈にお手伝いをお願いした
「では、デザートを運ぶのを手伝ってもらえますか?」
「問題無いわぁ、このローゼンメイデンの第一ドール。水銀燈の力をもってすれば造作もないことよ」
よくわからないがすごい自信だ。ただデザートを配るだけなのに…


ところ変わってトリステイン魔法学院内の図書館。ここはその中でも教師のみが閲覧を許された通称「フェニアのライブラリー」
薄暗いその一区画に灯る星の光のような小さな灯り、そしてそれを反射し恒星のごとく輝く灯り…否、それは人の頭だった
この禿しい…間違えた、激しい光をU字ハゲに反射させ書を読みながらぶつぶつ言っている男性教師こそ
何を隠そう、先日のサモン・サーヴァントの担任教師にして『炎蛇』の二つ名をもつ火のメイジ。ミスタ・コルベールであった
彼はルイズの呼び出した使い魔の少女の事について昨夜からこの図書館にこもり調べ物をしていたのだ
まずは人形やゴーレム、ガーゴイルに関する資料。無論、自動人形に関することを調べるためだ。しかし結果は得るものは何もなく
どの書物も最後は「自動人形なんて無理無理、そんな訳だから諦めろ」と言う結論で終わってしまう
「(…だめだこりゃ)」
後ろ髪ひかれる思いで(ひかれるほどフサフサじゃないだろーが。なんて死んでも言えない)自動人形の調査は断念したが彼にはもう一つ気になることがあった
それは彼女の「左手」に現れた不思議なルーン
珍しいルーンだった。彼は幾度かコントラクト・サーヴァントにも立ち会ったが奉職して二十年、あんなルーンは見たことが無い
最初は一般区画で調べていたもののそこではコルベールの求めた答えは見つからなかった
「フェニアのライブラリー」で浮遊魔法により最上段の本まで目を通し、
ひたすら目当てのルーンを探る。片手には彼女に現れたルーンのスケッチ。もう片方には次々と入れ替わる書物の数々
限り無く不毛な作業だが彼の努力は見事報われることとなった
今コルベールの手元にある本は始祖ブリミルの従者となりし使い魔達を記した物
その中の1ページを目にし思わずあっ!と声をだし驚き、魔法の集中を乱し床に落下しそうになるが慌てて立て直す
そしてその書を抱えるとある場所にすっ飛んでいった
コルベールの行き先はこの学院内で最も強大かつ博識であろう人物の居場所
学院最高権力者の部屋、すなわち学院長室であった


学院長室は本塔最上階にある。その部屋の中央、重厚なつくりのセコイアのテーブルと椅子に座っておられるお方こそ…
「わしがトリステイン魔法学院学院長オールド・オスマンである!!」
自己紹介ありがとうございます学院長
「どうかなさいましたか?オールド・オスマン」
そう言ったのは彼の秘書であるミス・ロングビル
「いや、特に意味は無いわい。少々退屈でのう…」
オスマン氏は椅子から立ち上がり理知的な凛々しい表情でロングビルに近づく
彼の顔に刻まれ皺は大樹の年輪のごとく彼の過ごしてきたであろう歴史を物語る
百歳、いや三百歳とすら言われるオスマン氏の年齢。それを知るのは彼のみ…いや本人すら知らないのかもしれない
「オールド・オスマン」
「なんじゃね?ミス…」
「暇だからと言って私のお尻を撫でるのはおやめ下さい」
人事のように羊皮紙に走るペンを眺めロングビルは言った
オスマン氏は口を半開きにするとよちよち歩き始める
「わしの毎朝はケロッグコーンクリスピー。自転車通学がしたいんじゃが…」
「都合が悪くなるとボケたふりするのもやめてください」
そのようなやりとりをしているなかドアを蹴破らんと言わんばかりに勢いよく入室してくる人影
「オールド・オスマン!」
「なんじゃね?騒々しい」
荒い息をはきつつ飛び込んで来たのはコルベール。そのまま大慌てで報告を始める
「たたたた、大変です!」
「落ち着きたまえ、大変なことなどあるものか。全ては小事じゃよ」
「ここ、これをご覧ください!」
「んん?なんじゃ、『始祖ブリミルの使い魔達』?こんな古い文献なと漁りおって。ミスタ……えーと、ミスタ…ミスタ…なんだっけ?」
「コルベールですッ!お忘れですか!?」
「おお、悪いのう。そんな名前じゃったな。そう怒りなさんな、血圧あがるぞ?乳酸菌とっとるかのぅ?」
「ともかく!これを!」コルベールの渡したものは水銀燈に現れたルーンのスケッチと本のとあるページ
それを見た瞬間オスマンの氏ののほほんとした表情は一変。キラリと目を光らせそれが細くなると、険しい色となる
「…ミス・ロングビル、席を外しなさい」
ミス・ロングビルは席を立ちドアの前まで行くと一礼した後部屋を退室する
それを見届けたオスマン氏重々しく口を開いた
「詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール」


