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新約・使い魔くん千年王国 第十三章 電撃作戦

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始祖ブリミル降臨暦6242年、年末はウィンの月、第一週マンの曜日、軍港ラ・ロシェールにて。
遂にトリステイン・ゲルマニア連合軍は、史上稀に見る大艦隊に乗り込み、アルビオン侵攻を開始した。
出征を前に、両国の首脳と司令官から手短に演説と激励がある。
まずは、トリステインの女王アンリエッタ。喪服を纏い、傍らにはウェールズ皇太子の棺を置いている。

「……この大戦は、ただの戦にあらず! 卑劣なる『国王殺し』クロムウェルの政権を倒し、
 ウェールズ皇太子のご遺体を祖廟にお帰しして、アルビオン六千年の王統を弔うための戦い!
 また、ここにおられるブラウナウ伯爵は、ゲルマニアの貴族にして、教皇聖下の側近でもあられる方。
 彼が参戦するという事は、ロマリア皇国もその聖なる権威を持って、
 アルビオンの邪悪な簒奪者どもを討伐する意思を示したという事です!」
女王の紹介に、ブラウナウ伯爵が敬礼する。

「で、あるならば! 我らはハルケギニア大陸を共和制の暴風から守り、
 始祖ブリミルの定めたもうた、聖なる共同体の秩序を防衛する『神の盾』であります!
 おお、勇士諸君よ! 諸君に神と始祖ブリミルのご加護、豊かにあれ!!」

 「「AMEN!! AMEN!!」」

烏合の衆であった6万の大軍は、聖なる使命に気を引き締め、戦意を高める。
続いてゲルマニア皇帝アルブレヒト三世、マザリーニ枢機卿、ド・ポワチエ将軍、ハルデンベルグ侯爵の訓辞。
一応ガリア以外の諸国が参戦しているが、主導はやはり『聖女の王国』トリステイン。
となれば、これは『白の国』アルビオンを、トリステインの青地の旗で染め替える戦争でもあるのだった。

「では諸君、我らも行こう、雲の上なるアルビオンへ!
 かの地に真の『千年王国』を築き、万民を救済する計画のために!!」

 「「AMEN!! AMEN!!」」

松下率いる『千年王国教団』の精鋭も、メシアに鼓舞されて出征する。
かくして、ここにトリステイン・アルビオン大戦の第二幕は上がったのであった。


ラ・ロシェールの『世界樹桟橋』から、総数500隻を超える大艦隊が浮かび上がる。
戦争終結はアルビオン全土の制圧まで。その間、ラ・ロシェールとタルブが後方支援を行う。
両国の首脳陣は、出征を見送ると、各々の首都へ帰っていった。ウェールズの棺も一旦トリスタニアに戻る。

さて、松下とルイズは自前のフネから、旗艦たる竜母艦(空母)『ヴュセンタール』へ移る。
トリステインの切り札『東方の神童』及び『虚無の担い手』として、軍議に参加するのだ。
甲板士官のクリューズレイが出迎え、狭い艦内の奥にある会議室に案内する。
一番上座に座るのは、四十過ぎの美髯の将軍。

「ようこそ、お二方。我が軍の旗艦『ヴュセンタール』へ! ご活躍は聞き及んでおりますぞ。
 改めまして、総司令官のオリビエ・ド・ポワチエです。今後ともよろしく。
 こちらは参謀総長のウィンプフェンに、空軍指揮官のラ・ラメー伯爵。
 それにゲルマニア軍司令官の、ハルデンベルグ侯爵です。他、多数の将軍・参謀らが集っています。
 教導士官のボーウッド卿は、ただいま艦隊の視察に当たっておられます。ブラウナウ伯爵も一緒だそうで」

「よろしく、諸君」
「よ、よろしくお願いします」
「はは、まあ楽にして、お座り下さい。ミスタ・マツシタにミス・《虚無(ゼロ)》」
「ミス・ルイズ・フランソワーズと呼んであげて下さい。彼女を兵器扱いしてはいけない」
「いや、これは失敬。ミス・ルイズ・フランソワーズ、お許しを。
 ……では、ひとまず軍議を始めてしまいましょうか。議題はこれですな」

