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新約・使い魔くん千年王国 第十二章 開戦前夜

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神聖アルビオン共和国の首都、ロンディニウムの南側にあるハヴィランド宮殿。
その中の荘厳なる会議場「ホワイトホール」で、円卓を中心にした論争が続いていた。
議長は神聖皇帝、オリヴァー・クロムウェル。背後には秘書のシェフィールドと側近ベリアル、
それにワルド(ベアード)とフーケ(マチルダ)もいる。

議題は、半年ほど休戦しているトリステインとの戦争について。
敵国の意図はもはや明白。ゲルマニアとの連合、ガリアとの盟約、軍港の強化、急速な艦隊の建造。
彼らはこの浮遊大陸へ、アルビオンへ直接攻め込もうというのだ。

「議長閣下! 革命成ったばかりのこのアルビオンを、どう防衛なさるおつもりか!
 艦隊決戦でまたタルブのような事があれば、この国は……」
「ホーキンス将軍! 軍を預かる貴公が、何を弱気な! 敗北主義的な!」
「然り! 神と始祖ブリミルの祝福したもうたこの神聖な国土に、敵軍が上陸などできようはずもない!」
「我らは神に選ばれし民、神の子ですぞ! ここはもはや天国、千年王国の時代が始まったのです!
 そうでしょう、メシア・クロムウェル陛下!」

若い将軍や閣僚の目は血走り、鼻息も荒く、老将ホーキンスたちを怯ませる。
彼らはクロムウェルをメシアと仰ぐ革命急進派、『千年王国派』だ。
下級貴族や平民、特に信仰心の強い郷士・土豪・農民の子弟で、新型軍『鉄騎隊』として組織的に調練され、
共和革命の中心的役割を果たしてきたという自負がある。いわば維新の志士である。
一部の市民から成る極左団体『平等派』や『水平派』なども弾圧されて衰退し、今や彼らが国政の中心にいた。

クロムウェルは微苦笑して一同を制し、起立して発言する。
「ははは、活発な議論、まことに結構。しかしわが国軍の充実ぶりもご存知の通りだ。
 さる伝手から新兵器も買い込んだし、敗北の可能性は低い。
 それに彼らは烏合の衆、革命の炎に燃える我らの前に瓦解する様が見える!
 我らには、神の祝福と鉄の結束あり!」
「「AMEN!!」」
志士たちが応じるが、利害で集まった大貴族たちは不安げな表情を隠さない。


その様子を察して、クロムウェルは続けた。

「とは言え、負ける可能性もゼロではない。ならばだね諸君、
 連合軍が向こうから兵を引くように仕向ければいいわけだよ」
「と、申しますと?」
「元々ゲルマニアは大戦争が終わったばかりで疲弊しており、外征には乗り気でない。
 要はゲルマニアとトリステインとの仲を裂くか、主導するトリステイン側の兵を引かせるかすればよい。
 考えても見たまえ、かの国は何処と国境を接しているかな?」

一同はざわつく。
「まさか、ガリアが、ですか? しかしあの国はトリステインとラグドリアン湖で誓約を行い、
 相互中立・不可侵条約を締結したばかりですぞ」
「だからこそ、トリステインは安心して、ほぼ全軍をアルビオンへ向かわせる。そこを突くわけだよ。
 何、ちょっと兵を動かしてもらうだけで良い。突然後顧の憂いが生ずれば、敵は動揺し混乱するだろう」
「な、なるほど! 流石は陛下、国際戦略にも長けておられる!」
「何をするか分からん、信義なき無能王のガリアですしなあ。
 何をするか分からん、となれば、条約破りもさして違和感なく行うでしょう」

会議場には興奮した空気が満ち始めた。
ガリア王国はハルケギニア最強の国家だ。味方につければ、帝政ゲルマニアとも対等に戦えるだろう。
ややあって、再びクロムウェルが挙手し、ざわめきを鎮める。

