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ゼロのFカップ

 ゼロのFカップ




 ルイズがその使い魔を召喚したのは今から何年も前の話である。
 名を平賀才人と言うその使い魔は、最初は美男子とも言えないまでもそれなりにまともな青年であった。
 しかし使い魔召喚の儀で平民を呼ぶなど前代未聞である、ルイズは大層使い魔にきつく当たった。

 異変が起きはじめたのはサイトがギーシュ・ド・グラモンとの決闘に勝利してからであった。
 毎日毎日才人に鞭を入れていたルイズだからこそ気づいた違和感。
 鞭が……鈍い。
 いや鈍いと言うより手ごたえがおかしいと言うべきか、
 最初の頃の骨ばった肉を叩く感触からまるで水袋を叩くような感触になってきたというべきか。
 そう考えてみれば最初の頃よりも随分と才人の体は福々しく、顔にもテカテカと脂の照りがある。
 さて自分は粗末なスープとパンしか与えていない筈だが一体何処からこれほどの脂が湧いて出たのか?
 答えは簡単に見つかった。
 ギーシュを倒したことで一躍平民の英雄となった才人は平民たちから毎食たらふく飯を馳走になっていたのである。

 最初は気を使って無理に食べていたとしても、毎食毎食そのような有様では胃も膨れる。
 ルイズに毎日鞭を貰うせいで鬱積したストレスの影響もあったかもしれない。
 いつしか才人の暴食とも思える大量の食事は当たり前の光景となり、
 マルトーがうまいうまいと言って食事を平らげる才人に熱い視線を向けることは厨房の風物詩となった。
 となれば運動で消費しきれなかったカロリーは脂となって才人の体にへばり付く。
 次第次第に才人のウエストは横に向かって広がっていき、ルイズは何度も涙ながらに少ない小遣いのなかから才人の服を特注で買うことになった。

 そんな折り学院から<破壊の杖>が盗まれると言う事件が起こった、日々食ってばかりの才人もさすがに気まずかったのだろう、主のルイズとふとっちょ仲間であり無二の親友となったマリコルヌと共にフーケの討伐隊に志願したのである。
 途中で馬を二回ほど使い潰し、鬱蒼と茂る森の中に踏み込んだ討伐隊一行が踏み込んだ頃にはあたりはとっぷりと暮れていた。
 そこでフーケの作り出した三十メイルはあろうかと言う巨大ゴーレムを見た。
 学院を襲ったゴーレムより一回りも大きいその巨体にルイズは破壊の杖を振り回して応戦した。
 しかし黒光りするその杖は一切魔法の力を発揮する事無く、無慈悲にも土の塊がルイズ踏み潰した。

 その時である。
 地響きがする――と思って戴きたい。
 何事かとゴーレムの上からフーケが見下ろした先に立っていたのは、随分と丸くなったルイズの使い魔であった。
 ただの人間の筈の使い魔がフーケのゴーレムの足を防いでいるのである。
 このような土の塊を常人では一瞬たりとも支えきれる筈はない。
 だが才人は違った、まるでゴム毬のように弛んだ体でゴーレムの足を押し返しているのである。
 明らかに尋常ではない。
 呆然と才人を見つめるルイズの目の前で、才人の胸に刻まれた使い魔のルーンが淡い光を放っていた。
 始祖ブリミルの伝説の使い魔であった。

 もっともそんなこと周囲からすれば分からない。
 マリコルヌとルイズが見たのは、巨大なゴーレムをその身一つで投げ飛ばすデブの姿だった。
 フーケは何度もゴーレムをけしかけるがゴーレムのパンチはそのぽよよんと弾む体の前には一切の無力であった。
 結局三度自慢のゴーレムを破壊されるに至りフーケはその場から逃げ去り、後には腰を抜かしたルイズとデブが二人残された。

 いかに無様であろうとも破壊の杖を取り戻した功績は功績。
 その為ルイズは才人にあまり強く当たれなくなり、才人も才人でこの頃には脳まで脂が回っていたのかより一層暴食を進めるようになった。
 諦め顔で溜息を付くルイズの苦悩など何処吹く風、可愛いご主人様とうまい飯――異世界サイコーと才人は思い始める。

 そんな才人は、平民たちからすれば平民でありながらトライアングルクラスのメイジを退け、破壊の杖を取り戻した大英雄である。
 しかも彼は体術のみで賊を屠ったと言う、ならば英雄譚を望む者たちや数少ない武芸を嗜む者たちに話を乞われるのもある種必然と言えた。
 さて困ったのは才人である。あの時は体が勝手に動いたのだ、これと言って体術に心得がある訳ではない。

 だがしかし目の前で瞳を輝かす者たちの夢を無碍に砕き散らすのも忍びない、そこで才人の霜降りとなった脳みそは素晴らしいアイデアを捻り出した。
「あのな、俺の故郷の競技なんだけど……」




 ――今日もタルブの村に地響きと歓声と肉同士がぶつかる音が木霊する。
 ――体中に重々と脂肪を付けた男たちが睨みあい、裸体の上に塩を擦り付ける。
 ――それを見て、タルブの草原を埋め尽くす老若男女たちが一様に黄色い悲鳴をあげる。
 ――行司のルイズがうんざりとした顔で黒光りする<破壊の杖>を振るい、高々と宣誓の言葉を吐いた。

「トリステイン第三十二回F(ふとっちょ)カップ第二幕東四番。 西、マリコルヌ山。東、ワルド海」

 ――トリステインによるハルケギニア統一を祝しての大一番である。

「見合って、見合って」


 どすこい





 元ネタ:京極夏彦より「どすこい」

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