皺の深い小男、ウィンプフェン参謀総長が司会役となり、配られた資料を読み上げる。
「ええ、アルビオンまではラ・ロシェール空港からフネで約半日、大艦隊ですのでまあ、夜半には着きます。
 そこで上陸作戦を敢行するわけですが、目的地となる大型の軍港は二つ。
 アルビオン最大の軍港ロサイス、これは大陸の南部にございます。地図ではここですな。
 もう一つ、この規模の大艦隊が上陸できるだけの空港となりますと、やや遠回りして、
 北部にあるこのダータルネス港しかありません。スカボローは狭すぎます」
アルビオン大陸の、長方形の地図をウィンプフェンが指差す。南北600リーグ、東西は120リーグほどか。

「最短距離でなら、ロサイスを正面から強襲するのが早かろうが」
「敵もそれなりの準備をしておりましょう、こちらの被害も大きくなりますぞ。
 長途来た我々には、補給線を確保するとともに、首都ロンディニウムに着くまで軍の消耗を抑える必要もあります」
「風石にも、火薬にも限りがある。二分して一方をダータルネスに向かわせ、そちらに敵をひきつけている隙にだな」
「その囮は、当然トリステインがやるのでしょうな?」
「何ィ? 共同作戦に決まっとろうが、侯爵」
「トリステインとゲルマニアでは、話す言葉も指揮系統も大いに違いますものでなァ」

なんと、連合軍は未だに上陸地すら決まっていなかった。
ラ・ヴァリエールとツェルプストーの争いに代表されるように、始祖以来続くトリステインと新興国ゲルマニアは、
本来は水と油、いや『水と火』の関係なのだった。よく連合軍などできたものだ。


どうやら上陸作戦の障害は、いまだ有力なアルビオン艦隊に対する錬度の高くない自軍、
そしてダータルネスへ敵を吸引する欺瞞作戦の不備、の二点であるようだ。
松下とルイズは口を閉ざし、両国将軍達の論争を呆れ顔で見ている。なんとも凡将揃いの大軍なのであった。

と、そこへカンカンカンカンという警鐘の音が鳴り響く。伝令兵が会議室に走りこんできた。
「敵襲! 敵襲です!!」
「なんと、もう迎撃に来おったか。空中で艦隊を待機させていたか?」
「い、いえ将軍、襲ってきたのは人間ではありません!!」
「あァ?! 野良竜でも出たか?」
「いいえ、『悪魔』です」

ぐにゃり、と伝令兵の顔が醜悪に歪み、背中から大きな黒い皮翼が生える。
尻からは長い蛇のような尻尾が伸び、口から炎の玉が吐き出された!
「うおっ!?」
「閣下、危ないっ!」
士官が咄嗟に『水の槌』を放ち、ド・ポワチエを狙った炎を掻き消す。

「ケケケ、命拾いしたな。けどよ、もうこのフネは俺たちのものさ!」
「こいつは……ダンテの地獄第八圏第五濠『汚職収賄の濠』に棲む、低級鬼神のマラコーダ(邪悪な尻尾)か。
 俺たち、ということは、他のマレブランケ(悪しき爪)の連中も来たのか?」
「そーだよぉ、『東方の神童』さまぁ!! バルバリッチャにカニャッツォ、
 スカルミリオーネにカルカブリーナ、ついでに阿呆のルビカンテ! その他もろもろ、愉快な仲魔が勢揃いさ!」

マラコーダは、ぶばっと黒い屁をこくと、その煙に紛れて姿を消す。
甲板に飛び出すと、雲霞のような悪鬼(デーモン)の大群が、このフネに飛び降りてくるではないか!
彼らは地獄の獄卒マレブランケと、空中に潜む妖怪グレムリンだ。
一体一体はせいぜいオーク鬼程度の強さだが、数が尋常ではない。フネは大混乱に陥る。

