あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と最後の希望 Level08


level-8 「交渉」


 アンリエッタがルイズの部屋を訪れた同時刻、図書館の一角『フェニアのライブラリー』。

「あの爺、何が『この本を戻しておいてくれんかのぉ?』よ、自分で戻せっての」

 と毒づいていたのはロングビル、杖を手に取りフライで飛び上がり、数十冊の本を手早く元有った場所に収める。
 文句を言いつつも、その雑務を素早く終わらせる器量をロングビルは持ち合わせている。
 むしろ、この程度の雑務を手早く終わらせられないとオスマンの秘書を勤められない。

 オスマンはその有能ぶりを高く評価し、与える年給は下位貴族のそれを余裕で超える。
 ごく最近だが、さらに給与額が上がっている。
 それはロングビルの評価がまた上がったと言うことを表していた。
 だが評価が上がった理由は、彼女自身見当もついていなかった。

「ったく、めんどくさいねぇ」

 給金をあげてもらったんじゃ仕方ない、とその期待にきっちり答えているロングビル。
 本を納め終わり、床の上に降り立つと同時に声が響いた。

「土くれのフーケ、だな」

 その言葉を聞くと同時に、杖を振り向ける。
 杖の先には全身を包むマントを羽織り、顔に仮面をつけた人物、声からしておそらく男。
 自分の正体を知るメイジらしき男に、殺気を込めて問いかける。

「誰だい、あんた」

 少なくともこの区画には教員か許可をもらった者しか入れない。
 ロングビルが聞く限り、このような声の教員を知らない。

「誘いに来た、マチルダ・オブ・サウスゴータ」

 それを聞いて顔色が変わる、かつて捨てた、いや、捨てさせらされた懐かしき名前。
 名実共に消えた貴族の一つ、それを知る者は居ないはずだが仮面の男は迷いなく言い切った。

「もう一度、アルビオンに使える気は無いかね? マチルダ」

 その言葉にロングビルの顔に激情の色が現れる。

「お生憎、父を殺し、家名を奪った王家なんかに使える気なんて無いね」
「勘違いするな、誰も今ある王家に仕えろとは言っていない」

 変わらぬ顔のロングビル、男は気にした様子もなく喋り続ける。

「無能なアルビオン王家は近々倒れる、我々の手によってね」
「我々?」
「そうだ、我々の名は『レコン・キスタ』、ハルケギニアを統一し、『聖地』を奪還するために国境を越えて集まった貴族連盟だ」
「そして今我々は有能なメイジが一人でも多く欲しい、協力をしてもらえないかね?」

 仮面から覗く瞳は熱に侵され濁っている、掲げた目標に酔い、その難しさを理解していない。
 ハルケギニア統一は万が一で出来るかもしれない、だが聖地奪還はそれの何十倍も難しい。
 なにせ、あそこには『エルフ』が居るのだ。
 歴史上何度も連合軍が侵攻したが、一度として勝利を収めていない。
 国でさえ不可能な事を、一組織が出来るとは思えない。

「馬鹿かい、あんた。 そんなこと無理だってのがわかってない様だね」
「いいや、我々にはエルフを駆逐する力がある」

 仰々しく腕を広げる、その姿を見て反吐が出る。

「知るかってんだい、それにもう私は雇われているんでね。 丁重にお断りさせてもらうよ」

 男が溜息をひとつ、その動作はごく自然に行われた。

「……そうか、それは残念だ」

 一瞬、高速で引き抜かれた杖が淡い光を放つ。
 瞬間、ロングビルは飛び退き本棚を盾にして駆ける。

「我々の事を知られたからには、死んでもらうしかないな」

 切り裂かれる本棚をよそに、男の冷徹な声が響いた。





 空気を切り裂き、見えない疾風の矢がロングビルに襲い掛かるが。
 身を翻し、その弾道を見切り避ける。
 場所はすでに屋外、逃げる為図書室を抜け出したのはいいが攻撃が的確で激しい。

「失敗したかね……」

 遮蔽物が少なすぎる、このままでやられかねない。
 木の陰に飛び込み、杖を振るう。
 人間大のゴーレムが5体、そこから瞬時に錬金を掛け鋼鉄としたが。

「やばいね」

 冷や汗を流しながら舌打ち、ゴーレムを壁にしようとした途端難なく切り刻まれ崩れ落ちる。
 初級の魔法とはいえ、その威力たるは鋼鉄をも両断する。
 逆に言えば、初級なのにこの威力は確実にスクウェアクラス。

 躍り出て、反撃に移れば忽ち切り刻まれるだろう。
 さらにこちらの位置を確実に把握して攻撃を仕掛けてきている。
 あの気配、やるとは思っていたが強すぎる。

「中々機敏なことだ」

 男の姿は見えないが、声が響いてくる。

「ッ……」

 危険を感じ取り木陰から飛び出ると同時に、木が両断され音を立てて倒れる。

「そろそろお終いにしよう、マチルダ・オブ・サススゴータ」

 たいした感情が込められていない言葉、飽きたと言わんばかり放たれた風の刃。
 ロングビルの周囲には遮蔽物がない、避けるのも間に合わない。

「ッ!」

 光る杖を見て自分の終わりを覚悟した、一瞬、あの子の笑顔が浮かび詫びてしまった。
 瞼を閉じ、来る風の刃に身を固めるが、代わりに来たのはパンッと両手を打ち合わせたような軽い音。
 一向に来ない攻撃に疑問を感じ、恐る恐る瞼を開くと壁になる様に立っていた人物が見えた。

