あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロギアス-02

「オールド・オスマン!こちらです!早く!」
「…ミスタ・コッパゲール、そんなに興奮すると、ほれ、頭皮に…」
「私の名前は…そんな事より!急いでください!」
必死な形相のコルベールに急かされながら、オールド・オスマンが学園の正門前まで来たとき…

強烈な風が吹いた。

否。
風など吹いてない。
ただ…圧倒的な力の奔流が吹き荒れ、それが暴風が如く威力で迫っただけだった。

そして…
十数メイル先…その荒れ狂う暴風の中心には…
コルベールが言う、ミス・ヴァリエールの使い魔候補が…杖も無く宙に佇んでいる。

「…むぅ…」
オールド・オスマンが小さく唸る。
100年とも300年とも言われる程の長い人生。
当然、強敵にも出会ったし、常勝という訳でも無かったが…
それでも、これほどまでに圧倒的な存在は見たことが無い。
しかも…
『これ』は、こちらに意識を向けてる訳ではなく、ただそこに存在しているだけ…。
「やっかいなものを召喚しおったの…」
半ば無意識に、そう呟いていた…。

―※―※―※―※―

「我はグラーフ…力の求道者…」

そう答え、宙に浮くそれを見ながら、ルイズは頭を高速で働かせていた。

あれ?こいつ心臓止まらなかったっけ?
というか、なんで飛んでる。って事は私、メイジを召喚しちゃったの?
どうしよう!高名なメイジだったら…怒らせたらマズイわね…
でも「私が召喚しました~」なんて言って怒らないメイジなんて居るわけ無いし…はい、マズイ事態、決定。
ってか、こいつ杖持ってないじゃない!
じゃあ平民か。なら安心。
違う!!平民なんか召喚したくないわよ!それこそ『ゼロ』ってバカにされるじゃない!!
あれ?でもこいつ飛んでるし…平民は飛べないし…
先住魔法!?まさかエルフ!?
いや…むしろ…こいつ、悪魔じゃね?
あはははは。バンザーイ、『ゼロのルイズ』は悪魔を召喚しました~。あはははは…

高速で考えを巡らせ…そして、完全にパニックに陥っていた。


一方…

グラーフも、その仮面の下で考えを巡らせていた。

ここは何所だ?
我はあの時、ゾハルの中に身を沈め消滅した筈では…
そして何より…この大気から感じるエーテルの量。
ゾハルの波動と比べれば遥かに劣るものだが…
いや、そもそもゾハルが高次元に回帰すれば、エーテルそのものが無くなる筈…
フェイはしくじったのか…?
いや、それは無い。
我の本来の魂と、我の憑依している者の意思。そしてゼノギアス…しくじる道理が無い。
では一体…

そこまで考えた時、自分を見る二つの視線に気付いた。
そしてその方向に首を向け…

「…なんと…」

空に浮かぶ二つの月を見た。

―※―※―※―※―

「なんと…」

こちらを向き、空を見上げたまま固まった『それ』を見、オールド・オスマンは好機と判断した。

「わしはオールド・オスマン。ここの学園長をしておる。もし宜しければ、名前でも教えてもらえんかね?」
距離を取りながら、好々爺の表情でそう声を飛ばす。

が…一見分からないよう、手のひらの中に杖を隠し、尚且つ詠唱も終えている。
万が一の際には何時でも周囲数メイルを吹き飛ばせる程の魔法を手にしつつも、そんな気配は微塵も見せない…。
横に立つコルベールも、その手腕には思わず舌を巻いた。

だが、『それ』から帰ってきた返事は…それ以上のものだった。

「…ほう。なかなかの力ではあるが…それでは我を滅ぼす事はおろか、退ける事すらできんぞ…」

その言葉に…流石のオールド・オスマンも、心臓を鷲掴みにされた気分になった。
…下手な小細工は通用せんようじゃの…。
そして、手の中に隠した杖を、しっかりと見える位置に握りなおす。

「これは失礼を致した。並みの御仁では無いとお見受けしたが…?」

手のひらから流れる汗を極力意識しないよう心がけ…
失礼でないように。それでいて尊厳を崩さぬ声でそう答える。

そして…
その様子にグラーフは内心、ほくそえんだ。
自分自身の他に対する圧倒的な優位性。それが何に根ざしてるか。
それは、圧倒的な力。そして、全てを見通すかのような知識。
力は…命と共にゾハルに飲まれ失った筈の力は…なぜかこの手に戻っている。
しかし…この二つの月。何故か生きている自分自身。
500年を彷徨った我にも、不明な点が多い。
まず必要なのは、情報。
それを多大に持ったであろう人物が現れ…そして完全に気を飲まれた状態で立っている。

グラーフは誰にも悟られないよう、小さく口の端をゆがめた。
もっとも、分厚い仮面の下の表情など誰にも窺い知る事は出来ないのだが…。

「…我はグラーフ…。 神を… 滅ぼす者… 」

「なんと!?髪を滅ぼす者ですと!」
それを聞いたコルベールが、青い顔で叫ぶ。
「やはり危険です!オールド・オスマン!ご英断を!!」
前髪と冷静さを完全に失っているコルベールをオールド・オスマンは片手で制する。

