あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

魔法少女リリカルルイズ39


闇を閃光が切り裂いた。
仮面の男の杖がまさしく閃光のような鋭さでユーノの胸に迫る。
「デル・イル・ソル・ラ……」
ユーノの振り上げるデルフリンガーが仮面の男の杖とぶつかり、小さく火花を上げる。
デルフリンガーの剣先は天を向き、男の剣先も天を向く。
勢いのままにユーノは弾むように後ろに飛び退いた。
軽い男の杖の方が先に攻撃可能となる。ルーンの直感がそう教えてくれたからだ。
そして、その通りに男は風切る音を鳴らす杖を振り下ろした。
「ウィンデ」
それで男が唱えていた呪文が完成する。
杖先に突如現れた空気の固まりが槌となった。エアハンマーの魔法だ。
ユーノはさらにもう一歩飛び下がり、剣から離した左手を広げ前に突き出す。
「シールド!」
エアハンマーがシールドとぶつかる音が夜のラ・ロシェールに響く。
手をたたき合わせたような軽い音だが、シールドを支えるユーノの腕には衝撃がわずかだが届いた。
「ふぅ、相棒。危なかったな。その光の盾がなかったら、骨の2本……いや5、6本くらい折れてたぜ」
ユーノの返事はない。
ただ、荒い息だけが連続している。
体が酸素を求めて、肺を無理矢理動かしていた。
咄嗟に返事などできはしない。
「あいつ、並じゃねえな」
町を覆うほどの木の化物。
無数のロケット砲を備えたゴーレム。
どちらも単純な攻撃力で言えば仮面の男よりもずっと強力だが、この男にそれらにない物がある。
優れた技量。
対人戦闘の経験の浅いユーノには、それは単純な破壊力よりもずっと恐ろしい。
今、仮面の男との距離は剣の間合いではなく魔法の間合い。
二つの月の光が互いの姿が隠すことなく見せている。
「来ない……か」
男がぽつりと呟く。どこかで聞いたような声だった。
「なら、先に行かせてもらうとしよう」
男が駆けだした。
ユーノに向かってではない。
桟橋に伸びる道につながる小さな路地に向かい駆けだしたのだ。。
「あっ!」
ユーノは男を追って走る。
空を飛ぶ魔法は使えない。重なる屋根が仮面の男を隠してしまう。
ルイズ達を追わせるわけにはいかないのだ。
息切れはまだ続いているが、ルーンがユーノの足に力を与えてくれる。
風の速さでユーノは仮面の男の前に駆けだした。


剣と杖、魔法とシールド、そして追跡。
ユーノと仮面の男はそれを何回も続け、そしてなおも続いていた。
戦う場もいつしか移り変わり、横に見えるラ・ローシュの整えられた崖の上にはフーケのゴーレムだった残骸が見える。
互いに相手を倒すほどの一撃を繰り出すせてはていない。
仮面の男が回り込み、桟橋に走ろうとすれば、ユーノはその前に立ちはだかる。
仮面の男の魔法はユーノのシールドに防がれる。
そして、ユーノの剣は仮面の男を倒せはしない。ユーノにはそれができない。
互いに決め手を欠いている。
──ルイズを追わせないなら
それでいいはずだ。
ワルド子爵もいるが、ルイズを守りながらの戦いでは不利になるはず。
だから、仮面の男はここで止めておかなければならない。
ユーノは仮面の男の動きを注視する。
──次は魔法、杖、それとも……
仮面の男はじりじりと間合いを詰め、また間合いを開ける。
そして、もう一度間合いを詰める、かとも思ったが仮面の男は足を止めた。
「終わらせるとしよう」
仮面の男が杖を空に突き出す。
杖の先から巻き上がる風は頭上のゴーレムの残骸とぶつかり、微妙な平衡を持ってそこにあった残骸を大きく揺らす。
そうなれば、支える物のない岩はその身を重力に任せ遙か下へとただ、ただ落ちていった。
その下にいるユーノはわずかに顔を上げると、左手を頭上に掲げた。
直後、光の魔方陣が湖面に広がる波紋のように姿を現す。その儚げな見かけとは裏腹に光の魔方陣は落ちる残骸を全てはねとばす。
同時に身を低くした仮面の男は呪文を唱えながら前に飛んだ。
「あっ!」
ユーノの作るシールドの傘の下に潜り込んだ仮面の男が呪文の最後の一説を唱える。
「ウィンドブレイク」
杖の前に渦巻く風が現れる。
さらに踏み込んだ仮面の男が杖を振ると、風は暴風となりユーノを襲った。
「う、わぁあっ!」
ユーノはデルフリンガーを振り下ろそうとする。が、体が硬直する。
わかっているのだ。剣では魔法は防げない。
「相棒!振れ!思いっきりな!」
デルフリンガーの怒鳴り声に押されるようにユーノは剣を振り下ろす。
切れるはずのない魔法の風を斬らんばかりの勢いで。


