あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-06


「乗馬、上手いのね」
「乗るのは久方振りだが・・・・・・な」
人間だった頃は、己の手足のように扱って戦場を駆けていたものだった。
しかし近現代になってからは、移動手段は専ら自動車や鉄道、船舶や航空機である。
元の世界で馬で移動するなど、それこそ数十年以上前の話であった。


「町に出掛けるわよ」と、アーカードの主であるルイズの第一声。
なんでも虚無の曜日で講義はないらしい。

「なるほど、それはとても素晴らしい提案だ我が主」
正直、学院内の散策だけでは些か飽きてきたところであった。
「それに町並と人の生活を見てこそ・・・・・・その国の、ひいてはこの世界の文化を知れるというものだ」
そう返してアーカードは、学院の外の世界を堪能することにした。

 馬で片道およそ三時間ほどの距離。
ルイズとの他愛ない話も途切れ、アーカードは少し前のことを思い出していた。
そう・・・・・・ギーシュとの決闘。圧倒的な勝利の後、待っていたのはコルベールとオスマンであった。
それもその筈。朝方に言ったことを舌の根が乾かぬ内に無視し、大きな騒動を起こしてしまったのだから。




 学院長室でオスマンとコルベール二人に言及され、事の顛末を説明した。
ルイズも一緒になって説明してくれ、第三者であったキュルケまでも無理やり連れてきて証言させた。キュルケはすこぶる怠そうではあったが。
結果アーカードにさしたる非はないとし、さらにギーシュに怪我らしい怪我もなかった事も幸いし、この件は不問となった。
キュルケはさっさと学院長室を出ていき、ルイズとアーカードもそれに続こうとする。が、そこで呼び止められた。

「・・・・・・私だけに話?」
「はい」
コルベールがやや神妙な面持ちで頷く。そこでルイズが噛み付いた。
「っ!・・・・・・ちょっと待って下さい、お二人はさっき不問にするって――――――」
「いやいや、ミス・ヴァリエール。決闘の事とは全くの無関係ですよ」
その言葉を聞くもののルイズの表情は憮然としたままだ。その様子を見てアーカードが言葉を発した。

「あぁ・・・・・・今朝方話していた、歴史講釈のことか?」
「ん・・・・・・えぇ、そうです、その講釈のことです。それらしい文献も見つけてきましたので」
コルベールはすぐさまアーカードの意図を察し、話を合わせた。
「そう、それじゃ・・・・・・また後でね」
「んむ」
そのやり取りを見てとりあえず納得したのか、ルイズはそれ以上何も言うことなく部屋を出て行く。


 外の気配が完全に消えたのを確認してアーカードは口を開いた。
「さて、どんな用件か伺おうか・・・・・・の?」
アーカードはそう言いつつ緩慢に二人の下へと近付く。
「プ・・・・・・プレッシャーをかけないで下さい、先程も言いましたが別の話ですから」
その言葉にアーカードは、無意識的に発していた威圧感を抑え込む。

「その左手のルーンのことじゃ」
オスマンがゆっくりと口を開く。
「この紋様・・・・・・?」
そう言ってアーカードは己の左手の甲を見やる。
使い魔には必ず契約の証としてルーンが刻まれる。うっすらとそれは浮かび上がっていた。
オールド・オスマンはアーカードに近付き、その浮かび上がったルーンを観察する。
また後ろから覗き込むように、コルベールもそれを見ていた。

「確かに、本物・・・・・・のようじゃな」
「ええ、やはり間違いありません」
二人だけで完結する様子を見てアーカードは疎外感を味わう。
「一体なんなんだ?」
「・・・・・・あぁこれは失礼、オールド・オスマンが確認したいと仰るもので」
「これが何か面白いのか?」
召喚されて以来、今の今まで特に気にしていなかった紋様をアーカードは凝視した。


「えぇ、そのルーンは凄いんですよ、なんせそれは――――――」
「"ガンダールヴ"と言ってな、かつては始祖ブリミルの使い魔が宿していたルーンなんじゃよ」
オスマンは自分の席に戻りながら、コルベールの言葉を遮り口にした。
己が言おうとしていた台詞をオールド・オスマンに言われてしまい、コルベールの顔が僅かだが引き攣っていた。