「ほう…グラーフ殿と申すか…。この度はうちの生徒が…そのなんじゃ、迷惑をかけたの…」
あくまで曖昧な言い方で、相手の出方を窺う。

一方グラーフは…彼も、元はといえば人間で、その時の大半は絵描きとして生きていたが…
その人生の後半。そして、思念体として存在した400年以上の間、武人として生きてきた。
多少の腹の探り合いは出来ないでもないが…面倒だ。
この老人の鳥のような首をへし折り、その上で憑依して知識を読み取るべきか…。
だが、情報の限られたこの状況で、それをするのは短絡的すぎる。
そう考え…
グラーフは己が最も得意な方法をとった。
それは…


「ぐ…ぅ…!?」
グラーフと名乗った男は無言で浮いたまま…強烈な闘気の風を飛ばしてきた。
やはり…怒っておるのぉ…。
オールド・オスマンは今にも襲ってきそうな重圧感に耐えながら、考えを巡らす。
じゃが…襲ってくるなら、とっくにそうしておるじゃろう…。つまり…『まだ話し合いの余地はある』
グラーフの無言の返答に何と返すべきか…。
そう考えてる時、ピンクの影がサッと動いた。

「ミスタ・コルベール!彼は生きているのです!そんな殺そうなどと…!」
ミス・ヴァリエールがすがるような目でコルベールに詰め寄る。
「いや、落ち着いてください、ミス・ヴァリエール…。
私はただ、オールド・オスマンの知恵を借りようとしてですな…」
しどろもどろにそう言うコルベールに、オスマンが目で合図を送る。
するとコルベールは静かに、力強く頷き…
ミス・ヴァリエールを説得しながら、二人で学園の中に帰っていった!

(え?何?どーゆー事?
ワシは生徒を安全な所に連れて行くように、って思っとったのに…
あの壊滅ハゲ野郎まで帰っちゃった?なんで?
ワシ一人に全部押し付ける気?何?ワシに死ね、ってか?給料いらんのか?)
オールドオスマンは表情にこそ出さないが、心の中で悪態をついていた。

(流石、学園長…。
生徒のみならず、教師である私の身も案じて下さるとは…!
ぅぅ…ただのスケベ爺と思っていた自分が恥ずかしいです…!)
コルベールは、勘違いをして感涙を流していた。


オスマンは小さく咳払いをし、眼前に浮かぶグラーフに視線を戻す。
…正直、フレンドリーな雰囲気なんて微塵も感じられないが…覚悟を決めて話し出した。
(いきなり逆上して―― なんて事も無いじゃろ…いや、無しで…無しの方向で)

曰く、サモン・サーヴァントが失敗して、呼び出してしまった。
曰く、生徒にはワシから厳しく言っておく。
曰く、帰りの旅費は学園が負担する。
曰く、……

オールド・オスマンの毅然とした態度が無ければ、全面降伏にしか見えない提案を、グラーフは片手を振って遮った。
そして、空に浮かぶ月を眺める。

「…戯言はいい。…それより、我の知る世界には…月は一つしかない。ここはどこだ…」

『月は一つ』…その言葉を聞いた時…オールド・オスマンの頭に30年前の恩人の言葉が蘇った。
『…それは…愛…だぜ!』いや、違う。そんな事も言ってたが、それとは違う。
そう、それは…

オールド・オスマンは、思いついた事をカマをかける意味も込めて、グラーフに言う。
「貴殿は…まさか、異世界から来た者…かの…?」

(『異世界』…ここは異世界なのか?一体何故、我はそのような所にいる?)
グラーフの頭に、再び疑問が浮かぶ。
しかし…
(我が妄執は、世界を焼き、自身を滅ぼしても…生きる事を望んだのか…?)
『生きて!』
何度も夢の中で聞いた言葉。何度も心の中に響いた叫び。
それは…彼自身の根底を支える言葉であり…彼の力の根源であった。
(理解できん事ではないが…どうにも情報が足らんな…)

グラーフは威圧の為に放っていた闘気を抑え…そして、宙を滑るようにオールド・オスマンに近づいた。

「…話を聞こう…。だが、いらぬ事は考えぬ方が身の為だぞ…」

オールド・オスマンは…彼にはそういった趣味は無かったが…
それでも…秘書の秘所を覗こうとして殴られる日々が急に愛おしいものに思えた…。

―※―※―※―※―

かって宝物庫と呼ばれた場所。
グラーフはそこに一人で佇んでいた。

オールド・オスマンからある程度の話を聞き、そして当面は客人としてここに留まる事となったのだ。

最も、宝物庫は学園の中でも最も強力な固定化の魔法がかかっており…
宝物は全て学園長室に移動してある。
つまり、いざという時は、学園の総力を挙げて、宝物庫を処刑場にしようという考えでもあった。

最も、この程度の壁では存在しない事と同じであるグラーフは、そのような考えは歯牙にもかけていなかった。


そしてこれは…グラーフ自身も気付いてはいないが…


ゾハルとの接触により、力と共に手に入れた狂気…。

その狂気が薄まっている事…。


「生きて!」
出会ったことすら無かった、異世界の少女が発した言葉。

その言葉が、力を得、狂気に囚われた彼本来の心…ラカンの魂を揺さぶった事。

なぜ、彼女の言葉にそれ程の意味があったのか…



全ては…神のみぞ知る…



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