「ここが旗艦だ、こっちに来い! よォし、てめえら地獄の悪鬼よ、人間どもをぶっ殺せ!」
「ひひひ、いざ、奴らをイナゴのように食い荒らしちまえっ!」


《朝になると、東風がイナゴの大群を運んで来た。イナゴは、エジプト全土を襲い、エジプトの領土全体にとどまった。
 このようにおびただしいイナゴの大群は前にも後にもなかった。イナゴが地の面をすべて覆ったので、地は暗くなった。
 イナゴは地のあらゆる草、雹の害を免れた木の実をすべて食い尽くしたので、木であれ、野の草であれ、
 エジプト全土のどこにも緑のものは何一つ残らなかった》
  (『モーセの十災・イナゴの災い』:旧約聖書『出エジプト記』より)

《噛み付くイナゴが残した物は、移動するイナゴが食らい、移動するイナゴが残した物は、若いイナゴが食らい、
 若いイナゴが残した物は、食い荒らすイナゴが食らった》
  (旧約聖書『ヨエル書』第一章より)


空中で悪鬼の指揮を取っているのは、ベリアル配下の小悪魔・こうもり猫とマラコーダだ。
グレムリンは兵士や竜に取り憑き、火薬を暴発させ、フネの操縦を誤らせる。
マレブランケは大きなフォークを振り回し、兵士を突き刺し、掬い上げては甲板の外へ放り投げる。
空賊よりタチが悪い。哄笑と羽音と断末魔が響き渡る。

「な、なんだ、これは!?」
「アルビオンが操る『悪魔』、いや『悪鬼』どもです。
 なるほど、渡ってくる途中で叩けば、にっちもさっちも行きませんな」
「感心せんでいい! な、なんとかしたまえ! きみも『悪魔使い』だろう!」

「そうですな。ルイズ、きみの持っているバッグの中に、小さな金属の壷がある。それを出してくれないか」
「ご主人様に命令するなっ! ……こ、これね」
「命令ではない、依頼だ。では、ぼくはこの網を取り出して、と」

松下は、魔法のかけられた投網を取り出し、呪文とともに天へ投げ上げる。
すると網はパアッと広がり、フネ全体を包み込んだ。
再び呪文を唱えると、悪鬼だけが網にかかり、その網が見る見る縮んでいく。
遂に網は何百という悪鬼ごと、金属の壷に吸い込まれてしまった。松下はきゅっと壷に蓋をする。

「これでよし、と。天網恢恢、疎にしてなんとやらだ。残りの掃討は竜騎士に任せよう。
 さ、方々、軍議を続けましょうか……」
「「は、はい! マツシタ伯爵!!」」


《(イエスは)シモンに「沖に漕ぎ出して網を降ろし、漁をしなさい」と言われた。
 シモンは「先生、私たちは夜通し苦労しましたが、何もとれませんでした。
 しかし、お言葉ですから、網を降ろしてみましょう」と答えた。
 漁師たちがそのとおりにすると、おびただしい魚がかかり、網が破れそうになった。
 …(彼らは)二艘の舟を魚でいっぱいにしたので、舟は沈みそうになった。
 …すると、イエスはシモンに言われた。「恐れることはない。今から後、あなたは人間をとる漁師になる」
 そこで、彼らは舟を陸に引き上げ、すべてを捨ててイエスに従った》
   (『シモン・ペテロの弟子入り』:新約聖書『ルカによる福音書』第五章より)


結局、連合軍の上陸作戦は次のようなものとなった。

連合軍の主力は、このままロサイスへ向かう。ただし、ゆっくりと。
一方ダータルネスへは、松下とルイズと『千年王国教団』の兵が向かう。
そして、『虚無の魔法』で敵軍の増援をダータルネスへ引き付けておき、油断したロサイスを叩く。
紛糾の末の、ベターな作戦であった。ルイズの提案という点を除けば。