 アーカードはその言葉の意味を頭の中で検索する。
始祖ブリミルの使い魔が宿していたルーン、"ガンダールヴ"。
始祖ブリミルと言えば・・・・・・確か伝説上の人物。
この世界に於いて、近隣諸国に於いて共通して神のように崇められている存在の筈だ。
そう、カトリックで言うところのキリストのような。

 台詞をとられたコルベールが咳払い一つをして、説明を始める。

「ガンダールヴを持つ使い魔はあらゆる武器を使いこなしたとされています。
 ミスタ・グラモンを一蹴したというその強さも、恐らくはガンダールヴのおかげでしょう」

 そういえば剣で武装した時に妙な力が溢れていた気がした。
恐らくではあるが・・・・・・その溢れていた力の理由はルーンのおかげ、ということかも知れない。
尤も、ガンダールヴとやらがなくても結果は同じであったろうが。
しかし自分が人間ということで通している以上、ガンダールヴという理由付けは丁度よい隠れ蓑になる。
これ以上強くなる必要性はないが、あらゆる武器を使いこなし力が溢れるという特性もあって損はない。


 だが一つの疑問が生まれる、何故自分がその伝説の使い魔のルーンを宿しているのか。
そもそも異世界から召喚されるということ自体が、本来は有り得ないということらしい。
その上激レアなルーンまで宿しているとなると、一体どんな確率になるのか。
それとも逆にイレギュラーな存在だからこその、ガンダールヴのルーンなのか。

「ガンダールヴは伝説の使い魔の印じゃ。公言などすれば王国で解剖されるかもしれんから気をつけてな」
「ふむ、それは困るな」
不死身の吸血鬼に対して解剖それ自体は問題ないが、人間でないとバレると面倒だ。
相手方の勝手な都合で拘束されるのも如何ともし難い。そもそも公言する必要性もない。

「話は以上じゃ、引き止めてすまんかったの」
アーカードは学院長室から出ようとしたところで足を止め、オスマンとコルベールの二人へと向き直る。
そして不意に浮かんだその疑問を聞いてみた。

「伝説の始祖ブリミルの使い魔が宿したという"ガンダールヴ"が、この私の左手に宿っている。
 と言うことはだ、この私を召喚し契約した我が主ルイズは・・・・・・優秀なメイジ、ということか?」




「・・・・・・ルイズ」
「なに?」
馬の背の前側にルイズが座り、後ろに座ったアーカードが手綱を握っている状態。
桃色がかった髪を風に靡かせ、ルイズは顔だけを向ける。
「何故主には魔法の才能がないんだろうな」
「うぐっ・・・・・・」
苦虫を噛み潰したような顔をしてルイズは呻く。

「アンタは人の気にしてる事を容赦なく突いてくるのね、しかも唐突に」
「はっはっは、ふと気になったものでな」
ルイズは軽く嘆息をつく。サディスティックなアーカードの態度に半分慣れてきている自分がいた。
「才能の有無に・・・・・・理由なんてないでしょ」
「・・・・・・それもそうか」
才能と言うのは即ち、生まれもっての素質・資質であり天性だ。
生来のモノであるが故に、そこに根拠など存在しない。

 ルイズは顔を前に向けると、落ち込んでいるのかそれ以上何も言わなかった。

(才能が無いメイジの使い魔が、伝説のガンダールヴ・・・・・・ね)
一体どういうギャップなのだろうか。
コルベールはルイズが優秀なメイジであるかと問うた時に肯定しなかった。
そう、ルイズは優秀とは決して言い難い。同年代の他の者達と比べても明らかに劣っている。
それでも教師なのか、いずれルイズも立派なメイジになると言った。根拠を求めたら言葉を濁していたものの。