「ことは高度な軍事機密ゆえ、まだ外部に漏らしてはならない。
 だが、ハルケギニアを統一して聖地を奪回するという神聖なる目的は、
 始祖ブリミル以来六千年にわたる、あらゆる人類の悲願なのだ。
 ガリアとの折衝は、このミス・シェフィールドとベリアル閣下に任せよう。
 では共和国の同志諸君、ともに聖戦に備えようではないか!!」

「「アルビオン万歳! 革命万歳!! 千年王国万歳!!」」

万歳三唱で会議は終わった。一同は晴れやかな面持ちで敬礼すると、会議場を退出した。
クロムウェルは得意満面である。


クロムウェルはベアードとフーケを呼び止め、執務室へ移る。
そこには、一人の男が待っていた。見るからに常人ではない。

年は40前後。短い白髪で顔に皺もあるが、背は高くがっしりした体格。
鍛え抜かれた肉体は浅黒く、無数の傷痕は歴戦の証だ。中でも顔の上部を覆う火傷は酷く、瞼と視力を失っていた。
それでも男は三人の気配に気付き、壁際の椅子から立って一礼する。

「やあやあ、お待たせして悪かったね。
 ミスタ・ベアードにミス・マチルダ、ご存知かもしれないが紹介しよう。
 彼が伝説の傭兵、『白炎』のメンヌヴィルだ」
「よろしく、ミスタ・ベアード、ミス・マチルダ」
「初めまして、よろしくミスタ・メンヌヴィル。お噂はかねがね伺っているよ。
 ……で、我々は何をすればいいのかね、閣下?」

クロムウェルが、顎を撫でながら話す。
「うむ。ガリアが手筈どおりトリステインを動揺させればいいが、勢い余ってかの国を攻め取られても、こっちが困る。
 従って、こちらとしてもガリアを牽制して、戦後のトリステインの領有権を主張するため、
 今一度工作員を派遣しておこうと思ってね」
「工作員、ですか」
「そうだ。しかしながら、王都トリスタニアは戒厳令が敷かれていて、外国人の出入りは困難。
 ならば、せめて『人質』でも抑えておいて、交渉の具としたい」

フーケが眉根を寄せる。
「誰を人質にしようというのです?」
「君たちにも因縁の深い、トリスタニア近郊にある魔法学院だよ。
 情報によれば、今は『学徒動員』で男子学生や教師が徴用され、女子学生ぐらいしか残っていないはずだ。
 そこを襲撃して貴族の子女を多数捕らえれば、トリステイン軍ものうのうとしてはおれまい?」

メンヌヴィルが凶暴な笑みを浮かべ、舌なめずりする。
「俺はそれなりの人数の傭兵団を抱えているが、特殊部隊として腕利きを10人ほど選んである。
 なるべく殺さないように努力はするけどよ、相手が歯向かったら焼いていいんだろう?
 むしろ、学院ごと丸焼きにしたいなあ。ああ、たまんねえなあ! ひひひひひ」
ベアードは苦笑して、赤い隻眼を歪ませる。盲目の狂戦士に、魔眼の子爵と女怪盗とは。
「私は彼の部隊の運び屋であり、文字通りの『お目付け役』というわけか。
 やや人選に問題がある気もするが、了承したよ。準備ができ次第、急ぎ出発しよう」


年末はウィンの月の第1週、マンの曜日が、アルビオン侵攻連合軍の出港日と定められた。
二つの月が重なる『スヴェルの夜』の翌日にあたり、アルビオンがハルケギニアに最も近付く日だ。
その前の週に、トリスタニアの中央部にあるシャン・ド・マルスを始め各地の練兵場から、
最前線基地ラ・ロシェール及びタルブの軍港へと、総勢6万もの大軍が移動して集結した。

トリステイン軍は、貴族の士官と傭兵からなる『王軍』、大諸侯と領民兵からなる『国軍』、
それに軍艦を動かす『空海軍』の三軍に分かれる。もっとも国軍の半数は、輜重部隊である。