デルフリンガーが魔法を切り裂いた。少なくともそのように見えた。
魔法の風の中に入ったデルフリンガーは突如、光を放つ。
光の中で風はねじれ、うねり、刀身の中に吸い込まれていった。
「なにっ!?」
男が驚きの叫びを上げる。
それは、魔法がデルフリンガーに吸い込まれた事のみによる物だけではなかった。
振り下ろしたデルフリンガーは地面とぶつかり固い感触を腕に伝える。
その少し前、デルフリンガーは地面とは別の固い感触をユーノの腕に伝えていた。
今、ユーノの目の前に仮面の男はいない。
仮面を切り裂かれ、素顔をさらした男が1人いるのみ。
しかもユーノはその男を知っていた。
その男はユーノが信頼し、信用できると思った男だった。
ルイズを守ってくれると思った男だった。
「ワルド……さん!?」
ワルドはルイズと桟橋まで行ったはず。
そのときには間違いなくワルドと仮面の男は同じ場所にいた。
なら、このワルドは?
ユーノは心当たりを1つ見つける。
ルイズと風の魔法のレポートを書いていたときに調べたあの魔法なら……
「わかったようだな」
ワルドは唇をゆがめ、その表情に悪意を隠そうともしない。
「だが、私の勝ちだ。見たまえ」
ワルドの天を指す杖の遙か上を、空を飛ぶ帆船が通り過ぎていく。
「あれが……船?」
見ただけでは、どのような技術を使っているかはわからないが次元世界を探しても滅多に見られないような航空機だ。
あの、帆船のような形をした航空機こそフネなのだろう。
ユーノの目の前でフネは腹を、次に背中を見せる。
ルイズはあのフネの中にいるはずだが、その姿はユーノは見えようはずもなかった。
見えるはずもないが、ユーノは確かに船の中にルイズの存在を感じていた。
ユーノはその感覚に手を伸ばし、のばしきっても届かず、石畳を蹴る。
それでも届かず、魔力を体に纏わせ、空を飛んだ。
「私の勝ちなのだよ」
口の端をゆがめるワルドの持つ杖が、魔法を紡ぐ。
魔法の力はわずかに口笛の音を立てながら空気を集め、その固まりをユーノめがけてごうっと振り下ろした。
「わぁっ!あ、あああっ!!」
ユーノの体をくの字に曲げて地面にぶつかる。何かが砕ける音が体のどこかでした。
次に、ユーノの体は伸びきって弾み、路地の中に飛び込んでそこに置かれた木箱の上に落ちる。
月明かりがあるとはいえ、今は夜だ。
うっすらとした埃が路地の入り口をふさいでしまった。
「ふ……む」
ワルドは振り下ろした杖を再び上げ、次の呪文を唱える。
組み合わせるのは、風を3つ。
少年1人を砕くには十分な数だ。
倒すではない。殺すでもない。
ワルドはユーノの体を砕こうと、呪文にあわせて杖を振った。


「がぁああああああああっ!?」
ワルドの口から出たのは呪文の最後の一節ではなかった。
苦痛の叫びを上げ、地面を転がる。
杖と共に貴族の象徴であるマントが深紅に燃え、彼の背中を飾っていた。
「ワルド子爵。今のはどういうわけかしら?」
ワルドを燃やす火の魔法の使い手の声が夜の町に響く。
炎に照らされる赤い髪と褐色の肌。
伸ばした長い手に杖を持ち、倒れているワルドを見下ろすのはキュルケ・フォン・ツェルプストー。
彼女の右には眼鏡の奥から静かな視線を向けるタバサが体には不釣り合いな杖をワルドに向け、その左にはしきりにワルドとキュルケを見比べるギーシュがおろおろしていた。
「彼は私達の敵だったのだ」
「あら、それは嘘ですわね」
杖を振るう音が小さくする。
ワルドがその音の元を見ようと首を動かしたとき、タバサの唱えたウィンディアイシクルの氷の槍がその体を貫ぬいた。
とたんに突風が吹き上がり、ワルドを包む炎がさらに大きくなった。
「し、子爵が。あぁあ……き、君たち。何をしたかわかっているのか?」
大きく開いた口をわななかせて、無意味に手足を振り回すギーシュを無視してキュルケは燃えるワルドを蹴飛ばしたが、彼女の足には何も当たらない。
「え?」
「よく見なさい。何もないわ」
蹴散らされた火が爆ぜて消えていくだけだった。
「ど、どういうことだい?」
「あなた、授業を聞いていなかったの?」
ため息混じりにのキュルケが足下の火を踏みつけていく。
すでに魔法の効果の切れた炎はそれだけで消えていった。
「ミスタ・ギトーが言ってたでしょ。飽きるくらいに。風の遍在よ」
「遍在?」
「そう、遍在。あのお髭の子爵様、スクエアだって話だし。それなら、風の遍在が使えても不思議じゃないわね」
「だったら、子爵が言ってたようにあのユーノという子供がルイズ達の邪魔をしようとして、それで子爵が魔法を使ったんじゃないのか?」
「あ、それはないわね。絶対に」
根拠など無い女の堪ではあるが男のこととなるとキュルケはこれを滅多に外さない。
タバサのことで外したことはあったが、あれはタバサが女なので数には入れていない。
そのタバサはと言うと、ユーノが飛び込んだ路地の入り口にしゃがみ込んでその中を杖で探っていた。
「何か見つかった?」
こくりとうなずいて、タバサは立ち上がって振り向く。
手の中には小さな白いフェレットが抱かれていた。
「みつけた」
「あら、そっちのユーノ?人間のほうは?」
「いない」
タバサの胸元でユーノはぐったりと動かない上に、元は淡い琥珀色の毛皮の所々には赤い汚れがついている。
ワインや果物の染みではない。間違いなく血だ。
「大丈夫なの?」
タバサはうなずく。
「傷はふさがっている。息もしている。平気」
ユーノがわずかに動いて空に向かって小さく鳴く。
キュルケにはそれが空にいるルイズに声を届けようとしているように見えた。