 人一倍努力はしているようだった、向上心もある。親も姉達も優秀で血統は申し分ない。
しかし一向に魔法は上達しない、才能がない。何か魔法を唱えようものなら、その全てが例外なく・・・・・・悉くが爆発。
そんな落ちこぼれ、『ゼロ』の二つ名を持つルイズが、吸血鬼たる自分を召喚し、契約によってガンダールヴまでもが宿った。
この落差が意味するところとは――――――アーカードが考えてもわかりようはなかった。




 ルイズとアーカードは二人で町を練り歩いていた。
時折アーカードが目に付いた店に入って行き、ルイズがそれに続くを繰り返していた。
さしたる目的も無い。強いて言うならば、アーカードへのご褒美のようなもの。

 ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールは先日起こった事を思い出していた。
ギーシュを倒した、自分の使い魔アーカードの大活躍。
あの一件のおかげで周囲からの目も少しだけ変わった気がしていた。
そしてルイズにとっては、アーカードが普通の人間ではないことを改めて認識させられることとなった一件である。
普通の人間にはありえないその戦いっぷりは、アーカードが言う己が吸血鬼だと言う主張を信じるに足る根拠となったのである。

 とりあえずは、主人であるルイズの命令は基本的に従ってくれる。
しかしながらここぞという時には自分の欲望に走り、半ば無理やり押し通されてるような感じがする。
やりくるめられている自分も自分だが、強引にいけば折れてくれるということをアーカードもわかっているのかもしれない。


 路地裏の少し隠れた場所に、厳かな雰囲気の店があった。知る人ぞ知るような感じの店。アーカードは誘われるようにそこへ入っていく。
アーカードを追って中に入ると・・・・・・そこは本屋であった。
客も少なく外の雰囲気と中の雰囲気に差異がない、賑やかな町並みからは隔絶されたような空間。
広くもないが・・・・・・かと言って狭さも感じない。だが整然と並べられた本に圧迫感を感じる。
店内は適度な明かりで満たされ、しかしそこには見知った顔がいた。
ルイズは静寂な空間を破り、思わず声を発してしまう。
「キュルケ!?」
「げっルイズ・・・・・・と、アーカード」
「ごきげんよう、キュルケ」
赤髪褐色肌の女と水色ショートヘアーで小柄な少女がそこにいた。

「アンタ、こんなトコで何してんの?」
ルイズはキュルケに尋ねる。尤も、二人の様子を見てなんとなく予想はついていた。
「タバサの付き添いよ」
自分の名前が呼ばれてタバサが僅かに顔を向ける。
ルイズよりもさらに一回り小さく眼鏡を掛けたその少女は、すぐ持っている本へと視線を戻す。

「付き添い・・・・・・ね」
「この子ったら、本読み始めると時間とか関係ないんだもの。私の用はとっくに終わったわよ。服に装飾品に――――――」
「別に言わなくてもわかるわよ、アンタほど本が似合わない人はそうはいないからね」
ルイズは聞くのが面倒になり言葉を遮る。その態度にムっときたのかキュルケは腕を組み眉をひくつかせた。

「あ~ら、常に己を磨くのは女の嗜みよ。ぺったんこな誰かさんと違って、私はなんでも似合うから」
煽られてルイズもムキになり言葉を返す。
「ふんっ、ホルスタインのようなその胸に寄ってくるのは安い男だけでしょうね」
閑静な本屋で、忽ちギャーギャーと女二人の罵り合いが始まった。

(キュルケ以外はぺったんこだなぁ・・・・・・)
アーカードがそんなどうでもいいことを思っているとタバサが動いた。
表情にこそ出さないが、迷惑そうにその場から離れていく。
無論、手に持った本を読みながら。アーカードはそれを追う。


「初めまして、ミス・タバサ」
タバサはゆっくりと、その無味乾燥な表情の顔をアーカードへと向ける。
暫しの沈黙の後、タバサは口を開いた。
「・・・・・・初めてじゃない」
「そうだな、厳密に言えば教室とかで顔を合わせているな」
コクッとタバサは頷く。それ以上は何も言わなかった。
不必要な会話はしないタイプなのか、それとも本に集中したいだけなのか。

 ルイズが錬金で爆発を起こした時に、真っ先に教室から退避した少女。
本を好んで読んでいることや、佇まいからも聡明であることが見て取れた。
若さに似合わず自己を確立し、世俗に流されず生きている感じである。