軍港には、アンリエッタ女王にマザリーニ枢機卿、ゲルマニア皇帝アルブレヒト3世の姿も見える。
彼ら自身は国内の政務があるため、アルビオンへは行かない。
総司令官はトリステインのオリビエ・ド・ポワチエ将軍。参謀長官にはウィンプフェン。
艦隊司令長官はラ・ラメー伯爵。教導士官として、タルブの戦いで降伏した元アルビオン空軍艦長のボーウッド卿も加わる。
ゲルマニア軍の司令官はハルデンベルグ侯爵。重要人物としては、ゲルマニア随一の資産家ブラウナウ伯爵。
そしてもちろん、我らがタルブ伯爵マツシタもいた。ついでにルイズも。

「壮観ね。これだけの数の軍勢が集まっているだけで、ドキドキするわ。
 連合軍6万人、参加飛行船が約500隻、うち戦列艦60隻かぁ……まるで、大都市のようね」
「『薔薇十字団』からの資金援助と悪魔ザガムの『錬金術』で、軍需物資は潤沢だ。
 ブラウナウ伯爵にも挨拶してきた。あとでじっくり話をしたい。
 タルブの留守はリッシュモンとチュレンヌに任せてあるし、ぼくの『千年王国教団』も軍事教練は済んだぞ」
「何人いるんだっけ、あんたの私兵団は」

松下が表情一つ変えずに、陣容を述べる。
「そうだなあ。まず、選り抜きの信者兵団による連隊がちょうど1000名。いや、大隊かな。
 ドットやラインばかりだが、半数近くはメイジ。平民兵も『魔女のホウキ』で空中戦に対応できる。
 第二使徒シエスタと第七使徒マルトーには、平民部隊の指揮を任せてある。
 加えてグリフォン3頭と火竜7頭、風竜8頭、商用船を改造した自前の小型軍艦が3隻。
 切り札として、『地獄の門』から『地獄の番犬ケルベロス』を召喚して仲魔にしておいた。
 この魔道書の中に封印してあるから、もしもの時には呼び出せる。
 これだけあれば、都市の二つや三つは落とせるだろう」
ルイズは、苦笑いするほかない。
「充分過ぎよ。敵より、味方に背後から攻撃されそうね。危険過ぎて」


《諸国の民に宣伝せよ。戦いの備えをし、勇士を奮い立たせ、兵士をことごとく集めて上らせよ。
 お前たちの鋤を剣に、鎌を槍に打ち直せ。弱い者にも「私は勇士だ」と言わせよ。
 諸国の民は皆、周囲から集まり、急いで来たれ! 主よ、汝の勇士を彼処に下したまえ!
 ……鎌を入れよ、作物は熟した。来て踏み潰せ! 酒ぶねは満ち、搾り場は溢れている。彼らの悪が大きいからだ。
 『裁きの谷』には、おびただしい群集がいる。主の日が『裁きの谷』に近づいているのだ。
 太陽も月も暗くなり、星もその光を失うであろう》
  (旧約聖書『ヨエル書』第四章より)


一方、トリステイン魔法学院は、『学徒動員』のため閑散としていた。
グラモン元帥の四男坊のギーシュはもちろん、マリコルヌもド・ロレーヌもギムリも、
スティックスもペリッソンも、男子学生は皆『士官候補生』として徴集されてしまった。
残っているのは女子学生ばかりだ。しかも男性教師の多くも参戦しており、授業は休講続き。
キュルケとタバサは、部屋でゴロゴロしているよりしようがない。

「はーーーあ、ヒマねぇタバサ。私もツェルプストー家の子女として、初陣を飾りたかったのに。
 女子だから参戦不可なんて理屈はないわよねぇ。ああ、敵をボウボウ焼きたいわぁ」
「私はガリア人、どちらにせよ参戦はできない。……タルブへ行けば、使ってくれるかも」
「マツシタくんのとこかぁ。料理長のマルトーやメイドのシエスタだって使っているもんね。
 だけど、この学院も、アルビオンによるテロの標的にされかねないわ。私たちで守らなきゃ!」