そのころ、そんな重々しい事態に学院長室がなっているとも知らず
水銀燈とシエスタはデザートのケーキを配っていた
水銀燈がはさみでケーキをつまみ一人ずつ配っていく様子を物珍しく見ている貴族達
「なんだか見せ物にされてるようで気に入らないわね…」
手伝いという立場上、小声で不平をつぶやく水銀燈
「みんな水銀燈に見とれているんですよ。ほら、まるでおかわいい人形さんみたいで…ってお人形でしたね」
「か、かわいいなんて言われても何もでないわよ!」
突っ込むのはそこですか
話ながらも作業は順調に進んだ

しかしその時奥の一角から冷やかすような声が
「なあ、ギーシュ!お前、今誰と付き合っているんだよ!」
「誰が恋人なんだ?ギーシュ?」
ギーシュと呼ばれたメイジはすっと唇の前に指を立て
「付き合う?よしてくれ、僕にそのような特定の女性はいないのだよ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
と真顔でこっ恥ずかしいセリフを返す
ナルシストにしてフェミニスト見てて不愉快になる典型だ。おまけに自分を薔薇に例える等…
文字通り薔薇乙女の名を冠する水銀燈には聞き捨てならぬことだが…
(あんなのと関わり合いになるのも嫌ね…)と考えここは無視することにした
その時ギーシュのポケットから何かが落ちる。ガラスでできた小瓶、中には紫色の液体が揺れている
(関わり合いになりたくないって思った矢先に…まったく…)
誰も気づいた様子が無い。気にくわない人間だがそのまま知らんぷりするのも誇り高き薔薇乙女の名折れ。水銀燈は一つ大きなため息をついて言った
「貴方、ポケットから何か落ちたわよぉ」
しかしギーシュは振り向かない、天然か故意かはわかりかねる
水銀燈ははさみをシエスタに預け小瓶を拾いギーシュに差し出す
「落とし物だと言ってるのよキザ男」
ギーシュはけだるそうに水銀燈と小瓶を見ると少しだけ動揺した様子を見せたがすぐに立ち直り言った
「何を言っているのかわからないね?これは僕のじゃない」
だがギーシュの友人達はそれが何か知っていたらしい
「おおっ!この香水はもしや、モンモランシーの香水じゃないのか!?」
「そうだ!その鮮やかな紫色はまさしくモンモランシーが自分のためだけに調合してる物!
ってことはお前が付き合ってるのはモンモランシーか!」
「残念ながら違うね、彼女の名誉のために言っておこう…」
ギーシュが何か言いかける前に彼の前に茶色いマントの少女が歩いてきた
「ギーシュ様…やはりミス・モンモランシーと……」
そしてボロボロと鳴き始める
「待ちたまえケティ、彼らは誤解しているんだよ僕の心に居るのは…」
バチン!という乾いた音と共にギーシュの言葉は…ケティと呼ばれた少女の平手打ちで遮られた
「その香水があなたのポケットから出てきたのが何よりの証!さようなら!」
彼はやれやれと言わんばかりに肩をすくめる
だが、彼の不幸はこれでは終わらない

続いて歩いてきたのは巻き髪の見事な少女。なんとなく自分の姉妹の末っ子を思い出す水銀燈だが
彼女は…モンモランシーはあいにく雛苺ほど無邪気な性格では無かった
モンモランシーはいかめしい顔つきでギーシュの前にやってきた
「モンモランシー!違う、彼女とはただ一緒にラ・ロシェールの森まで遠乗りしただけで…」
一見冷静な態度だが今度は動揺を隠しきれていない。冷や汗が一筋だが頬に垂れる
「やっぱりあの一年生に手をだしていたのね…」
「お、お願いだよ洪水…ゲフンゲフン!香水のモンモランシー。咲き誇る薔薇のような顔をそのような憤怒の形相で変形させないでくれよ!僕まで悲しくなるじゃないか!」
ギーシュの動揺はさらに広がっているらしい。言っている事の一部が嫌に不自然だ

だが当のモンモランシーはまったく聞く耳持たずといった感じでテーブルねワインのビンをつかみドボトボとギーシュの頭上から注ぐ
そして
「嘘つき!」
と怒鳴って去っていった
沈黙が流れる中ギーシュはハンカチで顔を拭くと
「あのレディ達は薔薇の存在を理解していないようだ」
と呆れるような言った