「あんた……」

 ロングビルの左斜め前に立つ、剣に手に持つチーフがそこに居た。

「おいおい、なんだこのにいちゃんは?」
「さあな」

 カタカタとしゃべるデルフリンガーに軽く返すチーフ。

「相棒、さっさと帰らねぇと娘っこがギャーギャーわめくぜ?」
「そうだな」

 暗闇の中にいる男を気にせず、チーフとデルフが喋る。

「………」

 予想外の闖入者に、口を歪めた男。
 一直線、仮面の男がロングビルを殺すには、先にチーフを何とかしなければならない。
 なら簡単な話だ、両方纏めて潰せばいい。

「─────」
「相棒!」
「解っている」

 淡い光を捉え、小さく呟いた男の声を拾ったチーフは咄嗟にロングビルを引き寄せ、覆いかぶさる様に抱きかかえる。
 途端、チーフとロングビルの周囲が陥没した。
 仮面の男が放ったのは『エアハンマー』、その威力は鎧を着た人をも簡単に押しつぶす──。

「チッ」

 ──筈だったが、何をしたのかわからないが二人は潰れていない。
 舌打ちをした男はもう一度杖を振るおうとする。

「ッ!?」

 が、それを中断して飛び退く。
 ほんの一秒前に居た場所から、先が尖った土の槍が身を穿たんと次々と飛び出してきた。
 土の魔法である『ストーンランス』、騎士が放つ槍の一撃に酷似する事からこの名前がつけられた魔法。
 当たれば勿論串刺し、鎧など紙切れ同然、軽い衣服とマントのみでは当たり前に防げない。
 それの避ける為の動作は大きく、致命的だった。

「終わりだよ」

 杖を構えたロングビルが言い切った時には、小さな閃光を放ちながら剣を振るうチーフが男に肉薄していた。

「クッ!」

 高速で振るわれたデルフリンガーが男の体を、──捕らえなかった。
 薄皮一枚を断つだけに至り、男は避けきる。

「お、今の避けるなんてにーちゃんやるじゃねぇか!」

 デルフの褒め言葉を聞き流す男、避けて当然といった感じだった。

「やれやれ、今日は付いていないようだ」

 杖をチーフに向けて佇み、軽い口を叩く。

「そりゃそうだろ、アンタはここで捕まるんだからね」

 不法侵入に傷害、さらには殺人未遂、十分にお咎めを受ける内容。
 そんな事はお構いなしにチーフがデルフを横に構え、最短距離で詰めてくる。
 高速で迫るチーフに向かい杖を振り、鋼鉄を両断した疾風を放つが先ほどと同様に剣で掻き消される。
 ただの剣なら一撃の下、切り落としている筈だが。

 そうならないのは強力な「固定化」か特殊な効果を付加されたマジックアイテム類だからか。
 その剣を持つ本人については色々推測はできるが確証はできない。
 飛び退きながらも剣を杖で受け、3メートルほど飛ばされる。
 予想以上の腕力に驚き、痺れる手を振りながら一言。

「いいや、遠慮させてもらおう」

 高速で回した思考の結果、「この状況はよろしくない」。

「逃げれるとでも?」
「勿論だとも」

 烈風が巻き起こると同時に、粉塵も舞い上がり視界が一気に悪化する。
 仮面の男は不利と悟り、逃げることを選んだ。

「それでは、また会おう」

 チーフは咄嗟にアサルトライフルを構えるが動体反応が一気に遠ざかっていく、すでにこの距離では当たらないと銃を下ろした。
 粉塵が収まると、背後から声が掛かる。

「はぁ、助かったよ」

 振り返るとロングビル、よく見ると片足で立ち、幾つか切り傷が出来ていた。

「大丈夫か」
「何とかね、アンタが来なけりゃ死んでたわ」

 乾いた笑い声で言った。

「そうか、それで何があった」

 アンリエッタを送り届け、部屋に戻っているところにあの光景。
 音も無く木が倒れ、ロングビルが必死に走っている。
 どうみても異常だと思われる光景を目にして駆け出していた。

「さあね、私を誘いに来たといってたわ」
「誘い?」
「ああ、少し聞いただけなのに目的をベラベラ話し始めて、誘いを断ったら襲ってきたんだよ
 『我々の事を知られたからには、死んでもらうしかないな』だって? 勝手に聞かせておいて知られたからには死んでもらうとか馬鹿じゃないのさ」

 憤慨してイラついた声を上げる。

「これだから貴族は嫌いなんだよ……! いつも勝手に物事を進めて、周りのことなど考えもしやがらない!」

 悔しげに言ったその表情は複雑、過去に相当の出来事が有ったようだが他人が口出しすべき事ではない。

「落ち着け、治療が先だ」
「ん? ああ、これくらい何とも無いさ」

 そう言いながらも足を引きずっている、肌の切り傷も深くは無いが浅くも無い。
 衣服に血が滲んでいた。

「医療室へ行くべきだ」
「大丈夫だって言ってるじゃないさ、あんたもしつこいね」

 肩で息をしている、服を濡らす血も結構な量だ。
 それを気にせず、背を向け歩き出すロングビル。

「ねーちゃん、相棒の言うこと聞いた方がいいぜ?」
「ちょッ!?」

 普通に歩くより遅いロングビルを背後から抱え上げる。
 勿論お姫様抱っこ、慌てふためくのを無視して走り出す。

「お、降ろしなよ!」
「無駄無駄、相棒は頑固だからね」

 ヒヒヒと笑うデルフ。

「そういうことだ」

 デルフの答えに肯定したチーフ。
 そのロングビルの顔は赤くなっていたとかデルフが言っていたが、事実は闇の中に消えた。



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