アンリエッタ女王は、側近のアニエス率いる女子銃士隊を学院の警護に回してくれたが、
メイジでない彼らの実力はいまいち信用できない。
確かに戦闘のプロではあろうが、若い女性ばかりの部隊というのも……。

「ねえ、あのアニエスって女騎士、ひょっとして女好き?」
「どうでもいい」

居残った教師の中には、コルベールもいた。
彼はマツシタの口利きで、リッシュモン高等法院長を介して『薔薇十字団』に仮入団した。
『火の本質は破壊だけではない』という彼の口癖は、怪しげな発明品として結実していたが、
その才能を認められ、多くの資金や資料が団から贈られた。これで心置きなく研究に没頭できる。

かつて彼は、破壊を仕事としていた。アカデミー直属の戦闘部隊、『実験小隊』の隊長だ。
ダングルテールに隠れていた新教徒の集団を、皆殺しにした事だってある。
だが、それ以来彼はふっつりと『破壊』をやめ、感情なき『炎蛇』であることをやめた。
そして火のもう一つの本質である『情熱』を、研究活動に注ぎだしたのだ。
今日もコルベールは、自分の研究室に篭り、怪しげな書物を読み耽っている。

「なになに……『この世の始まりは、火に包まれていた。その熱から4つの力が分かれた。
 四大系統でも、乾湿冷熱でもない、万物を集合離散させる根源的な力が……』
 おお、なんという面白さ! これが『東方』の進んだ知識か!!」


トリステインから1000リーグ南西、ガリア王国の首都リュティス。
隣国でまた戦争が始まるとの噂は、すでにここにも届いていた。
一応相互不可侵・中立の条約を結んでいるが、国際政治はそう単純ではない。
軍港サン・マロンには『両用艦隊』が配置され、戦乱の飛び火に備えている。
そのためか、少しずつ税金と物価が上がりだしていた。

「この豚肉、1斤くれ」
「4スゥ頂きます」
「4スゥ? 3スゥじゃないのか?」
「戦争騒ぎで、物価はすべて値上がりになったんです」
「チェッ、誰が政治しとるのか!」

庶民の嘆きをよそに、郊外の広大なヴェルサルティル宮殿では、今宵も壮麗な晩餐会が催されていた。
貴族は着飾って狩猟や恋愛遊戯に明け暮れ、美味いものをたらふく飲み食いし、文字通り私腹を肥やす。

「まったく素晴らしい! 国政をほったらかしにして、こんなお祭り騒ぎができるから、ガリアも大国じゃよ」
「そうです! 我々貴族は戦争や平民のことなど考えず、お金さえもうければよいのです」
「まったく真理じゃ。さて、この服も飽きてきたし、もう少し領地の税率を上げて新調するか。むははははははは」
「いひひひひひひ」

しかし、国王ジョゼフ1世は晩餐会へ姿を見せない。
彼は王城『グラン・トロワ』の自室に引き篭もり、一人遊びに耽っている。
指し手は自分、対手も自分。盤面はこの世界、ハルケギニアとアルビオン。
駒は揃った。あとは、どうそれを動かすか?

「さあ、ゲームの始まりだ! おお、余は戦争遊戯を少しばかり愛し過ぎている!
 せいぜい余を楽しませてくれよ、愚鈍なる諸君!!
 ……だが、ああ、むなしい! 一切はこの俺にとって、虚無でしかない!
 虚無の盤面の上で虚無の駒が踊る、なんとむなしいことか!!」


《貧しくて賢いわらべは、老いて愚かで、もはや諌めを容れることを知らない王にまさる。
 たとい、その王が(若いときに賢くて)獄屋から出て王位についた者であっても、そうである。
 私は日の下に歩む全ての民が、かのわらべのように王に代って立つのを見た。
 全ての民は果てしがない。彼はその全ての民を導いた。しかし後に来る者は彼を喜ばない。
 確かにこれもまた空であって、風を捕えるようである》
  (旧約聖書『伝道の書』第四章より)


(つづく)


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