水銀燈は(自業自得ね、一生やってなさい…)と心の中でつぶやき作業に戻ろとした矢先
「待ちたまえ」
と彼女の背にギーシュの声がかかる
「何かしらぁ?」
「君が軽率に香水の瓶なんか拾うから二人のレディの名誉に傷が付いた。どうしてくれるのかね?」
なんと言うキザ男…一言聞いただけで呆れてしまった…この男間違い無く水銀燈に責任転嫁するつもりだ
「自業自得と言う言葉をご存知かしらぁキザ男さん…いえ、フラレ虫さぁん?二股かけてる貴方が悪いのよ」
あまりにも正当な物言い、そしてフラレ虫という単語にギーシュの友人達もどっと笑う
「その通りだフラレ虫!お前が悪い!」
ギーシュの顔にさっと赤みがさす
「いいかい?メイド君…えーと君はメイドでいいのか?とにかく!僕は君に話しかけられた時知らないふりをした。話を合わせる機転ぐらいあってもよいだろう?」
「くっだらなぁい、例えこの場を凌げたとしても二股だなんてどうせすぐにばれちゃうことに気づかないなんて本当におめでたいわね
あと貴方、胸に刺さってる薔薇がぜんっぜん似合って無いわよ」
これには周りの貴族も大笑い。ぽかんと口を開け唖然としているギーシュをよそに水銀燈は話を続ける
「それに貴方が薔薇ですって?とんだお笑いだわ!」
「な、なんだと!」
ふん…と鼻を鳴らし真面目な表情で語りだす水銀燈
「…覚えておきなさい。薔薇はその身に鋭い棘を持ち他の者を寄せ付けようとしない孤高の花よ
それでも何故、人は薔薇に手を触れようとするのか?答は簡単。例え棘が刺さろうとも惹かれるほどの魅力が薔薇にはあるからよ」
「何が言いたい…!」
「本当に貴方が薔薇のような気高さを持つならば彼女達は貴方を離れたりはしない。彼女達は貴方の二股と言う名の棘に…愛想を尽かし去っていった。つまりは貴方の魅力は薔薇に遠く及ばないと言う事ね」
「!!」
ギーシュの胸にグサリと刺さる水銀燈の言葉

「…もっとも、それ以前に薔薇のごとき気高き者は二股だなんで最低な真似はしないでしょうけどねぇ?そんな棘持つこと事態が問題なのよ」
水銀燈は不適に笑みを浮かべ言い放つ
「メイド風情が…!平民風情がよくもそんな知った口を!」
ギーシュの怒りが頂点に達したようだ
「残念だけど私はメイドでも平民でもない」
「…黒いドレスに翼、人間より一回り小さい体…そうか、君がヴァリエールの呼び出した人形の使い魔だな…!」
「あら、ご存知だったのかしらぁ?光栄ねぇ!」
「こんな屈辱は初めてだよ…君は貴族に対する礼をしらないようだね…」
「お生憎様。少なくとも貴方みたいな貴族に対する礼は持ち合わせてないわねぇ」
「よかろう調度いい腹ごなしだ。君に礼儀を刻んでやろう、決闘だ!」
文字通り体に直接刻みつけるつもりなのだろう
だが水銀燈は踵を返しオロオロしながらも事態を見守っていたシエスタの方へ歩いていく
そして顔だけ向き直り言い捨てた
「結構よ。今言ってた事を聞いてなかったのかしらぁ。貴方に対する礼など持ち合わせてないし、持ち合わせる予定も無い」
「ふん、逃げるのか?」
「そんな安い挑発にのるのはお馬鹿さんだけよ
お人形遊びがしたいなら自分で買って一人寂しくお部屋で遊ぶのね」
口での戦いは水銀燈が一枚上手のようだ
ギーシュは後ろで色々とわめいているようだが
水銀燈は歯牙にもかけず背を向け遠ざかっていく
だが…


「流石は出来損ないのゼロのルイズの使い魔だね!これだけ侮辱されて何も思わないとは!飼い主と同じの出来損ないだ!」
何気に言い放ったギーシュの一言
(出来損ないですって…!)
これを聞き水銀燈はうつむいてギーシュの方に向き直ると冷めたような声で言った
「気が変わったわ…」
「…!」
突然の心変わりにギーシュも不自然に思う
「その決闘、受けて立つわよ」
「何…?」
水銀燈から発せられる重圧。そして…
「遊んであげると言ってるのよ」
水銀燈のうつむいた顔があげられた。その瞳に灯るは憎しみと言う名の光
表情にあらわれているのは彼女がこの地に降り立ち初めて見せる感情、すなわち…『怒り』である


次回、薔薇を名乗るドールとメイジの決戦…!


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