その後、キュルケ達はゴーレムが暴れた現場を急いで離れた。
ゴーレムがいなくなって、ようやくラ・ロシェールの衛兵達が駆けつけてきたのだが、キュルケ達はそれにつきあうつもりはなかった。
これで静かになって今後のことを考えられるかと思ったがそうはいかない。
「あぁ、どうしよう。どうしよう。僕はこれからどうすればいいんだ」
頭を抱えるギーシュがそこら辺を歩き回って、かなりうるさい。
「少しは落ち着きなさいよ」
「落ち着けるものか!一体ルイズはどうなったんだ?子爵は何をやっていたんだ?任務はどうなるんだ?」
「黙りなさい!」
魔法で作った炎でギーシュの髪の毛を軽くあぶってやった。
少しは静かになるかと思ったが、逆にギーシュのわめき声で騒がしくなってしまう。
「はぁーー、これからどうしよう」
ため息をつくキュルケに頭の火を消し終えたギーシュが勢い込んで答える。
「もちろん僕はルイズを追う。そして任務を達成する!」
「あんた、ルイズがどこに行ったか知ってるの?」
「う……アルビオンじゃないかな」
「そんなことわかってるわよ」
またため息が漏れる。
そんなことは分かり切っている。
こいつは当てになりそうにない。
「ねえ、タバサ。貴方はどうするの?」
「追いかける」
即答だった。
しかも、それはたぶん無いだろうと思っていた答えが即答で返ってきた。
「本気?」
タバサはいつものように無言で首を縦に振る。
ワルド子爵が怪しいのなら、ここから先は今までよりもさらに危険になるかもしれない。
戦地のアルビオンに行くとなればなおさらだ。
それなのに、タバサがそこまでしようとするとは思わなかった。
「貴方、そんなにルイズと仲良かった?」
今度は首を横に振る。
「でも心配。だから行く」
それならキュルケもタバサを1人で行かせのは不安になる。
ギーシュも着いていくのならなおさらだ。
キュルケまでルイズの心配をしているように見られそうなのが釈然としないが、
「ま、一緒戦った仲って事にしておきましょう」
キュルケはそれで納得することにした。
とはいうものの、それでも問題はまだある。
「ねえタバサ。あなたのシルフィードでアルビオンに行ける?」
タバサは黙って肯定する。
いつもながら、簡単な答えだ。
「じゃあ、アルビオンまではそれで良いとして問題はアルビオンのどこに行けばいいかよね。ギーシュはどこが目的地かは知らないって言うし……」
「うむ。目的地はルイズにしか伝えられていない。重要な任務だからね」
──ダメだ。こいつ本当にダメだ
三回目のため息をつき、キュルケは夜空を見上げる。
とりあえず、アルビオンに行ってみるのがいいかもしれない。
アルビオン最接近より前の日にラ・ロシェール出て、アルビオンの港に入るフネはかなり珍しいはずだ。
そこから辿れるかも知れない。
──よし、これでいきましょう
「うわああ?わあ、あぁあああああ!?」
ようやく決まった決心を台無しにするギーシュの叫び声。
キュルケが赤い怒りを宿したような視線を向けると、ギーシュの背がどんどん伸びていく。
「た、助けて。助けてくれぇえ」
よく見ると背が伸びているわけではない。
ギーシュの足下がどんどん盛り上がっているのだ。
木の芽が土を割る様子にも似ているが、そんな物とは比べものにならない速さでまだ盛り上がる。
「だ、誰か。だれぁ……ぐあっ」
ふるえる足を踏み外したギーシュはひっくり返って盛り上がった土の上から落ち、後頭部を石畳にぶつける。
目を回すギーシュの上に黒い影がのしかかった。
土をふるい落とし姿を見せたのはギーシュの使い魔ヴェルダンデだった。


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