「本は良いな、人間の叡智が詰まっている」
タバサは本を読みながら大きく頷いた。とりあえず意思の疎通は出来ているようだった。

 ゆったりと周囲を見渡す。なんとなく目に付いた本を手に取りパラパラと捲る。
しかし何を書いてあるかはわからなかった。学院にあった蔵書でも例外なく。
アーカードには本を読むことは出来ない。言葉こそ解せるが、字を読むことが出来ないのである。
「さてと・・・・・・」
踵を返しルイズとキュルケの元へと向かう。文字を読めない以上長居してもなんら面白くはない。

「ルイズや、先に行くぞ」
「ハア!?」
突然のアーカードの言葉に驚き、ルイズは素っ頓狂な声を上げる。


「だって読めないもの本、つまんないんですものココ」
半眼のままアーカードは続ける。

「大体やね、店を見て回るにも常に付き纏わられちゃつまらんではないか。そなたも我が主としてだな、口喧嘩だろうと負けてはならん。
 それに私は私でお子ちゃまが入れないような店も見たい。いや、見なければならぬ。悲しいけどコレ我儘なのよね。
 主にそのような世界を見せるわけにもいかんしな。なので私は別行動に移る。
 尤も、見せたら見せたで面白そうではあるが・・・・・・。そなたはキュルケとよろしくどうぞ」

「っ・・・・・・ちょっと!」
血が上った頭のまま、アーカードに言葉を並べ立てられ思わず詰まる。
「というわけで、そこなミス・ツェルプストーもといキュルケ。ここは我が主ルイズを置いてきますから、あとは若い者同士存分におたわむれ下され」
「はぁ・・・・・・」
キュルケの気の抜けた声を背に、アーカードは出口へと歩き出す。
「ではな」

パタンと扉がしまり、沈黙が流れる。次に口を開いたのはキュルケであった。
「毒気抜けちゃったわ」
「・・・・・・ッ!待ちなさい!!」
我に返ったルイズはすぐさまアーカードを追いかけた。大通りへと抜けてアーカードの姿を探す。
アーカードをたった一人で街中に出したら何が起こるか、想像したくはない。
幸いあまり時間も経過してなく、一般人とは明らかに違う雰囲気を持ち容姿も個性的だった為、すぐに見つけることが出来た。

「アーカード!!」
アーカードは振り向き怪訝そうな表情を浮かべている。
「・・・・・・?なにをしている」
「それはこっちの台詞よ!勝手に一人で行っちゃって」
ポリポリと頭を掻きながらアーカードは答える。
「理由は説明した筈だ、少しばかり自由に行動させてくれてもバチは当たらんぞ?」
「・・・・・・まったく」
ルイズは大きく溜息をついた。つくづく扱いづらい使い魔だということに。

「ギーシュの時みたくまた決闘なんてなったら困るもの、きちんと手綱は引いておかないとね」
「むぅ」
アーカードは片頬を膨らませ拗ねた表情を見せる、しかしルイズはそれを無視して歩き出した。
「そんな顔しても駄目よ、代わりに欲しい物があれば何か買ってあげるから」
後方で舌打ちの音がしたものの無視する。アーカードも諦めてくれたようだった。


(猿芝居は・・・・・・通じんか)
本気で撒こうと逃走でもすれば、魔法も使えない人間がアーカードに追いつける筈もない。
が、しかしまぁギーシュとの決闘は・・・・・・ルイズの制止を半ば無視してやったようなもの。
自分が主として認め、ルイズが使い魔として認められた以上、そこには明確な主従関係が存在する。
それを何度も無下にするのは、アーカードのプライドにもかかわる。

 主であるルイズが自分を監督すると言うのならば仕方が無い、多少の不自由には目を瞑ることにした。
(それに気に入った物を買ってくれるらしいしな)
自分が欲しいのは血液くらいなものだが、この魔法の世界ならもしかしたら興味がそそられる物もあるかもしれない。
アーカードは微かな期待を抱きながら、渋々と歩き出した。



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