「まさか、きみが作戦を立案するとはな。しかも、それが通るとは」
「あんたばっかりに活躍させないわよ。私だって『虚無の担い手』なんだし。
 この『水のルビー』の指輪を嵌めて『始祖の祈祷書』をめくったら、いい呪文が浮かんだのよ」

『虚無の魔法』か。松下には『祈祷書』を読めないが、今ルイズが使えるのは、爆発と解呪だけのはず。
……いや、タルブでは松下と同一の呪文を唱え、協力して『地獄の門』を開けたのだった。

「……そういえばエロイムエッサイムとか、タルブでの戦いの時の呪文や、
 ラグドリアン湖での『ヘカス・ヘカス・エステべべロイ』はこちらのルーンではないぞ。
 『東方』のヘブライ語やギリシア語、あるいは古代エジプト語でも書いてあるのか?」
「知らないわよ、そんなの。あんたを召喚したときは、以前読んだ魔法書にそういう呪文があったから、
 必死に唱えてみただけだし。『祈祷書』に浮かぶのは確かにこう、こんな文字だった気はするけど、
 呪文は直接頭の中に響いてくるの」

ルイズは、メモ帳代わりの羊皮紙にさらさらと文字を書く。
……これは、『エノク語』だ。16世紀末に英国の神秘主義者ジョン・ディーが発明したとされる、
架空のオカルト文字だ。始祖ブリミルとは、一体……?

「それに、呪文を唱える前のトランス状態の時、こんな言葉も聞こえたの……」

《我は始祖、ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ。
 我が知りおきし真理をこの書に記す。資格なき者はその真理を知ることあたわず。

 この世の全ての物質は、小さな粒より成る。四大系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめるなり。
 神が我に授けたまいしは、さらなる小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしむる力なり。
 四にあらざれば、これを『零(ゼロ)』、すなわち『虚無』と名づく。

 これを読みし者は、我の行いと理想と目標とを受け継ぐ者なり。またそのための力を担いし者なり。
 志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし『聖地』を取り戻すべく努力せよ。
 虚無は強力にして詠唱は長きにわたり、時として命を削る。汝、心せよ……》

「……ってね。我ながらよく覚えているものだわ、『虚無の担い手』だからかしら」
「……ふぅむ……」


ともあれ、わずか3隻の『千年王国艦隊』は、夜陰に乗じて北のダータルネスへ急ぐ。
しかし、敵も簡単にはアルビオンへ近付かせない。
「おおっ、メシア! 敵の警戒線に接触し、哨戒カラスが我々を発見した模様! 竜騎士がやってきます!」
「よし、『魔女のホウキ』部隊出撃だ! 竜の翼を狙い、撃ち落せ。日ごろの訓練の成果を見せろ!
 ただし、なるべく生き残ることを優先しろ。ルイズとぼくは一番早い風竜でダータルネスに急行する!」
「了解!!」

ホウキ部隊が手に手に杖や銃を構え、竜騎士と戦う。小さな艦隊からも砲撃が始まった。
ダータルネスまで、距離にして数百リーグ。そこへ到達できるのは二人だけでよく、あとは援護に回る。
快速船で飛ばしても片道丸二日以上はかかるところを、数時間でぶっ飛ばす。
風竜の能力を最大限まで引き出す、『神の右手』ヴィンダールヴだからこそ出来る芸当であった。

やがて、眼下にダータルネス空港が見えてきた。
ルイズは防寒具にくるまり、呪文を呟きながらトランス状態に入っている。松下は、それを無言で見守る。

ブリミル。ぼくの記憶が正しければ、北欧神話の原初の巨人ユミルの別名の一つだ。
まさかその本人ではあるまいが、ルーンだの世界樹だの、この世界には北欧神話と似たような要素が多い。
なぜ、エノク語? 物質の小さな粒とは、原子か素粒子か?
そういえば、この世の初めは大きさが『ゼロ』にほぼ等しい極微粒子で、そこからビッグバンが……。

「アパラチャノ・モゲータ!! 実質に等しき大いなる幻よ、この空間に漂うべし!
 虚無の魔法の初歩の初歩、『幻影』!!」

ルイズの叫びとともに、空間の『極微の粒』がゆらぎ、白い雲の中から巨大な幻影が現れる。
先ほどまでいた、60隻の連合艦隊の立体映像だ。
「おおっ」
これには松下も驚いた。圧倒的な迫力で、本物と見分けがつかないではないか!
「よし、この幻影に紛れて、全速力で離脱する!」

だが、ダータルネスを防衛する竜騎士たちは、風竜に跨ってぐんぐん近付いてくる。
「マツシタ! このままでは、追いつかれるわ!」
「ならば、この壷を使ってしまおう。トペ・エト・ラリリ、トロトペ、タッ!」
松下が先ほどの壷に呪文を呟き、蓋を開くと、雲霞のような悪鬼どもが出てくる。
その目は虚ろで、足には例の網の糸が絡みつき、敵と味方の判断もつかない。相討ちになり、次々と墜落する。
悪鬼どもが竜騎士を足止めしているうちに、松下たちは離脱に成功した。

「これで、アルビオン軍が騙されてくれるといいのだがな」
「はああ、疲れたわ。早く戻りましょう、マツシタ」


その頃ロサイスでは、敵の守備艦隊と連合軍主力による砲撃戦が始まっていた。
轟音、雷火! 木片と肉片が飛び散り、フネ同士が激突して軋む。焼き討ち船が突撃し、爆発する。
アルビオンは三列縦隊を組んで善戦するが、包囲陣を突破するには、やや戦力差がある。

「よおし、我がゲルマニアの誇る火砲の威力、思い知るがよい!!」
興奮するハルデンベルグ侯爵。一斉に連合艦隊の大砲が炸裂し、囲まれていた敵艦が轟沈する。
「わはははは、やはり戦場はいいのう! この轟音、硝煙と血肉の香り、たまらんわい!
 そおれ敵の空兵ども、総員玉砕せいっ!! わははははは」

その隣に、すっと小柄な黒髪の男が立つ。
「では、私も砲火をお目にかけましょう。火の国ゲルマニアとロマリアの同盟、成れり!
 『ヒンデンブルグ』号、空対空ミサイル『サイドワインダー』発射!!」
「「了解! 『サイドワインダー』、発射!!」」

ちょび髭のゲルマニア貴族、アドルフ・ヒードラー・フォン・ブラウナウ伯爵の命令の下、
彼の率いる軍団のフネ『ヒンデンブルグ』から、細長い円柱状のものが何本も射出される。
それらは逃げ回る竜騎兵やフネを蛇行しながら追いかけ、至近距離で爆発した!

「お、おお伯爵、アレは?」
「我々『薔薇十字団』の最新技術で作られた、特殊飛行兵器『サイドワインダー』です。
 まぁ、火薬の詰まった巨大な鉄の火矢を撃ち出すようなものですな。
 先端部に魔法技術を使用しておりまして、動き回る標的にも確実に命中いたしますぞ」
「おほっ、また当たりよった! 素晴らしい!」
侯爵は、玩具を見た子供のようにはしゃぐ。ブラウナウ伯爵も、面白そうに目を細めた。

「うふふふ、ご所望ならば、六本セットからお売りしましょうか? 値段はこれほどで済みますよ」
「おお、案外安いではないか。よし、わしの侯国で予約注文させてもらおう」
「お買い上げありがとうございます、ハルデンベルグ侯爵。今すぐ手配いたします。
 我々の新兵器はまだまだありますから、じきにお見せしましょう。実戦の場でね」

死の商人が笑う。戦争は戦争によって栄養を取る、この軍拡の原理はいつ、どこの世も変わらない。
『ヒンデンブルグ』号には、鈎十字(ハーケンクロイツ)の軍艦旗がはためいていた……。

(つづく)


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